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ゴッド・エンチャントと勇者の正体

魔王の討伐に向かった、時の勇者達とマールイ騎士団達。

魔王候補達と遭遇し、戦闘になった。

マールイが殺されそうになった時、勇者が助けた。


【パルシアの森・中央】


「フン」

勇者は、剣で受け止めていたガディザムの拳を弾いて腹に蹴りを入れた。


「ガハハハ…ヤルデハナイカ!イマノガ、ゼンリョクカ?」

ガディザムは、歯応えのある獲物を見つけたような顔をして尋ねた。


「いや、そう焦るな」

勇者は、メルサ達の方に視線を向け思い出した。




【過去・パルシアの森・バルビスタ国側】


少し前…。

勇者から自分達の判断に任せると言われ、動揺した奈々子とツカサの2人は、暫く考えた。


そして、2人は動揺していた表情が決心した表情に変わり、お互いの顔を見て頷いた。


「「ついていきます」」

今までとは違い、見違えるほど、その瞳には力強さが宿っていた。

そんな、2人を見て微笑むメルサと、口もとに笑みを浮かべる勇者。


「わかった。心配しなくてもいい、2人は今日は戦闘はしない。今回は、傷ついた騎士団達の手当てなどの支援だけだ。勿論、メルサも手伝って貰う」

「わかったわ」

「「わかりました」」

3人は頷き、お互いの顔を見て笑った。




【パルシアの森・中央】


思い出した勇者は笑みを浮かべて提案する。

「そうだな、お前が全力を出すのなら、全力を見せてやる。どうする?」

「ガハハハ…。オモシロイゾ、ニンゲン。デハ、スキル、カイリキ」

ガディザムは勇者の挑発に乗り、ユニークスキル、筋肉増強魔法、怪力を使用した。


ガディザムの魔力と筋肉が増大していき、ガディザムの身長は2mから3mになった。



「ドウダ、オドロイタカ!」

「ああ、期待していたのにとても残念だ。しかし、約束は約束だ。エンチャント・ディバイダー。筋肉ダルマ、意識を集中しろよ」

勇者のユニーク・スキル、【ゴッド・エンチャント】を発動した。

勇者の剣が黄色の魔力を纏った。


【ゴッド・エンチャント】とは、好きな属性や効果を付与するという能力。

今回は、区切るという能力を付与した。



「ナメルナ!」

巨体なのに似合わないほどの速さでガディザムは、勇者に接近して殴ろうとした。

だが、勇者が先にガディザムの首を目掛け剣を横に凪ぎはらう。


一瞬、寒気がしたガディザムは、片腕に魔力を集中させガードしたが腕ごと首と一緒に切断された。


「バカ…ナ…」

ガディザムは、最後に首のない自分の体を下から見上げて息絶えた。



マールイ、ルーニングを含め、周りの騎士団達や盗賊達は、未だに目の前の光景を信じられず、皆は時間が止まったかのように固まっていた。

勇者は、すぐにケルンの助太刀に向かう。



「糞、どうすれば…。ん?何だ?急に周りが静かになったな」

急に周りが静かになり、ケルンは気になったので見渡した。


「よそ見する余裕があるのか?」

「くっ、しまった…」

致命的なミスを犯したケルンに、魔剣の剣先が喉に迫る。


「副団長とあろう者が、何を初歩的なミスを犯しているんだ」

「わっ!?」

勇者は、ケルンの後ろから兜の鉢(頭部)を鷲掴みして後ろに引っ張り回避させた。


「痛っ」

ケルンは、勇者の背後に倒れた。



「何をする!」

「フン、良いところで邪魔が入ったか…。新手か?」

ケルンは怒り、グランベルクは興味が反れた。


「「何をする!」は、ないだろう。命の恩人に対して。あと、死ぬ奴に名乗っても意味がないが、冥土の土産に覚えておきな。【時の勇者】と言えばわかるか?それで、お前は誰だ?」

勇者は、ケルンに呆れて溜め息をした。



「俺様は、異世界の魔王、魔剣王のグランベルクだ。貴様こそ、あの世で自慢すると良い」

「ん?ということは、お前ら魔王候補か?なら、この世界で魔王になれなかったゴミか」

勇者は、肩を竦めて残念そうな表情をした。


「ククク…。やすい挑発だな。あの時は、魔剣が不調で運がなかっただけだ。しかし、この世界の勇者か。面白い、相手にとって不足なし!だが、俺様を殺すだと?笑わせてく…」


「いや、お前はもう死んでいるが。それに、敗因を武器のせいにしている時点で雑魚決定だぞ」

グランベルクが話している最中に、勇者はディバイダーの能力を付与している剣で攻撃をした。


「何だと…!?」

グランベルクの鎧が針に変化したが、勇者の剣は針ごとグランベルクの首を切り落とした。


勇者は盗賊達を凪ぎはらいながら倒していき、最後の標的ルーニングに向かう。



ルーニングは、近づいてくる勇者を視認した。


「この人間風情が調子に乗り過ぎじゃ!ライトニング・ボルト」

魔王候補2人を殺され、ルーニングが激怒していた。


ルーニングは、指先を勇者に向けて雷魔法ライトニング・ボルトを唱え、指先から稲妻が迸り勇者を襲う。


「エンチャント・シール」

勇者は、今度は剣に封印の能力を付与して向かってくる稲妻を封印して無効化しながら、速度を落とさずに盗賊達を斬り捨てながらルーニングに近づく。


「な、何をしたのじゃ?!」

「答える奴がいると思うか?」

「それも、そうじゃのぅ。だが、これは、どうじゃアース・ショット、アイス・ミサイル、ファイア・アロー」

ルーニングは、土、氷、炎の3属性を同時に10本ずつ召喚して勇者に向かって放った。



「アハハハ…。結構、楽しいことしてくれる。流石、魔王候補だけのことはあるな。そうでなくては困る。アハハハ…」

勇者は笑いながら飛んでくる魔法攻撃に怯まず、剣で次々と無効化していく。


「そうだな。エンチャント・ウィンド。こっちからも試してみるか」

次に勇者は、剣に風属性を付与した。


「風刃波」

勇者は剣に魔力を込めて5回振り抜き、剣の軌道に風の刃が5本飛んでいく。


木を薙ぎ倒しながら、2本の風の刃は逃げようとした盗賊達に当り、盗賊達は切り刻まれ肉塊となった。


残り3本は、ルーニングを襲う。



「どうなっているのじぁ。訳がわからん。しかも、あやつにお前さんは似ておる…。エア・カッター」

ルーニングは、風魔法エア・カッターを唱えて風の刃を3本放ち、正面から魔法攻撃の真っ向勝負に出た。


風の刃同士の対決だったが、エア・カッターは風刃波と衝突してルーニングの風の刃は力負けして3本とも消滅した。


「な、なんじゃと!?ぐっ…あ…」

魔法対決に負けたルーニングは、驚愕して一瞬反応が遅れたところに勇者の3本の風の刃がルーニングを襲い、2本の刃は胴体に残りの1本の風の刃は首に当たり、ルーニングは空中でバラバラの肉塊になった。


「つまらんな、身体強化するまでもなかったか…」

勇者は興味なさげにルーニングの死体を見下ろし、懐から一枚のカード取り出して捨てた。



勇者以外、皆は呆然として見ていた。

気が付けば、魔王候補達及び盗賊達は全滅したと感じるほど鮮やかで瞬殺だった。



「かっ、勝ったの…?」

「う、うん…そうみたい…だよ…」

静寂の中、ツカサの疑問に奈々子は答えた。

2人の決して大きくない声が響く。


そして、周りは我に返り体を震わせていた。


「「かっ、勝ったぞ~!ウォォォ~!」」

騎士団達は、武器を掲げる。



「す、すっごいです。圧勝ですよ」

「本当に凄いですね」

「当然よ!私の夫になる人なんだから!」

ツカサ、奈々子、メルサは、勇者の傍へ駆けつけ、メルサは勇者に抱きついた。



「2人とも初めての戦場は、どうだった?」

「正直に言いますと、人が目の前で簡単に死んだり、血や怪我を見た時は吐き気がしました」

「私もです…」

勇者は奈々子達に振り向いて尋ね、奈々子とツカサは正直に感じたことを話した。


「今は、それでも構わない。それより先にマールイとケルンの手当てをしてやってくれ」

「「はい」」

奈々子とツカサは頷き、ツカサが誘導して奈々子がテキパキと手当てを施していく。


「奈々子、マールイさんとケルンさんにヒールして」


「わかったよ、ツカサちゃん。ヒール」

奈々子はマールイとケルンに駆けつけ、光魔法ヒールを唱えてマールイとケルンの傷を癒す。


ツカサとメルサ以外の周りの皆は、直に奈々子のヒールを目の当たりして驚いていた。


なぜなら、奈々子のヒールは自分達が知っている僧侶やシスターが使うヒールよりも遥かに優れていたのだ。




「勇者さん、お聞きしたいことがあるのですが…」

「ん?何だ?奈々子」

「どうして、私の名前を知っているのですか?」

「ああ、そうだったな」

勇者は、左手でフードを取った。



「えっ!?う、嘘…。だ、だって…行方不明で死んだって、軍人さんから報告があったのに…」

奈々子は、口元に手を当てて涙が溢れた。


「心配かけたな。俺はこの通り生きている。久しぶりだな、奈々子」

勇者は、優しく奈々子の頭に手を置いた。


「りゅ、流星義兄さん!生きていたのですね!良かった…。本当に良かったです…」

奈々子は、メルサを気にして流星に抱きつかずにその場で泣いた。

流星は苦笑いしながら、そんな奈々子の頭を優しく撫でた。


奈々子と流星が出会いはというと、奈々子が大成と合う前、流星は幼い頃に奈々子がいた児童施設ひまわりにお世話になったので、ちょくちょく足を運んで顔を出していた。


流星が児童施設を訪れる度に、奈々子は流星から外の世界の話を聞くのが大好きで、いつも流星の手を引っ張て施設の責任者である七海と一緒に話を聞いていた。

奈々子にとって、流星は兄の様な存在だった。



流星達は、これからどうするかの話し合いをし、話し合いの結果、被害が大きかったのでバルビスタに帰還することになった。


帰還中、途中で魔人の騎士団達と遭遇したが、魔人達は遠くからコチラを見ているだけで何もしてこなかったので、こちらも無視して先に進んだ。


奈々子は歩きながら、今までのことを流星に話をした。

「そうか。なら、もしかしたら大成も、こっちに来ているかもしれないな」

「そう、思ったのですが…。今回、召喚されたのは私とツカサちゃんだけみたいです…」

大成のことで、奈々子は落ち込んだ。


「ねぇ、その大成とかいう子って強いの?」

メルサは流星の片腕に抱きついて、興味津々な表情で尋ねる。


「ああ、前の世界だと俺の次に強かったな。前の世界で俺は魔王とか死神とか言われ、大成は魔王の剣とか死神の鎌とか言われていた。まぁ、要するに俺達は恐れられていたほど強かったわけだ」

メルサ、ツカサは興味津々で聞いていた。



奈々子だけは、複雑な気持ちだった。

今日、初めて人の死を間近で見て肌で感じた奈々子。

今まで、頭で思って想像していたことと、現実は全く違うことに気付かされた。


今、思うと…。

殺されそうになったり、人を殺めたりする日常を送った場合、精神はどれだけ削れて消耗していくのかと考えると正直ゾッとする。


しかも、大成はそんな日々を小さい頃から耐えてきたのだ。

そんなことを考えたら、凄いと思うよりも可哀想に思えてくる奈々子だった。



「で、その大成って子が見つかったら、当たり前だけど仲間に入れるのよね?」

メルサの考えは皆も同じだったが、この場にいるただ一人だけが違ったことを考えていた。


「いや、一度、お互いの命を懸けた戦いをしてみたいな」

流星の発言を聞いて、皆が流星の方を見た。


流星の顔は、小さい子供がお気に入りのオモチャで遊んでいるような顔だった。

そんな、流星の顔を見た皆は背筋がゾッとした。






別話


【バルビスタ城】


マールイは、奈々子から治癒して貰った時から流星を目の敵として見ることがなくなり皆は不気味がっていた。


今まで、好意を抱いていた幼馴染みのメルサと婚約した流星が許せなかったマールイが大人しくなったのだ。



そして、城に戻ったマールイは団員を呼び集めて緊急会議を始めた。

そして、会議で満場一致し、この日、奈々子親衛騎士団が誕生した。

マールイは、メルサから奈々子に乗り換えった瞬間だった。



次の日から、奈々子は【慈愛の女神】と呼ばれ、崇められることになった。

奈々子は、頬を赤く染めて引きつりながら苦笑いした。



ちなみに、奈々子は13歳に対しマールイ30歳、団員24~40歳であったため、周囲からはロリコン隊と呼ばれることになる。

次回、大成達の話に戻ります。

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