宴と交流会
無事に魔人国、獣人国、エルフ国、人間国の4ヵ国同盟を結べた。
【獣人の国・パール・シヴァ国】
トネル達エルフ族や流星達人間族は同盟を結んだことと合同訓練するという手紙を使者を使って自国に送り、大成達と一緒にパール・シヴァ国へと帰還した。
先にリーエが闇魔法シャドウ・ゲートで一足先にパール・シヴァ国へ戻り、宴会を開催することを伝えていた。
そして、大成達が帰還した頃には既に陽が落ちており夜になっていたが夜空の星空と満月、キャンプファイヤーや出店などで明るく照らされている。
「歴史に残る偉大な同盟を結べた!さぁ、今宵から種族関係なしに大いに盛り上がろうじゃないか!各国の繁栄と福祉の向上、そして、この同盟が永遠に続くことを願って乾杯!」
舞台の上には流星、魔王、トネル達がいる中、中央にいるレオラルドが祝杯を挙げた。
「「乾杯!」」
会場の皆は、ジョッキを持ち上げて乾杯した。
「ここに居たか、ドルシャー!一緒に飲まないか?」
「ああ、そうだな」
ローケンスはジョッキを2つ持ってドルシャーに声を掛けながら左に持っていたジョッキを渡し、ドルシャーは頷いて受け取った。
「まさか、こんな日が来るとは思いもしなかった。獣人族と魔人族だけならまだしも、まさかの人間族とエルフ族も同盟に加わるなんてな。なぁ、ローケンスもそうだろ?」
「いや、俺はこうなるだろうと思っていた。何せ、修羅様の夢だからな。修羅様が【時の勇者】と死闘を繰り広げ、その結果、人間族と同盟を結んだ時に修羅様の世界の各種族達と同盟を結ぶという夢は必ず現実になるのではないかと思った」
「そうだな…。修羅殿は、あの歳で強さだけでなく交渉もできて少年とは思えないほどだ。末恐ろしいな」
「ああ、全くだ。正直、修羅様が人間族に召喚されていたらと思うとゾッとする。もしそうなっていたら、間違いなくこの世界は人間族が支配していただろう」
「そうだな…。修羅殿もそうだが、【時の勇者】を間近で見て肌と本能が危険だと訴えていた。思い出すだけで背筋がゾッとする。いや、本気の殺気を向けられた時は何もされていないはずだが己の死ぬ姿を実感して気絶しそうになった。あの2人が組めば、この世界に勝てる人物どころか人間族以外の国が束になっても勝てないだろう」
「ええ、私もドルシャーさんの意見に同意ですね」
エルフのアルメリアが話に参加する。
「お!アルメリア殿ではないか!せっかくだから、これから一緒に飲まないか?」
「そうですね、皆さんが良いのでしたら」
「構わないよな?ドルシャー殿」
「ああ、構わないっというよりも一度は戦場じゃない場所でゆっくりと話してみたかったからな」
「すまないが、私達も混ぜて貰っても良いか?」
人間のマールイ、ケルン、声を掛ける。
「ああ、勿論だ。向こうで飲もうじゃないか。修羅様がお作りになった料理の中で私がオススメする料理を作って提供している店があるんだ。まだ、あれば良いのだがな」
「ほう、それは気になるな。では早速、行ってみようか」
ローケンスの意見にドルシャーが賛同し、皆も頷いたのでローケンスの後ろについて行った。
ドルシャー達の話が盛り上がっているところに、リスの獣人の女性店員がローケンスがオススメする料理の麻婆豆腐を持ってきてテーブルに並んだ。
「来たな、早速だが食べてみてくれ。熱い時が美味しいからな」
ローケンスは、右肘をテーブルについた状態で右手を自身の顎に当てて自信満々な面持ちで勧める。
「はい、わかりました。では、頂きます」
アルメリアはスプーンを持った右手で麻婆豆腐を掬い、左手で自身の長い髪を耳元に掻き上げてスプーンを口元に持っていき口元を尖らせてフーフーと息を吹きかけて少しだけ冷ます。
そして、ローケンス達が見守る中、アルメリアは麻婆豆腐を口の中へと運んだ。
「え!?何これ!すっごく美味しいですね!ただ辛いだけでなく、コクがあって奥深い味です!」
麻婆豆腐を食べたアルメリアは左手で口元を抑えてたまま驚愕した。
「ワハハ…。だろ!そうだろ!私も初めて食べた時は驚いた」
ローケンスは、嬉しそうに盛大に笑いながら何度も頷く。
「じゃあ、我々も…」
「「美味い!!」」
ドルシャー達も麻婆豆腐を食べて美味しそうな表情を浮かべた。
話も弾む中…。
「ん?どうした?」
マールイは、アルメリアの変化に気付いたので尋ねてみる。
「あ、いえ、場の空気を悪くしてごめんなさい。てっきり、女性だからとか軽蔑な話題があがるのかと思ったの」
アルメリアは、エルフの国で王直属護衛軍のリーダーに選ばれた頃を思い出していた。
主任した初めの頃は、なぜ女性がトップなのかという声も上がっており、その批判は言葉がなくなる様にアルメリアは頑張ってきた。
その努力が実り、今は批判な言葉どころか逆に感謝や憧れの対象になっている。
「フッ、何だそんなことを考えていたのか。この場にいる者は、絶対にそんなこと誰も思わないし言わないさ。我が国には最愛の妻マリーナ、愛娘のイシリア、【漆黒の魔女】であられるリーエ様、ミリーナ妃様、ウルシア、マミューラ、若い世代ではジャンヌ様、シリーダ、ウルミラ、マキネなどが居る。獣人の国にはネイ妃様、ルジアダが居るし、人間の国はメルサ妃様、【閃光】アエリカ、【慈愛の女神】菜々子、【誘惑の魔女】ツカサ、残念ながら亡くなったが【焔のバーサーカー】カナリーダ、【鉄壁】サリーダも居る。そちらの国だって、あの【幻惑の妖精】セリーゼ様、【戦の乙女】栞殿が居るだろう。女性だからとか種族がとか、そんなのは関係ないと我々は思っている」
「ああ、ローケンスの言う通りだな」
「だな」
「ですね」
ドルシャー、マールイ、ケルンも賛同で頷く。
「フフフ…そうですね」
嬉しそうにアルメリアは口元に笑みを浮かべた。
「そうだ、修羅様が作ったデザートも美味しいのだ。店員、レモンカスタードシフォンパイを5人分頼む!」
ローケンスはデザートを勧め、ドルシャー達は楽しく会話しながらデザートを食べる。
【獣人の国・パール・シヴァ国・裏庭】
魔王やレオラルド、トネルと話が終わった流星とメルサは静かな裏庭に移動してワインを片手にベンチに腰掛けて寄り添っているところに、大成と栞が同じくワインを片手に持って栞は大成の空いている腕に寄り添う様に腕を組んで歩いてくる。
「大成と栞か」
「流星義兄さん、ちょっと良いかな?」
「ああ、構わん。フッ、こうして揃うと何だか懐かしいな…」
流星は、ワインをテイスティング(グラスを水平に円を描くように動かし、グラスの中でワインを流動させる事)して大成と栞の姿を見て特殊部隊で野宿した時の頃を思い出す。
「せっかくの再会だし、私、席を離れましょうか?」
「いえ、お兄様の最愛の方なので大丈夫です!」
「そうだね」
邪魔になるた思ったメルサは自らこの場から離れるために立ちあがろうとしたが、栞と大成から止められて流星に視線を向けたが流星は頷いたので腰を落としてその場に残ることにした。
「で、俺に何か用があったから来たのだろ?大成」
「ああ、聞きたいことと…そして、これから話す内容は極秘事項だから誰にも話さないで欲しいんだ。同盟の関係もあるけど、おそらく、今回の件は僕1人で解決は無理だから協力して欲しい」
「…わかった。メルサも良いな?」
「ええ」
「勿論、私も誰にも話さないわ」
幸せそうに大成の腕にくっついていた栞も真面目な面持ちで答えた。
「ありがとう、実は…」
大成は謎の爺さんのこと、魔人の国で魔剣が奪われたこと、巨人の国のワールド・クロックが奪われたことなどを伝えた。
「なるほどな。で、俺に聞きたいことはその謎の爺さんの近辺情報か?」
「そうなんだ、僕よりも先にこの世界に召喚された流星義兄さんなら何か知っていると思って聞いたんだけど」
「そう言った話は、俺達の国はないな。しかし、面白い爺さんが現れたものだ。俺達と同等か、それ以上の実力があるとはな。その謎の爺さんは、今は何処に居るのかは検討はついているのか?」
流星は、新しいオモチャを見つけた子供様に嬉しそうな表情で尋ねる。
「わからない。わかり次第、連絡するよ」
「俺も情報が入ったら連絡しよう」
「助かるよ、流星義兄さん」
「気にするな」
大成は頭を下げようとしたが、流星は苦笑いを浮かべながら止めた。
「ねぇ、ところで前の世界では3人はどんな感じだったの?」
メルサは、気になっていたので身を前に出して尋ねる。
「大成との出会いは話したし、そうだな…今宵は気分が良い。久しぶりに思い出しながら語るのも良いか」
流星は、夜空の月を見上げて遠くを見る様な面持ちで地球でのことを思い出しながら語り始めた。
次回、合同訓練が始まります!
もし宜しければ次回もご覧下さい。