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宴とギマム

大成達はエルフの国と同盟を結ぶために、トネルの依頼で自分達の実力を見せるための試合が全て終わった。

【エルフの国・首都エレクト・異空間】


全ての試合が終わったので、セリーゼは杖を地面に突き立てると杖を中心に波紋が周囲に広がり周りの風景が歪んで次第に霧状になって霧散していき結界が解除されたことで大成達は元いた玉座の間に戻った。


「これが、今の自分が見せれる範囲の全力です。納得できましたでしょうか?」

大成はトネルに振り返って尋ねた。


「あ、ああ、十分だ。ところで、修羅殿。息子達をどうやって倒したのだ?」


「身体強化100%で正面から接近してすれ違い様に順番に首元に手刀を入れただけです」


「よくもまぁ、あの凄まじい速さですれ違い様に的確に手刀を入れることができたものだ。本当に恐ろしい実力と戦闘センスを持っておられる。1つ聞くが、【時の勇者】もそなたと同等の実力があると聞いたのだが誠か?」


「はい、そうですね。【時の勇者】でしたら、これぐらいのことは当たり前にできるかと思います」


「フム。やはり、要注意人物だということか…」


「とりあえず、全ての試合が終わりましたので回復魔法で皆さんの治療を行わせて頂いてもよろしいでしょうか?」

「頼む、修羅殿」

「それでは、グリモア・ブック、ワイド・ヒール」

大成はグリモアの本を召喚して回復魔法ワイド・ヒールを唱えると地面に大きな魔法陣が展開し、魔法陣が緑色に輝くと蛍の様な光が魔法陣から浮かび上がり傷口に浸透していき傷を癒やしていく。


「うっ、俺はなぜ倒れていたのだ?」


「凄い、こんなに早く傷が癒えていくなんて…

ギマムは目を覚まし、ギマムに遅れて目を覚ましたアルメリア達も目を覚ましリーエとの試合で傷付いた自身の傷が癒えていくスピードに驚愕した。


皆の傷が完全に癒え、次第に魔法陣の輝きが薄れていき魔法陣ごと消えていった。



「感謝する。私は人間の国は会ってみなければわからないが、獣人の国や魔人の国とは同盟を結ぼうと思う。だが、これは私個人1人では決められる件ではない。皆の意見を聞きたいのだが」


「「私達も賛成します!」」

ギマム達はトネルに敬礼して賛同すると、マテリアル・ストーンを通じて大成達の試合を見ていたエルフの国民達は拍手をして賛成の意思を伝え国中に拍手が鳴り響いた。


「フフフ…これは国民達も同盟に賛同しているようだな。我々、エルフの国は獣王、魔王、人間王と同盟を結ぶために会議に出ることを約束する」


「ありがとうございます」

リリーは頭を下げて感謝し、その瞳から涙が零れ落ちていく。


「今日は盛大に宴を開く!無論、リリー姫達も是非参加して貰いたい」

トネルはそっとリリーの肩に左手を置き、右腕を横に出してマントを靡きかせながら大声で宣言した。


「「オオ!」」


「感謝します」


「アルメリア、今日は宴会を開くと国民達にそう伝えよ」


「ハッ!畏まりました。では、お先に私は失礼します」

アルメリアは、玉座の間から退出した。


「疲れた…。ター君、私を部屋まで運んで。勿論、お姫様抱っこで…」

セリーゼは眠り、大成に凭れ掛かる。


「おっと…。あの、どうしたら…?」

大成は反射的に倒れそうになったセリーゼを優しく抱き締めた。


「「セリーゼ様!」」

「まぁ、仕方ないわね。大成、お願い。セリーゼを運んであげてくれない?」

ジャンヌ達は声を荒げたが、栞は溜息をついて大成にお願いをする。


「わかったよ」

大成は小さな寝息を立てるセリーゼをお姫様抱っこし、栞に案内をして貰いセリーゼの部屋に運ぶことにした。




【城内・廊下】


大成達は巨大な木の幹が顕になって所々が凹凸になっている廊下を歩いていた。


「大成、どうしたの?何か私に聞きたいことでもあるの?」

「いや、意外だなって思っただけ。ほら、僕がセリーゼを抱き締めた時に栞も怒るかと思ったから」

「あの時は、仕方ないじゃない。セリーゼは大規模な結界を2箇所維持した状態で私達が試合するために異空間も使用して更に試合にも参加したのだから。魔力の消費は相当なものよ」

「なるほど。だから、セリーゼは現れた時から眠たそうだったんだね」

「そうよ、日頃から魔力を大量に消費しているから。ん?どうしたの?何で嬉しそうな表情をしているの?」

「だって、日本にいた時の栞は僕や流星義兄さん以外は死のうがどうなろうと構わないって感じだったからね」

「前の方の私が好きだった?それなら…」

「いや、今の栞の方が僕は好きだよ」

大成は、笑顔を浮かべて答えた。


「そ、そう。なら、良かったわ。その、私も大成が大好きよ」

栞は頬を赤く染めて笑顔を浮かべた。



そして、大成達はセリーゼの部屋の前に辿り着いた。


「ここが、セリーゼの部屋よ。大成、セリーゼを起こして頂戴。セリーゼを起こさないとドアが開かないの」


「いや、それなら大丈夫」


「ん?全ての私室は各個人の魔力じゃないと開かない様にできているの。だから、このドアはセリーゼの魔力じゃないと開かないのよ」


「そうじゃなくって、少し前からセリーゼは起きていたから起こさなくても大丈夫って意味」


「セ・リー・ゼ!起きてたなら自分で歩きなさいよ」

栞は威圧感を醸し出しながらセリーゼを睨みつける。


「てへ!」

セリーゼはウィンクしながら小さな舌を出して悪戯っ子の様な笑みを浮かべた。


「「てへ」じゃないわよ!大成も大成でセリーゼが起きていることに気付いていたのなら自分の足で歩かせなさいよ!」


「ちょっと待って、栞がセリーゼのことを大切に思っていたから」

大成は慌てながら説明をしている間にセリーゼは大成から離れて自分の部屋のドアを開けた。


「運んでくれてありがとう、ター君、シーちゃん。じゃあ、今夜の宴の時に。おやすみ〜」

セリーゼは、笑顔で手を振って逃げる様にドアを閉めた。


「なっ!ちょっと、セリーゼ。それはないよ!」

大成は助けを求めるように閉まったドアに手を伸ばすが、ドアは開く気配がなかった。


「た、い、せ、い。1つ聞くわ、本当はずっとセリーゼを抱き締めていたかったのじゃない?セリーゼは可愛いものねぇ。どうなの?正直に答えて」

栞に呼ばれながら肩を掴まれた大成はビックと体を震わせ、恐る恐る栞に振り返ると笑顔を浮かべた栞の姿がそこにあった。



その夜、首都エレクトは木と一体化した家やベランダ、渡り廊下の吊り橋、木の幹、枝などに魔石と魔石の粉を含んだ導線が巻き付けられており魔力を流すと導線に繋がっている魔石が色鮮やかに発光し、まるで国中がクリスマスツリーの様な大規模なイルミネーションとなっていた。


そんな中、城の中央のベランダの中央に国王であるトルネ、左右に妃のキリサ、王子ギマム、その隣りにセリーゼ、大成達、後ろには【五聖華】のメンバーが立っていた。


トネルは、右手でワイングラスを持ったまま一歩前に出る。


「もう皆は知っているとは思うが、今まで他種族国家との間に問題が続出し、我々は長い間、外との交流を断ったが、此度、我々エルフの国は獣人の国、魔人の国と同盟を結び、可能であれば人間の国とも同盟を結ぶことになった。不安だと思う者達もいるだろうとは思う。しかし、ここにいる獣人、魔人達は信じるに足る者達だと私は確信した。どうか、皆も私を信じて、もう一度だけ他種族国家との同盟を結ぶことに納得して貰いたい」


「「我々は何処までも貴方についていきます」」

広場に集まっている国民達は、その場で片膝をついて敬礼する。


「感謝する!では、我々エルフと獣人、魔人、人間との外交の発展を願い、乾杯!」


「「乾杯!」」

国民達は、ワイングラスや木製のジョッキ、コップを持って上に持ち上げて乾杯の声が国中に響いた。


広場の中央にはキャンプファイアが設置されおり、少し離れた場所で楽器を持って丸太に座ったエルフ達の演奏が始まり音楽が国中に響き渡る。


音楽が流れ始めるとキャンプファイアの周りに人々が集まり2人1組で踊ったり、子供たちが走り回ったり、食事をしたり、肩を組んで歌ったり、笑い合ったりして楽しい時間が始まった。



皆が楽しんでいる中。


「リリー姫殿、今日は存分にエルフの国の宴会を楽しんで下され。そして、もし良ければ、明日は我々と一緒に獣王、魔王がいる場所まで同行するのはどうだろうか?無論、ジャンヌ姫殿達もご一緒で」


「ありがとうございます。ご迷惑ではなければご一緒させて頂きたいと思います」


「了承した。ところで、この中で人間の国に詳しい者は居られるか?」

トネルが尋ねると、ジャンヌ達の視線が大成に集まった。


「そんなに詳しくはありませんが、この中では僕が1番詳しいかと思います。僕で宜しければ」


「助かる。では、食事をしながら話をして貰えないだろうか」


「わかりました」


「「え〜!」」

栞とセリーゼが不満な声を出す。


「まぁまぁ、2人共。同盟を結べば、これからいつでも会えるよ。そうだ、良かったらジャンヌ達を案内して欲しいな。ほら、オススメ料理とか」

「はぁ、仕方ないわね。大成からの頼みなら断れないわ」

「うん、わかった」

「ありがとう、2人共」

「もう…」

「えへへ…」

大成は感謝しながら栞とセリーゼの頭を優しく撫でると栞は恥ずかしくなり俯き、セリーゼは嬉しそうに笑顔を浮かべ2人の顔は赤く染まった。


そんな光景をジャンヌ達は嫉妬した様な表情を浮かべ、そんなジャンヌ達を見ていたルジアダは苦笑いを浮かべた。


そして、栞とセリーゼの案内でジャンヌ達は城の頂上にある栞の部屋のベランダで一緒に食事をすることなった。


ベランダは広く、長いテーブルと椅子があり、テーブルにはメイド達が用意した沢山の様々な料理が並べてあった。


「ここが、私達のお気に入りの場所よ。宴会の時は、セリーゼと一緒にここで食事しているわ。だから、ここで食事をしましょう」

(本当は大成と2人でイルミネーションを見下ろしながら食事をする予定だったのに)


「「綺麗!」」

ジャンヌ、ウルミラ、リリー、ルジアダは、この国で1番高い場所から色鮮やかに街を照らすイルミネーションを見下ろして見惚れる。


「栞さん、セリーゼ様、ありがとうございます。とても見晴らしが良くて、とても綺麗で感動しました」

「「あ、ありがとう」」

「ありがとうございます」

ウルミラは笑顔を浮かべ、ジャンヌとリリーはぶっきらぼうに、ルジアダは深く頭を下げて感謝した。


「そ、そう?ま、まぁ、そこまで喜んで貰えたのなら私達も案内したかいがあったわ」

栞は頬を赤らめて恥ずかしさを誤魔化す様にジャンヌ達から視線を逸らした。


そんな栞の姿を見たジャンヌ達は、お互いの顔を見合わせてクスクスと笑った。


「な、何よ!あなた達!私に喧嘩売ってるの?」


「別に売ってないわ、ただ栞も可愛らしいところがあるのねって思っただけよ」

「もう!知らないわ」

「まぁ、そう言わずに一緒に食べましょう栞。どれが貴女のオススメなの?」

「仕方ないわね、私のオススメは…」

ジャンヌの言葉に栞は更に赤くなった頬を膨らませながらそっぽを向き、リリーは栞に話し掛けて皆で楽しく食事をした。



「どう、リーちゃん。凄く綺麗でしょう?」

セリーゼはベランダの取手に両肘を乗せて笑みを浮かべながら、隣りにいる右手にワイングラスを持って渡りベランダの取手に腰掛けているリーエに話し掛ける。


「ああ、良いものだな」

リーエは、頬を緩ませながらワインを一口だけ飲んだ。


「でしょ!フフフ…リーちゃんに喜んで貰えて良かった」

セリーゼは、嬉しそうに微笑んだ。



皆が楽しんでいる中、トネルとの話が終わった大成は1人で屋台を回りながら気になる料理を見つけたので店主に作り方を教えて貰いメモをとっていた。


「これは、修羅殿」

「ギマムさん。それに、アルメリアさん達もご一緒なのですね」

名前を呼ばれた大成は振り返るとギマムがおり、その周りにはアルメリア達【五聖華】メンバーがいた。


「俺は1人で祭りを楽しむと言ったんだが…。どうしても、アルメリア達がな…」

「そんなの認められる訳にはいきません!ギマム様、もう少しご自身の立場を考えて頂きたい。あなたは、次のこの国の国王となる人ですよ」

ギマムは溜息を零しながらアルメリアを見るが、アルメリアは少し怒った表情で話すと周りにいる同じ【五聖華】メンバーも無言で何度も頷く。


「はぁ…」

「ギマムさんもアルメリアさん達もお互いに大変ですね。あ、そうだ!もし良ければ、僕がギマムさんの護衛を致しましょうか?広場から出ないことを約束します。それに、せっかくの祭ですのでアルメリアさん達も楽しまないと損ですよ」

ギマムは深い溜め息をし、大成は苦笑いを浮かべて提案する。


「しかし、修羅様に護衛を押し付けるような真似は…」

「丁度いい、俺は修羅殿と2人だけで話したいことがあったからな」

アルメリアが少し戸惑うと、ギマムはこの機会を逃してたまるかという感じに畳み掛けるため必死に大成に向けて何度もウィンクをしてアイコンタクトを試みる。


「僕も、ギマムさんとお話があったので気にしないで下さい」

ギマムの意図を察した大成は、苦笑いを浮かべてギマムに助力することにした。


「わかりました。では、申し訳ありませんがギマム様の護衛をよろしくお願いします」

「はい、任されました」

大成が笑顔で返事を返すと【五聖華】達は各自バラバラに離れて立ち去った。


「感謝する、修羅殿!」

「気持ちお察ししますので気にしないで下さい。それよりも、立ち話も何ですから何処かで食事でもしませんか?」

「あ、では、あちらに見える屋根が黄色の露店へ行きましょう。あそこは、エルフ国の伝統料理なのですが美味しいですよ」

「わかりました、行きましょう」

ギマムの案内で大成は露店へと向かった。


辿り着いた露店の前には数多くの木製のテーブルに椅子が用意されていたが、大人気でほぼ満席であった。

大成とギマムは、どうにか空いている席につくことができた。


「大人気ですね」

「そうなんです。ここは、城の専属オーナーシェフが店を開いているです」

そこに、着物姿の女性のエルフの店員が水の入った木製のコップをお盆に乗せてやってきた。


「いらっしゃいませ!これは、ギマム様、それに、修羅様!?当店のご利用ありがとうございます。ご注文は如何します?」

女性店員はギマムと大成だと知り驚いたが、すぐに笑顔を浮かべて周囲に2人が来ていることを知られて大事にならないように小声で話しお茶を出す。


「まずは、エールを2人分、それと、マーゲルボアのステーキセットとサラダを2人分を頼む。せっかく、この国に訪問されているから、是非とも修羅殿にこの国の料理を食べて頂こうと思ってな」


「なるほど、畏まりました。それでは、セットの内容なのですがライスにしますか?パンにしますか?」


「え?ライスがあるのですか?」

「そうです。栞様が魔人の国に旅行した際に米という穀物の稲を購入して持ち帰って下さり、それを増やしています」

「なるほど、では、僕はライス…」

「いえ、ライスよりパンの方がこの料理には合うのですよ。パンで挟んで食べるのが伝統の食べ方なのです」

「じゃあ、パンでお願いします」

女性店員の説明を聞いた大成はパンにすることにした。


「俺もパンだ」

「畏まりました。確認させて頂きます。エール2人分、マーゲルボアのステーキ・パンセット2人分ですね?」

「ああ、合っている。頼んだぞ」

「はい、畏まりました。では、失礼します」

女性店員は頭を下げて立ち去った。


「お先にエール2人分です」

女性店員がお盆にエールの入った木製のジョッキを持ってきた。


「はぁ、やっと、ゆっくりできる」

ギマムは肩を落として溜息を零し、大成は苦笑いを浮かべる。


「とりあえず、まずは」

「はい」

「「乾杯!」」

ギマムは、エールの入った木製のジョッキを持って大成と乾杯した。


「修羅殿は、ご自由みたいで実に羨ましい」

「まぁ、そうですね。僕は修羅と言われてますが、今は魔王でも獣王でもありませんので自由にさせて頂いてます」

「どうすれば、そんなに強くなれたのですか?」

「それは…」

大成は過去の話をして説明した。


「お待たせしました。マーゲルボアのステーキ・パンセットです」

女性店員は押してきたワゴンカートから2人分のナイフ、フォーク、ステーキ、パン、野菜と豆スープ、サラダをテーブルに置いていく。


「ありがとうございます」

「では、ごゆっくりと」

大成は女性店員にお礼を言い、女性店員はお辞儀をして去っていた。


「料理も来たことだし、食事をしながら話をしよう」

「わかりました、頂きます」

大成は手を合わせて言い、ギマムは左右の手を合わせて握り締め神に感謝した。


「ステーキを切ってサラダと一緒にパンに挟んで食べるのだ」


「わかりました。ん、美味しいですね。鶏肉みたいでヘルシーですね。それに、肉がタレだけでなくサラダのドレッシングとマッチして美味しい。パンもモチモチで柔らかくとても合ってます」


「そうだろ!そうだろ!この野菜と豆スープもオススメなのだ。是非、飲んで欲しい」


「丁度いい塩加減で、入っている野菜と豆は口の中で溶けるほど煮詰まっているのに味が透き通っている」


「ワハハ…口に合って良かった!」

ギマムは、自分のことの様に嬉しそうに盛大に笑った。


「ところで話を戻すが、実は俺が修羅殿に試合を挑んで実力を知りたかったのはある理由があったのだ」

「もしかして、神獣イフリートの件ですか?」

「〜っ!?なぜ、それを知っておられる」

「魔人の国にも神獣のマルコシアスがおり、理由(わけ)あって仲良くなりましてイフリートの話をお聞きしましたので」

「なるほど、それなら話は早い」

「少し待って下さい。グリモア・ブック」

大成はグリモアを召喚し、グリモアを操作して上空へと移動させる。


「ファイア・ワーク、これは、僕達からのお礼です。楽しんで下さい」

大成が唱えるとグリモアが輝きだしてグリモアから七色の魔力の弾丸が空高く打ち上げられ上空で破裂し様々な形の色鮮やか花火が何度も打ち上げられる。


「「おお〜!」」

国中の人々は、夜空に打ち上げられた色鮮やかな花火に釘付けになった。




【城内・栞の部屋のベランダ】


区切りなく連続で打ち上げられる色鮮やか花火が夜空を照らした。


「わぁ〜、何これ綺麗!」

初めて花火を見るセリーゼは、目を大きく開き見惚れる。


「花火だと言うみたいだぞ」

リーエはセリーゼに教えながら花火を見ながらワインを一口飲み、口元に笑みを浮かべる。


「えっ!?嘘…花火」

この世界に来てから初めて花火を見た栞は驚愕した。


「大成の仕業ね」

「ですね」

ジャンヌは花火を眺めながら大成だと明かし、ウルミラも花火を眺めながら肯定した。


「綺麗ですね、リリー様」

「ええ、まるで夜空にお花が咲いているみたい」

「リリー様も女の子なのですね」

「それは、どういう意味かしら?ルジアダ」

「さぁ?」

ルジアダはクスクス笑いながら(とぼ)け、リリーは頬を膨らませた。




【広場の露店】


「これで、皆さんは花火に釘付けですね。話の続きをしましょう」

大成は、笑顔を浮かべて椅子に腰掛けた。


「感謝する。では、話というのは俺はあなたの力を身を持って知りたかった。そして、あの試合で修羅殿ならばイフリートの件を解決できると確信した。そこで、俺は修羅殿に依頼してみてはと父上や母上、【五聖華】メンバーに伝えたのだが、父上達は「迷惑をかける訳にはいかない。自分達の国の問題は自分達でどうにか解決するべき」だと言っているのだが、どう考えても自分達の手には負えそうにないのが現実なんだ」

「栞やセリーゼなら解決できると思いますけど?」

「それが、栞様は「暑い場所は行きたくない。だって、汗をかくから嫌」だと仰り、セリーゼ様は「此方が原因だし知り合いとは争いたくない」と仰られて…」


「栞のことは、本当にすみません」


「いや、栞様は異世界人だからな。それに、そもそも俺達に力がないのが原因なのだ。気にする必要はない」

「そう言って頂けると助かります。ところで、先程にギマムさんがセリーゼに頼んだ時に此方が原因って言ってましたが何があったのですか?マルコシアスからは「イフリートが激怒している気配がある。何かあったのだろう」としか聞いていないもので」


「俺の馬鹿兄貴・ソルが、マミューラに認められたいが為に俺達エルフが敬拝しているイフリートを討伐しようとしたんだ。マミューラに認められれば、マミューラと結婚できると本人と約束していたからな」


「ハハハ…流石マミューラ先生だな。こう言ってはなんですが、ソルさんだとイフリートの相手にすらならなかったのでは?謝罪をすれば、イフリートも許して貰えるかと思いますが」


「いえ、それが。修羅殿の言う通り、イフリートの平手打ち1発で馬鹿兄貴は気絶して一瞬で勝負がついた。それは、良かったのだが。しかし、気絶した馬鹿兄貴は目を覚ました後、腹いせにイフリートがとても大切にしていた銅像と銅像に持たせていた武器を魔法で破壊したのだ。それで…」


「あ〜、なるほど…」


「イフリートの戦いから半刻が過ぎ、そのことにイフリートが気付き、馬鹿兄貴のせいで怒り狂ったイフリートがエルフの国に攻めに来たのだ。だが、セリーゼ様の結界のお蔭でイフリートの三日三晩も続いた猛攻を凌ぐことができ、疲れたイフリートは国から離れたところをセリーゼ様が広範囲に結界を貼りイフリートを閉じ込めている状況なんだ。頼み事とはイフリートの討伐ではなく、謝罪をして許して頂きたい。そこで、情けない話だが俺達の護衛をして貰おうと思っておるのだ」


「申し訳ありませんが、その件は考えさせて下さい」

(国を襲うほど激怒したのだから、謝罪だけでイフリートが許すはずがない。何か許してくれる様な代案が思いつくまでは)


「承知した。それに、先に同盟が最優先だからな」


「そうですね」

大成とギマムは、楽しそうにお互いの出来事を語り合った。

次回、同盟の話です。

もし宜しければ、次回もご覧下さい。

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