リーエVS【五聖華】と疾風双牙
ジャンヌ、ウルミラVSマミューラの試合はジャンヌとウルミラが勝利を治め、次の試合リーエVS【五聖華】達の試合が始まる。
【エルフの国・首都エレクト・異空間】
「私達の番ね、話し合った通りに行くわよ」
「「了解です!」」
【五聖華】のリーダーであるアルメリアの掛け声に返事を返しながら中央へと向かう【五聖華】達。
「それでは、これよりリーエ様VS【五聖華】の試合を行う。試合開始!」
トネルの試合開始の合図で、【五聖華】達はリーエを囲む様にバラバラに離れていく。
「アロー・レイン」
左手で弓を持っていたモデルの様な顔の整った男ケイは走りながら、左手で矢を射る格好をすると大きな魔力の矢が出現してリーエの頭上に向かって射る。
放たれた大きな矢は、リーエの頭上で破裂して無数の矢に分裂し雨の様に降り注ぐ。
「フン」
リーエは右腕を挙げながら外側から内側に振って魔力波を放ち、降り注ぐ無数の魔力の矢を遮断した。
「だったら!エア・トルネード」
ケイは、右手で背中に背負っている矢の筒から矢を3本取って纏めて射る。
放たれた3本の矢は風魔法で風を纏っており、それぞれ規則的に高速回転してぶつかることなく、まるで1つの大きな弾丸の様になってリーエに襲い掛かる。
「ほぅ、貫通力を高めたか。だが…」
感心するリーエは再び右腕を横に振って魔力波を放つと、風を纏い大きな弾丸の様になった3本の矢は一瞬で風が霧散して矢の高速回転と速度も止まりその場に落ちた。
「嘘だろ、ただの魔力波で止められるなんて…うっ…」
リーエの魔力波は驚愕しているケイにも襲い掛かり、ケイは後ろに倒れて尻餅をつき自分とリーエの実力差を身に沁みて戦意喪失した。
「サイクロン・トルネード・サンダー・ストーム!」
ケイが時間を稼いでくれた間にミルナは魔力を高めており、右手に握った杖を上に掲げて風魔法禁術サイクロン・トルネード・サンダー・ストームを唱える。
突然、リーエの足元から大きな魔法陣が展開され中心は緑色、外側は黄色に輝き、それが、混じ合い全体が黄緑色に輝くと巨大な竜巻を発生した。
巨大な竜巻は、高速回転しており空気摩擦で電撃を迸る。
「フム、威力もタイミングも申し分ないな。シャドウ・ウィップ」
巨大な竜巻の中からリーエの声が聞こえた瞬間、巨大な竜巻の全体に無数の黒い線の様な影が入ったと思った瞬間に巨大な竜巻は霧散した。
右手に黒い鞭を持ったリーエが現れた。
リーエは全身切り傷を負っていたが、すぐに傷が癒えていき完全に回復した。
「なんて回復力、それにただの初級魔法で召喚した鞭なのに、禁術を破壊するなんて信じられない威力だわ…」
ミルナもケイと同様に戦意喪失して呆然と立ち尽くした。
「だが、その華奢な肉体では俺のモーニングスターを防ぐことはできまい!オラッ!」
エルフなのに岩男の様な体格のバーグは、モーニングスターを両手で握って全魔力を込めるとモーニングスターは緑色に輝き全力で振り下ろす。
「ほぅ、ローケンスやドルシャーには及ばないが、まぁ、威力は合格点だな」
リーエは左手で受け止めたが、足元の地面は抉れヒビが入った。
「な、何だと!?」
「別に驚くことはないだろ?身体強化をしているからな」
「エア・ドラゴン」
ケイは、矢に風大魔法エア・ドラゴンを上乗せさせて射る。
リーエは教えると同時に、風の龍が左側から迫ってきたのでモーニングスターを握っている左手を大きく左に振って勢いよく風の龍に投げ飛ばす。
「うぁ」
風の龍に飲み込まれ両腕をクロスにして矢の直撃は防いだが矢は鎧を貫通して腕に刺さり他の部位の鎧は風の威力で粉々になり風の龍を粉砕した。
「へぇ、あの攻撃を受けて立ち上がるのか。耐久力も合格点だ」
リーエは、左手を顎に当てて関心しながら倒れて起き上がろうとしているバーグを見る。
その隙にアルメリアがリーエの右側から接近してきたので、リーエは鞭で攻撃をしたがアルメリアの左腕に装備している盾で弾かれ防がれた。
だが、リーエは右手首を動かして弾かれた鞭の軌道を変えてアルメリアの左足首に巻き付かせ、リーエは鞭を引っ張ってアルメリアを振り回して自分の背後に投げ飛ばそうとする。
「キャッ」
アルメリアは、すぐに鞭が巻き付いている左足のブーツを脱ぎ捨てて脱出して空中で回転して着地した。
アルメリアは、そのまま正面からリーエに接近する。
リーエは鞭を高速に動かして対応するが、アルメリアは左右に動いて鞭を躱したり剣と盾で弾いたりして近付くにつれて切り傷は増えていくが怯まず確実に接近してくる。
「見事な身のこなしと反射神経だな。弾いた鞭の軌道もよく見ている。それに、相手が私レベルの者以外だったら誘導されて負けていたな。シャドウ・ドール」
リーエは楽しそうに笑いながらシャドウ目標にドールを唱えると、リーエの背後にある自分の影が実体化すると同時に複数のクナイが飛んできたがリーエの影は右手を前に出して魔力波を放ち飛んできた複数のクナイ全てを弾き飛ばした。
気配を消してクナイと投擲したのは目元と前後の髪の毛以外黒尽くめ姿の女アサシンのジュラだった。
ジュラは、そのまま接近しながら今度は持っているクナイに風魔法を纏わせて何本も投擲する。
風魔法を纏ったクナイは、風を切るほど鋭く加速する。
だが、再び、リーエの影の魔力波で防がれたが、ジュラはジャンプして魔力波を避けて左右の手にクナイを持ってリーエの影に襲い掛かった。
しかし、リーエの影が消えた様に見失った瞬間、リーエの影は上空にいるジュラの背後に移動しており右足を振り上げて踵落としをする。
ギリギリで気付いたジュラは、体を捻って反転してリーエの影に振り向いて両腕をクロスにして防いだが勢いよく地面に叩きつけられた。
「ジュラ!この!」
激怒したアルメリアは強引にリーエの鞭を弾きながら接近して右手の剣を振り下ろすが、途中でリーエに右手首を掴まれたと思ったら合気道で体が縦回転して気が付いたらアルメリアは地面に倒れていた。
「まだです!エア・ショット」
アルメリアは、左手をリーエに向けて圧縮空気弾を放つ。
リーエは頭を傾けて避けながらアルメリアを投げ飛ばした。
「大丈夫ですか?リーダー」
投げ飛ばされたアルメリアの所に【五聖華】達が集まった。
「丁度いい、坊やが考えた戦法を試してみるか」
「な、何をするつもりなの?」
「デス・メテオ・ヘル」
リーエは、右手を挙げて闇魔法禁術デス・メテオ・ヘルを唱えた。
リーエの掌に闇が物凄い勢いで収束していき、直径30mぐらいの巨大な漆黒の球体ができ、その球体の周りに稲妻がバチバチと迸る。
「嘘だろ…。」
「なんて…膨大な魔力…。」
「レベルが違い過ぎる…。」
「これほどとは…。」
「何をしている!早く、退避しろ!各自、バラバラに散れ!」
呆然と立ち尽くす【五聖華】のメンバーに、リーダーであるアルメリアは大声を出して正気に戻そうとする。
アルメリアの声によって正気に戻った【五聖華】達は、バラバラになって離れようとした。
「それは、残念だが阻止させて貰うぞ。シャドウ・ゲート」
リーエは不敵な笑みを浮かべてシャドウ・ゲートを唱えると、【五聖華】達の足元にある自身の影が円形状に大きくなり足元から吸い込まれいく。
【五聖華】達は、藻掻くが全身が吸い込まれた。
そして、影に飲まれた【五聖華】達は、リーエの正面の地面に現れた。
「ブラック・ジャック・ナイフ」
上空にいるリーエは、左手を斜め下にいる【五聖華】達に向けて闇魔法禁術ブラック・ジャック・ナイフを唱え漆黒のナイフを数十本召喚して放った。
突然のことに理解が追いついていなかった【五聖華】達は、反応が遅れたが武器で漆黒のナイフを弾いて防いだ。
「ほぅ、あれだけの攻撃を防ぐことができるのか。【五聖華】と言われるだけのことはあるな。だが、動けないだろ?そして、これは避けることができまい」
リーエは、不敵な笑みを浮かべて右手にある巨大な漆黒の球体デス・メテオ・ヘルを【五聖華】達に向けて放った。
「う、動かない!」
「俺もだ!指1本も」
【五聖華】達は、全く体が動かず慌てる。
【五聖華】達の影にリーエが放った漆黒のナイフが刺さっており、漆黒のナイフの効果で身動きができないでいた。
そこに、巨大な漆黒の球体が目の前まで迫って来る。
「リーエ!!」
「わかっているさ、坊や」
大成の大きな声が響くとリーエは返事をして指を鳴らす。
そうすると、巨大な漆黒の球体と漆黒のナイフは消滅した。
【五聖華】達はホッとしたが動悸が激しくなっており、凄い冷や汗を流しながら体が震えていた。
「勝者、リーエ様」
トネルの宣言により、試合が終わった。
「トネル様、申し訳ありません。途中で魔法を中断して貰うなどの施しを受ける情けない戦いをしてしまい…。」
アルメリアは、自分達の力不足の悔しさと情けなさで体を震わせながら謝罪をした。
「そんなことはないぞ、リーエ様を相手によくやったと私は思う」
トネルは、アルメリアの肩にそっと手を置いて頬を緩ませて話す。
「あ、有難き御言葉、我々は更に強くなることをお約束します」
「わかった。お前達の成長を楽しみにしているぞ」
「「ハッ!」」
【五聖華】達は、その場で地面に片膝をついて一斉に敬礼する。
【五聖華】達の目元から涙が溢れていた。
「ところで、トネル様。我々【五聖華】一同は今回の同盟に賛同を致します」
アルメリアは報告した。
「私も平等な同盟を組むに値すると思うが、キリサ、ギマムはどうだ?」
「私はソルのことはまだ完全には許せませんが、同盟には賛成です。ギマム、あなたはどうです?」
「俺は母上と違い、兄貴のことは自業自得だと思っている。だが、兄貴を殺したそいつは殆ど実力を出してないと感じた。それが、気に食わない。父上!俺自身で、そいつの実力を確かめないと気が済まないから試合させて頂けないでしょうか?」
ギマムは、大成を指さす。
ギマムが大成をそいつ扱いしたことにジャンヌ、ウルミラ、リーエ、リリーはムッと怒り、セリーゼは頬を膨らませ、栞は殺気を放つほど激怒した。
「〜っ。す、すまない、お前と呼んでしまったことに謝罪をする。どうか許して頂きたい、魔王修羅殿」
栞の殺気にギマムは背筋がゾッとし息を呑んで、すぐに謝罪をした。
「謝罪を受け入れますので、顔を上げて下さい」
大成は苦笑いを浮かべ、栞はまだ不満顔だったが殺気は消えていた。
「あの、それならソル様の婚約者だった私も戦いたいです」
「「私達も」」
アルメリアは恐る恐る手を挙げて意見を述べるとミルナ、ジュラも賛同する。
「修羅殿」
トネルは、申し訳ない表情で大成に視線を向けた。
「わかりました。流石に僕の切り札はお見せできませんが、全力でいかせて頂きます」
「「ありがとうございます!」」
ギマムとアルメリア、ミルナ、ジュラの4人は頭を下げた。
そして、大成達は中央に移動した。
「改めて試合を受けて頂き感謝する、魔王修羅殿」
ギマムは、エルフの国の秘宝の1つである疾風爪牙という鉤爪を左右の手に装備していた。
「最初に言っておきます、始めから武器を構えて身体強化をして油断せずに集中していて下さい」
大成は、鋭い眼光で忠告した。
「わかった」
「「わかりました」」
ギマム達は、馬鹿にされているのではないと雰囲気で察して武器を構える。
ギマムは左右の手に装備している疾風双牙に魔力を込めると鉤爪に風が纏い、地面に向かって右手を振るうと直接触れていないのに地面が深く切り裂かれた。
「よし、調子は悪くないな」
ギマムは、構えを取る。
【観客側】
「どんな切れ味しているのよ、あの武器」
ジャンヌは、ギマムの疾風爪の威力を見て呟いた。
「あれは、エルフの国の秘宝だよ。確か、疾風爪牙だったかな?リーちゃん、そうだったよね?」
「私に聞くな。お前も知っているだろ?魔法なら兎も角、私は武器に興味がないんだ」
「そうだった、ごめんね。シーちゃん、合ってる?」
「合っているわよ、セリーゼ。私も能力で作れるわよ。ほら」
栞は、自分の右手にギマムと同じ形をした疾風爪牙を尽くし出した。
「あなた、武器なら何でも作れるのね」
リリーは、溜息をつく。
「そうね、実際に見たものなら空想の武器よりも作りやすいわね」
「そうなのですね、それにしても凄い能力ですね。あの、ところで疾風爪牙っていう武器はどんな能力が備わっているのですか?」
ウルミラは栞を褒めながら尋ねる。
「魔力を込めれば込めるほど切れ味と距離が増す能力よ。わかりやすく言えば、切れ味の良い鎌鼬といった方が正しいわね。あと、武器が所有者を決めるわね。相応しくない者が使おうとすると、体を千切りにされるみたいよ」
「なんて恐ろしい武器なのですか。威力もそうですが、千切りにされるなんて」
ルジアダは息を呑む。
「確かに威力は目を見張る武器であるけど、大成が相手だとギマムじゃあ完全に役不足ね」
「そうだね、シーちゃんの言う通り。この試合、一瞬で終わる予感がする」
セリーゼの言葉に誰も反論する者はいなかった。
【中央】
「それでは、試合開始!」
トネルが試合開始の合図をした瞬間、誰もが大成の姿は消えたと思ったらギマム達の後ろに移動していた。
ジャンヌ達が消えた様に見えた大成の姿を見つけると、ワンテンポ遅れて武器を持って構えたままの姿勢のギマム達が一斉にその場に崩れ落ちた。
【中央】
ジャンヌ達は何が起こったのか全く見えず、驚きを通り越してただ呆然と立ち尽くして言葉を失っていた。
「なぁ、セリーゼ。坊やの動きが見えたか?」
「ううん、ター君の動きどころか姿が消えたように見えた。リーちゃんは?」
いつも眠たそうなセリーゼだが、大成の強さを間近で見てその瞳は大きく開かれていた。
「私もお前と同じだ。全く、見えなかった」
リーエとセリーゼは手に冷や汗を流しており、2人の背後にいたマミューラは震えながら自然と笑みが溢れた。
「フフフ…流石、私の大成だわ」
誰もが驚愕している中、栞だけは嬉しそうな面持ちでうっとりと熱い視線で大成を見て頬を赤く染めていた。
次回、同盟です。
もし宜しければ次回もご覧下さい。