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エルフの国・首都エレクトと実力の確認

エルフの国に足を踏み込んだ大成達は、遭遇した栞にエルフの国を案内して貰えることになった。

【エルフの森】


薄暗い洞窟内にいた大成達は、目の前に光が射し込む出口が見えてきた。


「ほら!出口よ!」

先頭を歩いていた栞が教えて洞窟の出口へと向かい、大成達も後に続いて洞窟から出た。


ジャンヌ達は日差しが眩しかったので、片手を挙げて日差しをカットする。


「凄いな!」

大成達が出た洞窟の場所は山の高い位置にあり、大成達はエルフの国を一望して感嘆した。


大成達の目の前には大きな巨木と一体化した城があり、その城の手前には畑で親子だと思われる大人と子供達が一緒に楽しそうに畑仕事をしていた。


そして、畑の奥は城と同じく大きな木と一体化した家があちらこちらにあり、木造のベランダで洗濯物を干したりジョロで花に水をやっていたりベランダ越しに近所の人と楽しそうに会話をしてる光景が目に入った。


「「お待ちしておりました」」

大成達を待っていた警備役のエルフの男女は、洞窟の出口に待機しており会釈する。


「あなた達、わざわざ待っていなくっても良かったのに」


「いえ、栞様は国の秘宝よりも大切なお方ですので」


「栞様のためなら、私達はこの命を捧げるつもりです!」


「はぁ、あなた達が居なくなったら悲しむ人がいるから自分の命は大切にしなさい」


「「勿体なき、お言葉っ!」」


「ごめんね、大成。話が逸れてしまって。改めて、ようこそエルフの国・首都エレクトへ。あなた達を歓迎します」

栞は大成達に振り返り、左右の手で左右のスカートの縁を掴んで丁寧にお辞儀をした。


「ありがとう、栞。助かるよ」


「フフフ…。大成のためだもの。まぁ、皆から歓迎されているかはわからないのだけどね。でも、大丈夫。大成は私が守るから心配しないで」


「栞、大成だけなの?」

ジャンヌは、ジト目で栞を見る。


「当たり前でしょう?私は、別にあなた達に興味がないもの」

栞は、大成の隣に移動してジャンヌを挑発するような表情で大成の腕に身を寄せる。


「ちょっと、案内してくれたことには感謝するけど、大成にベタベタし過ぎよ!離れなさい!」

ジャンヌとリリーは、眉間にシワを寄せて殺気を放ちながら栞を睨む。


警備役のエルフの男女はジャンヌとリリーの威圧感を前にして怯えながらも栞を守ろうとして間に入ろうとしたが、栞が右手を横に出して止めた。


「フフフ…。あなた達、何をカッカしているの?別に良いじゃない。将来、大成は私の夫になるんだから」


「へ、へぇ〜!私の聞き間違いだったかな?もう一度、聞きたいのだけど?誰が誰の…」

リリーとジャンヌは、笑顔を浮かべていたが目が笑っていなかった。


「お、落ち着いて下さい、リリーさん、姫様。お願いしますから!」


「そうです、リリー様」

ウルミラとルジアダは、慌てて2人を宥める。


「栞、お取り込み中に悪いんだけど、そろそろ城へ案内してくれないかな?」

大成は、話が先に進まないと思い案内を頼んだ。


「わかったわ、大成」

栞は、大成の腕を組んだまま歩き出した。

ジャンヌとリリーは栞を睨み、ウルミラは少し羨ましそうな表情をしルジアダはジャンヌ達を見てため息をして栞の後を追った。



【エルフの国・首都エレクト・畑】


「あ、栞様だ!」


「「おお!栞様〜!」」

畑仕事の手伝いをしていた女の子が栞に気付いて声をあげると、畑仕事をしている大人や子供が一斉に栞に駆けつける。


「栞様、お疲れ様です!これ、見て下さい!今年も、こんなに大きいのが取れました!」

最初に栞に気が付いた女の子リンは笑顔で頭を下げた後、嬉しそうにウリみたいな大きな野菜を小さな両手で持って前に出して栞に見せた。


「本当に大きいわね。今年も豊作で良かったわ。これも、リン達、皆が一生懸命に頑張って育てているから、毎年、こんな立派な作物が沢山収穫できて食糧不足にならずに安心して暮らしていけているわ。とても感謝している。ありがとうね」

栞は、笑顔でリンの頭を優しく撫でる。


「えへへ…。栞様に褒められちゃったし、撫でてもらえた!」


「「良いな〜!」」

子供達が、羨ましそうにリンに集まっていく。


「良かったな、リン。ところで、栞様。もしかして、その方達が先程、連絡があったお客人ですか?」


「ええ、この人が私の夫になる人よ!」


「「おぉ!」」

皆は、一斉に驚きの声をあげながら大成を見る。


「「だ・か・ら〜!」」


「リリー様、ジャンヌ様。ここは…。」


「「……。」」

ルジアダの制止の言葉で、冷静になったジャンヌとリリーは周りから注目されていることを知り、住民達を恐がらせない様に押し黙った。


そんなやり取りを見た周囲は、意味がわからず首を傾げる。


「栞、そろそろ案内を良いかな?トネル国王を待たせるのは申し訳ないから」


「そうね。じゃあ、私は大成達を城まで案内してくるわ。皆は、頑張り過ぎないように気を付けてね。あと、ちゃんと休憩は取るようにね!」


「「はい、わかりました。いってらっしゃい、栞様!」」

子供達は元気よく声を出し、大人は無言で頭を下げた。


子供達は、栞達が見えなくなるまで手を振って見送った。




【エルフの国・エレクト国・エレクト城】


栞が先頭で誘導し、その後ろを大成達が続き最後尾に警備役のエルフ男女が歩き町中を通り過ぎると城の門に辿り着いた。


洞窟の出口から見た通り、ユートピア城は巨大な巨木と一体化していたが、大樹の大きさからして何百年、もしくは千年を超えているだろうと推測されるほど巨大であった。


しかし、そんな大樹だが間近で見ると老木だと思わせないほど生命力と魔力が漲っており、大樹を前にした大成達は圧倒されて言葉を失って釘付けになっていた。



「どうしたの?立ち止まって。こっちよ」

なぜ大成達が立ち止まっているのか栞は理解できず、頭を傾げながら案内する。


城の中はというと、廊下はなだらかな坂道で螺旋状になっており、床や壁、天井の所々が樹木が顕になっていて壁際には一定の間隔の距離を取って両サイドに戦士達が立っていた。


戦士達は、大成達との距離が近くなると順番に会釈する。


「エルフの国は、いつも廊下に戦士の皆が待機しているんだね」


「違うわ、大成。今回みたいに来客が来る時だけよ。いつもは、狩りや武器の手入れ、訓練などしているわ」


「そうなんだ。じゃあ、栞はいつもは何をしているんだい?」


「私は、暇な時は畑仕事を手伝っているわ。訓練は、特殊部隊の頃と同じよ。でも、大成やお兄様が居ないから私の練習相手として努まる人がいないから物足りない感じがしているわね。そういう大成は、どうせ昔と同じで特殊部隊の頃みたいに軍の訓練メニューをした後に自主トレを欠かさずにしているのでしょう。どう、当たってる?」


「ハハハ…まぁね」


「フフフ…。やっぱり、大成は何も変わっていないのね。何だか嬉しいわ。ちょうど、着いたわよ」

栞は右手の裾で口元を隠してクスクスと笑い、大きな扉の前に辿り着いた。


「「栞様、お待ちしておりました」」

扉の前には、エルフの戦士が左右に立っており会釈する。


「栞です。獣人国の姫方をお連れ致しました」

栞は、ノックをして大声を出して報告した。


「入ってよいぞ」

トネル国王の返事で扉の前にいる戦士達は、扉を開けた。




【エルフの国・エレクト城・玉座の間】


玉座の間も廊下と同じく床や壁、天井は樹木が顕になっており、天井に至っては太陽の日射しが射し込み奥で椅子に座っているトネル国王と妃のキリサ、次男のギマムを照らしていた。


トネル達の後ろには、【五聖華】といわれる国王直属護衛騎士団が待機しており大成達を警戒する。


腰に剣、左腕には盾を装着したエルフの女戦士アルメリアと背中に弓と矢筒を背負っているエルフの男戦士ケイ、杖を持っているエルフの女魔道士ミルナ、モーニングスター(大きな棘の付いた棍棒)を肩に背負っている岩男の様なエルフの男戦士バーグ、全身が黒尽くめの格好で目元と金色の長い髪しか露出していない女性アサシンのジュラ。


五聖華が放っている威圧感により、玉座の間の空気はピリピリと張り詰めていた。


ウルミラはオドオドしていたが、大成達は何も気にせずに平然と玉座の間に足を踏み込み歩を進める。


大成は、すぐに右側の壁の方を見ると腕を組み嬉しそうに少しだけ口元を緩めているマミューラがいた。


「よっ!久しぶりだな、お前達」

まだマミューラに気付いていなかったジャンヌとウルミラは、右側の壁から知っている声がしたので振り向いて見る。


「「マ、マミューラ先生!?」」

ジャンヌとウルミラは、思わず声をあげた。


「大和、元気になったみたいだな良かったな。あの時は、皆が心配していたぞ。ククク…特にジャンヌやウルミラの取り乱…」

思い出したマミューラは、口元に手を当てて笑いながら大成達の方へと歩み寄る。


「「マミューラ先生!」」

ジャンヌとウルミラは顔を真っ赤にしてマミューラの話を遮った。


「「あ、すみません」」

我に返ったジャンヌとウルミラは、すぐに騒いだことを謝罪をする。


五聖華は、騒いだジャンヌとウルミラよりも大成を見て驚いていた。


「何故、男がここまで辿り着いているの?どうやって、セリーゼ様の結界を通過したというの?」

アルメリアは、大成を睨んだまま訝しげに呟く。


「これは、どういうことですか?セリーゼ様」

バーグは、その場で大声で尋ねと入口の扉の前に霧が集まり霧の中から女の子の影が浮かびあがる。


そして、霧が霧散すると左手に抱き枕を持ったピンク色の寝間着姿の眠そうな目をした少女セリーゼが立っていた。


セリーゼは、ジャンヌ達と同じ年齢ぐらいで髪は背中まで伸びておりウェーブの掛かった緑色の髪で瞳の色も髪と同じ緑色で眠たそうに右手で目元を擦る。


栞を除く、トネル達エルフ全員が床に片膝をつけてセリーゼに敬礼した。


「ふあぁぁ…。」

セリーゼは、右手を口元に当てて可愛らしい小さな欠伸をする。


「あれ?本当だ…。可笑しい…。私は女の子しか入れた覚えがないのだけど?」

セリーゼはゆっくりと大成達に振り向き、大成を見て小さく頭を傾げる。


あどけない様に見えるセリーゼだったが、セリーゼが纏っている濃厚な魔力を肌で感じたジャンヌ達は背筋がゾクッとし悪寒と緊張が走った。


「大丈夫」

大成は、手を隣りにいるジャンヌの肩にそっと置いて庇うように一歩だけ前に出た。


「……。」

セリーゼはゆっくりとペタペタと大成に近づいていき、間近で眠たそうな瞳で大成をジッと見つめる。

セリーゼの緑色の瞳がシャボン玉の様なレインボーな色に変わった。


「あの、僕に何か?」

(瞳の色が変わったな。邪眼とかかな?)

セリーゼの瞳の変化に気付いた大成は、警戒を強めながら尋ねる。


「なるほど…。うん、決めた…。ねぇ、君、私のお婿さんになって欲しいの」

セリーゼの瞳は元の緑色に戻り、優しく微笑みながら大成に手を差し伸べた。


「え、あの、はい…?」

セリーゼが何をしてくるのか警戒をしていた大成だったが、あまりにも予想外なことに何を言われたのか理解できずに困惑する。


「「え〜!?」」

ジャンヌ達だけでなく、玉座の間にいる全員が驚きの声をあげる。


「セリーゼ、私、あなたに前から伝えていたわよね。大成は将来、私の夫になると」

栞は殺気は出していなかったが目が居座っており、場の空気が張り詰めて冷たく重く感じるほどの濃密な威圧感を放つ。


大成を除く全員が栞の威圧感にたじろいだが、セリーゼは特に気にした様子もなく今もウトウトしており眠たそうにしていた。


「シーちゃん、何でそんなに怒っているの?」


「怒るのは、当然じゃない!さっき、理由を言ったでしょう!」


「うん、聞いたよ。ところで、君は大成って言うんだね。じゃあ、これからは君のことはター君って呼ぶからター君も私のことはセリーゼって呼び捨てしても良いし、セリーでも良いよ。できれば、セリーって呼んで欲しいかな。あと、先に言うけど年齢を聞くのと敬語は断固禁止だから…」


「はぁ、わかったよ…。」

大成は、話がついていけずにいた。


「あ・の・ね、セリーゼ。人の話を…。」

栞は、笑顔を浮かべていたが目が笑っていなかった。


「シーちゃん、確認するけど、ター君は男の子だよね?」


「見ればわかるでしょう!私は同性愛に趣味はないわ!それが何か関係があるの?!」

栞は、こめかみに青筋を立てて聞き返す。


「じゃあ、問題ないよね?だって、男の子は種を産み付ける方だから」


「いやいや間違ってないけど、ある意味、問題あるだろ!言語的にも!」

少し落ち着いた大成は、速攻で手を振って否定する。


「まぁ、生々しいけど…。そう言われてみたら、そうね…。独り占めはしたいけど、影でコソコソと浮気されるよりかは…。」

栞は考え込み、ジャンヌ達は恥ずかしくなり頬を赤く染めて視線を逸した。


「私は、それでも良いと思うけど?シーちゃんはどう?」


「はぁ、仕方ないわね。それでも構わないわ」

大成は複雑な表情になっていたが、大成と栞以外はこの世界の常識なので誰も反対する者はいなかった。


「ところで、いつまでそこのお嬢ちゃんの影に潜んでいるの?リーちゃん」


「「〜っ!?」」

セリーゼが言うとジャンヌの影が大きくなり、影からリーエが現れた。


「何だ、やはりバレていたか…。上手く、結界を通り抜けられたからバレていないと思ったのだがな。まぁ、セリーゼと同じく坊やは最初から気付いていたみたいだが。久しいな、セリーゼ」


「これはこれは、リーエ様」

トネル達は、驚きながらもリーエに対しても敬礼する。


「ん〜」

セリーゼは、リーエと大成を交互見ながら頭を傾げる。


「何だ?セリーゼ。相変わらず何を考えているかわからん奴だな」


「もしかして、リーちゃんもター君のことが好き?」

セリーゼは、頭を傾げながら尋ねる。


「なっ!?な、な、な、と、突然、何を言い出すんだ!セリーゼ。そ、そんなことはないぞ!坊やの前で、そんなこと言ったら坊やが勘違いするだろ!もしかして、まさか、勝手に私の…。」


「フフフ…。別に能力を使った訳じゃないよ。適当に言っただけ。でも、当たった。フフフ…相変わらずリーちゃんってわかりやすくって可愛い」


「な、な、何を勝手に勘違いしているんだ!」

見たことがない顔を真っ赤にしたリーエの慌てぶりに、トネル達は呆然と立ち尽くしていた。


「あの、セリーゼ様。申し訳ないのですが、先程の件なのですが…。」

アルメリアは、敬礼した状態で尋ねる。


「さっきも言ったと思うけど、私はター君を通した覚えがないの。ター君は、どうやって結界を…。あ、まさか…。」

セリーゼは、結界を通した人数と顔を思い出して大成が女装していたことに気付いて驚いた表情で大成に振り向いた。


「どうかされましたか?セリーゼ様」

トネルは、訝しげな面持ちで尋ねる。


「ククク…。気付いたようだな、セリーゼ。」


「え!?嘘…。まさか、本当に…。だって、あの子はどう見ても…。」


「あの、リーエ様。私達にも分かるように説明して頂きたいのですが」


「ククク…簡単なことだぞ、トネル。ただ、坊やが女装をしていただけだ」


「「はぁ!?」」

トネル達は、信じられない表情で声をあげて大成を見る。


「大成、誰も信じていないみたいだから、また女装して見せたら?今度は私の服を貸してあげるわよ。ほら、せっかくだから久しぶりによく潜入捜査任務の時にした双子の姉妹に変装しない?」


「いやいや、わざわざ女装しなくっても良いと思うけど」


「坊や、忘れたか?せっかく、私が協力したんだ。1回切りで終わりはないだろ?なぁ、坊や」


「〜っ!はぁ、わかったよ」

リーエの威圧に押されて、大成は項垂れて渋々承諾するしかなかった。


「決まりね!私の部屋で着替えたら良いわ。大成、こっちよ」

栞は、嬉しそうに落ち込んでいる大成の手を取り玉座の間から退出した。


「ゴホン、いろいろと困惑した事態になり話が逸れてしまったな。一応、察しはつくが念のために尋ねよう。何用でエレクト国まで訪れたのだ?獣人国の姫よ」


「これを、どうかお受け取り下さい。我が父・獣王レオラルドからの書状です」


「アルメリア」


「ハッ!」

トネルから名前を呼ばれたアルメリアは、リリーの書状を受け取ってトネルに渡した。


「フム、やはり此度の件の謝罪と同盟の話だったな。だが、お互いに干渉しないと決めた中立地帯にオルセー国という国家を建国した上にそのまま放置し、そちらの獣王の弟であるアレックスが時折、此方にちょっかいを出したにも事実。それにも関わらず、ただ謝罪と迷惑を掛けた非礼としての物資だけで我々と友好を求めるのは些か気に食わないな。しかも、こちらは息子のソルも失ったのだ」

トネルの判断に、アルメリア達も無言で頷いて賛同する。


「〜っ!」

リリーは、反論できず歯を食いしばるしかできなかった。


「そうだな、もし我らエルフの国と友好を築きたいのならば獣人国の姫よ。そなたか魔人国の姫が我が息子のギマムの嫁として来るという条件を呑むのであれば認めようじゃないか」


「父上!流石に…。」


「お前は黙っておれ!ギマム」


「何故、私が話に出てきたのかは理解できませんが丁重にお断りさせて頂きます」


「……。」

ジャンヌは怒り気味にキッパリと断ったが、リリーは目を瞑り考える。

(これも、国のため…。私1人が我慢すれば…良いだけのこと…でも…彗星。駄目よ、私は姫なんだから…)

リリーは無理やり自分に言い聞かせながら国民達を思い出して決心したが、最後に大成の顔が浮かんで涙が溢れそうになり口元が歪む。


そして、リリーは目を開いて答えようとした時、玉座の魔の扉が勢いよく開いた。


「その話、大変、申し訳ないのですが、ジャンヌやリリー達は僕の妻になる予定ですので丁重にお断りします」

栞が2人いると錯覚するほど、栞の姿に変装した大成が扉を開いて答えた。


大成の隣にいる栞は、不満な面持ちで右手で頭を押さえて溜息を零した。


「大成!」


「大成さん!」

嬉しそうな声で大成を呼ぶジャンヌとウルミラ。


「彗星!ありがとう…。」

リリーは嬉しさにのあまり涙が溢れ、ルジアダとウルミラはそっとリリーの背中を撫でる。


「良かったですね、リリー様」


「うん…。」


「ククク…。」

満足のいく結果にリーエは、クスクスと笑った。


「他人事だと思っているみたいだけど、ちなみにリーエもだよ」

大成は、悪戯な面持ちでリーエに声を掛けた。


「なっ、な、な、わ、私は…。ど、どうしても、坊やが私と結婚がしたいと言うであれば考えてやっても良い…ぞ…」

笑っていたリーエだったが不意打ちを貰い表情は一変し、顔が真っ赤に染まり狼狽えながら不安な面持ちで大成に尋ねる。


「じゃあ、どうしても」


「〜っ!げ、言質はしっかと取ったからな!責任持って私達を養って幸せにしろよ、坊や」

顔が真っ赤なリーエは、恥ずかしさを誤魔化す様に大きな声を出しながら人差し指で大成を指差す。


「僕に、お任せを!お姫様方」

大成は、大げさに左手を胸に当て右手は腰に回してお辞儀をする。


リーエは顔を真っ赤に染めて狼狽え、ジャンヌ達は頬を赤く染めて嬉しそうに笑みを浮かべた。


「ククク…。あのリーエ様が、こうも狼狽えるとはな」

マミューラはクスクスと笑い、再びトネル達は驚きの表情を浮かべたまま思考が停止していた。


「ゴホン、ならば…。」


「トネル、みっともない。別に良いと思う。この際、獣人国だけでなく魔人国とも友好関係を築いても。そもそも、ソルがター君を討伐しようとして返り討ちにあっただけ。討伐しようとした時点で、死ぬ覚悟もできていたはず。この世界は、弱ければ死に強ければ生きる弱肉強食の世界」


「セリーゼ様、ですが…。」


「ですがって、何?トネル達だって、ソルを止めなかった責任もある。止めていればソルは死ななかったと思う。何か間違っている?」


「〜っ、いえ、間違っていません。わかりました」


「うん、なら決まり。ただし、その代わりにター君は私とシーちゃんとも結婚する。それで、良い?」


「それなら、私も賛成するわ」

セリーゼの話を聞いた栞は嬉しそうに賛同した。


「わかったけど、本当に結婚相手が僕なんかで良いのかな?セリーゼに至っては、僕のこと何もしらないと思うけど」


「私は、さっきター君が今まで歩んできた人生を大体だけど見たから大丈夫。ター君の力は一人で世界を征服できそうなほど強いけど、その力は自分の欲望のために使わずに他人のために使っていることも。フフフ…合っているでしょう?それが、私の能力(ちから)ユニーク・スキル、マテリアル・ビション・アイ。効果は、私の効果範囲にいる対象者の記憶を自由に見ることができるの。間近で見ると生後からの幼い頃の記憶を見ることができる。私、凄い。褒めて」


「うん、凄いよ。なるほど、セリーゼはユニーク・スキルの所持者だったのか。だけど、それだとあの靄は?ユニーク使いなら、基本魔法が使えないはずなんだけど?」

大成はセリーゼの頭を優しく撫でる。


「う〜ん、わかりやすく説明すると。人の記憶の精神面には表面に濃い薄いの違いはあるけど霧みたいな靄が掛かっているの。だから、すぐに思い出せる記憶とやっと思い出せる記憶、そして、全く思い出せない記憶があるよね?」


「そうだね」


「私は、対象の人物の靄を通り抜けて純粋な記憶を見ることができるの。で、その靄を自由自在に出したり操ることもできるんだよ。こんな風に。普通は対象者の記憶を思い出させない様に使うんだけど。この靄には感知機能もあるから誰が侵入してきたのか、対象者の記憶を靄で妨害して本人は真っ直ぐ歩いていると思わせて実際はUターンさせていたの」

セリーゼは、右手の掌を上に向けると掌から靄が出てきた。


「坊や達に言っておくが、セリーゼは私と同じで、ああ見えても千年以上生きているからな」


「リーちゃん!む〜!」

頬を膨らませて怒るセリーゼ。


「「え!?」」

(見た目はリーエ様が居るから納得できるけど、精神年齢は私達より下だと思ったのに)

ジャンヌ達は、驚きながらセリーゼを見る。


「そうだろうね。セリーゼの魔力の濃密さや制御されているけど魔力の量は栞やリーエと同等ぐらいある。しかも、魔力制御の精密さからでもわかる。かなりの手練だと感じているから」


「でも、彗星。対象者の記憶を見るだけなら戦闘には向かないと思うけど」


「いや、そうでもないと思うよリリー。初見の相手の戦闘スタイルや使用魔法、切り札がわかるだけでも、かなりのメリットだと思う。それに、魔法が得意としている相手なら魔法の記憶を靄で妨害すれば魔法は唱えれなくなる。ある意味、魔法アイテムや魔法陣が要らない魔法封じだね」


「なるほどね…。それは、とても恐ろしいわね」


「まぁ、それだけではないがな。セリーゼの切り札は、本当に達が悪く厄介で恐ろしいぞ。残念ながら、切り札だから教えてやれんが」

リーエは、セリーゼの切り札を思い出して頬を引き攣った。


「ゴホン、わかりましたセリーゼ様。ですが、友好関係を結ぶならばお互いに助けられる戦力があるという強さを示して貰わないと」


「トネル、大丈夫。ター君の実力は私達より遥かに強いし、リーちゃんもいる」


「大変、失礼かもしれませんが、セリーゼ様が仰った通りだとしても強さを証明して貰わなければ部下や国民達が示しがつきませんし納得しません。それで、大変、申し訳ないのですが、セリーゼ様のお力をお借りしたいのですが…。」

トネルは困った表情で説明し、アルメリア達は頷いた。


「納得、仕方ない。ディメンション・エリア」

セリーゼは、右手の指を鳴らしてディメンション・エリアを唱えた。


玉座の間全体は白い靄に包まれ、靄は凄いスピードで時計回りに高速回転する。


そして、一瞬で靄が晴れると大成達は今まで居た玉座の間ではなく地平線が見える草原に立っていた。


「嘘!?えっ、何で私達、草原にいるの?今まで、城の中にいたはずよ」


「落ち着いて、リリー。ここは、セリーゼが作った異空間だと思う」


「うん、ター君の言う通り。ここは、私が作り出した異空間だよ。だから、禁術や失われた魔法(ロスト・マジック)を使っても外に影響が出ないから安心して戦えるよ。でも、シーちゃんはローズ・バレッド、ター君はブラック・バレッドは威力が高過ぎるから禁止ね。この異空間でも耐えきれず貫通して外部にも影響がでちゃうからダメだよ」


「わかっているわよ」


「わかった。でも、やはり相手の記憶を見る力は強いな。こうして、戦う前に相手の戦い方や切り札とか知ることができるのは最大のアドバンテージになる」


「あの、申し訳ないのですが1つ頼みがあります。大成だけが戦うだけでなく、できれば、リーエ様にも参加して頂きたいのですが。リーエ様の実力を疑うつもりはありませんが、若いの者達はリーエ様の実力を知りませんので、この機に知って貰いたいと思っております。何卒、ご協力を」


「そうだな、面倒だが仕方ないな。まぁ、千年ぐらいエルフの国に訪れていなかったからエルフが長寿だとしても流石に世代も増えて代わっているか」


「勿論、私達も参加するわ。だって、元々、私達獣人の問題だもの。頼りきりは獣人としてのプライドが許さないわ。ねぇ、そうでしょう?ルジアダ」


「はい、リリー様。その通りです!」


「なら、私達も戦うわよウルミラ。この機会に、魔人族は大成とリーエ様だけでないと知って貰いましょう」


「はい!姫様」


「うむ、そちらは全員参加のようだな。では、こちらは五聖華を出そう」


「トネルさん、待って欲しい。私は大成と戦いたいから私も出場するわ」


「え!?栞殿!?」


「シーちゃんが出るなら私も出る…。それに、ター君の強さを間近で見たいし…ふあぁぁ…」


「まさか、セリーゼ様も出場するのですか!?」


「ククク…じゃあ、私も参加させて貰っても良いですか?トネル様」


「マミューラもか!?」


「ええ、面白そうですので」


「はぁ、わかった。だが、向こうは6人に対して、こちらは8人になったからな。一対一で戦う形式にしよう。それで、良いか?」


「いえ、戦いたい人同士、相手が望めば一対多数でも構いません。それで、良いよね?皆」


「ええ、構わないわ。望むところよ!」

リリーは胸元でグッと拳を握り、ジャンヌ達も頷いた。


「じゃあ、私は大成と一対一で戦うわ」

栞は、誰よりも先に大成を指名した。


「なら、私はジャンヌとウルミラの相手をするか。あれから、2人がどれほど成長したか見てみたいしな」


「え〜、シーちゃんとマーちゃんずるい」


「こういうのは早い者勝ちよ、セリーゼ」


「む〜、だったら、私は久しぶりにリーちゃんと…」

セリーゼは頬膨らませてリーエを指名しようとしたが、リリーが先に声をあげる。


「なら、私はセリーゼ様と戦ってみたいわ」


「え…」


「あの、私も格上の方と戦ってみたいです」

ルジアダも手を挙げる。


「フッ、仕方ない。では、私は五聖華という小娘達の相手をするか」


「もう、リーちゃんまで!」


「あの、セリーゼ様…」

キリサは、気の毒そうに頬を膨らまらせているセリーゼに声を掛けた。


「うぅ…決まっちゃたし…仕方ない…」


「ゴホン、決まった様だな」

トネルは、咳払いをして確認した。



ジャンヌ達観戦者達は、大成と栞の戦闘の巻き添えにならない様に2人から距離をとった。


「フフフ…。こうして、大成と戦うのも久しぶりね」


「そうだね、栞」


「では、試合開始とする!」


「いくわよ!大成」

トネルの開始の合図と同時に、栞は右手で胸元から扇子を取り出して右腕を横に伸ばすと同時に閉じていた扇子を開く。


その直後、栞の上空に複数のミサイルランチャーが出現し、栞が横に伸ばしている右腕を前に突き出した瞬間、爆音と共にミサイルランチャーからミサイルが大成に目掛けて一斉に発射される。


「ハッ!」

大成は、右手に魔力を込めて右腕を横に振り抜いて濃密な漆黒の魔力波を飛ばした。


ミサイルランチャーのミサイルは大成の魔力波と衝突し、次々に爆音を立てながら爆発していく。


大成の周囲の大地は抉れて焦げていたが、大成の周りは無傷で大成に爆風すら届いていなかった。


「やるわね、大成。じゃあ、今度はどうする?ソード・レイン」

栞は左右の腕を横に広げると大成を囲う様に周囲に無数の剣を召喚し、左右の腕をクロスさせると無数の剣は豪雨の様に大成に降り注ぐ。


「グリモア・ブック、ハリケーン」

大成はグリモアを召喚し、風魔法ハリケーンを唱えて自身を中心に巨大な竜巻を発生させて降り注ぐ剣の豪雨を全て上空へと巻き上げた。


巨大な竜巻の突風は、観戦していたジャンヌ達にも襲い掛かる。

「「くっ」」

「「きゃ」」

ジャンヌやセリーゼ達は、吹き飛ばされない様に体を低くして耐えた。



「流石だけど、あまいわ!ナーゲルリング」

栞は扇子を持っている右手を上に挙げると、大成の頭上に巨大な大剣が出現した。



栞の実力を知っているセリーゼ達と大成が自分で同等の実力があると聞いていたジャンヌ達は、当たり前の様に観戦していた中…。


「ククク…大和の女だけのことはある。やはり、栞という娘も大概な化け物だな」

マミューラは、初めて栞の戦う姿を見て栞の圧倒的な力を前にして表情は引き摺っていたが口元は嬉しそうに笑っていた。


「〜っ!何て、膨大で濃密な魔力…」


「それだけじゃないわ、ルジアダ。これほどの膨大な魔力を消費したというのに、全く疲れた様子もないわ。彗星もそうだけど、栞も大概な化け物よ」

ルジアダは驚き、リリーは深刻な面持ちで栞を見ていた。


「さぁ、このナーゲルリングはどう対応するの?大成」

栞が挙げている右手を振り下ろすと同時に巨大な大剣は大成に向かって降下する。


大きな鈍い音と共に巨大な竜巻は霧散し、周囲に砂埃が舞い上がった。


「彗星!」

リリーが不安な声で叫ぶと同時に、巨大な大剣の刀身から柄の部分掛けて縦一直線に切れ目が入り真っ二つに切断されて光の粒子になって消滅した。


そこには、腰に掛けていた剣を抜刀して上に振り上げた大成の姿があった。


「「なっ!?」」


「嘘でしょう…。あの巨大な大剣を真っ二つにできるなんて…。一体、彼は何者なの…」


「ター君、カッコいい…」

アルメリア達は驚きの声をあげる中、セリーゼは少し頬を赤く染めて口元を緩める。


「さぁ、舞い踊りなさい。ソード・ダンス」

栞は、自身の周囲に無数の剣を召喚して砂埃の中にいる大成に目掛けて無数の剣を放つ。


大成は栞に向かって一直線に走りながら右手に握っている剣で飛んでくる無数の剣を弾きながら砂埃から駆け抜けて栞との距離を縮めていく。


「やはり、この程度では足止めにもならないわね。だったら、これならどう?」

栞は右手の手首を上に挙げると、大成の足元から無数の剣が地面から突き出ていく。


「アイシルク・レイン」

大成は、足元から突き出てきた剣の刀身をジャンプして回避すると同時に氷大魔法アイシルク・レインを唱えた。


周囲の気温が急激に低くなり、上空から直径2mぐらいの氷柱が降り注ぐ。


「イージス」

栞は自分の身長より大きな盾を召喚し、盾は輝くと同時に半球状の結界を張って上空から降り注ぐ氷柱を防いだ。


「大成、流石のあなたも空中だと身動きが取れないでしょう?」

栞は、空中にいる大成の周囲に剣を召喚して串刺しにしようと放つ。


大成は、空中で体を捻りながら持っている剣で栞の剣を全て弾いた。


そして、剣を振り上げると同時に剣に左手を添えて両手で握り締め剣に漆黒の魔力を纏わせて降下しながら栞に向けて剣を振り下ろす。


振り下ろした大成の剣は栞の大盾イージスの真中に衝突し、イージスは真中から大きなヒビが入り砕け散った。


大成は、そのまま降下しながら栞に斬り掛かる。


「エクスカリバー!」

栞は、その場から動かずにエクスカリバーを唱えた瞬間、一瞬で黄金の鎧を纏った姿に栞は変装した。


栞は右手には黄金の剣エクスカリバーを握っており、栞は両手でエクスカリバーを握って振り上げて迎え撃つ。


大成と栞の剣同士が衝突した瞬間、膨大で濃密な魔力同士が衝突したとこで逃げ場を失った濃密で膨大な魔力が2人を中心に大爆発が起こす。


「これは、危険だな。ジャンヌ、ウルミラ任せたぞ。シャドウ・ゲート」


「「はい、アース・ウォール」」

リーエはジャンヌとウルミラに指示を出すと共に、シャドウ・ゲートでトネル達を此方側に転移させると同時にジャンヌとウルミラが分厚い土の壁を作った。


大爆発によって大地は深く抉れ、その抉れた土砂と砕けた氷柱、そして衝撃波が勢いよくジャンヌとウルミラが作った土の壁にぶつかり土の壁がみるみると削れて小さくなっていく。


「ありがとう、リーちゃんとジャンヌちゃんにウルミラちゃん」


「感謝します」

セリーゼとトネル達は感謝した。


そんな中、大成と栞は懐かしさのあまり周りの被害ことなど忘れて戦いに夢中になっていた。


大成は全身に漆黒の魔力を纏い、栞は金色の魔力を纏っており2人の動きは速く、リーエとセリーゼの2人にしか辛うじてだが姿を捉えることができずジャンヌ達はただ漆黒と金色の光が高速で動いて衝突している様にしか見えなかった。


大成と栞が衝突する度に衝撃波が発生し、その余波はジャンヌ達の場所まで届く。


「ハッ!」

「ヤッ!」

大成と栞は鍔迫り合いになり、逃げ場を失った発生した膨大な力によって2人の周囲にクレーターができた。


「ソード・ダンス」

栞は、自身の周囲に数多くの剣を召喚した。


大成は栞の魔力が増大したのを感知すると同時に、栞の周囲に数多くの剣が出現する前に力を抜いて切り返しをして栞の剣を弾いて距離を取ろうとバックステップをする。


「逃さないわよ、大成。さぁ、もっと楽しみましょう!」

栞は、周囲に召喚した複数の剣を高速に飛ばしながら自らも突進して大成との距離を縮める。


大成は後ろに下がりながら正面から襲ってくる複数の剣を素早い剣捌きで弾

き、その1刀を空中で空いている左手で掴み左右の剣で弾いていく。


だが、距離を縮めた栞はタイミングを見計らっており大成が避けることも防ぐこともできないタイミングに接近した。


「貰ったわ!」

栞は勝利を確信していても油断せずに最高の一撃を放とうとする。


しかし、その瞬間、嫌な胸騒ぎがした栞は視線だけを大成の腰に掛けてある鞘に向けると魔力が鞘を覆っていることに気付いた。


(鞘から魔力弾が飛んでくる?いいえ、違うわね。魔力は鞘を覆っているだけで圧縮されていないわ。だとしたら、これは…まさか!?)

栞は一瞬で状況判断して大成の右手で握っている剣を見るといつの間にか自分が召喚した剣になっていると気付きすぐに体を左に傾けた瞬間、栞の背後から大成の剣が真横を通過した。


大成の剣は、まるで磁石の様に鞘に引き付けられる様に一直線に鞘に向かって飛ぶ。


大成は栞がベストなタイミングで斬りに掛かって来ることを確信しており、初めから栞の判断を遅らせるために大成は飛んでくる無数の剣を自分の剣で弾きながら自分の剣を手放して弾いた栞の剣と入れ替え弾いた栞の剣と紛れ込ませる様に自分の剣を地面に落とした。


更に、わざと下がりながら対応することで栞に押されていると思い込ませるのと同時に正面にいる自分に集中させることで真後ろの死角から剣を引き寄せたのだ。


そして、計算通りに栞に隙ができ、大成は引き寄せた自分の剣を右手で掴んだ。


「くっ」

栞は体を左に傾けて背後から迫ってきた大成の剣をギリギリで回避しながら斬りに掛かるが、体勢が崩れたので更に僅かなロスが生まれた。


その僅かな一瞬のロスで大成も剣で斬りに掛かる。


そして、お互いの剣はギリギリ互いの首元で止められていた。


「信じられませんが、引き分けみたいですね」


「ええ、正直、驚いたわ。まさか、セリーゼ様以外に栞様と互角で戦える人がいるなんて…」


「まぁ、栞様は全力じゃなかったからな。ローズ・バレッドは使用禁止され封じられエクスカリバーは出していたが力を抑えて完全開放していなかったしな。本気で戦えば、圧勝とは言わないが栞様が勝っていたさ」

五聖華達は大成の実力を知り、驚愕しながら会話する。


「あなた達、何を言っているの?」


「何がですか?セリーゼ様」


「シーちゃん同様、ター君も本気を出していない。その証拠に、ター君も魔法はハリケーンとアイシルク・レインの2発しか使ってなかった」

(それにしても、ター君の能力に驚かせられた。まさか、あのグリモア・ブックだったなんて。ター君の才能ならグリモアを完全開放できるはず)


「確かに…」


「言われてみたら…」

セリーゼの言葉に五聖華達は、息を呑みながらジャンヌ達に向かって歩いている大成をまじまじと見る。


「それでは、次の試合は…」


「私が戦う」

トネルが迷っていた時、セリーゼは目を擦りながら小さく手を挙げるのであった。


次回、セリーゼの切り札です。

もし宜しければ次回もご覧下さい。

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