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栞の過去と大成との出会い

エルフの森は他種人族だと女性しか入れない結界が施されており、護衛するために大成は女装することになった。


そして、女装した大成はジャンヌ、ウルミラ、リリー、ルジアダと一緒にエルフの森へと入ることに成功した。


そして、大成達はオルセー国を滅ぼした栞と出会ったのだった。

【過去・日本】


3歳の少女・栞は木々の間を通り抜けたり障害物や複数の矢先に粘土が付いた矢を避けながら速度を落とさずに走り、持っているエアガンで10mぐらい離れた場所に設置されている複数の的の中心を的確に射抜いていく。


「これで最後!」

栞は横に飛びながら最後の的の中心を居抜き、空いている左手を地面について反転して着地した。


「凄いわ、栞!」

栞を見ていた母親の静香は、栞に駆けつけて抱き締めて大喜びした。


「もう、お母様。喜び過ぎです」


「そんなことないわよ!」


「部下の人達に聞きました。私は半日掛かりましたが、お兄様は私と同い年の時に一回で成功したと」


「確かに、流星は一回で成功したわ。だけど、あの子は特別よ。親であるお母さんやお父さんでも怖いと思うほど何でもこなす神童だけど、栞、あなたが落ち込む必要はないわ。あなたも、十分天才よ。だって、この訓練場は最難関で有名で大人のお母さんやお父さんの部下でも何年も訓練しても成功する人は少ないし、確実に成功する人はいないわ。それどころか、あなたは流星と同じくただ成功するだけでなく全て的の中心を射抜く神業なんてお母さんやお父さんでも達成したことないのよ!だから、もっと喜びなさい。そして、もっと、自分に自信を持て良いのよ」

静香は、優しく栞の頭を撫でる。


「はい、わかりました」

栞は静香に頭を撫でられながら視線を横に向け、隣で訓練している流星の見ていた。



13歳になる流星は、父親の誠司の部隊の中でも優秀なエリートである隊員5人を同時に徒手格闘をしていた。


お互いに素手のみなので、力やリーチ、経験が豊富な大人である隊員達が有利なのだが押しているのは誰が見ても明らかに流星だった。


大男の隊員は、左右の拳を連打して流星に攻撃する。

「糞〜!ちょこまかと!」


しかし、流星は左右に体を傾けながら最小限の無駄のない動きで大男の連打を躱していき、タイミングを見計らい右手の掌底打ちで大男の顎を下から上に打ち抜いて気絶させた。


大男は、盛大に後ろに倒れた。


「ハッ!ヤッ!」

角刈りの隊員は、流星の右側からジャンプ蹴りしながら体を捻り右足の蹴り、そして、左足の蹴りに繋げる。


流星は角刈りの隊員の右足の蹴りを後ろに下がり躱し、角刈りの隊員が空中で回転して左足の蹴りが迫ったが屈んで躱すと同時に右足のハイキックをして角刈りの隊員の左側頭部に蹴りを入れて気絶させた。


「ハァァ!」

丸坊主の隊員は、流星の背後から大声を出して気合を入れながら右足で回し蹴りを繰り出す。


しかし、流星が屈んだので回し蹴りは空を切った。


流星は屈みながら右足で水面蹴りをして丸坊主の隊員の一本立ちになっている左足を刈取り転倒させて両手で丸坊主の隊員の足を持ち上げて横に振り回して投げて接近してきていたモヒカンの隊員にぶつけた。


丸坊主の隊員とモヒカンの隊員は、同じ木の幹に衝突してモヒカンの隊員は木の幹と丸坊主の隊員の間に挟まれる形で幹に凭れ掛かる。


そこに、流星は助走つけて丸坊主の隊員にジャンプ蹴りを決めて丸坊主の隊員とモヒカンの隊員を気絶させた。


流星は、ゆっくりと最後に残った坊ちゃん刈りの隊員に振り向く。


「じょ、冗談だろ…。明らかに隊長より強くないか?こんな奴に、勝てる訳ないだろ…」

坊ちゃん刈りの隊員は、流星を見て恐怖して後ろにたじろぎながら戦意喪失していた。


流星は、そんな隊員を一瞥して全く興味がない雰囲気で誠司に振り返る。


「あのさ、お父さん。あの人は、もう戦意喪失して駄目だけど?どうする?気絶させた方が良い?」


「いや、その必要はない。今日の訓練は終わりだ、流星」


「わかったよ、父さん。俺は、向こうでクールダウンしてくる」

流星は徒手格闘に勝利したが当たり前みたいな感じに喜ぶことはなく、木の枝に掛けていた自分の上着を取った。


「ああ、そうすると良い」

流星は、気絶させた隊員達に目もくれず間を通り抜けて行った。


「丸谷隊員」

誠司は、坊ちゃん刈りの隊員の名を呼んだ。


「は、はい。も、申し訳ありません」

丸谷は、背筋を伸ばして敬礼して謝罪をする。


「いや、お前が戦意喪失したのは良くないが気持ちはわかる。だが、任務の時はどんなことがあれ戦意喪失するなよ」


「ハッ!」


「わかれば良い。それよりも、皆を起こせ」


「畏まりました」

丸谷は、駆け足で気絶している同胞に駆け寄り起こしていく。


「うっ」


「いてて…」

流星から倒された隊員達は頭を抑えたり、頭を左右に振ったりしながら起き上がる。


「大丈夫か?お前達」


「はい、大丈夫です隊長。ですが…」


「ですが?何だ?」


「こう言ちゃあ、隊長の機嫌が悪くなるかと思いますが、隊長のお子さんは本当に化け物ですね。あの強さで、まだ中学生になったばかりなんて恐ろしいですよ」


「ああ、そうだな。正直、父親である私も流星の強さを間近で見て畏怖している。時々、流星は神様の生まれ変わりなのか、それとも悪魔の生まれ変わりなのかと考えたり思った時がある」


「自分達も、思ったことがあります。っていうよりも、私達隊員の中ではそうじゃないのかと噂になっています」


「だな」


「その、隊長。失礼だと存じますが、隊長はお子さんと戦って勝てそうですか?」


「「おい!」」


「……。勝てる可能性は低いな。いや、ほぼないと言っても良いだろう。それに、お前達は流星ばかりに目がいっているが、おそらくだが、数年も立たないうちに娘にも勝てなくなるだろう」


「「〜っ!」」


「以前から思っていたのですが、隊長はお子さんをいつ入隊させるつもりなのですか?」


「正直、流星は実力だけなら3歳の頃でも入隊できただろう。しかし…流星は幼い頃から常に何かを考えているのはわかっているが、その考えていることが何なのかが、親である俺や静香すら全くわからなかった。いや、今もあいつが一体何を考えているのかさえわからない。聞いたことが何度かあるが答えないしな。そのことが、とても怖くってな。もし入隊させた場合、特殊部隊は流星1人によって破滅に向かう様な気がしてならない。だから、まだ入隊させる予定はない」


「確かに隊長の娘さんも優秀で大人びていますが、それでも時折、年齢相応の感情が表に出ている時がありますね。ですが、お子さんの方、流星君は幼い頃から我々、大人よりも大人って感じで感情を全く表に出さないから一切何も読めない子ですよね」


「ああ、まだ栞は良い。だが、流星はな…」


「そう言われたらそうだな、言われて気が付いた。お子さんは、いつもことだからそれが当たり前の様に思って忘れていたな」


「しかし、隊長。とんだ才能を持った2人の子供を授かりましたね」


「全くだ。普通で良かったんだがな。今じゃあ、流星と栞が生まれたのは何かしらの神の啓示だと思っている」


「そうですね、私もそんな気がします」


「そう思うと、俺や静香は流星と栞にどう接してどう導いてやれば良いのか毎日悩んでいる」


「本当に隊長は、苦労してますよね。私だったら、考えるのはやめていますよ」


「フッ、俺もそうしたいがそうもいかんだろ。子供を導いてやるのも親のつとめだ」


「ところで、隊長。3人目は作らないのですか?」


「ああ、もう作る予定はない。もし、3人目が男の子で普通の子だったらと思うと可哀想に思ってな。これは、静香も思っていることだ」


「そうでしょうね、兄、姉が天才や鬼才を通り越して神童ですからね」


「そんなことよりも、お前達、流星との戦いはあっという間に終わって物足りないだろう?せっかくだ、今からお前達にはちょっとした訓練をして貰うぞ」


「「え!?」」


「ま、まさか…」


「よくわかったな。今度は、毎月恒例の訓練だ。俺と戦って貰う。そして、お前達が負ければ…罰として、わかるよな?」


「隊長、俺達は戦ったばかりで、その、体力が…」


「馬鹿野郎!そんなこと言ったら…」


「ほほう?お前達1人、たった一分も戦っていなかったはずだろ?それで、体力がないとか言わせないぞ?もし、そうだったら1から体力作りが必要だと思わないか?」


「「……。」」

隊員達は、血の気が引き顔色が悪くなった。


結局、誠司と戦い、そして、負けたので恒例のデス・ロードと隊員達の中で言われるほど有名なトレーニングが始まったのだった。


隊員達は、全身に重いウエイトを付けた状態で一周1kmあるグランドをランニングし設定されてある一周の規定のタイム内で30周を走る。


1人でも規定のタイムをオーバーした場合、ペナルティとして全員の全身のウエイトの重りが1kg加算され更にグランド5周が加算される。


結局、隊員達はペナルティで周回数が何倍にも膨れ上がり日が暮れるまで数えきれないほど走り続けたのだった。


それから数日後、誠司と静香は任務で潜入捜査の任務についたが、その際、自分達の情報が漏れていたことを知らずにビルに突入した瞬間に大爆発が起きて部下と一緒に亡くなった。



【過去・葬式】


誠司と静香の部下だけでなく、出席できる特殊部隊の隊員全員が出席していた。


皆は涙を堪えたり、涙を溢している人もいる中。


「あぁ〜、お母様、お父様〜!」


「……。」

栞は流星に抱きついて大泣きしていたが、流星は表情を変えずにただ誠司と静香の棺桶を見つめていた。



その後、流星と栞は児童保護施設【ひまわり】に預けられたが、誠司と静香の所属していた特殊部隊の総司令官であり後に流星達の師匠となるお爺さんが流星と栞のことを知り、自ら【ひまわり】を訪れて流星と栞を合って2人に意志を聞いて引き取ったのだ。


流星と栞は、すぐに入隊テストを受けて合格し特殊部隊に入隊した。


初となる任務は戦場ではなく、研究所にいる大成の両親である文雄と六花の警護と監視役だった。


流星と栞は大した任務ではないと思っていたが、後に、この任務が大きな運命の歯車が動き出すきっかけとなるとは誰もわからなかった。




【過去・研究所】


流星と栞は、研究所で文雄達の警護兼監視役を任せられていた同じ特殊部隊の隊員2人と引き継ぎの話をしていた時、ドアが開いた。


ドアから文雄と六花が入ってきた。


「「おはようございます、神崎博士」」

流星と栞は、文雄と六花を写真で確認していた。


「ああ、おはよう。えっと、君達が今度から私達の護衛してくれる。流星君と栞ちゃんかな?既に知っているとは思うけど、私は神崎文雄、こっちは私の妻の神崎六花だ宜しく。できれば、私のことは文雄さんか文雄博士、妻の六花も六花さんか六花博士と読んでくれないかな?神崎博士だと、私か妻かわからないからね」


「「わかりました、文雄博士」」


「うん、君達は素直でとても良い子だな」


「おはよう、流星君、栞ちゃん。今日から私達の警護をよろしくね。あ、でも、そんなに緊張しないでね。難しい仕事じゃないから、主に見ててくれるだけで良いから安心して。正直、暇な仕事でごめんなさいね」


「いえ、どんな任務であれ受けたからには全力で勤めさせて頂きます。なぁ、栞」


「はい、お兄様」


「フフフ…ありがとうね。何だか、流星君と栞ちゃんを見ていると私達の子供が増えた感じがして何だか嬉しいわね。あなた」


「そうだな」


文雄と六花はまだ幼い流星と栞を気に入り、休憩時間にはお菓子や飲み物など流星と栞に渡しながら寮にいる大成の話や世間話、自分達の過去や出会いの話をする。


「そう言えば、栞ちゃんは私達の息子の大成と同い年なんだよね…」

文雄は言いながら六花と一緒に栞を凝視する。


「あの、どうかされましたか?」


「あ、ごめんなさいね。大成と比べたら、流星君は勿論なのだけど、栞ちゃんは大成と同い年なのにとても大人びているなって思ってね」

六花は、苦笑いを浮かべながら話す。


「そうですか?」


「うん、栞ちゃんの方が大人びているな。おそらく、今の時間だと大成は特撮ヒーロー番組を見てはしゃいでいると思うし」


「そうなのですか?」


「間違いない!」


「間違いないわね!」


「フ、フフフ…」

栞が尋ねると文雄と六花の声が揃ったことがツボに入り、栞は口元に手を当ててクスクスと笑った。


栞の笑顔を見た文雄と六花は、栞は大人びていても年頃の少女だと知り微笑んだ。


「あ、そうだ。私と六花の出会いを話そう」


「ちょっと、あなた!子供達になんて話を聞かせようとしているのよ!」


「まぁ、良いじゃないか。偶には、こういう話もさ。流星君や栞ちゃんもこういう話には興味があるだろ?」


「いや、俺は別に特には…」


「私、興味あります!」


「じゃあ、まだ時間があるし、栞ちゃんも興味あるみたいだから話そう」


「もう!」

六花は恥ずかしそうに頬を膨らませ赤らめたが、文雄は気にせずに話し出す。


流星は表情を変えずに黙って聞いていたが、栞は目を輝かせながら文雄と六花の出会い話を興味津々で聞いた。



そして、何事もなく数ヶ月が経った頃だった。


「「きゃ」」

文雄と六花は通路を歩いていた時、角で六花が上司の女性とぶつかりお互いにレポートや書類を落とした。


「あ、すみません!怪我はないですか?」


「すみません、妻だけでなく、私も気付けず申し訳ありません」

文雄と六花は謝罪をして、慌てて床に散らばったレポートと書類を拾って分けていく。


「いえ、私は大丈夫ですよ。それよりも、六花さんは怪我はしてませんか?」

上司の女性は六花を心配し、落としたレポートと書類を拾うのを手伝った。


「え?私のことを知っているのですか?上司の方に名前を覚えて頂いて嬉しいです。あ、あと、私は大丈夫です」


「フフフ…それは、良かったわ。もし、あなた方に何かあったら私が怒られるもの。神崎文雄博士、神崎六花博士、あなた方お2人の研究の成果の功績はとても素晴らしいです。この研究所で知らない人は誰もいませんよ。あなた方のお陰で研究が順調に進んでいますので、我々、上司全員があなた方に感謝してます」


「そう言って頂けると嬉しいですね。お役に立てて良かったです。私達も、大好きな研究ができて毎日が幸せです。ねぇ、あなた」

六花が笑顔で文雄に尋ねた時だった。


文雄は、ある書類に目が止まり瞳を大きく見開いていた。


文雄の変化に、六花がすぐに気付いて文雄が持っている書類に目を向けると言葉を失った。


自分達がしてきた研究の隠された真の目的を知った瞬間だった。


だが、上司の女性は文雄達と一緒に書類とレポートを拾っていたので2人の変化に気付いてはいなかなった。


「どうかされましたか?」


「い、いえ、妻の言う通り、私も研究に貢献できて心から良かったと思っております。それに、こうして直接感謝されてとても嬉しいです。頑張ってきたかいがあったと実感しております」


「フフフ…これからも、あなた方の成果を期待しています」


「はい、ご期待に答えられる様に頑張ります。あと、こちらをどうぞ」


「こちらも、終わりました」


「わざわざ拾って頂き、ありがとうございます」


「いえ気になさらずに、こちらの不注意でしたので」


「噂通り、あなた方2人はお優しいですね。では、私は書類とレポートを提出しなければならないので、これで失礼させて頂きますね」


「「はい」」

文雄と六花は書類とレポートを渡し、上司の女性が立ち去るのを見送った。



「ねぇ、あなた…」


「六花、その反応は、お前もアレを見たんだな」


「ええ…」


「ここで、いつまでも立ち止まっていたら怪しまれる。今は、アレを忘れるんだ」


「そうね、わかったわ」

文雄と六花は、普段通りを装うことにした。


そして、いつも通りに研究をして休憩時間が来たので休憩室に入り、文雄は弁当とお菓子と飲み物が入っているビニール袋を流星と栞に渡した。


「「ありがとうございます」」

流星と栞はビニール袋を受け取り、弁当を取り出そうとした時に弁当の割り箸の袋の裏側に紙が小さく折りたたんで貼り付けられていることに気付いた。


(まさか、これって…)

栞は流星に視線を向けると流星が無言で頷いたので、防犯カメラに映らない様にビニール袋の中で紙を広げる。


紙には、流星君、栞ちゃん。すまない、君達に迷惑を掛けるし無理を承知して頼みがある。今まで研究している隠された真の目的を知った。この研究に私達は力を貸したくないと心の底から思った。だが、研究を断ったら私達だけでなく、大成の身も危険になる。そこで、私達を研究所から逃してくれないか?無理なら無理でも構わないし、この手紙を上司に渡して報告しても私達は恨まない。と書かれていた。


栞は目を大きく見開き、すぐに再び流星に不安そうな面持ちで視線を向ける。


流星は何事もなかった様にビニール袋の中から弁当とペットボトルを取り出してペットボトルのキャップを開けて一口飲む。


「頂きます…」

栞も、防犯カメラのことを思い出して気付かれない様に手を合わせてから弁当に手を掛けた。


「それで、どうかな?今度の土曜日は空いている?もし良ければ、大成に会ってくれないかな?」

文雄は弁当を開けながら笑顔で尋ねたが、表情と裏腹に心臓の鼓動は大きく速くなっていた。


「そうですね、残念ながら今度の土曜日は難しいですね」


「やはり、駄目か…。アハハ…仕方ないかな…」


「待って下さい、早とちりしないで下さい。金曜日なら大丈夫ですよ。土曜日から文雄さんと立花さんの護衛役は俺達じゃなくなりますので無理と言っただけです」


「お兄様〜!」


「それは、本当なのかい?」


「ええ、大丈夫です。金曜日、仕事が終わってから30分だけなら大成君に会えます。それ以上の接触は、組織から禁止されていますので」


「いや、十分だ。大成に会ってくれるんだな。大成も君達に会いたがっていたんだ。きっと、大成は喜んでくれる。ありがとう、本当にありがとう流星君、栞ちゃん」


「ありがとうね流星君、栞ちゃん」

文雄は流星の手を握り、立花は栞の手を握ってお礼を言った。


そして、金曜日仕事が終わり、予定通りに流星と栞は文雄達の部屋に行こうとした時だった。


「流星少年、栞君。待ちたまえ」

流星と栞は、背後から声を掛けられたので立ち止まり振り返った。


振り返ると防犯カメラの監視員達3人がいた。


「どうかなさられましたか?」


「私達は、今から文雄博士の部屋に向かう予定ですので急いでいるのですが」

流星は普段通り抑揚のない声で尋ね、栞は監視員達を睨みつけながら苛立った様な口調で話す。


「そのことで、僕達はわざわざ君達に会いに来たんだ」


「許可は取ったはずですが?何か問題でも?」


「ああ、急遽ですまないが、その許可は此方のミスだったんだ。すまないね。だから、許可を無効として貰おうと思ってね」

防犯カメラを見張っていた監視員達が怪しいと思い、流星と栞の許可を直前になって拒否することで2人の反応を見ることにしたのだった。


監視員達は、流星と栞は共犯だと思っていた。


しかし…。


「それなら、仕方ないですね。わかりました、神崎博士達の部屋に行くのはやめます。帰るぞ、栞」


「わかりました、お兄様」

文雄と栞は抗議をすることなく、あっさりと自分達の部屋へと戻って行った。


「俺達の考え過ぎだったか?」


「いや、まだそう判断するのは早慶だろう」


「だな、大和兄妹と神崎博士達の監視を厳しくするぞ」


「ああ」

監視員達は監視カメラを凝視したが、結局、流星と栞は文雄達の部屋を訪れることはなく、それどころか、普段通りで何事もなく空振りに終わった。


全てが、流星の思惑通りだった。


金曜日の休憩時間に研究所の見取り図と警備の時間と回るコース、監視カメラの位置、そして、脱出ルートなどを細かく書いた紙を食べ終えた弁当箱などを入れたビニール袋に入れて文雄に渡していたのだった。


そして、数週間が経ち、仕事が終わり深夜に文雄と六花は大成を連れて脱出に成功した。


文雄達が逃走した件で、流星と栞には責任や怪しまれることは一切なかった。


上手く逃走が成功したのは、流星達と変わった警護役の男2人が面倒臭がりで適当の性格だったので警護している最中でも欠伸をしたり、喋ったりするほど雑だった。


特殊部隊は、ずば抜けた戦闘技術や才能があれば誰でも入隊できるため不真面目な輩が多かったのだ。


そのため、警護役の男2人が責任を取る形となったのだった。




【過去・文雄達が滞在していた村】


2年後、流星と栞は文雄達が研究所から脱走した後に身を隠していた村にいた。


文雄達の護衛任務が終わった後、栞達は順調に活躍して隊長になっており栞が5歳になった頃に文雄達の情報が入ったのだ。


文雄達の研究所のリーダーである斎藤博士の依頼で、やむ得ず流星と栞は文雄達の拘束の依頼を受けたのだった。


そして、流星と栞が向かった時には既に遅く、文雄達が滞在していた村は焼け野原の様に燃えており松木大佐の部下達が殺戮を楽しんでいる状態だった。


「お兄様…」

着物を着ている栞は、左手の裾を口元に当て殺気を醸し出して松木大佐の部下を鋭い眼光で睨みつけていた。


「栞、知っているとは思うが、一応、この馬鹿共は同じ特殊部隊ではないが仲間だぞ?」


「ですが、お兄様…」


「はぁ〜、まぁ、こいつらは無抵抗な民間人を一方的に大量虐殺しているから規律に違反している。此方に正当な理由はあるが…って、おい!栞」

栞は行動に移っており、走りながら両手に拳銃を持って発砲して的確に隊員達の心臓部を撃ち抜いたりヘッドショットをして倒していく。


「誰だ!?何だ?この餓鬼共は?うっ…」

次々に同胞が倒されていくのに気付いた隊員が、振り向くと額のど真ん中に銃弾が当たり倒れた。


「何者だ?」


「俺達は、特殊部隊だ。お前達、なぜ無抵抗な民間人を殺戮しているんだ?」


「こいつらが神崎博士を隠していた。しかも、神崎博士の居場所を吐かないから罰としてだ。だから、お前達には関係ないことだ」


「関係ない?って、あなた達はただ殺戮を楽しんでいるだけでしょう?あなた達みたいな馬鹿な人とこうして会話するのも嫌だし、それ以前に私の前にいる時点で罪よ。虫酸が走るわ」


「「何だと!?小娘が!」」

隊員5人が栞に襲い掛かろうとした瞬間、銃声が1発だけ響いたと同時に5人は倒れた。


栞と流星は、クイックドローの技術でほぼ同時に銃弾を連射して倒したのだった。


「お兄様、ありがとうございます。ですが、私の実力を認めて頂きたいのですが」


「悪い、俺もイラッとしていたからな。つい、手が出たんだ。それに、お前の実力は疑ってないさ。何せ、俺の次に強いからな」


「フフフ…そうでしたか、それは仕方ありませんね」

栞は、クスクスと笑った。


「こいつら、フザケやがって!殺すぞ!」


「「オォ!」」

隊員達は、一斉に流星と栞に襲い掛かる。


「仕方ないか。栞、なるべく時間を掛けるな。神崎博士達が心配だ。さっさと終わらせるぞ」


「わかりましたわ、お兄様。では、遠慮なく全力で行かせて頂きます」

栞の瞳の輝きが消え、まるで冷たく底が見えない闇の様になった。


そして、流星と栞は左右に別れて素早い動きで隊員達を翻弄しながら無双して150人の隊員達を10分以内で殲滅した。


「終わったな。そっちはどうだ?栞」


「はい、これで…」

栞は、目の前で腰を抜かしている最後の隊員の頭に銃口を向けていた。


「何なんだ?お前達は。なぁ、頼む。助けてくれ、俺達が悪かっ…ぐぁ…」

腰を抜かしている隊員は震えながら栞に懇願したが、額のど真ん中に銃弾が当たり貫通して後ろに倒れた。


「終わりました、お兄様」

栞は何事もなかったように、流星に振り返り笑顔を浮かべた。


「じゃあ、急いで行くぞ」


「はい!」

流星は振り返り銃撃や爆発音がする森の中へと走り、栞は流星の後を追った。



【過去・森の中】


流星と栞は待ち構えている隊員達に見つかったら襲撃されると思っており道路を走らず森の中を走っていると、文雄達の車を襲撃した隊員達が引き上げようとしている隊員達の姿が見えた。


「お兄様」

栞が小さな声で前を走っている流星に尋ねると、流星は無言で頷いた。


森の中で隠れていた隊員達は嬉しそうに会話をしながら引き上げようとしていた。

「俺のガトリング砲で1台潰したぜ」


「何だよ、そんなので潰しても何も面白くないだろ?このアームストロング砲の威力を見たかよ。直撃した車なんか一発で爆発していたぜ」


「そりゃ、アームストロング砲の前だとそうなるわな。アハハハ」


「チッ、俺も大砲が撃ちたかったぜ」


「拗ねるなよ。まぁ、十分に楽しめたし良いんじゃねぇ?」


「そうだな。おっと、右側に逃げた車達はまだ残っているみたいだぜ?」


「マジか?やるな。ところで、左側に逃げた車達はどうなった?」


「左側に逃げた車達は、全車両殲滅したと報告が来た」


「ターゲットは、もう死んだと思うか?」


「さぁな、確率的に生きている方が低いとは思うがな。うっ…」

ヘルメットを被っている隊員の側頭部に銃弾が貫通して倒れた。


「おい、どうした?躓いてコケたのか?大丈夫…」

隊員は目の前で倒れた同胞を見て近寄ろうとした瞬間、額に銃弾が貫通して倒れる。


「「て、敵襲だ!敵…」」

その様子を見ていた隊員2人が、敵襲だと理解して叫ぶと同時に後頭部と側頭部に銃弾が貫通して倒れた。


「敵襲だと!?」

隊員達は、すぐに首に掛けてあるマシンガンを構えて辺りを警戒する。


辺りは静まり返り、今まで会話して聞こえなかった小さな虫の鳴き声が聞こえて来るだけだった。


「なぁ、さっき銃声の音がしなかったぞ。敵は、ライフルで長距離から俺達を狙っているんじゃないのか?」


「いや、その可能性は低い。この森の中では木々が生い茂っているからライフルでの長距離射撃はほぼ無理だ。おそらく、銃口にサイレンサーをつけて銃声を消しているんだ。そして、今も息を潜めて俺達の近くに隠れている。気をつけ…」

説明していた隊員が、頭を撃たれて倒れた。


そして、隊員達は何もできずに次々に撃たれて倒れていく。


「糞、出てこい!どこに隠れてやがる!ハァハァ…」


「お、おい!馬鹿やめろ!」

隊員の1人は恐怖で精神的に追い詰められており、持っていたガトリング砲を設置して目の前に同胞がいるにも関わらず連射する。


「「ぐぁぁ…」」

ガトリング砲の銃声と隊員達の悲鳴が森の中に鳴り響く。


ガトリング砲の前にいた隊員達は、撃たれて倒れていた。


他の生き残った隊員達は、ガトリング砲を連射して仲間を殺した光景を見て放心状態に陥っていた。


「ハァハァ…。や、やったぞ!これなら、敵も死んだはずだ。アハハハ…」

ガトリング砲を連射した隊員は、恐怖のあまり精神が病んでおり錯乱していた。


「おい!お前、何てことしているんだ!お前は、仲間を撃ったんだぞ!殺したんだぞ!わかっているのか!?」

生き残った隊員の1人は、ガトリング砲を連射した同胞の後ろから肩を掴んで責める。


「う、うるせえ!」

ガトリング砲を撃った隊員はナイフで、文句を言ってきた同胞の胸を刺した。


「がはっ…お、お前…」

刺された隊員は、刺した同胞の服を掴んだまま倒れた。


「ハァハァ…俺は、黙って殺られるのを待つのは御免だ。こうでもしないと…うっ…」

ガトリング砲を撃った隊員は、刺した同胞を見て薄気味悪い笑みを浮かべ、再び、ガトリング砲を握ろうとした瞬間、額に銃弾が貫通して薄気味悪い笑みを浮かべたまま倒れた。


放心状態だった他の隊員達は我に返り、蜘蛛の子を散らすように一斉にその場から逃げ出す。


「「うぁぁ…」」

隊員達は完全に戦意喪失しており、我先にと必死に逃げ出す。


完全に狩られる側になってしまった。


流星と栞は姿を見られない様に音を立てずに木々の枝を移動しながら、逃げ回る隊員達を背後から的確に拳銃で撃ち抜いて仕留めていく。


そして、流星は最後の1人になった隊員の足を撃ち抜き転倒させた。


転んだ隊員は必死に四つん這いで逃げようと試みるが、上から流星が飛び降りてきて目の前に着地した。


「ヒィ…」


「おい、神崎博士達の車は今どこだ?教えろ?」


「お、教えるから助けてくれ」


「早く、さっさと答えろ」


「わ、わかった。生きているかわからないが、もし生きているとすればこの先の道路を右に曲がった先だ。だが、もう間に合わないと思う。何せ、最終的に完全に包囲して…ぐぁ…」

隊員は、額を撃ち抜かれて倒れた。


「お兄様…」

栞は、木の枝から飛び降り心配した表情で呟いた。


「取り敢えず、急ぐぞ栞」


「はい」



【過去・森の道路】


流星と栞が急いで文雄達に向かっていたが、既に遅かった。


文雄と六花は大成を庇って亡くなり、生き残ったのは大成1人だけだった。


「大佐、どう致しますか?」

隊員の1人が大佐の指示を仰ぐ。


「確実に仕留めなさい。」

大佐は、興味がない声で指示した。


「了解!」

隊員は邪悪な表情を浮かべて頷きながら大成に歩み寄り、泣いている大成の額に銃口を押し付ける。


「じゃあな、坊主。」

隊員は引き金を引こうとした時、銃声が響く。


「ぐはっ」

大成の額に銃口を押し付けていた隊員のこめかみから血が飛び散り倒れた。


笑って見ていた隊員達は、銃声が聞こえた方を振り向き警戒する。



隊員達の視線の先に、坂を下ってくる2人の影が見えた。

そして、雲で隠れていた月が現れ、月光がその2人を照らす。


1人は青年、もう1人は大成と同い年ぐらいの少女で着物を着ていた。


「貴様達は何者だ?」

隊員の1人は、殺気を放ちながら尋ねる。


「おや?これはこれは、特殊部隊の総隊長の大和流星さんに、その妹・大和栞さんではないですか?ところで、これは、どういうことですか?」

答えたのは大佐だった。


大佐は、鋭い眼光で流星と栞を見る。



「お兄様と私に殺気をぶつけるとは、無礼ですよ。」

栞は、殺気はまだ出していないが激怒していた。


「栞、まだ待て。」


「はい、お兄様」

栞は、頭を下げて一歩下がる。


「松木大佐殿、1つお尋ねますが、我々の今回のミッションは神崎文雄博士、及び神崎六花博士の捕縛、拘束です。あなたがたも、そうであったはずですが?」


「そうですね。ですが、捕縛できれば捕縛するようにということだったはずですよ。それに、ある御方から確実に始末する様にと依頼されましたので私達はただそれを実行し始末しただけです。」


「なるほど。ところで、そのある御方とは米田純平博士ではないのですか?」


「……。あなた方は、一体どこまで知っているのですか?」


「さぁ、どうでしょう?」


「致し方ありませんね。」


「大佐、良いのかよ?仲間だぜ。」


「ええ、危険分子は排除しなければなりません。例え、それが仲間であってもです。」


「流石、大佐様だぜ!いくぜ!野郎共!」

隊員達は、流星と栞に銃口を向けようする。


「仕方ないな。やるぞ、栞。って……。」

溜息しながら指示する流星だったが、栞は既に行動に移っていた。



栞は、走りながら両裾を前に出す。


栞の両手は着物の袖で隠れており、その両裾から発砲音が響く。


栞が発砲した弾丸は、隊員達の額や心臓部などの急所に次々に当たり、隊員達は息絶えていく。


栞は恐怖も迷いなく、怯んでいる隊員達に接近する。


隊員達は、栞向かって発砲したが、栞はジャンプして銃撃を避けて隊員達の懐に着地した。


「ぐぁ」

裾で見えないが栞は両手にナイフを持ち変えており右の裾を振るい、隠し持っているナイフで銃を握っている隊員の手首を斬りつてけて銃を落とさせ、左の裾を振るって隠し持っているナイフで隊員の首を斬りつけて倒す。


「気を付けろ!この娘、裾に色々と武器を隠し持っているぞ!」

栞は隣にいる隊員が発砲しようとしていたので左の裾を振い、隠し持っているナイフで拳銃をなぎ払って銃口を反らした。


「そんな馬鹿な…。」

栞は、流れる動作で右の裾を隊員の心臓部を押しつける様に右手に隠し持っているナイフで突き刺した。


「うっ」

心臓部を突き刺された隊員は、吐血しながら倒れる。


近くの隊員達が栞に発砲したが、栞は近くの別の隊員の背後に回り背後に回る時にナイフで隊員のアキレス腱を斬りつけて倒して盾にした。


盾になった隊員は、簡単な殲滅作戦だったので防弾チョッキを着ておらず、味方の銃撃を受けて息絶える。



栞の背後にいる隊員達は、栞に向けて発砲しようとしたが、流星の銃撃により、次々に撃たれ倒れていく。


「がはっ。」

「ぐっ。」

「糞!誰だ。うっ…。」

隊員は銃撃した流星に振り向こうとしたが、額を撃ち抜かれた。


「おいおい、妹ばかりじゃなく、俺も忘れないで欲しいな。」

流星は左右の手に拳銃を持って次々に発砲していき、時折、流星は栞の援護射撃をして栞の安全も確保しながら隊員達を倒していく。



そして、とうと松木大佐1人だけになってしまった。


「そうそう、言い忘れていたが、山に配置していたお前の部下達は、ここに来る途中に排除させて貰った。だから、誰も助けには来ないぞ」

流星は、どうでもいいように言う。


「そんな、馬鹿な…。300人いたのだぞ?こ、こんなことが……。ありえない、決して、あってはならない…。フッ、フフフ、アハハハ……。」

松木大佐は、信じられない現実を目の前にして壊れたように笑い始めた。


「じゃあな、松木大佐殿。」

流星は、壊れた松木大佐の額に銃口を押し付けて引き金を引いた。



「ところで、お兄様。そこにいる子供はどう致しますか?」

恐怖で怯えている大成を見た栞は、溜息をして流星に尋ねる。


「何だ?栞。その子が気になるのか?それとも、好きになったのか?」


「いえ、そんなことありません。私は、自分より弱い男などに興味がありませんので。それに、私が好きな人は、お兄様だけです。」

栞は、面白くなさそうに迷いなく答えた。


「おいおい……。」

栞の言葉を聞いて呆れた流星は、苦笑いを浮かべたまま大成に歩み寄る。


「なぁ、君。えっと大成君だったよな?これから、どうする?どうしたい?」


「ぐずっ、うっ…。えっ!?」


「俺と栞は、昔、君のお父さんとお母さんにお世話になったことがある。だから、君を放置にはできない。行く当てがないなら、俺の知っている児童保護施設を紹介するがどうだろう?」


「僕は、お父さんとお母さんの敵討ちがしたい。だから、ぼ、僕を強くして下さい。」

左腕で涙を拭きながら大成は、流星に懇願する。


「良いだろう。だが、死にたくなるほどキツイが、それでもするか?大成」

大成の力強い瞳を見た流星は、口元を緩める。


「うん、いえ、はい!お願いします!」

大成は視線を逸らさずに流星の瞳を見たまま、元気よく返事をした。


「ふ~ん。」

そんな大成を見た栞は、大成の評価を少しだけ改めることにした。



【エルフの森・洞窟】


栞を先頭に、大成、リリー、ジャンヌ、ウルミラ、ルジアダは洞窟を歩いていた。


「という訳で、大成と出会ったの。あの出会いは、運命の出会いだと思ったわ。今でも、あの時の幼い頃の大成の一途な力強い瞳を思い出すとキュンとするわ」


「アハハハ…あの時は、栞と流星義兄さんには本当に心から感謝しているよ。お蔭で、僕はこうして皆の役に立てる様になったし生きているからね」


「合った時から、大成ならやればできると思っていたわ」


「そう言ってくれると嬉しいなって、ちょっ、痛いんだけど」

大成が笑顔を浮かべると、嫉妬したジャンヌとリリーはムッとしながら大成の左右から頬をつねった。


「捨てられた女って、こうも見苦しいのね」


「「何ですって!」」

ジャンヌとリリーは、殺気を放ちながら栞を睨みつける。


「あまり怒るとシワになるわよ。他の男にモテなくなるわよ」

栞は、右手の裾を口元に当てて嘲笑う様に余裕の満ちた笑みを浮かべた。


「「殺すわ!」」


「ちょっと、2人とも落ち着いて。ウルミラも見てないで、2人を宥めるのを手伝って…」


「あの大成さん」


「何?ウルミラ」


「あの、その、見捨てないで欲しいです」

ウルミラは涙目で大成を懇願する。


「ちょっ、ウルミラ。見捨てるも何も見捨ててないから!頼むから、泣かないで!栞、頼むからからかうのはやめて欲しい!」

大成は、どうしていいのかわからなくなり叫んだ。

次回、エルフ国の王であるトネル国王と接触します。

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