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大切な人と決着

大成は巨人族の問題を解決し、大成はメンバーを選んで説得するべく、反旗を起こしている獣王の弟君であるアレックスの国オルセー国へと向かった。


しかし、アレックスは聞く耳を持たず戦闘になる。


大成は、前の世界で同じ特殊部隊だった【アルティメット・バロン】と戦うことになる。


【アルティメット・バロン】の猛毒の能力で苦戦を強いられる大成。

【獣人の国・オルセー国】


レオラルドはアレックスと、リゲインはキルシュを相手にしていた。


ドンバネーヤは深刻そうな表情で見守り、リーエは城壁の上に胡座を掻いて楽しそうに口元に笑みを浮かべながら他人事かの様に見守っていた。



アレックスが剣を抜刀し膨大な魔力と殺気を放ったので、レオラルドも腰に掛けてある剣を抜刀して膨大な魔力を解き放つ。


「もう、無駄な抵抗はやめるんだ。アレックス」


「無駄かどうかは、わからないだろ?兄貴。【アルティメット・バロン】の力は猛毒だ。どんな相手でも少しでも触れれば死ぬ。どんな奴だって敵わない最強の能力だ。【アルティメット・バロン】さえ居れば、負けることは決してない!どうだ?兄貴。俺達で、この世界を手に入れようじゃないか?」


「何度も言わせるな!俺は断る!それに、【アルティメット・バロン】は強いのはわかっている。俺でも敵わないだろう。だが、上には上がいる」


「上はいないさ。だが、残念だ兄貴。正直に言うと、一緒に歩みたかった」

アレックスは、レオラルドに向かって走る。



熊の獣人ナイジェルは、狼の獣人フェガールの背後から鋭い爪で切り裂こうとするが避けられた。

「おっと、危なかったぜ。やはり、貴様は裏切るのだな?ナイジェル」


「気付いていたのか?」


「当たり前だ。お前は、ドルシャーと同等以上に獣王を慕っていたからな。ダメ元で誘ってみたが、お前は悩まず即答しただろ。誰だって怪しく思うだろ?」


「なぜ、俺を始末しなかった?」


「そんなことは簡単だ。お前が獣王達に情報を伝える前に事を起こせば意味がないだろ?そもそも、お前がいない時に話し合えば良いことだからな。お前が此方にいる間は、獣王側は戦力を失っており不利になるだろ」


「そういうことだったのか…。だが、今日でお前達の野望は(つい)える」

ナイジェルは、膨大な魔力を解き放つ。


「ハハハ…俺と戦うつもりか?面白い!この際、俺とお前の実力の差を思い知らせてやる!」

フェガールも膨大な魔力を解き放ち、両手に魔力を高めると爪が鋭くなりナイジェルに襲い掛かる。


フェガールは一直線に向かわず、狙いを定めさせない様にジグザグに走りながら接近する。


「フン」

ナイジェルは、右手を力強く振り下ろして鋭い爪で引き裂こうとする。


「あまい!」

フェガールは、更にスピードを上げてナイジェルの攻撃を避けながら右手の鋭い爪でナイジェルの横腹を引っ掻いた。


「ぐぁっ!手が…」

声をあげたのはナイジェルではなく、攻撃したフェガールの方だった。


「く、糞!ナイジェルっ!お前の、その鎧はただの鎧じゃないな!ぐっ」

フェガールは、苦悶の表情を浮かべながら左手で右手を押さえて蹲り聞く。


「そうだ、魔人の魔王修羅が作った鎧だそうだ。この鎧は魔力を込めるほど強度が上がる品物だそうだ」

ナイジェルは、魔鉱石を練り込まれた漆黒の鎧を軽く叩く。


大成はレオラルドにアレックス側に誰か潜ませていないかを聞いており、その時に密かにこの鎧を渡すことや、鎧の能力と欠点も伝える様に頼んでいた。


大成にとって、この鎧は失敗作品だった。

なぜなら、魔力を込めるほど強度は増し斬撃は防げるが、ハンマーなどの鈍器による衝撃と属性による耐性には殆ど軽減できなかったからだった。


それでも、そこら辺の名匠が作った鎧よりも衝撃は緩和でき、属性の耐性は高いが大成は気に入らなかった。


そのこともナイジェルは理解し、使用していた。


「ウォォ!」

ナイジェルは走り、地面に膝をついているフェガールに右手の爪で切り裂こうとする。


「くっ」

フェガールは右手を押さえたまま立ち上がり、バック・ステップして避けた。


空振りに終わったナイジェルの爪は、地面を切り裂いた。


「相変わらずの馬鹿力だな。まぁ、当たらなければ意味がないがな」


「お前こそ、相変わらず逃げ足だけは速いな」


「アッ!?俺を速さだけだと思うなよ。雷狼!」

フェガールは、額に青筋を浮かべながら身体中からバチバチと稲妻が迸りスパークする。


(雷狼状態になったということは、雷歩から繋げる攻撃ライジング・ストリームが来るな。予想通りの展開だ。俺達獣人は身体能力は高いが魔力が少ない。雷歩は強力な分、魔力消費が激しい。ならば、自身に近づけさせない様にすればフェガールは魔力枯渇で倒れる)

「……。アース・ニードル」

気を引き締めて身構えたナイジェルは、風が吹いた瞬間、土魔法アース・ニードルを唱えて自身の足元の地面から突き出る様に土の針を一瞬で作り出しフェガールに向かって次々に土の針を作り出す。


「いい判断だな。攻撃と牽制を同時にするとはな。だが、これを食らって死ね!ライジング・ストリーム!」

「なっ!?以前より速くなっているだと!?」

フェガールは雷歩を使って一瞬で土の針の間を掻い潜り、反応できていないナイジェルの懐に入り左拳でナイジェルの鳩尾を殴った。


「ぐはっ」

ナイジェルは「く」の字になり、全身に電流が流れて背中から勢い良く稲妻が迸り倒れた。


「さぁて、次は誰を倒そうか…。伝説の【漆黒の魔女】にするか。倒せば、俺も伝説になるからな」

フェガールは振り返り、リーエの方へと歩き出す。


「うっ…ま、待てぇ…。お、俺は、まだ…負けて…いない…ぞ…」

ナイジェルは土を握り締めながら、立ち上がった。


「ほぅ、利き腕じゃなくても、あの雷歩での加速を上乗せした攻撃を食らっても立ち上がれるとはな。同じ【セブンズ・ビースト】なだけはある。しかし、鎧は砕けるどころか無傷か。全く、どんだけ耐久力が高い鎧なんだよ。流石に、俺のプライドが傷つくぜ」

フェガールはナイジェルに振り返り、獰猛な笑みを浮かべながらナイジェルに歩み寄る。



ワニの獣人リゲインは、戦斧を地面に突き刺して鷹の獣人キルシュに話し掛ける。


「キルシュよ、大人しく投降しろ。それが、お前達のためだ。今なら、まだ間に合う。軽い処罰で済む」


「あのさ、リゲイン。前から思っていたんだが、いつまでも俺達を見下すなよ!確かに、お前は【獣王の右腕】や【獣王の半身】と呼ばれていたが過去の話だ。今は、俺の方が強いことを証明してやる!」

激怒したキルシュは、背中に生えている翼を羽ばたかせて上空を飛ぶ。


「やむを得んか…。致し方あるまい、後悔するなよキルシュ!」

リゲインは、地面に突き刺した戦斧を手に取り構える。


「エア・ブロウ」

キルシュは、右手を前に出して突風を発生させると共に背中の翼で上空へと羽ばたく。


「ハッ!」

リゲインは、戦斧を振り下ろして突風を両断した。


「ハッ!エア・カッター」

その隙に上空にいるキルシュは、羽1枚1枚に魔力を通わせることで柔らかい羽が鋼鉄の様に硬くなり無数の羽を飛ばし、更に追い討ちで両腕を交互に連続振って風の刃を複数放つ。


「オラッ!」

リゲインは、振り下ろした戦斧に魔力を込めてアッパースイングして炎を巻き起こした。


炎は、全ての羽と風の刃を飲み込んで一掃した。


「くっ、うっ…」

キルシュは慌てて急旋回して炎を避けたが、周囲の余熱で背中に軽い火傷を負った。


「キルシュよ!この通り、お前の攻撃は俺には通用せん!だから、もう大人しく…」


「まだ、戦いが始まったばかりだ!エア・アーマー」

キルシュは風の鎧を纏い、上空からリゲインの周囲を物凄いスピードでグルグルと駆け回る。


「撹乱のつもりか?だとしたら、無意味だ。お前の姿はハッキリと見えている」


「そうだろうな。本当の目的は撹乱じゃない」

キルシュが不敵に笑うとリゲインを中心に竜巻が巻き起こった。


竜巻の中に鎌鼬が発生していたが、リゲインは身体強化をしていたので無傷だった。


「ぐっ」

リゲインは、目元の位置に腕を上げて堪える。


「流石、リゲインだな。【獣王の半身】と言われるだけのことはある。この竜巻の中でも無傷とはな。だが…」

キルシュは、上空を駆け回りながら鋼鉄の羽を飛ばす。


鋼鉄の羽は竜巻の中に紛れ込み、リゲインの全方向から襲う。


「ぐぁぁ」

リゲインは、身体中から血が出血する。


(このまま、ここに居たら危険だ)

リゲインは、竜巻から脱出しようと一歩一歩確実に前に歩き出す。


「そうはさせないぞ!俺自身にもダメージを受けるが仕方ない。俺の切り札で決めてやる!ハリケーン!」

キルシュは風大魔法ハリケーンを唱えると周囲に4箇所に竜巻を発生させた。


「覚悟しろよ!リゲイン。ハリケーン・クラッシャー!」

周囲の竜巻は、キルシュとリゲインがいる中央の竜巻に吸い込まれる様に引き寄せられていき、1つになって巨大な竜巻へと変貌し、竜巻の風力と回転力が増して稲妻が迸る。


「「ぐぁぁ」」

竜巻の中にいるリゲインとキルシュは、感電した。


キルシュは、風の鎧を纏っていたためリゲインよりもダメージは受けていないが意識を保つのがやっとだった。


(ぐっ、このままでは…。こちらも捨て身の覚悟でやるしかない)

「ぐぉぉ、アクア・アーマー、ヘル・フレイム・スラッシュ」

リゲインは水の鎧を纏い、戦斧に魔力を込めて炎を放つ。


竜巻の中から炎を放ったことにより、火災旋風が発生し巨大な竜巻は更に巨大化して灼熱の炎を纏った。


「「あ、熱っ!」」

「た、退避!総員退避だ!」

騎士団達は、慌ててその場から離れる。


「ぐぁぁ…」

炎の竜巻中にいるキルシュは意識を失なって全身を火傷を負いながら弾き飛ばされた。


キルシュが意識を失ったので竜巻は次第に霧散して炎も鎮火していった。


炎の竜巻が鎮火してリゲインの姿が見えた。


「ぐぁっ」

リゲインは、全身に火傷を負っており片膝をついて戦斧を地面に刺して倒れそうになった体を支えた。


「はぁはぁ…ギリギリだったな。本当に危なかった…」

リゲインは、懐からハイ・ポーションを取り出して飲んで大の字で倒れた。



襲って来た騎士団達を1人残らず気絶させたドンバネーヤは、横目でリーエの姿を見てため息を吐く。

「レオラルド、何だ!その腑抜けた攻撃は!違うだろ!」

城壁の上に座っているリーエは、皆の戦いを見ながら片手を挙げて怒鳴っていた。


「あの、リーエ様。戦いが終わった我々は助太刀に入った方が良いのではないでしょうか?」


「そんな無粋な真似はするな。これは、お互い同士の意地のぶつかり合いでもある。それに、謎の爺さんが来るやもしれん。その時のために体力の温存するのが私達の役目だ」


「はい…」

(警戒している様子は皆無な気がするのだが。もう、どう見ても完全に観客の立場ではないのだろうか?)

ドンバネーヤはリーエの姿を見て、再び深いため息を吐いた。



一番激しい戦いを繰り広げている大成は、地面から頭を出した首の長い毒龍8匹に囲まれており、目の前には【アルティメット・バロン】がいた。


「フハハハ…。どうですか?大成。確かに、君の動体視力と身体能力、戦闘技術はズバ抜けています。ですが、流石の君もこの状況は厳しいでしょう?」

【アルティメット・バロン】は、両手を挙げて盛大に笑いながら尋ねる。


「……。」

大成は、無言で辺りを見渡す。


「では、戦いの続きをしましょう!行け!ヒドラ達。」

【アルティメット・バロン】は、短剣を握っている右手を振りかざすと、大成を囲っているヒドラ8匹が一斉に大成に襲い掛かる。


大成は、左側から襲ってきたヒドラをジャンプで躱して降下しながら剣でヒドラの首を斬った。


着地と同時に背後からヒドラが襲ってくる。

大成は、振り返りながら剣に魔力を込めて剣に纏っている魔力が大きくなり巨大な刀身に変貌させて横に一刀両断した。


ヒドラが真上から襲ってきたので、大成は前にダッシュしてヒドラの懐に入りながらジャンプして剣を振り、ヒドラの下側の首元を切り裂く。


大成がジャンプして空中に、ヒドラ4匹が一斉に襲い掛かる。


大成は、体を捻って回転しながら巨大化した剣を振り抜く。


ヒドラ4匹は、ほぼ同時に切り裂かれた。


だが、残りのヒドラは口元に膨大な魔力を収束しており、大成が振り向いた瞬間、猛毒の光線を放つ。


「ぐっ」

大成は、剣を上から振り下ろして猛毒の光線を斬ろうとするが拮抗する。


「ぐぉぉ!」

大成は更に魔力を剣に込めて光線を切り裂いた。


「ダァァ!」

地面に着地した大成は、直ぐにジャンプして光線を放ったヒドラの首元に飛び込んでヒドラの真横を通り抜ける際に剣を横に凪ぎはらってヒドラの首を切り飛ばした。


「これで、終わりか?ロリコン伯爵」

大成は、剣の刀身を肩に担いで尋ねる。


「正直まさか、あっという間に無効化されるとは予想外で驚きましたが。大成、1つ忠告しましょう。あなたは、私を甘く見すぎですよ」

【アルティメット・バロン】が不敵な笑みを浮かべた瞬間、ヒドラ8匹は再生した。


「はぁ、やはりな。いつも言っているが、お前の考えは見抜いている」

大成は誰にも見えない速さで回転しながら魔力で巨大化した剣を振り抜き、一瞬でヒドラの首を跳ねる。


「ククク…。私の考えを見抜いているですか?そう思っているならば、その余裕が命取りになりますよ!」

【アルティメット・バロン】は嘲笑いたがら右手の短剣を地面に突き刺す。


再生したヒドラ8匹のそれぞれの根元に魔法陣が浮かび上がり、ヒドラの体はドロドロに崩れ落ちると共にヒドラの魔法陣から紫色の魔力があちらこちら伸びていき、大成の足元を中心に魔法陣が完成した。




「フハハハ…。真の切り札というものは、最後まで隠すものです!流石の君も、間近でこの広範囲の攻撃は避けることは無理でしょう!これで、終わりです。さようなら、大成。ポイズン・サラマンドラ!」

【アルティメット・バロン】は、勝ち誇った面持ちで大成を指差し右手を上に挙げると膨大な魔力を放ちながら魔法陣が紫色に輝く。


「……。」

大成は、剣を鞘に戻しながら真上にジャンプする。


「だから、もう逃げられませんよ!さぁ、大人しくドラゴンに食べられて猛毒に侵されて死になさい!」

魔法陣から巨大な紫色のサラマンドラが出現し、大きな口を開けて大成を飲み込もうとする。


右手の人差し指と中指、親指を立てて銃の形にして左手を右手首を掴んで右の指先に闇の様に真っ黒な魔力を集中させて高密度に圧縮する。


「な、何ですか!?この禍々しい魔力は…。」


「ブラック・バレット」

大成は、真下から迫ってくるポイズン・サラマンドラに向かって高圧縮した真っ黒な魔力弾を放つ。


真っ黒な弾丸は、サラマンドラを一瞬で消滅させ、大地は底が見えない深さまで深い穴が開いた様に抉れた。


「だから、言っただろ?ロリコン伯爵。お前の考えは見抜いているっと」


「な、何故、わかったのですか?」


「簡単なことだ。ヒドラの位置が等間隔だったからだ。等間隔イコール魔法陣に使う可能性があると、誰もが思うだろ?俺なら、始めの位置は等間隔せずに戦っている最中にわからない程度に少しずつ動かして自然と等間隔の位置に動かすがな」

大成は、一瞬で【アルティメット・バロン】の懐に入る。


「なっ!?ま、まだ、終わっていません!私に触れれば、君は猛毒に侵されて死ぬのですから!直に触れれるものなら触れて…ぐはっ…」

焦る【アルティメット・バロン】は、自分の優位を信じて挑発する様に両手を開いてアピールしたが、大成の右拳が鳩尾に入り、【アルティメット・バロン】は苦痛の表情を浮かべて両手で殴られた鳩尾を押さえた状態で大成の頭上に浮き上がった。


「ハァァ!」

大成は、頭上に浮き上がっている【アルティメット・バロン】の顔面と胴体を左右の拳で連打する。


「ガハァ…」

【アルティメット・バロン】は、上空に留まった状態でなされるがまま滅多うちに殴られる。


「ダァァ!」

大成は最後に右足の回し蹴りで、【アルティメット・バロン】の顔面を蹴り飛ばした。


【アルティメット・バロン】は、地面を何度もバウンドして城壁に衝突した。


「ぐっ、ゴホッ…ハァハァ…。大成、君は愚かなことをしましたね…。もう(じき)、猛毒が身体中に回って…死ぬ…。何故、剣で攻撃しなかった…のですか…。剣で攻撃すれば…君は死なずに…済んだはずですが…。」

吐血した【アルティメット・バロン】は、口元についた血を右の袖で拭き取り、ゆっくりと立ち上がりながらふらつく。


「剣で攻撃すれば、隙ができているお前を確実に殺してしまうからな。それに、お前は俺の剣を警戒していた分、拳での攻撃の警戒を緩めていただろ?」


「フハハハ…。相変わらずですね…君は…。救いようがないほど優しくって…あまい…。他人のために…自ら死を選ぶなどと…本当に愚かだ…」


「1つ間違っているぞ、俺は死なない。証拠を見せてやる。ほら、この通りにな」

大成は、両手と右足の魔力を高めて自己再生を促して元の状態に戻る。


「~っ!なっ、どういうことですか?それに、始めから毒が効かないのならば、なぜ始めから…」


「もう、わかっているだろ?お前を油断させるためだ。お前は、次第に自分の毒が少しでも付着することができれば勝てると自分の優位を確信していったはずだ」


「では、始めから私は君の掌で踊っていた…ということですね…。」

【アルティメット・バロン】は、力のない笑みを浮かべた。


大成は、ゆっくりと【アルティメット・バロン】に歩み寄る。


「さぁ、私を殺しなさい大成。もう私に勝機はありません。私は、覚悟はできてます」


「待って下さい!」

1人のメイドが両手を広げて、大成と【アルティメット・バロン】の間に割り込んだ。


大成は、足を止めた。


「お願いします!どうか、バロン様を許して頂けませんでしょうか?それか、私の命を差し出しますので、どうか許して頂けませんでしょうか?お願いします!どうか、どうか…」

メイドは、深く頭を下げる。


「確か…あなたは…いつも私の傍にいた…。」


「はい、ミヨと言います。私のことを覚えて下さっていたのですね。とても嬉しいです」

メイドのミヨは、顔だけ【アルティメット・バロン】に振り向く。


「なぜ…私を庇うのですか…?」


「バロン様は、お忘れになっておられる様ですが。私は、鮮明に覚えています。バロン様が人間の奴隷商人の店を次々に潰して頂いた際、人間に捕まって奴隷となっていた私達を解放して下さりました。お蔭で、こうして再び家族や友達と再開でき、自由に生きることができてます。もし、あのまま奴隷のままだったら、きっと私は…。だから、少しでもお役に立てるのであれば、例え、この命を差し出せと言われずとも命を差し出す覚悟があります!」


「あの無理やり奴隷など…させている輩達が気に入らなかった…ので潰したまでです。それこそ、気紛れで…あなた達を助けただけです…。あなたには、関係ない…。大成、殺すのなら私だけに…」


「いえ、例え気紛れでも構いません!どうか、バロン様の命だけは…」


「先ほども言ったが、元々、殺す気は始めからないから安心しろ。ただ、ロリコン伯爵。お前に言いたかったことがある。本当に大切な人は、すぐ側にいるってことだ。目の前にいるミヨさんを大切にしろよ。俺は、それだけが言いたかったんだ」


「フフフ…。本当に君は…何でも見通しているのですね…。これは…私の完敗です…」

【アルティメット・バロン】は、吹っ切れた笑みを浮かべて倒れた。


「バロン様!」

ミヨは、【アルティメット・バロン】を抱える。


「大丈夫ですよ。気絶しただけなので」

大成は、微笑んで立ち去る。


「あ、あの、本当にありがとうございます」

ミヨは会釈してお礼を言い、大成は振り返らず手を挙げて立ち去った。



一方、レオラルドとアレックスは両手で剣を握っており鍔迫り合いになっていた。


「な、何だ!?この膨大で禍々しい魔力は…」

大成の膨大で禍々しい魔力を感知したアレックスは、背筋がゾクっとし、大成達と距離を取って戦っているので見えないが大成がいる方向を見る。


「ハッ!」

アレックスの意識が大成達に向いた瞬間、その隙をついて、レオラルドは全力を出してアレックスを弾き飛ばした。


「くっ、だが、これで終わりだ!兄貴。インフェルノ!」

アレックスは剣を逆手に持ち変えて地面に突き刺し、炎大魔法インフェルノを唱えた。


アレックスが突き刺した剣の辺りの地面から高さ10mぐらいある炎が吹き荒れ、まるで炎の壁が体勢を崩しているレオラルドに迫る。



「ああ~!もう何やってんだレオラルドの奴は。もう見てられない!」

城壁の上に座ってレオラルドの戦いを見ていたリーエは、立ち上がった。


「リーエ様?」

ドンバネーヤは、リーエに振り向く。


「おい、レオラルド!さっきから、お前は何をしているんだ!人に助けを求めておきながら、お前自身が覚悟できないまま、何をぐだぐだと戦っているんだ!」

リーエは、レオラルドを指差して大声で指摘する。



「~っ!?」

(そうだ、リーエ様の言う通りだ。助力を頼んだ俺が、何て様だ。弟とか関係ない。目が覚めました、リーエ様)

「すまぬが、アレックス。今から容赦はしないぞ!インフェルノ!」

リーエの声が聞こえたレオラルドは覚悟を決め、腰を落として手を地面につきインフェルノを唱えた。


レオラルドが放ったインフェルノは、アレックスが放ったインフェルノよりも大きく、そして、猛々しく、インフェルノ同士が衝突したが、アレックスのインフェルノは意図も容易くレオラルドのインフェルノに飲み込まれた。


「な、何だと!?ぐぉぉ」

アレックスは、驚愕した表情を浮かべ叫びながら腕をクロスにして歯を食い縛り炎の壁に飲み込まれた。


炎の壁は消えたが、辺りの大地は黒く焦げており所々が赤く燃えていた。


「ぐっ」

アレックスは腕をクロスにしたままの状態で立っていたが、全身火傷を負っており激痛によって片膝を地面についた。


「アレックス様!」

フェガールは、アレックスに駆けつける。


「もう良いだろ?アレックス。あっちを見ろ。お前が最強だと豪語していた【アルティメット・バロン】だが、あの通り倒れているぞ。もう、お前達に勝機はない。今なら軽い処罰で済む。それに、もし私の行動に問題があると思った時は指摘してくれ。その時、話し合うと約束する。それで、どうだろうか?アレックス」


「……わかった。俺達の敗けだ兄貴。大人しく、投降する」


「アレックス様、本当に宜しいのですか?」


「仕方がないだろう。それに、元々、俺達は獣人のために動いてきたんだ。意地とプライドで、このまま勝機のない戦いをしたら、無駄に死者と負傷者が増えてしまうだけだ。それだけは、何としても回避せねばならん」


「わかりました…。アレックス様がお認めになるならば我々に異存はありません。そうだろ?お前達」


「「ハッ!」」


「すまぬな、キルシュ。それに、これまで命懸けで戦ってついて来た騎士団達よ」


「「いえ、我々はアレックスと共に戦えて光栄でした!」」

騎士団達は、一斉に敬礼した。


「兄貴、1つだけ頼みがある」


「何だ?」


「数日だけで良いから猶予をくれないか?俺が国民達に直接話して説得したい。頼む!」


「……。」

(アレックスを信じたいのは山々だが、これ以上、甘やかすわけにはいかんだろうな…)

レオラルドは腕を組んだまま考える。


「良いんじゃないですか?レオラルドさん」


「修羅殿!?しかし…」


「レオラルドさん、信じましょうよ」


「だが…」


「じゃあ、条件をつけましょう。それなら良いでしょう?レオラルドさん」


「……わかった。で、その条件とは?」


「アレックスさん、1つ条件があります」


「条件?」


「はい、条件を飲んで下さるのでしたら数日と言わず1ヶ月の猶予を差し上げます」


「「1ヶ月だと!?」」

アレックスだけでなく、レオラルドも声をあげる。


「はい、その条件とは【アルティメット・バロン】とメイドのミヨさんはお渡しできません。2人は僕達の目の届く場所で監視させて頂きます。ですが、心配なさらないで下さい。処刑や牢獄とかではなく軟禁させて貰うだけなので。それで、どうですか?レオラルドさんアレックスさん」


「はぁ、仕方あるまい。【アルティメット・バロン】を倒したのは修羅殿だ。だから、俺はもう何も言うことはない。好きにすると良い」

レオラルドはリーエに視線を向け、リーエが頷いたので渋々納得した。


「だそうです、アレックスさん。どうします?」


「わかった、その提案を飲もう」


「じゃあ、交渉成立ですね。では、怪我人を集めて下さい。僕が治療しますので」


「俺達は先程まで敵だったんだが、それに大勢いるのだが大丈夫なのか?」


「はい、大丈夫ですよ。問題ありません。獣人の人達は裏切るなどしないと信じていますので」

大成は笑顔を浮かべて頷き、その後、大成はグリモア・ブックを召喚してワイド・ヒールでアレックスや【アルティメット・バロン】など負傷者全員の治療を行い、ダメージが大きく重症だったリゲインとキルシュの2人にはヒーリング・オールで完全治療を施した。



「では、1ヶ月後頃にお迎えに参りますね」

大成は、笑顔を浮かべた。


「ああ、わかった。あと、手当てまで施して貰い、誠に感謝する」

アレックスは、大成と握手を交わしながら頭を下げてお礼を言った。


「修羅殿、私からもお礼を言わせてくれ。ありがとう。そなたのお陰で獣人の国は、また1つに戻れた」

レオラルドも頭を下げて感謝した。


「丸く収まって良かったです」


「では、皆者。帰国するぞ!」

レオラルドの筆頭に大成達は、パールシヴァ国へと帰国した。




次回、獣王際です。


もし宜しければ、次回もご覧下さい。

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