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ニールVSニルバーゴスと異変

父親のニルバーゴスの提案で、ニールはニルバーゴスと一対一の決闘することになった。

【巨人の国・アントロング国・テレン殿(でん)・リング】


ドンバネーヤの試合開始の合図と共コングが鳴り響く。


それと同時に、ニールとニルバーゴスは走り出して手四つ(お互いに両手で握り合い、力でねじ伏せようとする)になる。


「「ぐぬぬ…」」

ニールとニルバーゴスは額に血管が浮き上がり、お互いの力は互角で2人の足下のリングにヒビが入っていく。


「やるな、ニール。だが…」

ニルバーゴスは、ニールの顔に頭突きする。


「ぐぁ…」

ニールは、額から出血して怯んだ。


その隙にニルバーゴスは、右足でニールの横腹を蹴り飛ばす。


「がはっ」

蹴り飛ばされたニールは、背中から壁に激突した。


「まだだぞ!ニール」

ニルバーゴスは、楽しそうに全力でニールに向かって走りながら距離を詰めて右拳で殴りにいく。


「くっ」

ニールは、横に飛び込んでニルバーゴスの攻撃を避けて、すぐに立ち上がった。


ニルバーゴスの右拳が壁に激突して轟音を立てながら崩壊し、大小無数の崩壊した壁の破片は勢い良く観客達に向かって飛んだが結界に当たり、観客達に被害はでなかった。



「ほう、あの状態で良く動けたなニール」

ニルバーゴスは、ゆっくりとニールに振り返る。


「うっ…」

ニールは、額から出血した血を右袖で拭って構えた。




【特別観客席】


「凄いわね、お義父様」

妃のアーネスは、両手を合わせて喜んでいた。


「フッ、流石、親父だ。年をとっても【暴君】は健在だな」

バーネジアは、幅広い肘掛けに置いてある金でできたワイングラスに手に取った。


「ねぇ、ところで【暴君】って何?」

アーネスも金でできたワイングラスを手に取る。


「親父は一度、戦い始めたら止まらない。それこそ、自身が負傷して血塗れになってもな。そんな親父を見た他国は恐れ、親父は【暴君】と呼ばれる様になったんだ。テンションが上がった親父は、もう誰にも止められない。この勝負は、もう決まった」


「フフフ…なら、気は早いけど乾杯しましょう」


「そうだな」


「「乾杯」」

バーネジアとアーネスは、持っているワイングラスで乾杯した。




【リング】


「行くぞ、ニール。うぉぉぉ!」

再び、ニルバーゴスはニールに向かって走り、左右の拳で連打する。


「ぐぬぬ」

(このままでは…)

ニールは両腕をクロスにして防いだが、反撃する暇がなく、耐えることが精一杯だった。



「どうした?ニール。もう、終わりか?」

ニルバーゴスは、攻撃の手を緩めることなく尋ねる。


「くっ」

(このままでは…)

必死に耐えるニール。


「無いようだな。やはり、お前も、その程度だったか。残念だ。もう少しは楽しめると思ったんだが。とどめだ!」

ニルバーゴスは右拳に魔力を込め、それと同時にニールも右拳に魔力を込めた。


「面白い!」

「くっ」

ニルバーゴスは楽しそうな表情を浮かべ、逆にニールは苦渋の決断だった。

そして、二人は同時に右拳は振り抜いた。


「「制裁!」」

ニルバーゴスとニールの右拳は、お互いの頬にめり込んで2人は物凄い勢いで吹き飛び、壁に激突した。


「うっ、やるなニール。そうではなくてな。グハハハ…」

埃が舞う中、ニルバーゴスの嬉しそうな声が響くと共にニルバーゴスが姿を見せた。


ニルバーゴスは、右手の手の甲で鼻血を拭いリングに上がる。


「ぐっ…」

壊れた壁に凭れていたニールは、ゆっくりと立ち上がり口元から出血した血を右袖で拭いリングに向かった。


お互いに全力魔力を右拳に一点集中していたので、無防備な状態で拳が決まったことで2人の受けたダメージは大きく、体が震えていた。


「グハハハ…良い一撃だったぞ、ニール。行くぞ」


「父上、先ほども言いましたが勝たせて頂きます」

(防御に転じると先ほどと同じで、一方的に押され負けるの必然。ならば…)


「「うぉぉぉ!」」

ニールとニルバーゴスは、防御は疎かにして左右の拳で殴り合う。


お互いに殴られるとフラつくが、それでも攻撃の手を止めずに殴り合った。


「ニルバーゴス様!頑張れ!」

「ニールも負けるな!そうだ!そこだ!」

見ている観客達は、盛大に盛り上がった。




【特別観客席】


観戦していたバーネジアは、苛立っていた。


「糞!親父は、何をもたついているんだ!」

バーネジアは、強く拳を握り締める。


「落ち着いて、あなた。お義父様が勝つのでしょう?」

アーネスは、バーネジアの手を握る。


「ああ、そうだな。アーネスの言う通りだ。何も焦る必要はない。親父は、そろそろあの力を使うだろう」


「あの力って?刺青のこと?」


「そうだ。この刺青は、己の眠っている真の力を解放させてくれる」

バーネジアは腕を捲り、刺青を見せる。


「それって、本当に大丈夫なの?」


「勿論、それなりの負荷はある。他の脆弱な種族は死ぬみたいだが、俺達、巨人族は他の種族よりもタフだから耐えれる」


「私、何だか、その力は使わない方が良いと思うの…」


「心配はない。試しに、部下に刺青の力の解放をさせたが気絶はしたものの。2日後には、何もなかった様に目を覚ました。持続効果時間は、たったの10分程度だったがな。その後、親父も一度興味本位で試し、俺達も試したが大丈夫だった。ただ、全身が筋肉痛になったがな」


「そう…」

アーネスは、胸騒ぎがしていたが言葉にしなかった。




【リング】


殴り合いしていたニールとニルバーゴスは、お互い一度離れて息を整えていた。

「ハァハァ…やるじゃないか、ニール」


「ハァハァ…か、勝たせて頂きます」


「フ~、そろそろ終わりにしようではないか、ニール。俺の真の力を見せてやる。ハァァ!」

ニルバーゴスは、魔力を全快に解放すると共に刺青が青く力強く輝き出して会場を照らす。


刺青の輝きが落ち着くと、ニルバーゴスの全身を覆っていた魔力の力強さが数倍に増していた。


「な、何という魔力…」

ニルバーゴスの増大した魔力を肌で感じたニールは、たじろいだ。


「グハハハ…。久しぶりに力を解放したが、やはり、これは凄い。負ける気がしないな」

ニルバーゴスは、右手を見ながら拳を握ったり開いたりして感覚を確認する。


「再開だ、ニール。行くぞ」

ニルバーゴスは、一直線にニールに接近する。


「なっ!?」

ニルバーゴスのあまりの速さに、ニールは驚愕した。


「ぐぁ」

反応が遅れて無防備になっているニールの顔面にニルバーゴスの左拳が決まり、ニールはリングの上を転がる。


ニルバーゴスは走って、リングの上を転がっているニールの右足を両手で掴んでグルグルと時計回りに回転して放り投げた。


「がはっ」

投げ飛ばされたニールは、背中から壁に激突して一瞬だが呼吸が止まり壁に凭れる。


「弾空」

ニルバーゴスは、シャドウボクシングみたいに左右の拳を何度も振い、無数の魔力と空気弾が混ざった魔力弾がニールを襲う。


「ぐぁぁ」

ニールは、無防備な状態で次々に魔力弾に当たり壁にめり込んでいく。


「オラッ!」

ニルバーゴスは攻撃の手を緩めることなく、右足で壁にめり込んで身動きできない状態のニールの鳩尾に蹴りを入れた。


「がはっ」

ニールは、吐血しながら【くの字】になり白目をむく。


「これで終わりだ、ニール。制裁」

ニルバーゴスは、とどめに右拳に魔力を一点集中して拳を振り抜いた。


しかし、気を失ったニールは巨人化が解けたことによって、ニルバーゴスの拳はニールに当たらず壁に激突し、壁に幅広くヒビが走り、轟音を立てながら盛大に破壊した。


「おい、ドンバネーヤ。さっさと、カウントしろ」

ニルバーゴスは、興味なさげに倒れたニールを一瞥してドンバネーヤにカウントするように依頼する。


「は、はい。10、9、8、7…」

ドンバネーヤは、慌ててリングに上がり、カウントを取り始めた。




【特別観客席】


「あなたの言う通りになったわね」

観戦していたアーネスは、ホッとしていた。


「ああ、親父の奴め、ハラハラさせやがって」

バーネジアは、持っている金でできたワイングラスをスワリング(反時計回りに回す)して一口飲んだ。


「でも、勝ったわ」


「そうだな。ククク…これで、ニールが俺達に加勢する。もう、獣人の国だけでなく、魔人の国も手に入れたのも同然だな。アハハハ…」

勝利を確信したバーネジアは、顔を挙げて盛大に笑った。




【リング】


「7、6、5…」

倒れているニールは意識朦朧する中、ドンバネーヤのカウントが微かに聞こえていた。


(もう、立てません…。ああ、そう言えば…)

ニールは、大成との話を思い出す。




【過去・魔人の国・ラーバス国・屋敷の中庭】


【ブラッド・ヒール】によって暴走した大成が正気に戻った頃、ニールは中庭で盆栽ばさみで趣味の盆栽の手入れをしていた。


「おはようございます、ニールさん」

朝練を終えて屋敷に戻ろうとしていた大成は、ニールの姿を見つけて挨拶をした。


「おはようございます、修羅様」

ニールはハサミを止めて、大成に振り返り笑顔で挨拶をした。


「盆栽、丁寧に手入れされてますね」


「ええ、盆栽は私の子供みたいなものですから」


「秋が楽しみですね。では、僕はこれで」


「あの修羅様。1つお聞きしても宜しいですか?」


「はい、僕に答えられることなら良いですよ」


「修羅様、【シルバー・スカイ】の事件のことなのですが、瀕死の状態だったにも関わらず、気を失わずに、どうやって、あそこまで戦えたのですか?」


「そうですね、答えても良いのですが、その恥ずかしいので誰にも言わないで欲しいのですが」


「ええ、他言無用にします。誰にも言いません」


「わかりました。あの時、意識が飛びそうになったのですが、意識が失いかけた時、視界に泣いているジャンヌの姿を見て、まだ倒れたらいけないと思ったんです。ハハハ…何だか恥ずかしいですね。わかりやすく言えば、ただの意地です。その後は、ジャンヌやウルミラ、皆のためにと想っていたら戦い続けることができました。まぁ、流星兄さんに負けましたけど。あの時、勝っていれば皆にご迷惑をお掛けせずに済んだと思うので、本当に申し訳ありません」


「か、顔を挙げて下さい、修羅様。私達は、修羅様のお蔭で助かりました。それどころか、感謝してもしきれぬほどです」

ニールは、慌てる。


「そう言って頂けると救われます。じゃあ、僕はこれで…。あ、そうだ、ニールさん。もし死闘で気絶しそうになった時、この話を思い出して下さい。大勢の人達のためではなく、本当に大切な人を想う心で、きっと立ち上がれるはずですよ」

笑顔を浮かべて話す大成。


「大成!何しているの!早く来なさいよ!」

屋敷の2階の窓からジャンヌが上半身を出して手を振っている。


「わかったよ、ジャンヌ。今から行くから。では、ニールさん。僕は、これで失礼しますね」

大成は、会釈して立ち去った。




【リング】


「6、5、4」

ドンバネーヤのカウントの中、ニールは意識を取り戻した。


(そうだ、私は魔人や獣人、巨人の国のためじゃなく。私は、ただ家族のために…ここで負けるわけには…)

「ぐぅ…ハァァ!」

ニールは、力を振り絞って四つん這いになってゆっくりと立ち上がる。


「3、2」

「「うぉぉぉ!」」

ドンバネーヤのカウントが止まり、観客達は盛大に盛り上がる。


「ハァハァ…」

フラつきながらニールは、再び巨人化をして袖で口元から出血した血を拭った。


「グハハハ…驚いたぞ。まさか、立ち上がれるとは思ってもみなかったぞ。だが、その様子だと立っているのがやっとの様だな。今度こそ、終わらせてやる。制裁!」

盛大に笑ったニルバーゴスはニールに接近し、再び右拳に魔力を一点集中して殴りにいく。



「くっ」

ニールは、まともにニルバーゴスの拳が決まると、もう立ち上がれないと本能が警告したので両腕をクロスにして魔力を集中して防いだ。


しかし、ニルバーゴスの攻撃は威力があり、ニールは後ろにズリ下がり足腰に力が入らず体勢が崩れる。


「ほう、良く耐えたな。では、これはどうだ?」

ニルバーゴスは、更にニールの両腕を目掛けて左拳をアッパー気味で殴った。


「ぐっ」

ニルバーゴスの威力に負けたニールは、クロスにしていた両腕が開かれてバンザーイした格好になってしまった。


「最後だ!ニール。制裁」

ニルバーゴスは、右拳を大きく振りかぶった。


「そ、そこです!」

ニールは、体勢が崩れながら左足でニルバーゴス右の横腹を目掛けて蹴りを放つ。


「おっと、危ない。油断は禁物だな」

ニルバーゴスは、殴るのを止めて左手を右側に伸ばしてニールの蹴りを防いだ。


しかし、攻撃を防がれたニールは、口元に笑みを浮かべていた。


ニールは防がれた左足を地面につけ、両腕を上に弾かれてバンザーイした状態だった両手の手を噛み合わせて握り締め、全ての魔力を一点集中させて無防備になったニルバーゴスの頭を目掛けて振り下ろす。

「これが、私の最後の攻撃です。鉄槌!」


「な、何だと!?がはっ」

余裕を見せていたニルバーゴスは、反応が遅れてニールの攻撃が決まった。


地面に叩きつけられてたニルバーゴスは、地面にヒビが入り、めり込んでクレーターができた。


ニルバーゴスは気絶しており、立ち上がる気配がなかった。


「~っ!」

ドンバネーヤは、慌ててチラッとバーネジアに視線を向ける。


バーネジアは目を瞑りながら渋々と頷いたので、バーネジアはカウントを始めた。

「10、9、8」

一向に立ち上がる気配がないニルバーゴス。


そして…。


「3、2、1、0…。」

「勝者、異端児ニール!」

「「うぉぉぉ!」」

ドンバネーヤのカウントが終わり勝利宣言が終わると、コングが鳴り響くと共に観客達の歓声の声が上がった。


「ハァハァ…。やりました…。やりましたぞ…。これで…」

ニールは空を見上げながら右拳掲げ、そのまま後ろに倒れて巨人化が解けた。


兵士の1人が慌ててニールに駆け寄り、優しくニールを持ち上げて医務室に運んだ。




【テレン殿(でん)・医務室】


ニールは簡単な手当てを施され、巨人族が使う巨大なベッドで横になっていた。


「お疲れ様です、ニールさん。良い戦いでしたよ」

ニールの影から大成の声が聞こえた。


「ハァハァ…あの時、修羅様の言葉を思い出せました。お蔭で…勝利をおさめることができました。ありがとうごさいます…修羅様」

ニールは、小声で呟いた。


「いえ、今回は僕は何もしてません。これは、ニールさんの実力で勝ち取った勝利ですよ」




【特別観客席】


ニールが勝利して観客達が盛り上がり、ニールが医務室に運ばれていく中。


「あなた…」

アーネスは、不安な面持ちでバーネジアに視線を向けた。


「糞!あの糞親父!油断するから負けるんだ!」

激怒したバーネジアは、右手に持っていた金でできたワイングラス握り潰した。


ワイングラスの中に入っていたワインは、バーネジアの右手を伝ってポタポタと溢れ落ちる。


「あなた、これからどうするの?」


「どうもこうもない、結果はどうあれ実力行使するのみ!」

バーネジアは、握り潰した金でできたワイングラスを後ろに放り投げて立ち上がった。


「でも…」


「元々、勝手に約束したのは親父だ。そもそも、俺には全く関係ない交渉だったのだ。それよりも…」

(これは非常に不味い。このままだと、ニールが親父に勝ったことで観戦した観客達の中で、俺よりもニールが巨人族の王に相応しいと思い始めている奴がいるかもしれん。せっかく手に入れたこの地位をみすみす手放すものか!)

バーネジアは、歯を食い縛りながら拳を握り締め、力が入り過ぎて手から血が滴れた。


(この指示は出したくはなかったが、やむを得ん。ドンバネーヤ、直ちにニールを始末しろ)

バーネジアは、観客達が全員帰ったのを確認して前に出て右腕を曲げて右手を耳の高さに上げてドンバネーヤに指示を出す。




【リング】


「~っ!」

バーネジアの指示を見たドンバネーヤは、息を呑んだ。


そして、ドンバネーヤは医務室へと向かおうとした時、突如、気絶して倒れているニルバーゴスの刺青が紫色に輝き出し、膨大な紫色の禍々しい魔力が放たれた。


「「えっ!?」」

「「なっ!?」」

ニルバーゴスを医務室へと運ぼうとした兵士2人は驚愕して尻餅をつき、会場にいる全員が驚愕した。


両膝を曲げたニルバーゴスは、そのまま姿勢で上半身を起こして立ち上がった。


「な、何だ…?あの異様な起き方は…。普通、あの体勢じゃ起き上がれないだろ…」


「それもあるが、ニルバーゴス様が発している魔力が尋常じゃない。魔力が膨大だけでなく、禍々しいぞ」

兵士達が恐れながら呟く。


「大丈夫ですか?ニルバーゴス様」

ドンバネーヤは、心配して尋ねる。


「……。グォォォ!」

起き上がったニルバーゴスは無言のまま、フラフラと上半身を左右に揺れていたのが制止し、空を見上げて獣の様な雄叫びをあげた。


ニルバーゴスは、近くにいた兵士2人の頭を左右の手で鷲掴みして左右に放り投げ、ドンバネーヤに振り向いて殺気を放ちながら走って接近する。


「「がはっ」」

放り投げられた兵士2人は、観客席に激突して気絶した。


「グォォォ!」

ニルバーゴスは勢いがついたまま、ドンバネーヤに殴りにいった。


「ニルバーゴス様!?何を!?ぐっ」

ドンバネーヤは、驚きながら剣を抜いて刀身に魔力を込めて防いだが、威力に負けて後ろにズリ下がった。




【特別観客席】


ニルバーゴスが禍々しい膨大な魔力を放ち、獣の様な雄叫びが会場に響いた。


「な、何だ!?親父の奴、一体どうしたんだ?」


「あなた…」

アーネスが不安な表情を浮かべた時、ニルバーゴスがドンバネーヤに襲い掛かった。



「くっ、仕方ない。兵士達よ!何をボーッとしている親父を取り押さえろ!少々、手荒になっても構わん!」

バーネジアは、大声で指示を出した。



【リング】


兵士達は混乱していたが、バーネジアの指示で互いに頷き合った。


「「うぉぉぉ!」」

ニルバーゴスを取り押さえようと、兵士達は一斉に飛び掛かった。


ニルバーゴスは、すぐにドンバネーヤから兵士達に標的を変えて兵士達に振り向いた。


「グォォォ!」

ニルバーゴスは、次々に飛び掛かってくる兵士達を殴ったり蹴ったりして吹き飛ばしたり、地面に叩きつけたりしていく。


「「ぐぁ~」」

兵士達は壁に衝突したり、地面に叩きつけられたりして気絶していった。


「落ち着いて下さい!ニルバーゴス様」

【七巨星】の第2席のデミオは、隙を見てニルバーゴスの背後から接近して、ニルバーゴスの脇の下から腕を回して取り押さえる。


(何て力だ。このままでは、振り払われてしまう)

「ぐっ、ユソ!ダン!手伝え!」


「お、おう!」

「任せろ!」

【七巨星】の第3席のユソはニルバーゴスの右腕を、第4席のダンがニルバーゴスの左腕を慌てて押さえた。


「ニルバーゴス様、正気に戻って下さい!」

デミオは、必死に取り押さえながら大声を出す。


普通ならこれで確実に取り押さえられるのだが、今のニルバーゴスの力は異常で、ニルバーゴスは右腕を押さえいるユソごと上に持ち上げて地面に叩きつけた。


「そんな馬鹿な!?がはっ」

ユソは、叩きつけられる寸前にニルバーゴスの腕を掴んでいた片手を離して地面についたが勢いがあり耐えきれず頭を強打した。


会場の外を警備していた他の【七巨星】の3人は、禍々しい魔力を感じとり駆けつけ、ニルバーゴスの前に現れた。


「糞!俺が右腕を押さえるから、2人はすぐに両足を押さえてくれ」

「「わかった」」

【七巨星】の第6席のキドは、ニルバーゴスの右腕を取り押さえよう飛び掛かる。


ニルバーゴスは、流れる動作でその場で回転をして左腕を押さえているダンをキドにぶつけ、更に背後から腕を回して押さえているデミオもぶつけた。


「「ぐぁ」」

3人はリングの上を転がりながら倒れた。


「グォォォ!」

ニルバーゴスは、倒れた3人に襲い掛かる。


「「させません!」」

【七巨星】の5席のヨウダと7席のシングワは、倒れた3人を庇うために前に出た。


だが、予想以上に速いニルバーゴスの異常なスピードに驚愕すると共に反応ができなかった。


ニルバーゴスは、左右の腕を横に伸ばしてヨウダとシングワにラリアットを決めた。


「「ぐはっ」」

2人は、リングの上を転がりながら壁に激突した。


「大丈夫か?お前達」

特別観客席にいたバーネジアは、ジャンプしてリングに着地した。


【七巨星】達は、バーネジアの傍に集まった。


「ぐっ、ええ、何とか」

デミオは、右手で脱臼した左肩を強引に戻した。


「それにしても、何て強さなんだ…」


「俺達も刺青の力を解放しているんだぞ。それなのに、全く通用しないとかあり得ないだろ」

ユソは呟き、シングワは弱音を吐いた。


「「気を付けろ!」」

バーネジアとドンバネーヤが警告したと同時に、ニルバーゴスに倒され気絶した兵士達にもニルバーゴスと同様に刺青が紫色に輝き出して禍々しい紫色の魔力を解き放ちながら次々に起き上がり、獣の様な雄叫びをあげる。


バーネジア達は、豹変した兵士達に囲まれた状態になった。


「「~っ!?」」

バーネジア達の表情が強張る。


「おいおい、マジかよ。冗談だろ?一体、何がどうなっているんだ。これは…」

キドは呟いた。

次回、刺青の代償と呪いです。


もし宜しければ次回もご覧下さい。

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