規格外と大成の才能
魔力を感じることから始めた大成。
訓練中に、ちょっとしたハプニングが起きた。
怒りで我を忘れたジャンヌが大成に向けて、ファイヤーボールを放った。
大成は、近くにいたウルミラを避難させたが、自分は避けることは出来ないと悟った。
そして、直撃した…
【魔人の国・サンガ山】
「あ、あつ、あちちっ…」
「た、大成!」
「た、大成さん!」
ジャンヌとウルミラは、最悪の事態が頭を過る。
大成がいた場所は、蒸気と炎が充満していた。
「う、ウルミラ。お願い!」
「は、はい!アクア・ウェーブ」
ウルミラは慌てて屈んで右手の掌を地面につけて水魔法アクア・ウェーブを唱えると穏やかな波が生まれ、赤く焼けた大地を飲み込みながら水の焼ける音や蒸気が立ち上り鎮火していく。
辺りの炎は消火して消えたが、蒸気が充満して視界が悪くなり前が見えない。
「た、大成あなた、大丈夫!?」
「た、大成さん、大丈夫ですか!?」
ジャンヌとウルミラは不安が過る。
「何だ?熱いと思ったら、濡れて冷たいような、蒸し暑くなったような…」
蒸気の中から大成の声が聞こえた。
蒸気の中から人影が見え、その人影はジャンヌとウルミラに近づいてくる。
「ふ~、流石に今回は死ぬかと思った。ん?あ~あ~、服が焦げたし、濡れてびちょびちょだな。気持ち悪い。あとで、おばさんに謝らないと…」
大成は、自分の服を見て溜め息をしながら蒸気から姿を現した。
「「……」」
ジャンヌとウルミラは、大成を見て信じられない光景を見た表情をしたまま固まった。
なぜなら、ジャンヌが放ったファイア・ボールは、重傷や大火傷、もしくは死んでいても、おかしくないほどの火力があった。
それなのに、大成は服が焦げただけで、身体は傷どころか火傷もせず無傷だったのだ。
そして、なぜ大成が無傷だったのか理由がわかる。
大成が纏っている魔力密度が、ヘルレウス・メンバー達と変わらないほど…。
いや、それ以上かも知れないと思わせるほどに底が見えない。
その膨大な魔力を纏っていたので、無傷で逃れたのだとわかったジャンヌとウルミラ。
「ん?2人とも、どうしたの?ボ~として」
ジャンヌとウルミラを見て、大成は頭を傾げる。
「突然に攻撃してごめんなさい、大成。それにしても、大成、あなた気付いているの?今、全身に魔力を纏っているわよ」
「そ、そうです。しかも、大成さんの魔力が凄いです」
ジャンヌとウルミラは、我に返り驚いた。
「そうみたいだね。人は死にかけたら、秘めた力が目覚めるとか聞いたことあるけど。本当だったみたいだ。だから、気にしないでいいよ、ジャンヌ。おかげで、こうして魔力が身に付いたから逆に感謝しないとね」
手を握ったり開いたりし感覚を確認した大成は、新たな力に納得して笑顔を浮かべる。
魔力を感じることは、普通は3日~24日掛かるはずだが、大成は一時間も掛からず身に付けた。
そして、魔力量は努力と生まれつきの才能で決まる。
始めは、微弱な魔力しか持っていないことが常識なのだが、信じられないことに大成は生まれつきの才能だけでジャンヌ達と同等か、それ以上の魔力量と魔力密度を初めから備わっていた。
決して、ジャンヌ達の才能が低いわけではない。
ジャンヌ達も、神童と呼ばれるほどなのだ。
しかも、ジャンヌ達は才能だけではなく、幼い頃から努力を続けて魔力量を増やしている。
そんな、ジャンヌ達に大成は才能だけで、同等か、それ以上なのだ。
ジャンヌとウルミラは、大成が自分達の想像を遥かに越えていることを認識した。
「次は、魔力のコントロールだったよね?こんな感じで良いのかな?」
大成は、手、各指先、脚など順番に魔力を一点に集中させて、2人に見せる。
「う、うそ…」
「し、信じられません…」
ジャンヌとウルミラは、大成の魔力操作を見て唖然とする。
魔力のコントロールは、長い年月が掛かる。
いや、理想を求めたら切りがない。
だが、大成の魔力のコントロールは、理想そのものだった。
実は、大成は中国拳法も特訓しており、その中の発勁も訓練しているので、だいたいの感覚を知っていた。
そのため、魔力のコントロールがすぐできたのだ。
「よし、試して見るか…」
大成は、試しに落ちてくる葉っぱに手でソッと触れた瞬間、一瞬で魔力を手に集中して葉っぱに魔力を流し込む。
葉っぱは、パンっと音をたてながら跡形もなく消滅した。
普通は気を使うが、今回は覚えたばかりの魔力で発剄をしてみたのだ。
「気よりも、魔力の方が威力あるみたいだな」
「え!?何?今の…」
「…わからないです。大成さんが、葉っぱに触れた瞬間、葉っぱが、一瞬で消滅しました…」
「僕の世界の武術だよ」
大成から発剄の説明を聞いたジャンヌとウルミラは唖然とした。
大成の魔力量、魔力のコントロールが、あまりにも規格外過ぎて、ジャンヌとウルミラは驚きぱなしだった。
「次は、魔法の特訓?」
「い、いいえ、次は、まず自分の適した属性を知ることよ。ウルミラ、枝を」
「はい、姫様。アイス・ミサイル」
腕を挙げたウルミラは、近くの木に向かって氷魔法アイス・ミサイルを放って枝を撃ち落とした。
「大成さん、これをどうぞ」
ウルミラは、撃ち落とした枝を拾って大成に渡す。
「ん?ありがとう。これで何を?」
大成は訳がわからず、ウルミラから枝を受け取りながら尋ねた。
「この木は魔種樹という名で、その木の枝に魔力を込めると属性によって現象が起きてその人の得意な属性がわかるの。このために山に来たのよ。予定では枝を持ち帰って、魔力が使えるようになった時に使うためだったけどね。ほら、私は炎魔法が得意なのよ。因みにウルミラは氷魔法ね」
ジャンヌは説明をしながら自分も枝に魔力を込めると枝が激しく燃えた。
枝や葉が燃える→炎属性。
葉に雫ができる→水属性。
枝や葉が凍る→氷属性。
枝に根っこが生える→土属性。
葉が揺れる→風属性。
枝や葉が反る→雷属性。
枝が成長する→光属性。
枯れる→闇属性。
枝が曲がる・折れる・音がするなど→ユニーク属性。
現象が激しいほど相性と威力が良く、複数の属性と相性がいい人もいる。
努力次第で、威力は弱いが複数の属性も扱える様になったりもする。
一般に一番多いのは単属性だが、希に一般人の人でも得意な魔法属性を2属性を持ち合わせている人もいる。
魔人は、光属性以外の系統なら取得でき、反対に人間は闇属性以外の系統なら取得できる。
だが、世の中には、特別な存在もいる。
例えば、今はいない魔王とミリーナは自然の魔力を集めることができ、時間は掛かるが自然の魔力を利用して光魔法も使える。
そして、ユニークの持ち主は個人の特別な魔法で誰も使えない魔法のことをいう。
例えば、美咲の【ドールマスター】だ。
美咲は甲冑を操るという、どの属性にも当てはまらない魔法を使用できていた。
だが、ユニークの持ち主はユニークしか使えず、残念ながら他の属性は全く使えない。
「なるほど。早速、試してみるよ」
大成は、右手に持っている枝に魔力を流すと枝は大きな甲高い音をたてて破裂し消滅した。
ゆっくりと、大成は右手の掌を開くと木屑が残っていただけだった。
「「……」」
3人は、唖然とした。
「えっと、消滅したけど…。これって、僕の得意な魔法属性はユニーク属性ってこと?」
「え、ええ…」
「そ、そうですね」
再び、沈黙が訪れる。
「えっとユニークは、どうやったら自分の能力を知ることができる?」
「それは、屋敷に戻らないとわからないわ。大会まで時間がないから、急いで屋敷に戻るわよ」
「そうですね」
「ありがとう。村の復興も大変なのに迷惑かけて、ごめん」
「気にしないでいいわよ、大成」
「そうですよ」
大成ために夕方になったら屋敷に戻ることにした。
「姫様、ウルミラ様、大成殿、何処ですか~!」
騎士団の団長ギヌルの大きな声が聞こえる。
「私達は大丈夫だから、あなた達は村に戻って復興の手伝いをしなさい」
ジャンヌは精神感応魔法レゾナンスを発動させて伝えたが、結局、無事を確認させて下さいとの一点張りだったので仕方なくギヌルに場所を教えることになった。
少し待ち、ギヌルと騎士団達が到着した。
「姫様、ウルミラ様、大成殿、本当に大丈夫ですか!?爆発が聞こえて蒸気も出ていましたが」
団長のギヌルが、片膝ついて頭を下げる。
「大丈夫だって言っているでしょう、ギヌル。それよりも、あなた達は村の復興を手伝いなさい。わかったわね?」
ジャンヌは溜め息をしながら命令をした。
「「畏まりました!」」
騎士団は、一斉に敬礼をし承諾する。
「とりあえず、そろそろ昼になるから村に戻ろう」
大成の提案に、皆は賛同して村に向かった。
次回は、やっと大成のユニークスキル・グリモアブックが登場します。
もし宜しければ、次回もご覧下さい。




