プロローグ
【夢の中】
「ん?ここは、どこだろう?」
神崎大成は、上半身を起こして辺りを見渡す。
しかし、周りは、まるで霧の様に真っ白で視界は悪く何も見えなかった。
「ねぇ、あなたの名前と歳はいくつなの?」
突然、背後から女の子に声を掛けられた大成は後ろに振り向く。
振り向いた大成の目の前には、大成と同い年ぐらいの2人の女の子が2人が立っていた。
大成に話し掛けてきた左側の女の子は髪の毛が腰辺りまで伸びており黄色で、もう1人の女の子は少し背が低く髪の毛は背中辺りまで伸びており水色だった。
ただ少女2人の目元は霧がかかっていて見えなかったが、金髪の少女は優しい雰囲気だったが水色の少女からは大成を警戒している気配がしていた。
大成に話し掛けてきた金髪の女の子の声は透き通る様な声音で、そして、何処かで聞いたことのある懐かしい感じがして大成は思い出そうとしても思い出せなかった。
「ねぇ、あなたの名前と歳はいくつなの?言葉は伝わっているはずだけど」
「あ、僕は大成、神崎大成。10歳だけど、君たちは?」
金髪の少女から話し掛けられた大成は、慌てて答えた。
「○○○○、警戒しないでいいわよ。私は○○○○・○○○○。○○○○で良いわ。あなたと同じ10歳よ」
「わかりました、姫様。あの、わ、私は、○○○○です。8歳です」
大成は、女の子達の名前だけは聞き取れなかった。
「手を貸すわ」
金髪の少女が、腰を落として大成に手を差し伸べる。
「ありがとう。そして、よろしく!」
大成は、無邪気な笑顔を浮かべながら右手で少女の手を取った。
「ええ、こちらこそ、よろしくね」
「よ、宜しくお願いします」
3人は、笑顔で握手を交わした。
【児童施設・ひまわり】
「…セ…タ…セイ…大成ってば、いつまで寝てるのよ、いい加減に起きなさいよ」
別の女の子の声が聞こえてくる。
「うっ、ううん…あれ?奈々子…おはよう」
「おはよう、じゃないわよ!早く起きなさい。今日も、裏山に行くのでしょう?」
目を覚ました大成は、目をこすりながら起き上がった。
見慣れた児童保護施設ひまわりの自分の部屋だった。
目の前には、黒髪でロングヘアーの大和なでしこと言われても納得するほどの少女・奈々子がいた。
奈々子は、この児童保護施設で数少ない大成と同い年13歳で2人はいつも一緒にいるが菜々子が大成の面倒を見ている。
「早く、準備しないと間に合わないわよ!」
奈々子は、腰に手を当て前屈みで怒った。
「あっ、ごめん。すぐに行くよ」
苦笑いしながら謝る大成。
「もう!って…。大成、あなた悲しい夢でも見たの?涙が溢れているわよ」
「ん?あ、本当だ。でも、悲しい夢じゃない。とても懐かしい夢を見ただけ。ほら、前に話したことあるだろ?10才だった頃に見た不思議な夢を」
右手で涙を拭いながら大成は、ベッドから降りる。
「ええ、確か、あなたが目を覚ました時、着ていた寝間着が見たことのない服に変わっていたという奇妙な事件だったわね。あの時以来、児童施設七不思議の1つと言われる様になったわね。まぁ、あと6つは知らないけど」
「ハハハ…。そういえば、そんなことにもなったよな。今回は服に変化はなかったけど。それに、今回も夢に出てきた2人の女の子の顔と名前がわからなかったよ」
大成は、苦笑いを浮かべた。
「ふ~ん。そんなに落ち込むということは、とても可愛い女の子だったのね」
奈々子は面白くなさそうな表情で、大成をジッと見つめた。
「う~ん、どうだろう?口元の辺りしか見えなかったから、わからないけど。ん?ところで、奈々子。何でそんなに不機嫌になっているんだ?」
「別に~」
奈々子は、視線を逸らして軽く唇を尖らせながら頬を膨らませる。
「まぁ、1つ言えることは、奈々子の慎ましい小さな胸と比べたら、きっと、あの2人は大きくなっていると思うよ」
大成は、笑いながら奈々子の胸に視線を向けて冗談を言った。
「~っ!た、た、大成!あんたって人は、人が心配してあげていると言うのに!今日こそは許さないわよ!待ってぇ~!大成~!」
大成を心配していた奈々子の表情が一辺し、顔を真っ赤になるほど激怒しながら部屋を出て逃げる大成を追いかける。
2人は騒ぎながら廊下を走り、周りの大人達はいつもの見慣れた光景だったのでいつも通りに笑って見守っていた。
1人の大人の女性が大成の前に飛び出したので、大成は慌てて避けるが…。
「こら、廊下を走らない!」
女性は、大成とすれ違う瞬間に大成の襟首を掴んで止めた。
「うっ、ぐっ…。」
大成は一瞬息が詰まり、大成を追っていた奈々子は慌てて立ち止まった。
「お、おはようございます、七海さん」
「ゴホッゴホッ…。おはようございます」
奈々子はすぐに挨拶をし、大成は咳をして挨拶をする。
「2人とも、おはよう」
奈々子と大成から挨拶された七海は、笑顔で挨拶をした。
七海は、ここの児童保護施設の責任者である。
捕まっている大成は逃げようと試みるが、七海に襟首を持たれているため逃げることはできなかった。
「2人とも早起きは感心しますが、まだ寝ている人もいます。静かにすること!それに、大成君、菜々子ちゃん。いつも言っているでしょう。廊下を走ったら危ないわ。人にぶつかったら危ないでしょう?あと、もうわかっているとは思いますけど、2人は食事が終わったら、私のところに来なさい。理由は、わかっていますよね?」
「「はい…。」」
七海の凄みのある笑みを見た大成と菜々子は、恐る恐る承諾した。
「なら、よし!それまで、自由にして良いわよ」
七海は、掴んでいた大成の襟首を放して笑顔を浮かべた。
「い、行くわよ、大成。それでは、七海さん。失礼します」
奈々子は大成の手をとり、頭を下げて先導する。
「2人共、気を付けるのよ」
笑顔で手を振りながら2人を見送る七海。
「「は~い」」
大成と奈々子は、七海に手を振りながら裏山へと向かった。
「ハァ…また、あの2人ですか?」
七海の後ろから歩いてくる男性職員の林は溜め息する。
「ええ。でも、あの大成君があんなにも元気で明るくなって良かったと思いませんか?林さん」
七海は後ろを振り向きながら笑顔で、歩み寄る林に話しかけた。
「確かにそうですね。最年少で特殊部隊の部隊長になった流星君が大成君をここに連れて来た時は、大成君は無口で誰とも話さなかったし、誰とも関わろうとしなかったですね。まぁ、ここに来るまで、大成君は流星君に助けられて特殊部隊の人達に育てられたみたいですし、そのせいなのか、大成君はまだ子供なのに、もう大人のような思考と行動をとっていましたから余計に周りの子供達との距離が開いてしまい浮いていましたからね」
「ええ。でも、大成君は奈々子ちゃんと関わっていくに少しずつだけど年齢相応に戻っていくのが実感できて、私はとても嬉しいです。まぁ、今では施設一番の問題児ですけど」
「そうですね。いや、本当に…」
「フフフ…」
再び林は深い溜め息をつき、七海は笑顔を浮かべた。
3年前…。
施設に大成を連れてきた大和流星も幼い頃、特殊部隊に入るまでは、ここの児童保護施設で七海にお世話になっていた。
流星と大成の出会いは、流星が特殊部隊で活動していた時、戦場で両親を失った大成を見つけたのだった。
そして、長い間2人は共にいたので流星は大成とは血が繋がってないが弟の様な存在になっていた。
大成も流星を実の兄の様に接していた。
暫く時は経ち、極秘の任務を受けた流星は軍法に違反するのを承知の上で児童保護施設の皆に、これから起きるであろうことを話すことにした。
今度の任務が成功すれば他国との争いが収まり停戦になるが、生きて帰れそうにないことや大成だけはその事を何も知らされていないことなどを流星は明かしたのだ。
当日に流星は断固拒否していた大成を気絶させて手紙だけを残し、七海は大成の身を引き取った。
その後、流星が説明した通り停戦になったが、流星を含む特殊部隊の全員が行方不明となり帰らぬ人となった。
記録と世間では戦場で死亡と発表された。
「やはり、子供は明るく無邪気が一番良いですよ」
流星のことを思い出した七海は暗い表情になったが、施設の子供達の優しい笑顔を思い出して自然と笑顔になった。
「まぁ、そうですね…。」
七海と林の2人は、大成と奈々子が通った廊下を眺めて再び歩き出す。
【裏山】
朝早く霧が掛かる中、大成と奈々子は裏山の頂上に辿り着いた。
普段毎日、大成は朝食が始まる前に裏山を走ったり頂上で筋肉トレーニングをしたり武術の型を練習している。
奈々子は、そんな大成を見るのが日課で好きだった。
前に奈々子は気になったことがあったので、大成に尋ねたことがある。
「何で毎日、そんなことしているの?」
「ん?それは、体が鈍るからだよ」
大成は即答したが、それだけではなく特殊部隊の人達との暮らしを忘れないためだと奈々子は何となくだがそう感じた。
物思いに耽ていた奈々子が気が付いたら、既に大成はトレーニングが終わっており大成が近くまで来ていた。
「あっ、は、はい、これ」
奈々子は、慌てて大成にタオルと水筒と着替えを渡した。
「いつも、ありがとう。奈々子」
「ううん、気にしないで」
受け取った大成は、その場で着替えようとシャツを脱ごうとしたら奈々子と目が合った。
「あっ…」
奈々子は、慌てて目を逸らした。
(ん?どうしたんだろう?ああ…)
なぜ、奈々子は目を逸らしたのか思い当たった大成。
「ごめん、こんな傷だらけの体を見せてしまって、気持ち悪い思いをさせて、ごめん」
「ちっ、ち、違うわよ、ただ…その…」
大成の鍛えられた身体に見とれていたことが本人にバレてしまったかと思い、奈々子は恥ずかしさから目を逸らしただけなのだが大成に勘違いされたので慌てて否定する。
「ん?」
大成は頭を傾げたが、特に気にならなかったのでそれ以上は深く追求はしなかった。
大成の体に刻まれている沢山の傷は、特殊部隊の訓練と任務をこなしていくうちに負った傷だった。
そのあと、2人は朝食の時間が迫っていたので施設に戻ろうと下山をしていた際、山の中枢から施設が見えてきて異変に気付いた。
「ねぇ?大成。施設に沢山の軍人さん達が来ているわ。どうしたのかしら?何かあったのかしら?」
嫌な予感がした奈々子は、不安な表情で大成の袖を引っ張り施設を指差した。
「とりあえず、急ごう奈々子」
「そ、そうね」
2人は、駆け足で施設に戻ろうとする。
「きゃっ」
下山の途中で奈々子は躓いて転びそうになったが、大成が奈々子の体を支えた。
「あ、ありがとう」
後ろから抱き締められた格好になった奈々子は、顔を真っ赤にしながら小さな声で感謝した。
「奈々子、スピード上げるから乗って」
大成は、奈々子の前に出て腰を屈めておんぶの格好する。
「えっ!?」
「早く!時間がないから。それとも、ここに残る?」
「わ、わかったわ。私も行く。だけど、そ、その…私は重いよ」
「大丈夫、毎日鍛えているから、奈々子がお相撲さんぐらい重くっても抱えられるから」
大成の発言と同時に甲高い音が響き、奈々子をおんぶする大成の頬には赤い紅葉みたいな掌の跡があった。
「痛いな…。冗談だったのに…」
大成は、紅葉みたいな痕ができた頬をさすらながら小声で呟く。
「何か言った?」
「いや、何も…」
「大成、言って良いことと悪いことがあるわよ」
「しっかりと聞こえているじゃん。はい、何もないです」
大成は背中にいる菜々子から放たれる強烈な威圧感を感じて謝罪して走り出す。
山から下山する最中、児童施設がはっきりと見えてきて大成と奈々子は嫌な予感が強まった。
なぜなら、入り口に日本の軍人が30人ぐらいが施設を囲うように集まっていたのだ。
【児童施設・ひまわり】
「大成君、奈々子ちゃん」
軍人と話していた七海は、裏山から戻ってきた大成と奈々子に気付いた。
「おや?君が、あの特殊部隊にいた神埼大成君かね?私は日本軍大佐・田中孝作だ。君に大事な話がある。そのために、我々はここまで足を運んで君に会いに来たのだよ」
田中は眼鏡をかけており、軍服の胸には派手な勲章を付けていた。
「おいおい…。」
「嘘だろ!話は聞いたことがあったが、本当にまだ子供じゃないか…。」
軍人達は大成の姿を見て信じられずにざわついていたが、そんな中でも田中だけは真剣な面持ちで大成を見定めていた。
「とりあえず、あがって下さい。話はそれからです。それと皆は、料理が冷める前に朝食にしましょうね」
七海は、軽く手を叩きながら施設の子供達に指示して怯えている子供達を安心させるために促す。
「ふん…。まぁ、良いでしょう」
田中は七海の提案を呑んで頷き、施設の2階の部屋で話をすることにした。
「ほら、七海先生の言う通りにご飯を食べに行きましょう」
児童施設の子供達は、心配そうな表情で大成や七海を見ていたが七海の指示に従って女性職員と一緒に歩き出す。
【児童施設・2階の空き部屋】
部屋には田中含む軍人3人、施設側は七海、林を含む大人5人、そして大成とどうしてもと懇願した奈々子が集まっていた。
静まり返った部屋に緊縛した重い空気が漂っている。
「では、単刀直入に言うぞ、神埼大成。君は軍に戻るか、断るならば今ここで戦場から逃亡した裏切り者と判断され処刑されるかだ」
右手で眼鏡を押し上げながら、田中は大成を見ながら要件だけを突きつける。
「はぁ、予想はしていましたが、やはり軍は僕を連れ戻しに来たのですね。ですが、僕は軍に戻るつもりは一切ありません。流星義兄さんが残した手紙に書かれてあった通り、僕は一般人として生きていくって決めていますので」
「フフフ、ハハハ…。笑ってすまない、これは傑作だ。君が一般人としてだと?笑わせるな!君は何人、いや何百人その手にかけた?今更、一般人に戻るのは無理だろ。いや、君に殺された者達の遺族が絶対に許さないだろう」
大成の意見を田中は、即座に否定して盛大に笑い飛ばした。
「〜っ!い、言わせて貰いますが、あなた達が大成に命令をしたから大成は多くの人を手にかけたのだと思います。それに、大の大人が、私達、子供の自由を奪って良いと思っているのですか?」
「私達も、奈々子ちゃんと同じ意見です。大成君を軍に渡さないわ」
「「そうだ!そうだ!」」
奈々子が激怒し、七海、それに林達は賛同する。
「お前ら!我々が黙ってれば、いい気になりやがって!」
田中の部下一人が激怒し、腰にかけてあるホルスターから拳銃を取り出して銃口を奈々子に向けようとする。
大成は躊躇わず、一気に拳銃を持った軍人との距離を詰め、軍人の拳銃を持っている両手を左手で射線を反らして鳩尾に右膝を入れた。
「ぐぁ」
軍人は、拳銃を手放して両手で鳩尾を押さえながら膝から崩れ落ち倒れた。
「なっ!?このガキが!」
「遅い」
隣にいたもう1人の軍人が大成に警棒で殴りにいったが、大成は屈んで警棒を避けながら回し蹴りをして軍人の顎を蹴って倒した。
あっという間に大成は、軍人2人を気絶させた。
「「〜っ!?」」
「なるほど。これはこれは、とても素晴らしい!」
「あんたは、どうする?」
誰もが驚いて静まり返った中、笑顔でパチパチと拍手をして賞賛している田中を睨みつける大成。
「いや、軍から離れて随分と経つというのにこれ程とは予想以上だ。上層部が君が兄と慕っていた流星隊長を捨て石に使ったことで報復を恐れているはずなのだが、それでも君を欲しがるわけだ。うむ、納得できる。だが次は、どうするかね?」
田中は、右手に持っていた援軍要請のボタンを押していた。
「チッ、しまった」
大成は舌打ちをする。
廊下から聞こえる足音が、徐々に大きくなっていく。
菜々子達も軍人達が、この部屋に近づいてくるのがわかる。
「大成、逃げて!」
「大成君、逃げなさい!」
「「大成君、逃げるんだ!」」
奈々子や七海、施設の林達が同時に叫ぶ。
確かに大成1人なら2階から飛び降りても平気なのだが、誰かを抱えて飛び降りると足が骨折するので一緒には無理だった。
そのため、大成はここに残る菜々子達を心配して戸惑う。
「でも…」
「私達は大丈夫だから」
奈々子は頷き、施設の大人達は大成と菜々子の盾となるように2人の前に出る。
「わかったよ、必ず助けるから」
大成は窓ガラスを蹴り破り、飛び降りたと同時に廊下から軍人達が部屋に雪崩れ込む様に入ってきた。
「ターゲットが逃走した今すぐ確保しろ!」
田中の指示で、大成を追うために窓から飛び降りようと菜々子達に向かって走る軍人達。
「絶対に行かせない」
「邪魔だ!お前達。どけっ!」
奈々子達は、必死に軍人達の腰を掴み離さない。
「糞、逃がすかぁ!」
七海にしがみつかれて身動きがとれず近寄れない田中は、急いで腰に掛けてある手榴弾を取り出してピンを外して大成が飛び降りた場所に放り投げた。
「大成!」
「「大成君!」」
施設の皆は大声で叫んだ。
手榴弾は大成がいる場所に落下してバウンドした瞬間に爆発し、衝撃波と轟音が響き土煙が舞う。
施設の窓ガラスは、衝撃波で粉々に砕けて室内に砂埃が入る。
「大成っ!」
軍人を押さえていた奈々子は、慌てて窓に向かい窓から大成が無事かを確かめる。
風が吹き、徐々に煙が晴れていく。
そこには、何事もなかった様に大成が無傷で立っていた。
「バカな…間近で手榴弾が爆発したのだぞ。それなのに無傷だと?あり得ない…。しかも、あれは何だ?」
信じられないという表情する田中は呟き、他の軍人達と奈々子達も動揺した。
「良かった…」
大成が無事だと知った奈々子は、ホッとして腰が抜けてその場にへたり込む。
(何で僕は、無傷なんだ?しかも、この周囲を囲んでいる模様は何だろ?イルミネーションやアトラクションじゃないし、もしかして信じられないけど魔法陣とかいうやつかな?まぁ、このお陰で助かったけど…。とりあえず不気味だから離れた方が良いよな)
大成は、魔法陣から離れようと移動した時だった。
「あ…の…ちか…いて…」
大成は、知っているような、知らないような、懐かしいような少女の声が聞こえた気がした。
「ん?」
大成は、周りを見渡すが誰もいない。
そして…。
「あなたの力で、私達を導いてっ!」
今度は、はっきりと少女の声が聞こえた瞬間に魔法陣が輝き出した。
輝きが収まるとともに、大成の姿と魔法陣はその場から消えていた。
「大成~!」
奈々子は、悲鳴の様な声で叫んだ。
次は異世界の内容が始まります。
どうか、御堪能下さい。