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門上御影

それはねえだろと彼は思った

作者: 的菜何華

そろそろ異世界召喚ぽくなります


「で、だ。君にやってもらいたいのは――ずばり皿洗いだね」

「つまり、割ったら首が飛ぶと」

「…………………まあ、そういうことだね」


リューイ、既にゲンナリしている。


「……そうだね。最初から話すとーー我らが終焉世界エルードは邪神の侵攻をうけているんだ」

「……邪神」

「イビルゴットというかアウターゴットというか……まあ、なんか強くて良くないものだと思っとけばいいよ」


一気に話がファンタジーになった。

まさか、あれか? 異世界召喚の定番の――


「あ、君が世界を救う勇者だとかいうオチはないからね?」


ねえのかよ。

ねえのかよ!!


「いや、なんか君勇者的要素あるわけ?」

「邪神とやらの弱点がが住所不定無職なのかもしれないじゃないか!!」

「そんな邪神イヤすぎるだろ!!」


うん。

言われてみればそのとおり。


「でね? 基本邪神が攻めてきたら僕たち神が応戦するんだけど――悲しいかな、僕は滅茶苦茶弱い」

「弱いんですか」

「野良犬にも負けるね」

「勝った! 俺は野良犬に勝ったことある!!」

「な、なんだとう!?」

「……お二方とも低レベルな自慢合戦はやめにしてもらえませんか?」


くうちゃんの冷たい目が気持ちいい……なんて事はなく。

男二人軌道修正である。


「で、戦えないもんはしょうがないんでよその世界回って戦える人を呼んできてるんだよね。非戦闘員は避難させて」

「異世界召喚、か」

「そうだね。いまエルードには312の世界から325人の勇者が召喚されているね。彼らの身の回りの世話をする後方支援スタッフも含めれば――3768人。君が来てくれれば3769人目だ」

「多っ!!」


一瞬ミリオンなんたらなる言葉が浮かび――なろう規制なる言葉で上書きされた。

世の中は訳の分からぬ力に満ちあふれている。


「で、まあいろんな世界から呼んできた勇者すべてがパーフェクトな人格者だったら問題はないんだけどね? 全くもってそうじゃないから大問題っていうか?」

「あ~……」


だよなあ……。

人格云々の問題を抜きにしても習慣・文化・宗教……全て違うんだろうし。衝突は必至だろう。


「でね? 君に解決してもらいたいのはそれらの問題の一つ――ゴミ屋敷問題だ」


 * * * 


そもそも、片づけるという文化・風習・能力自体ある程度物質文明が発展してないと成立しないものである――らしい。

なるほど、住所不定無職的にはすごくよくわかる話ではある。

この二年間、御影は片づけるということとは無縁であった。


「あとね、結構上げ膳据え膳で過ごしていた王侯貴族的な方々も多くてね……ゴミ屋敷が増えちゃってね」


ゴミ屋敷的な物を増やしながら屋敷を転々としている者すらいるのだという。


「増えただけならいいんだけどね……。伝説の魔剣がどっか行ったとか神から賜った鎧がどっか行ったとか言い出してくれちゃってさあ……」

「さすがは勇者だ……要らん方向にスケールがでかい」


てか、戦えねえだろそれじゃ。

リューイもため息である。


「そういう手合いをなんとかするべく専門の作業チームを作ってひたすらゴミ掃除をしてたんだけど……今度は困ったクレームがついてね」

「クレーム」

「一部の物品に関して大切な物だから手入れに魔法を使わないで欲しいって要望が来てね……って大切な物なら無くすなあああああああ!!!」


リューイ大絶叫である。

まあ、気持ちはわかる。


「エルードが余所から勇者を召喚できるのはエルードが比較的異世界魔法に対して寛容だからだ。世界が違えば発動しないことも多い魔法というテクノロジに対して許容量が多い――結果として勇者(ライン)後方支援(スタッフ)も基本的には魔法使いなんだよね。……そしてそれじゃ困ると言い出しやがったんだよあいつらああああああ!!」


リューイ再びの絶叫。

ぶっちゃけ、うるさい――のはおいといて。

ここまで言われれば流石に話が見えてきた。


「そう。君が選ばれた理由――というか、狭小世界豊芦原が選ばれた理由は一つ。僕が協力を取り付けた中で唯一住民が魔法使いでない世界だからだ」

「……つまり、俺は魔法を使わずひたすら皿を洗えと」

「うん」

「邪神蔓延る世界で」

「……うん」


つまり、あれか?

まさかのチートなし展開って奴か?

……ひどくね?


「もちろん、その分対価は払うよ。さし当たって一年間。日給一万円で九時六時。昼休みは一時間で週休二日ってところでどうだろう?」

「おっそろしく微妙だなあ!!」


時給1250円って……。東京都の最低賃金が907円だぞ?

まあ、贅沢言える立場ではないが……断るにしても受けるにしても正直微妙。

イビルゴッドの横で皿洗って一万円……高いのか? 安いのか?


「時間外手当は25%増し。食事は三食支給するよ。住宅もこちらで用意しよう。光熱費もこっち持ちだ」

「……福利厚生が良すぎて怪しい」

「そのかわり職場と住宅などこちらで指定した場所以外でなんかあったら自己責任ね。邪神はもとより勇者やスタッフにも喧嘩っ早いのはいるからね。気をつけろよ? 一番弱いスタッフですら――君を三回殺してあまりある」


福利厚生がやけにしっかりしてると思ったら……そうか勇者のいる世界なんだったっけ。

しかし、なるほど。

何で俺が選ばれたのかと思ったが……なんかあったときに後腐れのない人間ということだな。


家族親族友人知人財産住居仕事住民票……全てがない人間は多くはない。

あとは病歴・成績あたりで区切ればってことか。


「まあ、一応面接っていうか一緒に働いてもらうメンツと顔合わせしてOKがでたらだけどね」

「どんな人たち?」

「空間魔法使いの狼型獣人のお兄さんと千里眼魔法使いのサイボーグのお兄さんだね」

「メイドさんじゃねえのかよ!?」


お掃除といえばメイドさんだろう!?

異世界召喚といえばハーレム展開だろう!?

なんで野郎なんだよ!? 

ていうか獣人とサイボーグとか別に掃除上手そうでも何でもねえだろ!?


「あ、そうそう」


さも、思い出したようにリューイは言う。

ある意味もっとも重要で大事なことを。


「うちの世界、邪神の呪いで今女子いないから」

「帰れ!!!!!!」


門上御影。ハーレム勇者への道絶たれる。

ハーレムとか……書けないんだよパトラッシュ……

可愛い女の子が書けるようになりたい……

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