表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人類全てが殺し合う  作者: 熊谷次郎
56/60

第十章 その0

  第十章


 


   0/32 藤代大樹


 


 ごめんな、真咲。


 お兄ちゃん、本当はお前の幸せを願わなきゃいけなかったんだよな。お前が幸せに生きられる世界をつくってあげなきゃいけなかったんだよな。


 ぼくが小さくてまだ物心もつく前だったとはいえ、ハサミで遊んでいる最中に真咲の顔を傷つけてしまった。


 お兄ちゃんな、その後からな、お前がどうしたらみんなと同じように暮らせるんだろうってずっと考えていたんだ。


 考えて、考えて、考え続けたんだけど……現実を知っていくにつれて、だんだん難しいことだってわかって、結局答えは見つからなかった。


 そして、考え続けるうちに苦しくなって、最終的には、世間の奴らを憎むようになってた。


 そしたら、だんだんこの世界にも嫌気がさしてきた。そんな感情だけが心の中で繰り返し蠢いていて、でもそんな感情を持ったところでなんにも変わらないとわかった瞬間、なんだか疲れてきたんだ。疲れてきちゃったんだ。


 だから、あんな計画に興味を持ち出したんだ。


 …だけどな、お兄ちゃん、お前がまさかこんなに苦しむなんて思わなかったんだ。


 だって、お前はあんなにあいつらのことを憎んでいたじゃないか。


 それで、お兄ちゃん、お前のためを思ってこの計画に協力することに決めた。


 でも、やっぱりお前は憎み切れなかったのか? 身勝手で無責任でただ自分さえよければ何でもいいという、そんなどうしようもない世の中でも、お前はどこかで救いを求めていたのか?


 真咲、お前はぼくらの計画に絶望して死んだ。


 だけど、真咲、お前は隅っこに追いやられ、屈辱を受け、もはや再起を失ったこの世界に何の希望を得られたというんだ?


 真咲、教えてくれよ!!


 


 …お兄ちゃんな。あの後、河原道生くんと会ったよ。お兄ちゃんが、お前に友達をつくるきっかけをつくってあげて、それで知り合うことができた道生くんだ。


 彼な。お前のこと、きれいだっていってくれていた。結婚してもいいっていってくれった。信じられるか?


 彼はお前にとってそれほどの友達だったんだ。ずっと…、お前を信用していた。


 もし、お前がほんの少しの勇気を出して、彼に心を許すことができたのなら、お前はこんなことになることはなかったのに……


 


 もうお前のような存在をつくってはならない。絶対にならないんだ。


 だから、ぼくは世の中を変えるんだ。


 変えなければならない。


 もう少しだ。


 あと少しで、全てが終わる……





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ