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人類全てが殺し合う  作者: 熊谷次郎
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第二章 二節

   2 一九九九年 三月 五日 (金)


 


 こんな僕の日常の中にも楽しみはある。


 その楽しみは四年前の三月、春休みの真っ最中、僕はたまたま熱を出して寝込んだことから始まる。


 体調が悪い今日ぐらい母から強いられる勉強から開放され、久々の休みに羽を伸ばせると喜んではいた僕だったが、二時間三時間と昼寝しているうちに眠れなくなって家の外窓からをボーッと眺めるようになり、やがていつも塾に行っている筈の時間になると「僕は本当に休んでいいのだろうか?」などという不安感が押し寄せるようになってきたので、「いいんだ、別に今日ぐらい休んだって」と自分にいい聞かせるために気晴らしにテレビをつけたところ、丁度画面の中では変なアニメが始まるところだった。


 それまで僕は何かと勉強してばかりでテレビを見ることなど殆どなく、だからアニメなんかは子どもが見るものだと小さい頃に満足に見られなかった腹いせか、最初からそういう風に勝手に決めつけていた。だから、そのとき僕はたまにはこういうものも見てやってもいいだろうぐらいの軽い気持ちでそのテレビに向かった。しかしその後、僕はその態度を改めることとなる。


 画面の中では一人の少年が真っ暗な部屋の中の、スポットライトが当たっているパイプ椅子のところに座って、何やら長々と尋問されていた。少年はほぼ全編に渡って苦悶、葛藤していた。


 内容に関しては何が何やらちっともわからなかったが、不思議と何やら自分の中にモヤモヤと入ってくるものがあった。


 そのアニメは『新世紀エヴァンゲリオン』という所謂ロボットもののアニメで、このとき放映された内容が議論を呼んで人気を集め、翌年春、夏と二度の劇場公開がなされるなど、社会現象を巻き起こすまでになった。


 その放映を見て以来、僕は昔のうっぷんを晴らすかのようにそのアニメにすっかり夢中になった。


 コミックスを買い、サウンドトラックを購入し、放映された内容が納められたビデオを自分の棚に並べた。それまではなかったテレビやビデオ、CDコンポも自室に取り揃えた。


 無論このお金は僕が出したものではなく、母親に出してもらった。最初にこの話題を切り出すのは躊われたけども、勇気を出して口にしてみると、「これから勉強頑張りなさいよ」の一言を付け加えると意外にすんなりと応じてくれたので、すぐに喜びには結びつかず、自分の母親は本当はこんなに物分かりが良かったのかとただただびっくりしたことを覚えている。


 買ってもらったそれらのものを僕は何度も何度も眺めた。迫力ある画面に夢中になり、流れる音楽に酔いしれ、独創的な世界観にどっぷりと浸った。だけど、いつしかそれらに携わる回数は減っていき、やがてほとんど触れることはなくなった。おそらく、何度も何度も見ているうちに飽きてしまったのではないかと思う。


 そして今、僕はその『エヴァンゲリオン』をつくった監督及びスタッフ達の新作、『彼氏彼女の事情』という少女マンガを題材にしたアニメにとりあえずのめり込んでいた。


 このアニメは、何がなんでも一番にならないと気がすまず、学校では常に優等生を演じる一方、家ではそれを維持するためにジャージ姿で勉強に運動に、涙ぐましい努力をしていたヒロインが、高校に入った時に自分よりも完璧な優等生の男子に出会い、その後いろいろあって彼女は彼に告白されるのだが、ひょんなことから彼女は彼に自分の家での本性を見られてしまい、彼女は彼が自分のことを拒否するだろうと距離を置こうとするのだけども、それでも彼は彼女のことを受け入れ、彼女は彼とともに本当の自分を世に出していくーーといった感じのストーリーだ。


 先程、僕が、とりあえずという言葉を使ったのは他でもない。このアニメーションが僕がそうであって欲しいと願っている話と段々ずれていったからである。


 『エヴァンゲリオン』もこの『彼氏彼女の事情』も、最初は何か感じるものがあったのだけれども、結局、それは僕の中でうまく消化し切れずにやがて小さくなって消えていった。


 それでもまだ僕は、最初に感じられた『何か』がまた感じられるのではないかと思って今も尚それをビデオに録画してみているのだ。 塾も終わり、自室に戻った僕はテレビの前で楽な姿勢で座り、ビデオのリモコンを手に取る。


 今日の夕方にやった放送を見るのだ。


 ………


 やはり今回もどこかしっくり来ない気分のまま終了してしまった……


 四月で番組改編なので放送はあと三回。その中で僕が納得するような内容があるかといえばそれは疑わしい。


 僕は、溜め息をつきながら立ち上がると、勉強をするために机に向かう。


 椅子に腰掛け、いちおう道具一式を広げてみたが、やる気が起きず僕はしばらく部屋の中を漠然と眺める。


 そのとき僕は最近机の上の一角をでかでかと占領した物体に目をやった。


 パソコンである。


 これは母親が、「これからはインターネットの時代だから」などという近頃のおばさんが井戸端会議かなんかでよく口にしてそうな理由で僕に買い与えたものである。


 業者に頼んで一通り配線の接続やプロバイダーの加入とかいうのはしてあるらしいが、ぼくはタイピングというものがほとんどできなかったし、何といっても勉強の方が優先だったので、ほとんど手をつけていない状態だった。


 しかし、今日は何の気紛れかパソコンに触ってみようという気持ちに駆られた。


 早速、モニターの横に立たせてある取扱説明書をパラパラと捲ってみる。


 しかし、わけのわからない単語が頻出するので読んで十分ぐらいで飽きてしまい、「まあいいや、実際に動かしていくうちにわかるだろう」と思って、スイッチを入れた。




<※以下、主人公道生がパソコンに初めて触れる場面になりそれが彼の楽しみになったということを告げてこの第二章2節は終わるのですが、注意事項で述べた通り、僕自身にインターネットの経験がまるでないために(正確には一度、この部分を書くためにマンガ喫茶でやってみたのですが、検索にすら至りませんでした)書くことができませんでした(一枚目の紙の通り、この小説は一度手で書いて、ワープロで打ち直したのですが、そのときには一応形だけは書いたのですが、ここではやはりあまりにも違うだろうと削除しました)。この後、インターネットがこの小説の中で重大な役割をしますが、その際には自分のわかる範囲内で筋を通しています。ここのように途中で切れるといったことはないので、安心してお読み下さい。もし、このことが致命的な欠陥だと感じ、読む価値なしと判断したなら、こんな紙束さっさと燃やして、他の面白い投稿作品をお読み下さい>





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