第0章 悪魔の願い事
ぼくはあるひ、こんなゆめをみた。
ゆうがた、ぼくはいえにかえりたくなくって、ひとりさびしくすなはまをあるいていると、なみうちぎわになにかひかるものをみつけた。ぼくはなにかとちかづいてひろってみると、それはジャムかなんかがはいってそうなビンであった。だけどよくみるとおかしい。なかにはやじるしのついたしっぽをもったちいさなにんげんみたいなのがいるのだ。ぼくはおそるおそるコルクのせんをつかむと、しほうはっぽうからそのへんなやつのことをようくかんさつした。
…そうだ。えほんかなんかでみたことがある。たぶん、こいつはあくまにちがいない。 そう、こいつは……
そのときである。ぼくがせんのぶぶんだけもっていたからだろうか、かってにビンはそのビンじしんのおもさでポトンとおちてしまった。ぼくはてのなかにのこったビンのふたをゆっくりとみると、あわててびんをひろおうとあしもとにむかってかがみこむ。しかし、ゆびがそれにふれたとたん、びんのなかからもくもくとけむりがでてきたので、ぼくはびっくりしてうしろにひっくりかえってしまった。
ビンからはなおもけむりはでつづけて、やがてそのなかから、くろいつばさのはえたおおおとこがあらわれる。ぼくがぼうぜんとしていると、そいつはぼくをじっとにらみつける。ぼくがはりのむしろでうごけないのがわかったのからか、おおおとこはとつぜんわらいごえをはっしはじめた。
「イヒヒヒヒヒ、よくぞわたしをここからだしてくれた。おれいにおまえのすきなねがいごとをなんでもひとつだけかなえてやろう。
おまえはなにがおのぞみだい?」
ぼくはめをおおきくした。
ねがいごと……
ぼくはいっしゅんあたまにかすめたことにたいして、そくざにくびをふる。
そうだ、ここでこんなやつのいうことをきいちゃいけないんだ。
ぼくはあくまのことをみあげ、くちをギュッとへのじにむすんだ。
うそをつけ!! おまえはさいしょっからぼくのねがいごとをかなえてくれるつもりなんかないんだろう。そんなんだったら、はじめからそんなしつもんするな。ただたんにぼくのたましいがほしいだけなんだろう? ぼくがしぬのがそんなにたのしいのかよ。
そうだ、だれがおまえなんかにねがいごとなんかするか。たとえねがいごとがかなわなくったって、ぼくはがんばっていきていくんだ!
だから、かえれ! かえれ! かえれ!! かえれ!!
かえるんだ!!!
ぼくはめがさめるまで、なんどもそのことばをさけびつづけた。