喪失
爆発現場は悲惨なものだった。
アイリーン教官の部屋は見る影もなく、残っているのは黒く焼け焦げた本棚とコンクリートの残骸のみ。
火の手はもう収まっており、Trigger職員らしき人達が現場の調査をしている。
そんな悲惨な光景の中にも1つ安堵すべき点があるとするならば、死体は見つからなかったこと。
アイリーン教官は爆発では死んでいない唯一の絶対的証拠だ。
「ねぇ、死体は見つからなかったんでしょ?」
萌花の問いかけに対して、俺は力強くうなづく。
「でも、アイリーン教官はどこに行ったの?体調が悪くて自室に戻ってないっておかしくない?」
それには俺も薄々感づいていた。
体調が優れないといって出ていったアイリーン教官が向かう先など自室か、保健室くらいだろうが保健室に顔を出しているなら悠花先生も探し回ったりしていないだろう。
「もしかしたら、たまたま外出しているとかでしょうか……」
小鉢の言う可能性も零とは言い切れないが、肯定もできない。
アイリーン教官は普段から仕事人間で、ほとんどこの施設内から出ることはない。
出るとしても任務の時か、誰かに会う用事があるときだけだ。
「そうだ、アイリーン教官は誰かと密会する予定だった……」
「なんで急にそうなるんでしょうか?」
小鉢が不思議そうに聞き返してくる。
「正直、直観みたいなところはあるが、この前教官と会った時の鬼気迫る雰囲気を見るに恐らくこうなることを予想していたんだと思う。そして体調が悪いと言って誰にも見つからず姿を消した」
「まぁ分からなくはないけどさ、じゃあ誰と密会しようとしてたんだ?」
悠花先生ではないし、信城寺さんでもないだろう。
それにわざわざ嘘をついてまで、抜け出したということはTrigger職員ではない可能性が高い。
「多分、爆破の犯人……じゃないかな」
今までの会話を静観していた輝璃は小さくつぶやいた。
お世話になっています。
伏見沙織です。
5年ぶりくらいに続きを書こうとしたのですが、思い出しながらになってしまいました!
また継続交信できればと思いますので、よろしくお願い致します。
今回は短めでお送りしました。