第17話
リリィの狼狽えぶりに、言葉に引っかかるものを感じたが今の俺にはそれをかまっている時間は無かった
早く決着をつけなければ諸々の疲労で俺が倒れそうだ
一気に記憶が戻ってきて、ユズナと再契約して、力がまだ完全では無いにしろ戻ってきて…色々疲れたのが本音
俺は剣を手に、今だ狼狽え戸惑っているリリィに近づいて行く
今のリリィは…正直隙だらけだった
「ごめん…」
俺は小さく謝り…リリィの腹部を剣で切りつけた
「っ…ぐぁ…」
リリィは自分が油断してしまった事と、斬られた痛さに顔をしかめー…
「覚えてなさいよ、波神 … 秋斗っ、ユズナっ!」
音もなく何処かへ消えた
あれ…俺あの子に名前名乗ったっけ?と一瞬疑問をもったが、ある出来事が俺の脳裏を掠めて、知っててもおかしくないかと思い直し苦笑する
そう考えるとリリィが狼狽えていた意味も分かるのだが……何故俺を……
と、考え事をしていたら
バシィィィッー…
という音が響いて、止まっていた人、動物、時間のすべてが動き出した
リリィが消えたことで結界が破れたのだろう
右手に剣として収まっていたユズナはいつの間にか元の人間の姿に戻っており、しっかり右手は握られていた
「秋斗」
ユズナが俺の名前を嬉しそうに呼ぶ
俺がユズナの方を見て、答えようとした
答えようとしたのだが……
あ、ダメだコレ
倒れる…もう限界
俺の意識が薄れていくのを感じた
ゆっくりと視界が歪む
力が抜けて、倒れていくのがスローモーションかのようにゆっくりだった
「秋斗っ!!」
ユズナが、俺の名前を叫ぶ
…のと同時に俺は意識を完全に手放した
意識を手放す直後、
俺はユズナと俺以外はいなくなったはずの屋上に誰かがいたのを見た…………気がした