第11話
ユズナが炎を全身に纏う
そして死神が自分の親指を噛んで血をだした―…かと思ったら、その血が腕を覆うように広がり、やがて鎌の形をとって死神の手に収まった
現実離れしたその光景に夢でも見ているような錯覚に陥る
まず最初に動いたのはユズナだった
右手に炎の玉を作って死神めがけて思いっきり放つ
死神はそれを鎌でいなして―…ユズナのすぐ目の前まで接近する
瞬間移動みたいに早かった
ユズナは瞬時に飛び退くが少し遅く、死神がなぎ払った鎌に横腹あたりを掠めていた
「っ…」
ユズナの顔が痛さに少し歪む
ユズナ…!
俺は駆け寄ろうとしたが、何も出来ない自分に気づいて足を止める
俺が行ったところでユズナの負担が増えるだけだ
ユズナはもう一度右手で炎の玉を作り出し、それを放とうとしたところで―…異変が起きた
シュゥ―…とユズナを包んでいたはずの炎がうすれはじめ、右手に作った炎の玉も消えた
え?
何で…?
「…っ」
ユズナが息を飲むのがわかった
「あっれぇー?一瞬で私をやるんじゃなかったの?あんたの炎薄れてきてるけど〜!」
「……黙れ」
「強がらなくても良いのにー!所詮契約者もいない精霊はクソ同然!なのに態度だけはいっちょ前にでかくて…調子こいてるよねぇ」
死神は嫌な笑みを顔に貼り付けながら、心底馬鹿にしたような声音で喋る