#06 感謝してる
あれから、どれぐらい経っただろうか?
そんなには経っていないのだろうけど、どうも雫と一緒に居ると時間が長く感じる。
とりあえず、さっきの場所から移動して、川原で雫と二人きりの俺。
脈拍を今測ったら、1分間に100ぐらいは、いっちゃうんじゃないだろうか?
「大丈夫か?」
俺がそう聞いても返事は無い。
聞こえるのは、泣いている声。
やはり、怖かったのだろうか。
「もう安心しろよ」
少し落ち着いたのか、彼女はようやく話し始めた。
「わっ、私は…あんたの女じゃない」
助けてやったのに、第一声がそれかよ。
もう少し、ありがとうとか、助けてくれて嬉しかったとか、怖かったよぉとか言って、抱きついてくるとか、何か無いのか?
「そうですね」
俺がそっけない返事をすると、彼女は下を向いてしまった。
「たす…く…てかん…し…る」
「え?」
雫は大きく息を吐いてから、少し大きめな声で
「助けてくれて、感謝してる!」
と、言った。
「お、おうよ」
俺はなんだか恥ずかしくて、そっぽを向いて返事をしてしまった。
本当に可愛いと思ってしまう俺は、馬鹿になってしまったのだろうか。
いや、元から馬鹿なのだが、そういう馬鹿じゃなくて、なんていうかその…
「…ねぇ、聞いてる?」
「へ?」
「やっぱり聞いてないか」
そう言って、ため息をついた雫。
「わ、わりぃ! もう一回言ってくれ」
「やだ」
「ごめんって! 本当にごめん! もう一度だけでいいから言ってくれ!」
俺が手を合わせて、本当に申し訳なさそうに謝った。
俺がそういうと、彼女はクククと言って、笑い出した。
「なんだ、笑えるじゃん」
俺がボソっと言ったのが駄目だったのだろうか、いきなり笑うのをやめて、そっぽを向き歩き出した。
「ごめん! 本当にごめんなさい! だから、もう一度言ってくれないでしょうか?」
敬語なんて、何年ぶりに使っただろうか。
彼女は、立ち止まり、こっちを向いた。
「名前は何て言うの?」
「俺の名前?」
俺が聞き返すと、呆れた顔をして雫は言った。
「あんたしか居ないじゃん」
内心、少しイラっときたが、そこは男。我慢だ、我慢。
「池山大地。2年1組の男子生徒だ。」
雫は少し驚いた顔をした。
「そう、あんたが、池山大地だったのね」
そういい終わると、彼女は再び歩き出した。
俺がもう一度、声をかけようとすると、再び彼女は止まり振り向いた。
そして、俺の元へと一歩、一歩と近づいてきて、俺の目の前へ立つ。
「今日は、本当にありがとう。大地が来てくれなかったら、私危なかった」
雫が俺のことを大地って呼んでくれたことが嬉しかった。
「私に聞いたよね? 『なんでそんな格好を?』って。……私、ストーカーされたことがある
のよ」
そう、話し始めた彼女は悲しい顔をしていた。
「中学校の時だった。男子からは毎日喋りかけられたし、告白もされていた。中には、まったく知らない人から告白もされたりして。…そんな中、ある事件が起きたのよ」
雫の目から、一粒の涙が零れ落ちた。
「ある日、家の前にクマの人形が置いてあったの。そこには、ストーカー紛いの文章が書かれた手紙もあって。こういうのはたまにあったから許せたんだけど、その日から毎日、無言電話の日々が続いたし、盗撮もされて、ネットに乗せられたりしたの。なにより一番ショックだったのは…」
彼女が最後まで言う前に、俺の体は彼女を包んでいた。
強く抱きしめていた。
「分かった…もう言わなくていい。ごめん、そんな辛い過去を思いださせてしまって」
彼女は俺の腕の中で泣いていた。
俺は心から思った。彼女が愛しいと。
自分の文章能力が本当に足りない…。
バンバン訂正とか、こうしたほうがいいと言うアドバイスをくださると本当に嬉しいです。
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