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君との日々  作者: Toki.
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最終話 修学旅行〜雫との日々〜


雫とロビーで話してから、俺は部屋に戻った。


その後は、着替えを済ませ、ホテル内で用意されている朝御飯を食べに行く。


その朝御飯が用意されている場所には、雫の姿は見当たらなかった。


どうやら、捻挫しているために、保健の先生がいる部屋でご飯を食べるようだ。


俺はご飯を食べ終え、朝の集合場所である中庭に足を進めた。


今日は、自由行動をする日。


雫がいないから、事実3人で行動することになる。




明と一緒に向かうと、集合場所にはもう朋子がいた。



「明君! 大地君!」



そう言って、いつものように手をブンブン振る朋子。


多分、これからもあんな感じで俺達は呼ばれるのだろう。



「雫は今日、来れないんだってさ〜」



朋子は悲しそうな声で、そのことを俺達に告げた。


明も「そうなんだ」と言って、少し落ち込む様子を見せる。


俺は、そのことを多分、誰よりも早く雫から今日の朝聞いたのだが、あえてこの場所では言わない。


なぜかって?


深い意味は特に無い。



「空君も、今日風邪でホテルに残るらしいし」



…空もホテルに残るのか。


風邪なんて、どうせ仮病だろう。


その理由は多分、雫に告白するため。


こんな機会、もう他にないからな。


そして、雫がOKを返す。


…想像すると、少し胸が痛くなったが、これくらい我慢しなきゃ、これからがもたない。


空と雫が二人で並んでいるところを、毎日見なくてはいけない日々になってしまうのだから。


そう、あの夢のような。








―――――今までの日々は本当に楽しかった。



最初は雫が俺にぶつかってきたことから始まったんだっけ。


そういえば、あの時はどうして美人モードの雫だったのだろう?


…考えても意味ないか。


もう、終わったことだ。


三つ編みモードの雫を見つけて、本当にびっくりしたのも覚えている。


雫があの時、定期を落とさなければ、もう話すこともなかっただろう。


だって、美人モードの雫に会うことなんて、もう無いじゃん?


そして、不良にからまれているのを助けたり、そのお礼をかねてデートをしたり、隆一のグループと喧嘩したり、俺が雫に気持ちを伝えたり…。


色々あったよな。



雫との日々を俺は思い出していると、心がとても痛くなった。


泣くな俺。


こんな人前で、泣いては駄目だ。



「大地?」



明の声で、俺の正常心が戻ってきた。



「お、おう。どうした?」


「お前こそどうした? そんな…顔して」



心配そうな顔をしている。


何もないと言っても、明には通用しないんだろうな、多分…。



「まぁ、気にするなよ」



俺はできるだけの笑顔で明に答えた。


これで誤魔化せないことは百も承知。


そんな俺の心境を察知してくれたのか、明は「そっか」と言ってくれた。






そして、先生がタイミングよく、出発の合図の言葉をかけた。


生徒たちは、その先生の指示に従って、バスのほうへと歩いていく。







今、雫は何をしているだろうか。


空の告白をうけて喜んでいるところかな。


……。


もう、諦めよう。


そう、思ったときだった。


俺の目に、捻挫した足を少しかばいながら走ってくる三つ網モードの雫の姿が飛び込んできた。


顔は痛みをこらえている表情をしている。


雫、どうした?


お前は、ここにいてはいけない。


空のところへと帰るべきだ。


何をしている…。



「大地!」



そう叫んだのは、まさしく雫だった。



「し、雫…」



しかも、ここは今3年全員が集まっている場所である。


大声で叫んでは、注目されてしまうぞ?


雫、嫌がっていたじゃないか。俺と関わりあることが、他の皆にばれてしまうことを。


それなのに何で、俺の名前を叫ぶ。



「大地!」



さっきより近い場所で、もう一度雫は俺の名前を叫んだ。


周りから注目されているのを知らないのか、知っているが気にしてないのかは知らないが、俺の下へと声を張り上げて走りよってきた。


朋子が走ってきた雫に「大丈夫?」と聞いても、息を整えながら「大丈夫」と答えるだけ。


そして、雫は俺の顔を睨んだ。



「な、何してんだよ、雫」


「べ、別に…その、皆を送りにきただけよ」



そういう彼女の目は、めずらしく俺の目をしっかりと捉えていた。



「空のところ、行かなくていいのかよ? 多分、あいつ待ってるぜ?」



その言葉にびっくりしたのか、雫は目をはっと開かせた。



「なっ、な、なんでよ」


「だって、その…空の事好きなんだろ?」



自分で、何言ってんだか。


せっかく、俺達を送りに来てくれたと言うのに、こんな事を言うなんて。


ありがとう。のひとつ言えればいいのにさ。


素直になれないな、俺って。



ほら、俺がそんなことを言うもんだから、下を向いて雫はじっと黙ってしまったじゃないか。



申し訳ないとか、そういう感情を俺に持たないでくれ。


俺は、お前が幸せならそれでいい。


諦めがつく。




俺は、今まで見せたことの無いような満面の笑みで雫に「送ってくれてありがとよ」と言った。


すると、彼女は下を見ながら首を横に振る。


俺はぐるっと振り返って、バスの方向へと足を進める。


そういえば、祭りの雫は可愛かったな、とか想像しつつ、今までのことをそっと思い出しなが

ら。




5歩ぐらい歩いただろうか。


聞き覚えのある叫び声が再び俺の背後から聞こえた。


「大地!」と。



俺はその声に反応して、振り返る。


そこにいるのは、さっきの雫とは違った。


いや、雫は雫なのだが、また違った雫だった。


そう、美人モードの雫。


あれほど、俺と朋子以外に見せたがらなかったその姿を、この2年生全員がいるであろう場所で

その姿を現した。



「し、雫!」



俺は着ている上着を脱ぎながら、雫の下へと走りよった。


そして、上着を雫の頭からバサっとかける。



「な、何してんだ! その姿見られると、またストーカーとか…現れるかもしれないぞ?」



雫はそっと、頭にかかっている俺の上着をどけて、またしっかりと俺の目をしっかりと見ている。



「だったら、私を守ってよ!」



え? 今なんて?


雫は人目を全くと言っていいほど気にせずに、俺にいきなり抱きついてきた。



「私、大地のこと大好きだよ」


「え…え?」


「だから、私は池山大地が大好きなの! 分かった!?」



俺に抱きつきながら、少し頬を赤らめた顔だけ上に向いている雫の姿は、世界で一番可愛いと思った。


これは嘘じゃない。



「し、雫?」



俺が雫の名前を呼ぶと、そっと雫は一歩二歩と俺から離れていった。



「…でも、大地は由梨さんが好き…なんだよね」


「…は?」



不覚にも声が裏返ってしまった。



「し、雫、何を言って…」


「わかってる。もう、諦めるから」



俺が最後まで言う前に、雫は俺の言葉を遮って後ろをむいた。



「ちょっと待てよ!」



俺はそう言って、雫の肩をぎゅっと握る。



「お前、勘違いしてる」



俺に肩を握られ、雫はこっちを向くと、今にも泣きそうな顔をしていた。



「俺の気持ちは…雫と出会った、あの時から、何ひとつ変わっちゃいない」


「そ、それって…」



いつ俺の目を見るのをやめてしまうか分からない雫の目をしっかり見ながら、笑って言ってやった。


最高の言葉ってやつを。



「俺は、雫をこの世で一番愛してるよ」



雫の瞳に溜まっていた涙が、いっきにあふれ出す。


そんな雫を、そっと俺は抱き寄せた。


雫との日々を思いながら。














            End.












これにて『君との日々』本編完結とさせていただきます。

最後まで付き合ってくださった人や、ちょっとでもこの話を見てくださった皆様に心から感謝します。

本当に、ありがとうございました。


最終話まで56話と長々としちゃいましたが(本当は30話ほどで終了予定だった)

完結できてよかったと思います。

当初の予定であった、毎日更新も実行できたことだし…。

途中、自分の文章力の無さに書く気をたびたび失っていましたが、

メールや、メッセージ、評価等を送ってくださったおかげで、最後まで書くことが出来たと思います。

そして、この小説が一応、小説家になろうデビュー作というわけです。

今度書く小説は、私自身本当の小説書きデビュー作です。

いつ公開するなどは全く決めていませんが、遠い未来に公開というわけではどうもなさそうです。




この後に、大地のあとがきがあります。

基本、大地の独り言ですので…。

気が向いた人は、見ていってあげてください。




最後に、もう一度…

この小説を見てくださった皆様、本当にありがとうございました。






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