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君との日々  作者: Toki.
55/57

#55.5 修学旅行〜決意・告白〜



「そ…ら?」



俺は立花 空。


大地の双子の弟であり、恋のライバル相手でもある。


そんな俺は雫ちゃんがいる保健室…じゃなくて、保険の先生の部屋に俺はやってきた。


保険の先生の部屋と言っても、先生は別の用事で今はいないのだが。



「はぁい! 雫ちゃん元気ぃ?」



俺がドアを開けて話しかけると、雫ちゃんは驚いた表情で俺の顔を凝視した。


理由は、何故か分かっているけれど。



「…自由行動行は?」


「風邪引いたって言って、休ましてもらったぁ」


「風邪!?」



心配そうな顔をする三つ網の彼女の顔を見て、俺はニコッと笑う。


なんとも、その表情が可愛いのだ。



「でも、安心して! 仮病だからさぁ」



ニシシと笑ってやると、心配の表情が、呆れた表情に変わっていく。



「コラ、サボりはよくない」


「でもね、理由がちゃんとあるんだ」


「サボりに理由も何もない。今なら間に合うから、行っておいで」



ぶっきらぼうに返事をする彼女が、また愛おしく思う俺を誰が責める。



「駄目なんだ」


「何故?」



雫ちゃんは不思議そうな顔をして、一瞬だけこっちを見た。


その後は、窓の外へと視線を移す。


この前、俺に「好き」って言われたことなんて、冗談と思っているんだろうな。



「それは…雫ちゃんに、ちょっと言いたいことがあって」


「私? 何?」



そう返事する彼女の意識は、もはや俺を見ていなかった。


窓の外にいる俺達の学校の連中を見ている。


いや、複数形はおかしいか。









…大地を見ている。









俺は知っている。


大地が、俺に嫉妬していることを。


それによって、雫ちゃんとの関係が悪くなっていることも。


雫ちゃんが、大地と由梨さんが好き同士だと勘違いしているということも。


俺は知っているんだ。


知っている上でこのような行動をしている。


俺は、最悪な男だ。



「雫ちゃん、真剣な話なんだ。こっちを見てくれないかなぁ?」



俺がそういうと、雫ちゃんは素直にこっちを向いてくれた。


そして再び「何?」と俺に聞く。


本当に何も分かっていないんだよな、この子は。



「雫ちゃん、俺好きだよぉ! 雫ちゃんのこと」


「なっ、いきなり何言い出すのよ。…私も好きだけど? 空のこと」



…ここは素直に喜ぶところなのだろうか?



「大切な友達と思ってる。これからもよろしく」



雫ちゃんがそう言った瞬間に、俺は吉○興業も驚くようなずっこけぶりをみせた。


…そういうオチだとは思っていたけど、やっぱり期待するじゃないか。


あぁ、少しでも期待した俺を笑ってくれ。



「ちがう」


「え?」



何が違うの? のような、顔をしている。


本当の馬鹿だ、雫ちゃんは。



「そうじゃない、俺と雫ちゃんは根本的なことが違うんだ」


「当たり前。 男と女なんだから」



…こんな調子じゃ告白できそうもない。



「…いい? 聞いて」



俺が真剣にそういうと、雫ちゃんはすこし真剣な顔をしてくれた。



「何?」



俺は大きく息を吸って、その空気をどっと吐いた。


こんなことを言うのは、生まれてこの方初めてだ。


心臓が今にも爆発しそうなほど、バクバク動いている。


回りもあまり見えていない気がする。


俺が見ているのは雫ちゃんだけ。



「俺、雫ちゃんのことが大好きだ。雫ちゃんのいう『お友達』感覚じゃない。俺は一人の女として雫ちゃんが好きだ。大好きなんだ。…好きなんだよ」


「そ、空…」



雫ちゃんは動揺して、目をキョロキョロしている。


もう一押し。


彼女の心は今傷ついている。


あと少し押せば確実に雫ちゃんは俺の物になる。


そうすれば、大地も完璧に諦めてくれるだろう。


雫ちゃんも俺しか見ないだろう。


大地の事を思い出としてくれるの…だろう。


だけど、なぜだ?


俺は今、何を言おうとしている。


もう、止めようと思ったときには口が動いていた。



「…でも、雫ちゃんは大地の事が好きなんだよね。今から大地のところに行っておいでよ。俺なら大丈夫だから」


「す、好きなんかじゃ…ないわよ」



大地と由梨さんのことを考えたのか、雫ちゃんの瞳から涙がこぼれてきた。


俺は雫ちゃんをそっと引き寄せて、ぎゅっと抱きしめた。



「雫ちゃん、少し素直になったほうがいい。もう一度大地と話をしておいで」



涙声を出す彼女の背中をさする。


彼女は小さく頷いた。


とりあえず、俺は少し雫ちゃんと距離をあける。



「空、ごめん…私」



それ以上言わないでくれ。



「分かったから。ほら、いっておいで。早くしないといっちゃうよ?」



ポンッと背中を押して、俺はいつもの笑顔で雫ちゃんに言った。


雫ちゃんは大きく頷く。


そうすると、捻挫している足をかばいながら立ち上がった。


足を痛めながらも、彼女はドアのほうへ走っていく。


本当は痛いくせに、大地に会いたいからって。




雫ちゃんがドアを開けて、大地の下へ走っていくのを見届けると、さっきまで雫ちゃんが座っていたベッドの上に俺は体を寝転ばせた。



少しの間だったけど、雫ちゃんとの日々を俺は忘れることは出来ないよ。


ここまで好きになったんだから。


自分がよければ、それでいい。そんな考えだったのに。


今回は少し違ったようだ。


雫ちゃんの幸せを願ってしまった。


今、彼女を本当の幸せに出来るのは大地しかいない。



「あ〜、本当の馬鹿はこの俺か…」



そんなことを呟きながら、俺の人生最大の恋ははかなく散っていった。




















空視点です。

本当は、大地目線オンリーで書こうとしたのですが、

どうしても、この話を書きたくて。

はい。

もう、明日最終話です。

最後まで、お付き合いのほうよろしくお願いします。






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