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君との日々  作者: Toki.
51/57

#51 修学旅行〜口喧嘩〜



修学旅行3日目。


予定では、山登りをするらしい。


この山登りの時間も、自由時間と一緒で、明と朋子の計らいのもと、雫と一緒に行動が出来るようにしてもらった。


そのことを最初に聞いたときは、明と朋子が神様に見えたのだが、今の俺にとっちゃ余計なお世話である。


『雫と顔を合わしたくない』これが俺の本音。


正常でいられる気がしない。


雫だって同じだろう。嫌いな俺と一緒に居ることを好まないはず。


いっそのこと…空と変わってもらおうか。




そんなことを考えていると、明に引っ張り起こされた。



「いつまで寝てんだ」


「今日…休む」



明は大きくそこでため息をついた。



「昨日、雫ちゃんに無視されたことが、そんなにショックだったのか?」



ギクッ。


いきなり核心をついてくるところが明らしい。


というか、何で明は知っているんだ?



「そんなことで諦めるほど、お前の恋心は弱いものだったのか?」


「あ、明に…何が分かるんだよ」



俺は意地になって、言い返してしまった。


明は悪くないのに、心配をしてくれているだけなのに。





下を向くと同時ぐらいに、俺の頬に何かがぶつかる感触が。


いや、これは殴られたのだ。



「いって!!」


「目、覚めたか?」



明の目を見ると、本気で起こっている模様。



「覚めてるよ…」


「じゃあ、服着て出発するぞ。もう一度殴られたかったら、そのままでもいいが」


「わ、わかったよ」



俺は嫌々ながらも服を着て、ホテルを出発した。


本日の山登りのスタート地点は、どうやらこのホテルの傍にあるらしい。


そこまで歩きで向かうというわけだ。


山で死ぬほど歩かなければいけないのに、こんなところで体力を消費させるのか。この学校は。


そして、数分が立つ。


歩くのが飽きてきたなと思うころに、山登りスタート地点であろう場所に着いた。


やばい。


そろそろ雫と顔を合わす。


少し、憂鬱になってきた。







俺はなんとか、雫がいるであろう場所を見ないようにして、俺は先生の説明を聞いている。


その説明も全く、頭に入ってこないが。



「じゃあ、この前分けたグループで山登りをするからね! まずグループごとで集まってちょうだい」



先生がそういうと、ざわざわ騒がしくなって、みんなが動き出す。


俺はその場に座ったままでいると、俺のグループであろう3人が集まってきた。


大地、朋子、そして…雫。



「大地、いくぞ?」



明に思いっきり引っ張られ、無理やり立たされる。


そして、先生の下へ。


どうやら、出発をする前に点呼をとらなければいけないらしい。



「気をつけて行って来い。何かあったら、すぐ近くの先生に言うんだぞ」



先生のその言葉に明が「はぁい」と答えて歩きだした。






先頭を歩くのは、いつもと同じ明。


気を利かせてか、なんだかは分からないが、その隣に朋子がいる。


つまり、その二人の後ろにいるのは俺と雫というわけで。


ありがた迷惑というか、なんというか。


俺も雫も一緒に居たくないのに。


本当に、勘弁してくれ。



「だ、大地…そのごめんね?」



雫がいきなり話しかけてきた。


何を「ごめん」なんだ。


俺を昨日避けたことか?


嫌いになったことか?


それとも、俺の気持ちに答えられないことを?



「別に」



俺はぶっきらぼうに答えた。


別に、今更…。


空と雫なら幸せにやっていけるだろう。



「そ、そういえば空がね!」



空の話題か…。


そのあと、雫が何かを話しているが、俺の耳には入ってこない。


いや、入らないようにした。


だって、馴れ初め話なんて聞きたくない。



「大地?」


「何?」


「話、聞いてる?」



聞いてない。


そう言おうとしたけど、言葉にならなかった。


そのまま喋らないまま無視状態に。


そうすると、雫も黙り込むような形になった。



「この辺で、お昼食べようか」



明がそういうと、俺たち4人は足を止める。


俺は、鞄から先生に渡されたお弁当を取り出した。


そうすると、明が持ってきただろうシートを広げて、3人が座っていることに気付く。


その輪にどうしても入ることが出来なくて、少し離れた所で俺は弁当を食べ終わった。


そして、再び4人で歩き出す。


しばらくすると、頂上らしき場所に着いた。



「おーっ!」



明がこの光景を見て、叫びだした。


いつもの俺なら、ああやって叫んでいるんだろうな。



「すごいねぇ…」



その次に朋子が言葉を発した。


雫は、朋子の隣で楽しそうに話をしている。


俺は、その光景を後ろでじっと眺めているだけ。





はぁ、早く帰りたい。


そんなことを思いながら数十分。


頂上にいる先生に点呼をうけ、そのまま山を下ることになった。


帰り道。


いつもより、積極的に雫が話しかけてくる。


しかし、俺の返事はほとんど無に等しい。


返したとしても「そう」など、いつもの雫バージョンだ。







そんなことをしていると、雫が再び黙りだした。



そうだ。



そうしてろ。



お前は、俺じゃなく空と楽しく話すべきなんだ。








「だっ、大地の馬鹿っ!」







いきなり、雫が叫んだ。



「そうか」


「何で…何でそんな態度なの!? せっかく私が話かけてるのに!」



『せっかく?』


その言葉に俺の思考回路の何かがちぎれた。



「別に、誰も頼んでいねぇだろ! 雫は空と楽しく話していればいいだろ!」


「なんで、空が出てくるのよ! 大地なんか…大地なんか、由梨さんと仲良くしてればいいじゃない!」


「な…お前こそ、何で由梨を出すんだよ! 意味わかんねぇ」


「だっ、抱きしめてたじゃない!」



雫のその言葉に俺の思考回路は一瞬停止した。


何で…知っている?


あの日の夜のことを。



「お、お前…覗き見してたのか?」


「違うわよ! み、見えただけよ。もう…大地なんて知らない!」



雫はそう言って、来た道へと戻って行ってしまった。



「お、おい、大地!」


「…俺は帰る」



俺は、追いかけることもせず、そのまま山を下りはじめた。



















さぁて、そろそろ終盤も見えてきました。

あと6話? 7話? ぐらいで終了予定です。

もう少し短くなるかもしれません。






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