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君との日々  作者: Toki.
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#47 修学旅行〜空の告白〜



あれから、皆が科学館の外に出てくるころには涙も止まってくれていた。


騒ぐ気分にもなれず、俺はバスへと向かう。


明は俺の後ろを心配そうな顔をしてついてきてくれた。



「大地…何かあったの?」



そう話しかけてきたのは、由梨だった。



「…なんでもねぇよ。気にするな」



心配してくれる由梨の言葉を軽く流し、バスの中へと入っていった。


バスの席に着くと、今更だが由梨の席が俺の後ろだということに気付く。


今まで気づかなかったのに、どうして今気付いたかって?


それは…由梨が話しかけてきたからだ。



「本当に大丈夫? 体調が悪いなら薬もらってこようか」


「いらねぇ。本当に大丈夫だから」


「でも…」


「大丈夫だって言ってんだろうが!!」



俺がそう叫ぶと、バスの中で好き勝手していた連中どもも静かになっていた。


…何やってんだ俺。


八つ当たり? だっせぇ…。


心配してくれているのに、どうしてこんな態度をとってしまうんだろう。


分かっているけれども、俺の心は今にも壊れそうなほど何かに締め付けられていた。


最悪なことをしてしまったとは分かっている。だけど、由梨に謝ることはできなかった。


俺は明の隣で、ただ黙って外を見ることしか出来なかった。





しばらくすると、バスのエンジン音が消えた。


どうやらホテルに着いたようだ。


今日はこれで終わりということなのか。


俺はバスの中にある自分の荷物を持ち、ホテルへと入っていった。


中に入ると、先生がとりあえずクラスごとに整列をさせて、部屋別に鍵を渡していった。


二人部屋なので、俺はもちろんのこと明と同じ部屋を選択した。


鍵を受け取ると、俺と明は一番に部屋へと向かう。


先生が注意事項を言っているが気にしない。


どうせ分かりきっていることだ。


そんなことを言うなら、小学生相手にでもしてろ。


面倒なことをしていられるかっつぅの…





――――――否。





違うんだ。


そんなことじゃない。


俺が、あの場所に居たくないのは…雫と空がいたから。


やっぱり二人を見ているのはやっぱり辛い。



「うわぁ! 案外広いなぁ!」



部屋のドアを一番に開けたのは俺だ。


明に心配をかけさせないように、テンションを少し上げてみる。



「大地…」


「見てみろよ、あそこ! 中庭なんてあるぜ。こういうホテルって飯も豪華なんだよな! 7時だっけ? 30分後だからホテル内を回ってから行くか」



出来るだけ笑顔で。



「そ、そうだな! 行くか!」



明もいつもと同じ笑顔を見せて賛同してくれた。



「じゃあ、荷物置いていくぞ!」



俺と明は荷物を置いて、部屋のドアを開けた。


部屋のドアが閉まると、ガチャっという音が聞こえる。


…どうやら



「オートロックかよ」



オートロックのようだ。


しかし、鍵は部屋の中。



「先生に頼んで、開けてもらうか」



俺がそういうと、明と俺は一緒に階段を下りて行くことに。


やっぱり、注意事項はしっかりと聞いておくべきだった。


男子の階は3階で、どうやら女子が2階のようだ。


俺達が2階から1階に降りようとするとき、そこに朋子と雫…そして雫の鞄を持った空がいた。


3人は楽しそうに会話をしながら、1階から階段をあがってくる姿がちらっと見えた。


俺は明と話しながら階段を降り始めても、どうしても雫達のほうに意識が向いてしまう。


重力に逆らわずにひとつ階段を下りるごとに、雫との距離がどんどん縮まっていく。


このまま行くと階段の中間地点で、俺達はすれ違う。


しかし、結局すれ違ったのは中間地点から7段ほど上の場所だった。


あきらかに、2階付近。


まだ3分の1も進んでいないであろう場所ですれ違った。


なぜならば、俺の足がそこで止まっていたから。


こんな会話が聞こえてきたら、止まらずにはいられない。






「空君って、ずっと雫と一緒に居るよね」



朋子がそう言うと、空は「まぁね」と女の子を惚れさせるような笑みを作っている。



「雫の事好きなんでしょぉ!」


「ちょ、朋子! 何言い出すの!」



朋子がからかうような声と雫の慌てる声。


そして、次に空の声が聞こえてきた。



「雫ちゃんの事好きだよ?」



空がそういうと、雫はピタッと停止して、また息を吹き返したかのように歩き出した。



「そ、空も…何言ってるのよ」



恥ずかしそうにして顔を赤らめる。


…そして俺の思考すべてが停止した。


雫のその顔をみた瞬間ある確信を俺は持ってしまったから。


会話を聞かれていると知らずに、雫は恥ずかしそうに視線を空から背けていた。


背けた視線は俺のほうへと徐々に向き、最終的には目が合った。



「だ、大地…」



雫がそう呟いたのははっきりと覚えている。


そして、俺の横を走って通っていったのも覚えている。


しかし、後のことは全く記憶に無い。


いつの間にか俺は走り出して、ホテルを飛び出していた。


この寒い雨が降っている中、何も持たずに…。



















本気で大地をいじめています。

とても「コメディー」という枠からそれていってます…。

申し訳ない(´ノω;`)ヌゥ…






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