#46 修学旅行〜雫の隣〜
「寒くねぇか…?」
「寒い」
修学旅行の行き先は北海道である。
9月の北海道というと、まだ暖かいのではないか? と言う疑問を持つだろう。
しかし、雨が降っていて、凝るように寒い。
外の気温を掲示板で見てみると、2度と表示されていた。
「雨、やばくねぇか?」
「やばい」
こんな会話をしているのは、俺と明である。
外を見る限り、嵐がきているのではないか…と思うほどの大雨ぶり。
風も強くて、スカートであればパンツが見えるのではないか? と思うほどに。
雫はというと、空と一緒に楽しそう…とは見えないが、喋っている様子。
そんな姿を見て、俺は大きくため息ついた。
「嫉妬か?」
「ち、ちげぇよ。そんなんじゃ…ねぇって」
嫉妬…か。
「空って、雫ちゃんのこと好きなんだろ?」
「え! 知っているのか!?」
「顔に書いてあるだろ」
空の顔をよく見てみる。
…顔には一切文字は書かれていない。
「どこにも書いてねぇぞ?」
「そのボケはベタすぎる」
明がそういうと先生が「1組からバスに乗りますよ」と皆に言った。
俺達は先生の指示に従い、バスへと歩いていく。
雫は…まだ空と話していた。
バスの中では、みんな好き勝手にしている。
寝ているやつもいれば、トランプを出して遊んでいたり、カップル同士でイチャついていたり。
雫と離れている俺にとっては地獄のようである。
そのうち、目的地であろう場所でバスはぴたりと止まった。
「すっげぇ! 馬がいっぱい!」
クラス内の誰かがそう叫ぶ。
その言葉につられて、みんなは窓の外を覗いた。
俺はというと、明と一緒にバスを一番に降りる。
修学旅行のしおりに運よく書かれていて、運よく俺が持ってきたこの折り畳み傘を片手に持ち差した。
「これが自然の…においというのか」
「雨くせぇだろ」
俺がせっかくこの自然に感動をしようとしていたのに、明が無駄なツッコミを入れてきた。
「…そうだな。」
まぁ、否定はしないけれども。
俺達がバスを降りて数十秒後、雫の乗るバスが牧場に到着した。
ふと、そっちを見ると、バスの中で隣同士に座る雫と空。
…。
その光景を見た俺の心の中で、何かが暴れだしたのだった。
見つめていた先の光景に気付いた明が、無言で俺の肩をポンポンと叩いた。
俺は振り返り、歩き出した。
そして、牧場の後に行ったところでも、その次のところでも…雫の隣にはいつも空がいた。
「くそっ!」
近くにある壁を殴る。
彼女の姿を見ることが…嫌だ。
つらい。
苦しい。
そして、座り込む。
科学館の外だけれども、立ってはいられなかった。
霧のような雨が、風に乗って俺にぶつかってくる。
その雨が顔に当たると同時に、何かが俺の頬を辿り地面に落ちた。
この光景は、泣いているように見えるのか。
否。
…俺は泣いているのか。
人目を気にせず、俺の涙は外へと出てくる。
幸い、まだ学校の連中はこの科学館の中だ。
「大地…」
泣いていると、前方から明の声が。
名前を呼んだ後は、何も話さない。
俺はただ黙って下を向いた。
それでも、俺の涙は止まったりしなかった。
「うっ…うっ…」
俺の口から少し漏れる泣き声を、この雨の音で消し去ってくれないだろうか。
この辛い気持ちを、この雨水で洗い流してくれないだろうか。
さぁてと
何故か大地が涙。
これから大発展よそうです。
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