#41 今に至った理由
「あの夜、私は家族と共に夜逃げしたのは…知っているよね?」
昼休み、俺は由梨に誘われて、中庭にあるベンチへと向かった。
「ああ」
「夜逃げのことを知ったのは、あの日…大地に電話をする数分前だったの…信じて。決して、大地を騙そうなんて思っていなかったの」
『信じてやる』とか、『分かってる』とか、肯定の言葉を入れてあげるべきなのだろう。だけど、今の俺には言えない。
あの時の苦しみ…怒りが完全に消えたわけじゃないから。
「…それで、その後は?」
「私のお父さんは、ひっそりと企業を立ち上げて、死ぬ気で働いたの。そうしたらとんとん拍子で会社の株価も上がり、2年でそこそこの地位を手に入れることが出来たの。借金もしっかり返した。そこで、私は1年遅れで高校へ入学することを決めたの」
「色々大変だったな。」と返事をすると、由梨はコクッと頷いき、再び話し始めた。
「…………私は大地に心残りがあったの」
「え?」
俺はびっくりして、返事を返すと由梨は笑っていた。
「私が忘れてって言ったのにね…一番、大地との日々を忘れられなかったのは私なんだよね。」
俺は何も言えず、下を向いてしまった。
「けど、お父さんは大地と同じ高校に行くことを反対したの。無理に勉強させられて有名進学校に入学させられて…辛かった」
由梨は俺と同じように下を向いてしまった。
俺は顔をあげて、何でこの学校に入れたのかと聞くことにした。
「この高校に来たってことは…お父さんの許しを得られたからだろう?」
由梨は俺の目を見て頷く。
「説得するのに、約1年半もかかるなんて…私も思っていなかったわ。有名進学校で学年10位以内よ? 到底無理だと思っていたけど、大地のためなら…って思って。そうしたら、なんと3位とれちゃったのよ。」
エヘヘと笑う由梨はやはり昔の面影がある。
懐かしい…。
「やっとお父さんも諦めてくれて、私は今日この学校に転入することが出来た。大地の下へ帰ってこられた…」
由梨はしっかりと俺の目を見ている。だけど…俺にはその目を見返してあげることが出来ない。
なんと言えばいいんだろう。なんと言い返せばいいんだろう。
結局、何もいえないまま時間だけが過ぎていった。
「大地は…」
数分間の沈黙をやぶったのは、やはり由梨のほうだった。
「大地は、今でも私の事…好きかな?」
好き?
そんなわけが…ない…だろう。
ない…だろう。
そうすると、俺は由梨のことを今どう思っている?
ただの元カノか?
俺が何も言えず下を向いていると、慌てて由梨は俺の肩を掴んできた。
「い、いいの! 私の事をもう好きじゃないのは、百も承知。私から忘れてって言ったんだもんね。大地は…忘れてくれたんだよね」
「…忘れられるわけが無いだろうが! 何が…何が私の事忘れてだよ…」
「ごめんね。」
「何で謝るんだよ。由梨が悪くないって、あの出来事は仕方が無い事だって分かってる。 でも…今の俺には、喜んで由梨を迎えることは出来ない。」
俺がそういうと、由梨は「うん…だよね。ごめん。変なこと言い出して」と言って、去って行ってしまった。
俺はそれを追いかけることも出来ず、ただその場にじっと座っているだけだった。
心のどこかから、あふれ出そうになる涙を抑えて。
さぁ、由梨の告白です。。。
どうなるか…雫と大地はどうなるでしょうか?
自分の文章能力が本当に足りない…。
バンバン訂正とか、こうしたほうがいいと言うアドバイスをくださると本当に嬉しいです。
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