#38 由梨そしてもう一人の転校生
「由梨…。な、何で…ここにいるんだよ」
無意識に口に出ていた言葉だった。
俺は由梨から視線を外すことが出来なかった。
あの日、泣きながらの電話を最後にして、俺の下から立ち去った彼女から。
雫は明の隣に作られた席に座る。
かばんをそっと机の横にかけて、隣の明を見ると「明君、久しぶり」と呟いた。
明は「由梨さん…」と呟くだけ。
相当明もびっくりしているのだろう。
朝の挨拶の時間も終わり、休憩時間となった。
案の定、由梨の周りには生徒たちが集まる。
教室の外には噂を聞きつけた、他の生徒たちがやってきた。
『かわいいじゃん』とか、『結構美人だな』など、由梨をほめる言葉が耳に入ってくる。
注目の的である、由梨はすくっと立ち上がって、俺の方へと体を向けた。
こっちにくるのか?
…やめろ。
話なんかしたくない。
「大地…久しぶりだね」
俺の声を呼ぶ、懐かしい声は俺の心に響いた。
苦しい。
もう、見たくない。
ガタンと音を立てて、俺はその場から離れようとした。
「大地!」
後ろで由梨の声がする。
なんて…悲しい声なんだろうか。
由梨は俺の下へと走ってきて、腕をつかんだ。
俺はその腕を振りほどいて、由梨のほうへと目を向けた。
あの日の事が一瞬にして頭によみがえり、味わった憎悪が心から沸いてきたのに。
何故…こんなに苦しいのだろう。
「俺に話しかけるな…」
「大地…ごめんね」
由梨のその声は、今にも泣きそうだった。
俺の心は少し…いや、とてつもなく、この状況に耐えられるような状況じゃない。
何かを吐き出さなきゃやっていけない。
「何で…何で帰ってきたんだ! 忘れてと言ったのは由梨だろうが!」
なにかが頬を流れていく。
嘘…馬鹿じゃないのか。
学校で泣くなんて、この俺が…。
「大地…」
隣にいる明が俺の名前を呼んだ。
こんな場所、居たくない。
とりあえず、気持ちの整理をしたい。
「その手を離してくれ…」
そう呟いたら、腕の重みも無くなり、再び歩き始めることが出来た。
向かう先なんて考えていない。
明も俺が心配になったのか、ついてきてくれた。
…あとで、話でも聞いてもらおうか。
そんなことを思っていると、目の前の3組の教室がガラッと開いたのが分かった。
音につられて、顔をあげると雫がいた。
「だ…大地?」
雫は心配になったのか、学校と言うのに俺の名前を呼んでくれた。
けど、ごめん雫。今…まともに雫と話が出来る気がしない。
俺は下を見て歩き出した。
すると、ドンっと誰かにぶつかってしまった。
「わりぃ」
声をかけると、その人は俺の肩を掴んだ。
「池山…大地」
見知らぬ声から呼ばれた俺は、再び顔をあげた。
その顔はどこかで見たことある顔だった。
「空…?」
はい。
タイトルが、めちゃ長いですw
そこらへんは、気になさらずに!!
さて、今度は空が登場です。
波乱万丈の臭いが…
自分の文章能力が本当に足りない…。
バンバン訂正とか、こうしたほうがいいと言うアドバイスをくださると本当に嬉しいです。
評価で言いにくい人は、
net_touki_net@yahoo.co.jp にメールを送ってくださるか、
http://plaza.rakuten.co.jp/mlq84s/mailboxform/
で、匿名でのメッセージもできます。
宜しくお願いします。