#36 お祭りの出来事4
「だ、誰かに見られたらどうするのよ…」
花火がすべて打ちあがったと同時に、雫の手は俺の手から離れていった。
…ところで俺は、花火中に花火を見るどころではなかった。
あれから40分以上、手を繋いでいたんだぞ?
自分から繋いだにもかかわらず、心臓がバクバクしているのがわかる。
それもそのはず、雫がそっと手を握り返してくれたのだ。
その時、雫は花火に夢中だったから、無意識に手に力が入っただけだろうけど…。
「まぁ、そのときはその時だろ。しかもあの暗さ。絶対見えやしないよ」
「もう、今日だけだからね…」
はぁ、と大きくため息をついた雫は、ゆっくりと立ち上がった。
前の5人はと言うと、まだ花火の余韻を浴びていたいらしい。座ったまま、空を見続けている。
「おい、明そろそろ行くぞ?」
俺が声をかけると、「わかったぁ」と言って、立ち上がる。
それにつられるかのように、周りの女子もぞくぞくと立ち上がった。
そして再び、明が先頭に立って歩き出す。
何故か俺はいつも最後尾となり、雫と隣同士で歩く形になってしまうのだ。
夜9時半を過ぎたところで『女の子は夜遅いと危ないから!』と明が言い、解散と言う形になった。
方向が同じと言うこともあり、俺と瑞樹と朋子と雫は一緒の電車に乗って帰ることになった。明はと言うと、他の女の子を家まで送っていくことになったらしい。
『帰りに狼になるかもしれないから、気をつけてね』と女の子2人に言うと、片方が『それでもいいかも…』と呟いたように思えたのは、気にしないようにした。
そして、明と2人の女の子を抜いた俺たち4人は電車に乗った。
雫の手には、俺がとってあげたイルカの人形を大事そうに持っている。
その様子が何故か俺には嬉しくて、勝手に笑みがこぼれてしまった。
電車の中では、今日あったことや、楽しかったことを話したり、朋子と瑞樹のメールアドレス交換で時間は過ぎていった。
そして雫が降りる駅へと着く。
雫は電車を降りて、俺は雫を見送っていくために電車を降りようとしたが、後ろの二人はどうも降りる雰囲気が無い。
「降りないのか?」
俺がそう聞くと、彼女たちは『お気になさらずに』と言って、ニコッっと笑ってきた。
どうやら、俺と雫を二人きりにしたいらしい…。
そんな気遣いなんかいらないっていうのに。
「じゃあ、雫と大地君バイバイ!」
と、朋子が言うと、電車のドアは閉まってしまった。
雫はあまり状況が分かっていない様子。
俺が『行くぞ』と雫を催促すると、雫は俺の後をついてきた。
駅のホームから出て、5分もすると雫の家が見えてくる。
その5分間は無言で過ごした。
車はあまり通らない道らしい。俺たちの歩く音だけが無性に響く。
雫の家まで20歩ぐらいのところで、いきなり雫の足音が無くなった。
振り返るとそこには立ち止まった浴衣姿の雫。
「どうした?」
「あっ、あの…イルカちゃんが、私の所に来たがっていたらしいの」
「お、おう?」
何が言いたいんだ、この子は。
「そ、それで、イルカちゃんが…ありがとうって」
「うん。どういたしまして、イルカちゃん」
俺は人形のイルカにナデナデしてやると、雫は俺の顔をじっと見てきた。
きっと、『ありがとう』って素直に言うのが恥ずかしいんだろうな。
そういうところも…可愛いんだけど。
イルカをナデナデしていると、いきなり俺の両肩に重みがかかったと思ったら、今度は頬に何かが当たる感触がした。
「しっ、雫?」
俺は動揺して、雫の名前を声に出すと雫は恥ずかしそうに下を向いた。
「イッ、イルカちゃんがお礼したいって言うから! 私が変わりに…その…してあげたの! ありがたく思え馬鹿! おやすみ!!!!」
そう言って、雫は家へと走っていった。
「頬にキスなんて…反則すぎるって…」
…もう、頬は洗えないな。
あけましておめでとうございます!!
さて、去年は色々とありました。
今年は、この「君との日々」完結をまず目指します。
新年に「雫のほっぺにチュー」を公開できたのは
なんとも嬉しいw
(。・ω・。)ノぁぃw
では、今年よろしくおねがいします。
自分の文章能力が本当に足りない…。
バンバン訂正とか、こうしたほうがいいと言うアドバイスをくださると本当に嬉しいです。
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