#31 お祭りの出来事1
「遅いよ!」
そういわれたのは、俺じゃなく明。
「わりぃ! 可愛い女の子に捕まってさぁ。モテ男と言うのは、辛いんだよ。瑞樹ちゃん」
「瑞樹ちゃんって呼ぶな! 気持ち悪い」
瑞樹は一言入れて、明の頭をポコンと殴った。
このやり取りは、昔から変わらない。明が冗談言って、瑞樹が明をけなして笑いを取るというのは。
俺は、瑞樹の隣で笑っているだけの存在である。
ただいまの時刻、5時半。
30分の遅刻。
昔から明は遅刻癖があり、中学校のときなんて、学校に行った日の5分の4は遅刻だったという伝説を持つほどだ。
俺たちが遊ぶときには必ずと言っていいほど、30分ほど遅刻をしてくるし。
そのため、俺も瑞樹も、明と遊ぶときは15分ほど遅れて集合場所へとやってくるのだ。
「まぁ、とりあえず、祭りに行こうぜ!」
俺がいまだに馬鹿なやり取りをしている瑞樹と明に言った。
明は「おっけぇ!」と言って、一番初めに改札口をくぐっていった。
い、いつの間に切符を買っていたんだ。
祭りまでは駅4つほど先のところにある。
毎年祭りの時期になると、駅はどっかの都会の通勤ラッシュ並に人がいっぱい居るのだ。
人ごみはあまり好きではないので、少々人を殴りたくなってくる。
これは、カルシウム摂取不足の症状か?
電車に乗り、目的地まで行くと、そこには、毎年見る風景が。
何故か毎年来ているのに懐かしく感じた。
この3人で出かけるのは、久しぶりだからだろうか?
「最初は、もちろん金魚すくいだよね!」
瑞樹はハキハキと言うと、明はフッと鼻で笑った。
「な、何よ」
「瑞樹ちゃんはお子様だなって」
「明に言われたくないですぅ!」
「まぁ、瑞樹の場合は、金魚を救うじゃなくて、金魚を食っちゃいそうだけど」
ギャハハと笑い出す明に、瑞樹は問答無用で右ストレートをかました。
あ、ちなみに、瑞樹は小学校のころから、合気道、空手を習っています。
ブンっと言う音と共に、バン! と言う音が鳴り響き、明は数メートル先まで吹っ飛んでいった。
『痛そぉ…』といったのは、明を殴った本人である。
『南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏』と唱えているのは俺。
「ば、馬鹿! そんなの冗談に決まってるだろ! 思いっきり殴ること無いだろぉが! いってぇ」
自分の左頬を痛そうにさすっているが、音と、飛距離の割にはさほどダメージを受けていない様子。
…昔から殴られているから、打たれ強くなったのだろうか。
「明が悪いんだからね!」
「ごめんって〜」
そう言って拗ねた瑞樹を明は宥める。
傍から見たら付き合ってるのではないだろうか? という光景だ。…こいつらが、もし付き合っていたら、天と地がひっくり返って、天国へいつも上るはずの天使が地獄に落ちてしまうことになりかねない。
その様な感じで俺たちは祭りを楽しんだ。
祭りの名物である、叫び太鼓。
名前のとおり叫びまくって、太鼓を叩くだけである。
…これを名物と言っていいのか分からないが。
そして、祭りの最後のほうには花火が打ち上げられる。
俺が思うに、花火こそがこの祭りの本当の名物といえるだろう。
俺たちが笑いあっていると、射的を頑張ってやっている三つ編みモードの雫の姿を見つけた。
しかも、なんと浴衣なのだ。
か、か、可愛すぎる…。
この大人数の中、雫を見つけた俺はすごいとは思わないか? 俺の特技に『雫を見つけること』とでも書いておこうか。
俺がボーっと見ていると、明がちょこちょこっとやってきて、俺の視線をたどった。
「雫ちゃんか〜」
「な、何だよ」
ニヤニヤする明の顔を俺は睨む。
それでも、明のニヤニヤが納まらないので、俺は腹部に一発入れてやった。
「ぐはっ!」
その場で少し痛そうにする明に『自業自得だ』と言い捨ててやった。
「そういえば、前に大地が石上雫の事を聞いてきたよねぇ。どうして?」
「まぁ、色々あってさ」
「好きなの?」
瑞樹のその言葉に俺の顔は赤くなったのだろう。瑞樹は驚きの顔を隠せていなかった。
「そ、そんなんじゃ…」
なくはないけど…。
「だって、噂の写メ見たけど大地の今の彼女って…超美人じゃん!」
「…彼女じゃないけどな」
俺は笑いながらそう答えた。
瑞樹は、一瞬顔を曇らせた後、『大地でも捕まえきれない女なんているんだねぇ』と笑っていた。
「で、その超美人女の子と、石上雫とどっちが本命なの?」
「どっちと言うか…」
同一人物なんですけど。
…これは言っていいのか? それとも言わないほうがいいのか?
そんな単純な質問が俺の頭の中でぐるぐる回っていた。
「私たち友達でしょ! 隠し事は駄目! 分かった?」
説教くさく言ってくる瑞樹の顔は相変わらず笑顔だった。
その言葉と、笑顔を見ると言うしかないなと、俺の心は決まった。
「絶対誰にも言うなよ! 絶対だぞ?」
俺は念のため、瑞樹の『秘密』の約束をすると、快く頷いてくれた。
意を決して、俺は少し俯きながら口を開く。
「その…瑞樹の言う超美人女の子と、あそこに居る石上雫…実は同一人物なんだ」
俺はそういい終えると、瑞樹の顔を見た。
明が見たら『ばっかじゃねぇの!?』と言うぐらい口が開いていて、目もいつも以上にぱっちりと開いている。
簡単に言うと、ひどい顔をしている。
やっとのことで、思考回路が正常に戻ったのか、顔は少し普通に戻り、少しは納得した様子だ。
まぁ、驚くのは分かる。
俺も、初めは信じられなかったから。
久しぶりの、瑞樹ちゃん登場です。
瑞樹ちゃんはいっぱい出したいのだけれども、
出す機会がないというか、なんというか。
出来るだけ、出して行きたいです(っд;`。)スンスン
自分の文章能力が本当に足りない…。
バンバン訂正とか、こうしたほうがいいと言うアドバイスをくださると本当に嬉しいです。
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