#30 二人のお見舞い
あれから数日後。
いまだに雫は何も『願い事』を言ってこない。
しかも、今日はなんと…
「え、休み?」
電車の中で一人ボソッと呟いた。
その原因は、雫が学校を風邪で休んだからだ。
『今日は学校休む。夏風邪に…』
メールが届いたときの俺の顔は多分すごいものだったのだろう。
とてつもなくショックだったからな。
そのまま久しぶりに一人で学校に行き、教室の中でひたすら考えていたのは、勉強の事なんかじゃなくて、雫の見舞いに行くかどうかだ。
いや、むしろ行くのは決定している。
と言うか、俺自身がただ単に雫の部屋に行ってみたいからだ。
何を買っていこう。
教室で唸っていると、明に「腹でも痛いのか?」と心配された。
「そんなんじゃねぇよ」
…さぁ、どうしよう。
放課後、結局俺はミカンを買っていくことにした。
ミカンを手にすると、店の人の視線が痛いほど分かる。
『万引きなんかしねぇよ』
そう目で訴えても、信じる様子は無かった。
その前に、俺のテレパシーさえ受け取ってくれはしなかっただろう。
ミカンを買った後、俺はそそくさと雫の家へと足を向かわせた。
家の人が居たらどうしよう。
何と言って、家の中に入れてもらおうか。
まさか、「彼氏です」なんていえないからな。
実際、彼氏じゃないけど…。
色々頭の中で考えていると、俺の足は雫の家の前へと到着していた。
「と、とりあえず…インターホン鳴らしてみるかな。」
右手がスッと伸びて、その途中で止まった。
なんでこんなに緊張しているんだ?
好きな人の家だからか? いや、待て。由梨のときは…こんなことなかったぞ。
片思いだからか?
訳わかんねぇよ俺。
大きく深呼吸を吸い、インターホンへと指を向かわした。
勢いよく押すと、家の中でピンポーンと鳴っているのがわかる。
その後、ガチャガチャと家のドアが開く音。
そしてドアが開くと、美人モードの驚いた雫が立っていた。
「よっ」
俺はミカンを上に上げて、挨拶をする。
「何できたのよ」
「心配だったからに決まっているじゃないか」
紳士っぽく言う俺に、雫は引いたのだろうか、かなり顔が引きつっている。
しかし、目線は俺には向いていない。
…?
俺は頭の上にクエスチョンマークを浮かべ、雫の目線を追いそのまま俺の右斜め後ろを振り向いた。
そこには雫がバレたくないと言っていた、あのときの友達、朋子が立っていたのだ。
「し、雫…見舞いに来たんだけど…」
相当戸惑っている様子。
やばいな、やっちまったか?
雫の方を向くと、いつもの表情に戻っており、「朋子、中に入って」と手招きしていた。
俺は!
俺はどうなるの!
…やっぱ迷惑だよな。
そう思って、帰ろうとしたとき雫の声が聞こえた。
「大地、何しているの。早くおいで」
そう呼ばれたときは、天にまで登ってもいい! と心の底から思ってしまった。
「お、おう」
俺は、小走りで雫の家の中へと入っていった。
雫の家の中の様子は、至って普通といったところだろうか。
雫の部屋は、どうやら二階にあるらしい。
俺はぞくぞくしながら、朋子と雫の後を追った。
「へぇ…ここが雫の部屋か」
あまりにも感心してしまい、つい声に出してしまった。
雫の部屋は、性格とは逆に…と言ったら怒るだろうが、女の子らしい部屋だ。
かわいらしい人形も置いてあって、とりあえず明るい色で部屋をそろえていると言う感じ。
「あまりジロジロ見ない」
俺は「ごめんなさい」と謝り、下を向いた。
朋子は、美人モードの雫をどうやら知っているらしい。
…女に隠しても意味ないからか。
それとは別に、朋子は俺に恐怖感を抱いているようには見えないのだが、どうもさっきからビクビクしている。
「朋子…」
雫が悪そうに、朋子の声を出すと、朋子はなにかを言い始めた。
「し、雫…その…やっぱり付き合っていたの!?」
「「…は?」」
朋子の発言で、俺と雫の声が重なった。
自分の文章能力が本当に足りない…。
バンバン訂正とか、こうしたほうがいいと言うアドバイスをくださると本当に嬉しいです。
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