#28 勝負しないか?
「珍しいよな」
次の日の朝、俺は昨日と同じ時間の電車に乗り、雫を見つけた。
今日は、寝坊をしなかったらしい。
「何が?」
「寝坊」
俺がグサッと言ってやると、雫の顔は少し険しくなった。
「い、色々…あったのよ」
「そうなのか」
雫にも寝坊するほどの悩みがあるんだな。
そして、雫は横目でちらっと俺を見て、ため息をついた。
「ため息をつくと、幸せが逃げてしまいますよ」
「馬鹿、死ね」
「な、なんだと!」
俺は人が居るにもかかわらず、大きな声をあげてしまった。
相変わらず、雫は知らん振り。
それにしても、死ねというのはあまりにもひど過ぎじゃないのか!?
昨日の夜、『明日はちゃんと乗るから』というメールが届いた。
顔を合わせるのが恥ずかしいと思っていた俺は、次の日、つまり今だが、案外会ってみるとなんてことはない。
変わったことがあるとすれば、今まで見たいに雫をずっと直視することができなくなったことだろうか。
唇にどうも目が行ってしまって、一昨日のことを思い出してしまうから。
今日のテストの勉強なんだが、雫にあんな事をしてしまったから、俺の部屋で…というか、二
人きりになり、勉強を教えてもらうのは申し訳なくて、昨日は家で自主的に勉強した。
雫からは何も連絡が無かったので、それでいいということだろう。
…多分俺がそう思いたいだけで、連絡が無かったことについは、さほど深い意図は無いと思う。
そして、ここでも発見がひとつあったのだ。
案外、一人で勉強しても頭に入っていく。
雫と一緒にしていたほうが、やる気、勉強の進み具合は全くもって異次元だが、2時間程度で勉強が終わってしまった。
もしかすると、俺は本当に頭がいいのかも知れない。
「なぁ、雫」
俺のほうを全く見ようともしない雫に話しかけた。
「何?」
「俺と、勝負しないか?」
「は?」
「テストだよ、テスト」
一瞬こっちを向いた。
俺はにやりと笑う。
雫はパッとすぐ顔を戻し、ふたたび知らん振りモードに入る。
「俺が雫に合計点数勝ったら、ひとつ言うことを聞いてよ」
「いいけど」
案外すんなりと、俺の勝負に乗ってくれた。
学校にまともに通っていなかった俺が勝つなんて、無理に決まっていると思っているのだろうか。
ここだけの話、一昨日と、昨日のテストは手ごたえがあったのだ。
もしかすると、100点かもしれない。
「じゃあ、私が勝ったら何をしてくれるの?」
「え?」
「そういうもんでしょう。勝負というものは」
「そ、そりゃそうだけど…」
こいつ、確信犯か。
負けない自信があって、勝負もくそもあるか。
俺から持ちかけた話なんだけど。
「私が勝ったら、大地は私の言うことを聞いてくれるんだよね?」
「…いいよ」
俺が、勝てばいい話。
雫は油断しているのだから。
これからの、四教科頑張ればいいのだ。
学校に着くと、まず今日持ってきた教科書を開いて、勉強を始めた。
俺のその姿を見ると、明が笑い出したのは言うまでも無い。
そして、その日のテストが始まった。
明に笑われたっていい。
馬鹿にされたっていい。
俺が柄にも無く勉強しているのは、勝負のためだけじゃない。
心のどこかで思っているのだろう。
少しでもいい、雫に相応しい男になれるようにと。少しでも、雫の世界に入っていけるようにと…。
すんません。
本日からもしかすると一日一話更新の可能性が…。
(´д`;Aw
自分の文章能力が本当に足りない…。
バンバン訂正とか、こうしたほうがいいと言うアドバイスをくださると本当に嬉しいです。
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