初めてのナイト
次話を書いていたらキリの良いところが非常に短かったので、本日もう一話投稿します。
季節は秋に移り変わった。この国は日本と同じように春夏秋冬があるようだった。城の庭の木々もとりどりに色づき、日々の散歩が楽しくて仕方がない。
そんな私に、とある貴族からの貢ぎ物があったそうで、今日、その貢ぎ物と対面した。
それは私より大きな犬だった。大きさはゴールデンレトリバーくらいだろうか。見たことがない犬種だった。1歳の子供にはやけに大きく見える。
この世界でも犬はペットとして飼われているらしい。生誕祭で私を息子の婚約者にしたいと言ったあの貴族は、猟犬の繁殖・調教の名手らしい。贈られたのは猟犬ではなく、厳しく躾をされた、非常に賢い犬だった。
とにかく毛がもふもふしていて気持ちが良い。
あまりのもふもふさに、「もふ」と呼び掛けると、犬は優しげに「ワン」と吠えたので、名前はモフと決められた。
安直過ぎるだろ!とツッコミたかったが、モフ以外の名前が思いつかないほどもふもふだったので、まぁ良いか。
モフは男の子だった。その様に躾られているのだろうが、いつも私と行動を共にして、誰かが近寄ってきたらさりげなく私の前に出て護ってくれた。
それを世話係が褒めても特に喜びもせず、さも当然とすました顔をしているのに、私が「いいこいいこ」と褒めて撫でると尻尾をバッサバッサと凄い勢いで振り、キャイキャイと鳴いて喜んでくれる。
「モフ、おしゅわり」
シュタッ!
「おて」
ポスッ!
「こうしゃん!」
「ワフッ?」
さすがに降参は教えて貰ってないか。そうはいっても、私が出した命令を良く理解し、従ってくれる。
モフの背中に乗せてもらって散歩に行くこともあるし、庭でじゃれあって遊ぶこともある。
そして私の小さな体の活動限界がきてパタリと眠ってしまったときには、さりげに私の下になって直接芝生の上に寝ないようにしてくれる。
どこをどうしたらこんなに賢い子に育つのか…
人間では無いけれど、私は1歳にして、頼りになるナイトを手に入れた。
一昨日1000pvを喜んでいたらあっという間に2000pv。お読み頂きありがとうございます。