両親との距離
前話の最後、投稿し忘れ部分があったので追記しました。よろしければそちらもどうぞ。
生誕祭から一月ほど過ぎた頃。昼御飯の時間に、お父様とお母様が揃って私の部屋に訪れた。
いつもは夕方の日が暮れる直前か寝る間際に数分会いに来るが、特別な用事がないのに日が高い内に来るのは私が知る限りでは初めてだった。
「皇帝陛下、后妃陛下、お越し頂き恐悦至極に存じます。」
そういって、私の世話係達がお辞儀をする。
「うむ。アリュストゥリアとの時間を増やそうと思ってな。ちょうど昼食時であったか。どれ…」
と、お父様とお母様が私の方へ歩いてくる。
そして私は今、この人生で初めて、お母様からご飯を食べさせて頂いている。私は何があったのかとビックリして鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしているとは思うが、お母様が手ずから、私の口に銀の匙で掬ったポテトを運んで下さっている。
赤ちゃん用なのかちょ~っと薄味だけど、甘味が強くてお菓子を食べているような、そんなじゃがいもを頂いている。
ただちょいとお母様、口に入れて下さる量が多いでっせ。モグモグと食べるけど、喉に詰まらせそうだ。
やっとのことで飲み込むと、その様が面白かったのか、今度はお父様が食べさせて下さった。
が、こちらはお母様より多く口に入れてくれるもんだから、喉に詰まらせてしまい、世話係がアタフタする事となった。
この日初めて、両親と昼食時間を丸々一緒に過ごした。二人とも良く笑い、良く喋り、私を可愛がってくれたのだった。
翌日も昼食は両親と一緒だった。急にどうしたんだろうか?不思議には思ったけれど、それが聞けるほどには、まだ言葉が達者ではないので、取り敢えず両親を喜ばせてみよう。
「おとーしゃま」
お父様のほうを見て、手を伸ばし笑顔でそう呼び掛けると、一瞬の間の後にお父様は満足そうに頷き、
「アリスはなんと聡い子であろうか。」
と、満面の笑みで私の頭を撫でる。
続いてお母様の方を見て
「おかーしゃま」
と呼び掛けると、お母様は私を抱き上げ
「今まで忙しくて殆ど顔を会わせることが出来なかったのに、私の事をお母様だとちゃんと解ってくれているのね!さっすが私の娘だわ♪」
と、大感激なご様子。
ぶっちゃけ、お父様が娘の前でも偉いさん口調なのにはビックリしたけど、喜んで頂けたなら何よりです。
そうして、両親は私の部屋に日参し、毎日昼食を食べさせてくれるようになった。