生誕祭(後編)
あっという間に1000pvで驚いています。お読み頂きありがとうございます。
扉の両端には衛兵が立っていて、広間の中にいる人たちに号令をかける。
「皇帝陛下、后妃陛下及びアリュストゥリア皇女殿下のお成ーりー。」
皇女殿下か~。良い響きっ!
ってか私って正式にはアリュストゥリアって噛みそうな名前だったのか…。もうちょっと覚え易い名前にしてほしかったなぁ…
広間の両端には着飾った人々が並んで頭を垂れている。そして正面には大きな祭壇が設えられていた。
その祭壇の前には神父のような人達が並び、中央の一人だけが立派な衣装を着ている。どうやらその人が教皇らしく、生誕の儀式を執り行う。
お父様に抱かれて教皇の前まで進むと、教皇は厳かな声で儀式の開始を宣言する。
「これより、生誕の儀式を挙行致します。女児に行うは慣例には反するなれど、此度は皇統に名を連ねる者故特別に儀式を執り行うことと致します。」
どうやらこの儀式、女の子には行わないらしい。教皇が特別にというところを強調していた。
今日は朝起きるとお風呂に入れられて着飾らされてなんやかんやとされていたので、ヤバい、そろそろ活動限界。眠い……
教皇が何か喋っているけどあまりの眠さに何を言っているのかさっぱり解らない。
「祝詞を上げよ!」
という教皇の声と共に始まるお経のような声がとどめだった。私は眠気に抵抗できずぐっすりと昼寝をした。
気がつくとお父様に抱かれて馬車の上にいた。隣にはお母様、正面にはリュカお兄様が座っている。
みんな手を振っている。どうやらパレード中らしい。異世界でも、みんなこういうの好きなんだね。
「おやアリス、目が覚めたかい?まったく、君のための儀式なのに、途中で寝てしまうんだから。でも内緒だけど、私も自身の生誕祭の時はあの儀式の時に寝てしまったらしい。お揃いだね。」
起きていきなり、ナイスフォローありがとうございます。リュカお兄様は、いつでもどこでもどんなときでも、私には甘々のフォローをしてくださる。
「ほらアリス、み~んなあなたを一目見たくて集まってくれた人々よ。お手々を振ってあげて。」
と、お母様が言うと、今度はお父様が
「アリス、見えるか?これが我が帝国の、我が臣民でありお前の臣民でもある。」
そう言って私を少し持ち上げると割れんばかりの歓声があがる。
街並みはテレビや社会の資料集でみたヨーロッパの街並みみたいだった。
ここは大通りなんだろうか?道の両端は人で埋め尽くされている。前世ではテレビで何万人が押し寄せたとかって言ってくれるけど、こっちの世界じゃ分からないのが寂しい。
驚きはしたけど、私のためにこんなに人が集まってくれたのは素直に嬉しかった。お兄様にもう一度促されて周囲の観客に手を振ると、歓声はより一層大きくなる。
道中、お父様、お母様、リュカお兄様に抱かれ観客の声援に答えるべく手を振り続けた。
城に着くと、生誕の儀式を行ったのと別の広間につれていかれた。中に入ると全員が 頭を垂れている。そしてお父様は私を抱いたまま、上座にある玉座の前に立ち言葉を発する。
「皆今日は我が娘アリュストゥリアの誕生パーティーに集ってくれたこと、とても嬉しく思う。先の大戦からの復興はまだ道半ばだが、今日はこの国の未来を背負って貰うことになるこの子の為に、大いに楽しみ、そして健やかに育つよう、祈って貰いたいと思う。」
そういって玉座に腰掛けるや途端にどこかしこから「皇帝陛下万歳!アリュストゥリア皇女万歳!」といつ大合唱が聞こえてくる。
自分が言う側ならこのノリは遠慮したいが、言われる側なら気持ちが良いわ。
ただ、これは完全に不意討ち!突然だったのでビックリして泣いてしまった。
お父様はオロオロしつつもなんとか泣き止ませようと必死になってあやすが、簡単には泣き止んでなんかあげないもん。
と思ってたら見るに見かねてお母様にバトンタッチ。でも日に一度顔を合わせれば良い位なのでお母様も勝手がわからない。
まぁ、ナーニアが来るまで泣き止むつもりはないけどね。
結構な時間泣いたかしら。ようやくナーニアが来てあやしてくれた。
彼女のあやし方は優しくて心地よい。子守唄もよく歌ってくれるし、私が赤ん坊だから「こんなこと理解してないだろう」とは思わずに、私がいるところでは常に、私が理解していることを前提に話をしてくれる。
この人が母親なら良いのになと何度思ったことか。
それはさておき、私の生誕祭ということだけど、おおよそ私のために設けられたパーティーではない。ここからは貴族のおべんちゃらタイムが始まる。
「陛下、本日はアリュストゥリア殿下ご生誕祭へのご招待、恐悦至極に存じます」
「アリュストゥリア殿下には、お誕生日、誠におめでとうございます。祝いの品をお持ちいたしましたので、お気に召して頂けると光栄で御座います。」
「プラチナブロンドの御髪にこぼれ落ちそうに大きな青い瞳が、美しさだけでなく聡明さも感じさせ、何ともご成長が楽しみで仕方ありませんなぁ。」
「后妃陛下のご成婚の折に、我々はこれ程お美しい方を后妃として戴けるのかと思いましたが、アリュストゥリア様も、期待をせずにはいられませんなぁハッハッハ。」
期待だなんてそんなぁ♪
でも私はイケメン騎士様と恋をする予定ですから!そういえばこの国の騎士にはイケメンっているのかしら?マッチョな脳筋ばっかりだったらどうしよ~………
「うちの息子を是非婚約者にと推したい所ですが、それが出来んのが残念で仕方がありませんよ。」
こちらは勝手に婚約させられなくてホッとしてます。
どれだけが本心かわからないことをアレやコレやと言っていたが、お父様が手で制すると途端に場が静まった。さすが皇帝陛下ってか!
「皆、ありがとう。すでに4人の息子がいるが、日々の成長を見ていると娘というのはこんなにも胸踊るものなのかと、今までにない幸せを噛み締めておる。」
偉そうに言ってるけど、アンタは子育てはなーんにもしとりまへんわ、お父様。
「婚約とまで言ってくれるのは有り難いが」
全く有り難くないっ!折角生まれ変わったんだもん。前世では出来なかった、燃えるような恋愛をするって決めてるんだから!邪魔しないでよねっ!
「皆も知っての通り、既に先約があるのでな。アリュストゥリアには、この国の為にも、そこに嫁いで貰わねばならん。まぁそれは置いておいて、今日は存分に楽しんで行ってくれ。」
・・・はい?私はイケメン騎士様と燃えるような恋愛を・・・しようと思ってたのに・・・
私、生まれてまだ365日なんだけど?もう嫁ぎ先決まってるって、どんなロリコンの所にイカされるんですか?
ショックが余りに大きすぎて、城中に響き渡る大声で泣いてしまった。
恋愛ができないという事実が思った以上にショックで、ナーニアが必死にあやしてくれたけど、泣き止むことができなかった。




