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最強の双子(2)

ipadだと段落の頭がちゃんと落とせなかったので、この後にスマホでそこだけ修正します。

 リュシルお兄様の演武が終わると、リュードお兄様がもう一度出ていらした。

 双子が競技場に揃うと女性の観客から黄色い声援が飛びまくる。


 そして二人で礼をする。次はお二人で一緒に魔法を使うのね。


 まずは私が冬の間にお兄様方の魔法の練習を見に行った時に編み出した幻覚の魔法だ。

 競技場全体が森の中のようになった。お兄様方が立っている所を中心に、お花畑が広がり、蝶々やウサギに鹿までいる。それらは普通に生きている様に動き回っており、木々の間から差し込む光が幻想的な空間を作っている。


「ほお、これは凄いな。戦場で上手く使えばどれ程の効果があるであろうか。」

 お父様はそういうが、これほどの力を戦場に投入するなんて勿体無い。戦争しなくて良い様にがんばろうよ。それが仕事でしょ!と思ってみる。

「とても綺麗ね。リュカの結婚式に取り入れたらさぞかし素晴らしい結婚式になるのではないかしら。」

「ハハッ、后妃陛下、結婚式の演出を考えるのは些か先走りすぎですよ。まだ正式な婚約者を定めていないのですから。」

 あら、まだリュカお兄様は正式な婚約者を決めていらっしゃらないのね。良かった良かった♪


 さて、そうこうしている内に終わったかな?

 と思いきや、まだ何かやるつもりらしい。


 お兄様方を中心に火災旋風が巻き起こる。それは次第に地面から離れて上空で火の玉になる。

 そして火の玉から生まれたのは炎を纏った大きな鳥、フェニックスだった。

 そしてフェニックスが大きく「クゥゥゥゥ」と鳴いた。


 とても大きな声だったけど、うるさい訳ではなく、むしろ安心できる声だった。そして少し、体が軽くなった感じがする。

 同時に観客席のあちらこちらからザワザワと声が聞こえ出す。何が起こったんだろうか?


 そう思っているとフェニックスが無数の小さな火の玉に散り、お兄様方の目の前のオブジェに凄い速さで突き刺さっていく。


 お兄様方目の前のオブジェのただ1点のみが溶けていた。



 そうしてお兄様方が礼をし、帝国最強の魔法使いの共演が終わった。昨年は癒属性のみ1級の認定だったが今年はどうなるのだろうか。





 これまた審議に時間がかかっている。待っているこっちがドキドキしてしまう。




 まだかな?




「先ほどの演武について、審議の結果、癒属性は昨年と変わらず1級、火属性についても1級、風属性については2級、光属性と闇属性については2人で混合魔法を使用した時に限り2級を認める。

 尚、癒属性については効果範囲を首都全域は確実な物と認定する。後日周辺の町を調査した後、追加の認定が必要がであれば追って認定する物とする。」



 とたんに観客がどよめく。体が軽くなったアレ、あれがどうやら癒属性魔法の効果らしい。



「確かに、日々の疲れが吹っ飛んだな」

「そうですわね。こんな事なら以前から毎日かけてもらえば良かったですわ。そうすれば、私の体ももう少し老化が遅かったのかもしれません。」

「何を言うか、お前は何年経っても出会った頃の美しいままではないか。」

「あら、嫌だシュードったら、子供達が見ていますわ。もぉ。」



 なんだか夫婦のラブラブな時間が始まってしまいましたが…




 そんな所に意気揚々と双子のお兄様方が戻っていらした。

「「皇帝陛下、后妃陛下、只今戻ってまいりました。アリス!僕達の勇姿、見ていてくれた?始まる前に君と目があったからね、今日は絶好調だと思ったんだ!」」


 あ、目が合ったのは偶然じゃなかったのですね。ここはいっちょ、可愛らしく褒め称えておこう。

「りゅーどおにいしゃまもりゅしるおにいしゃまもすご〜〜〜い!うしゃちゃんにとりしゃん、かわいかったね〜!おみじゅもおとうしゃまのお顔でしゅごかったの〜!」


「そうだろう!あの水属性魔法には苦労したんだよ!な、リュシル。」

「リュードのあれを編み出すのに僕の知恵まで駆り出されたんだからね。」

「でもリュードの蟻地獄は僕が手伝ってあげただろ。」

「まあね。でもホラ、アリスが喜んでない。僕の蟻地獄は地味なんだもん。」



 いえリュシルお兄様、あれは地味でもなんでも御座いませんのことよ。

 だってアレ、戦場で使われたら阿鼻叫喚でしょうよ。



 そう、リュシルお兄様は火・風・地・癒・闇の5属性を使う。

 火や風はリュードお兄様と全く同じ事をしていたけれど水属性は使えないのでウォーター・アートではなく蟻地獄を、霧でなく砂嵐を、浄化の光ではなく、アンデッドを作り出せる程の闇魔法を披露していた。




 最後まで無言だったリュードお兄様とは違い、リュシルお兄様は最後に「競技場の中になんとか押しとどめましたが、蟻地獄はこれ以上小さく作ることはできません。」と一言付け加えて終わっていた。






 さて、それから暫くはまた5級に認定されるような者ばかりだったが、その日の最後の出場者は癒属性で4級の認定を受けた。

 認定の時に帝国に雇われるかどうかをラブルが聞くが、皆大抵仕官する。お給金がとても良いからだ。



 今日予定されている全てが終わったらまず私達が退出し、その後は審査団が退出する。

 でもこれで終わりじゃない。まだ皇族は、今日の出場者がどうだったかという、審査団の総評を聞かないといけない。

 謁見室で総評を聞くために家族が勢揃いしているところで、ラブルが口を開く。


「今年は新たに認定を受けるものが多い傾向が御座います。中でも癒属性で4級の認定が出来る人材がおったのは非常に幸運で御座いました。


早速明日から鍛えて5年後には3級の認定が受けられるようにしたいところで御座います。

 ちょうど女の魔法使いですから、戦場では聖女として戴ける様に教育したい所ですな。


 以上です。」



 ラブルが総評を述べ終わる。

 総評としては簡潔すぎない?とは思うけど、これで良いのかしら?



 するとお父様がラブルに質問する。

「ラブル、リュードの使った魔法の説明は聞いたが、リュシルの魔法はどうなのだ。

 また二人が一緒に使った魔法についても、解説をしてもらいたい。」


「畏まりました。やはり皇帝陛下と言えども一人の父親ですかな。

 ゴホン。では、まずはリュシル殿下の魔法から解説を致します。


 始まりはリュード殿下と同じカマイタチですな。これは先述した通りで御座います。

 その次にお使いになったのが地属性魔法ですな。殿下、あの魔法は何と命名なさったのですか?」


「「蟻地獄だよ。」」


「蟻地獄。確かに、アレに飲まれたら人間とて、大抵の魔法使いとて虫ケラ程の抵抗しか出来ますまい。

 その蟻地獄についてですが、殿下はあの時、これ以上は小さくならないと仰いましたな。

 では、通常あの魔法をお使いになる場合にはどの様なスケールでの使用を想定なさっておいでか。


「「直径500メートルから1キロくらいかな」」


「お答え頂いておいて恐縮ですが、お答えになる時にはお一人でお答えください。わざわざお二人でお答えになる必要は御座いません。よろしいですな。」

「「えー!」」


 毎回思うけど、お兄様方は本当に台本が無いんだろうか?それくらいにピッタリなんだよなぁ…


「さて、それだけの規模という事であれば、戦の際に対敵国全軍を相手に使用する事を考えての事と存じますが、それであればあれ以上小さくしてしまうと敵兵が巻き込めませんからな。対複数では不利でございますな。

 しかし対個人に絞ればまだまだ小さくする事は可能ですぞ。

 そこは精進が足りておらぬ所ですな。またしごきますぞ。


 と、前置きが長くなってしまいましたが、あの蟻地獄を作り出すには、まず地面の性質を変える必要がございます。


 地の砂質を砂漠の物に変える事、そしてその砂の粒を出来るだけ小さくする事、さらにあの範囲の半径と同程度の深部まで地下にも同じ状況を作り出す事、さらにもう一つ、それらを中心に向かい流動させる事。


 これらができて初めてあの蟻地獄が生み出せるのですが、その為には膨大な魔力量とコントロールが必要となります。


 リュシル殿下の作り出した物はそれら全てが完璧に御出来でした。何もケチのつけようが御座いません。

 一国の軍と対峙しても十分な戦力となり得る物で御座いますれば、2級に認定致しました。


 次は砂嵐でしたな。まぁこれは先に作り出した砂漠の砂をを風魔法で巻き上げればなんという事は無い物ですが、それを同時に、あの規模で行えるのはさすがで御座います。


 さらにそこに火属性魔法でリュード殿下と同じように温度を下げなさった。

 リュード殿下は水のエレメンツの力を借りておりましたので、それだけでも温度は下がりますが、リュシル殿下の砂嵐ではそうは参りません。


 リュード殿下以上に火属性魔法を使い周囲の温度を下げておいででした。これも、お見事でございました。


 その後は闇属性魔法をお使いになりましたな。

 これは3級4級程度であれば人を不快にしたり洗脳したり、また自らの気配を周囲に感じさせにくくしたりという物ですが、リュシル殿下はアンデッドが生み出せる程の強さでお使いでした。


 今回は実際にアンデッドを起動まではさせなかった様ですが、よろしいですか?今後もゆめゆめ、アンデッドを作り出そうなどとしてはなりませぬぞ。

 効果範囲も少なくとも首都全域は確認しておりますので、非常に危険な力で御座います。


 リュード殿下であればそのアンデッドを浄化する事は出来るでしょうが、それ以外はこの老いぼれでも無理に御座います。


 よろしいですな、何があっても、アンデッドを作り出そうなどと思わぬ様。


 それほど強力であったため、2級と認定するしか御座いませんでした。


 次の風属性魔法、火属性魔法はリュード殿下と同じ事をなさいましたので説明を割愛させて頂きます。


 リュシル殿下のお使いになった魔法については以上です。」


「ふむ、それだけを聞いていると、アンデッドを作り出せば戦は兵士を連れて行かずに双子だけで行けばなんとかなるのではないか?」

 お父様が素朴な疑問を投げかける。確かに、ここまで行くと最早反則。そりゃそうだという感じだけど…


「それは実際に体調が万全で、何の憂いも無く戦闘出来る事が前提となって参ります。

 それに、両殿下は魔力量も類稀なる物をお持ちですが、それが戦中ずっと続くかと言われると判りかねるとしかお答えできません。

 さらに、地理的に魔力が貯まりにくい、回復しにくい場所や 魔力が吸われる場所も御座いますので、両殿下だけで戦をするのは難しいと判断致します。

 先の大戦で戦場となった南部地方が正にその魔力が吸われる場所なのです。

 そこで戦を行っていたからこそ、魔族軍とも対等の戦いを続けられました。

 これが魔大陸やこの首都デストゥルブルグであれば、恐らく人種族連合軍は即刻全滅していたでしょう。」


「なっ!人種族の最精鋭が揃った部隊が即刻負けると言うのか?」

「左様に御座います。」

「そ…そうか…筆頭魔法使いのお前が言うのならそうなのだろう…ふむ…。」


 そういうとお父様は少し考え込む。

 ってかそれも知らずに戦争してたんかいな!お父様、バカですか…。


「では次に、お二方の演武のご説明をさせていただいて宜しいでしょうか。」

 ラブルは次の説明に移ろうとお父様に声をかける。


「良い。頼むぞ。」


「はい。まず最初の幻覚で御座いますが、光属性と闇属性の混合魔法で御座います。


 光属性魔法単体であれば、上級の魔法使いが使えば蜃気楼を生み出すことが出来る事は広く知れ渡っておりますが、それに闇属性を組み合わせる事によって完全な幻覚を作る事に成功致しました。


 これは両殿下が独自で編み出した混合魔法で御座います。認定は1級でも良い位に魔力が練り込まれておったのですが、まだ訴えかけるのは視覚だけですからな。

 これが聴覚や触覚にも訴えかけるようになれば、1級の認定をしようというのが審査の魔法使い一同の総意に御座います。


 その後の火災旋風はもう、両殿下とも単独で行えるので解説する価値も御座いませんな。

 その次の火の玉からフェニックスが現れるところですが、これももう両殿下にとっては何ともない魔法でしょう。

 いやはや、半年でそこまでご成長なさるとは…


 問題はその次で御座います。両殿下。魔法で音を鳴らすなど、しかもあの様に何かの鳴き声を作り出すなど、一体何をどの様になさったのですか?」


「「えー。だってアリスが音声拡大はなんで風属性じゃないの?って言うから。」」


 あ、そういえば確かにかなり前にお兄様方にそんな質問をしたわ。すっかり忘れていたけど。


「アリュストゥリア殿下が…そうですか。それでその意見を聞き研究をしたと?」


「うん、そう。」「大変だったよね〜。」「物と物をぶつけたら音は鳴るけど」「魔法を使っている時は何かがぶつかっているわけでもないし」「焚き火だって何かがぶつかっているわけでもないのに」「パチパチ音は鳴るし。」「じゃあその周りに何があるかって言ったら」「目には見えないエレメンツ」「「空気があるから、それならアリスの言う通り風属性だろう!と思って色々頑張ったんだよ。これ以上は秘密!」」


「ほおお、素晴らしい成果に御座います。今までの常識を一つ覆したわけですな。そしてもう一つ、癒属性ですが、これは個人個人に合わせた強さでかけなければならない魔法。

 薬草でも適量を取らねば薬効の作用で逆に体を蝕む場合が御座います。しかし両殿下が使った魔法はそうでは御座いませんでしたな。

 一体どのような調整を施したのですか?」


「フェニックスの鳴き声があるでしょ。」「フェニックスは不死鳥だから」「その鳴き声を聞けば病気や怪我が治ったり」「疲れた人が元気になれば良いなって思ったのが始まりなんだ。」

「だから鳴き声に乗せて癒属性魔法を飛ばしたんだけど」「効果範囲は鳴き声が届く所まで。」「それぞれの調整については」「これも突き止めるのにとっても苦労したから」「「絶対ぜったいゼッタイに秘密!!」」



「成る程、そこまで計算なさっていたのですな。昨年の大演武会では怪我人をありったけ集めてくれと言われて数百集め、それを見事一度で治したのでも驚いたのに、今年のは更に驚きましたぞ。

 頼むからこの老いぼれの心の臓に負担を掛けないようにして頂きたく存じます。


 さて、その後の火属性魔法で目の前の石のただ1箇所のみを溶かしたアレですな。

 フェニックスをあの数の小さな炎にする事も、その瞬間に炎がほぼ白に成る程高温にする事も、ただの1箇所に命中させる事も、恐らく存命中の人種族の魔法使いには不可能に御座います。

 これを2級としてしまいますと、今後2級と認定できる魔法使いが居なくなってしまいます。


皇帝陛下、両殿下はこれ程までに卓越した魔法をお使いで御座いました。

 発想もそれを実現させる力も天才的で、一部はもはやこの老いぼれには語る事も出来ぬ程で御座います。

 両殿下は真に国の宝として厳しく教育なさるが良かろうと、老婆心から申し上げます。


 以上です。」



 こうしてようやく長い1日が終わった。

 この後の4日間は特に見所もなく、ほとんどが4級と5級の認定だったので、見てるのが苦痛な程に暇だった。




 大演武会の全ての日程が終了した数日後、12歳になったらリュードお兄様とリュシルお兄様は、成人を迎える前に魔法騎士団に入団する事が正式に決定した。


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