最強の双子(1)
あーでもないこーでもないと書いていたら日が変わってしまいました(´;ω;`)
ブックマークがいつの間にか50件越えていました。お読み頂きありがとうございます。
午後の演武が再開すると、午前中とはうって変わって地味な感じだった。
出場者は首都に住む子供だろうか。とはいっても10歳前後に見えるので確実に今の私よりは年上だ。
指先にマッチの火のような炎を出したり、コップに水を注いだりと、いずれも5級に認定される者ばかりだった。
それが10人程続いた頃、ようやくリュードお兄様が登場した。
「リュードが出てきたな。リュードはどの属性が使えたのだ?」
お父様がそう言うけど、自分の息子が貴重な魔法使いだったら覚えておきなさいよ、プンプン!
「り、リュード兄様は火、風、水、癒、光属性を使う事ができます。魔力量もリュシル兄様と共に国内ではトップだと、以前にラブル準公爵が仰っていました。」
「ほぉ!ラブルよりも魔力量が多いのか!何をしてくれるか楽しみだな。」
どうやらラディーお兄様は覚えていらしたようだ。ほんと、今日は何を見せて下さるのだろうか。
リュードお兄様が競技場の真ん中に来てお辞儀をする。
そのとき目があった気がした。まるでアイドルのコンサートみたい。まぁきっと気のせいだろう。
リュードお兄様がまず見せたのは風属性の魔法だった。攻撃魔法を使う人の為に置いてあるオブジェを、小さな無数のカマイタチのような魔法で切り刻んだ。
次は水魔法だった。競技場内を大量の水がウォーター・アートのように、上から落ちてくる。
それは文字だったり、お花だったり、お父様の似顔絵だったり、色々な物を表現していた。
まだ夏だけど芸術の秋という言葉がピッタリな魔法だ。
かと思っていたら突然全ての水が消えて霧が立ち込めた。それもかなり濃い霧だ。すこしヒンヤリもしてきた。
こんな事も魔法でできるのね
少しすると霧の中からカメラのフラッシュより強烈な光が。目が…目がぁぁ…というお約束なセリフが頭の中で浮かぶけど、今日は言わないでおこう。
そしてサッと風が吹いて霧が晴れていった。
そこに現れたのは炎で作られた沢山のウサギや小鳥達。その中に立つ美形の少年。う〜ん目の保養だわ♪
そしてウサギや小鳥はいつの間にか復活しているオブジェを一気に攻撃して粉々の消し炭にしてしまった。
「以上です」
そう言ってリュードお兄様が一礼する。癒属性はやらないんだ?でも十分すごいよね!
審査に少し時間がかかっているようだ。
確かに凄かったけど何がそんなに時間がかかるんだろう?
そう思っていると天幕にラブルが現れた。
「失礼致します。皇帝陛下及び后妃陛下にご相談が御座います。少々お時間よろしいですかな。」
「うむ。何か決めかねる事でもあったのか?」
「決めかねる…と言うよりも、本当に認定してしまった構わないかのご相談でございます。」
認定して構わないかの相談ってどういう事だろう?凄い魔法使いにはどんどん上の等級を認定してしまったら良いんじゃないのん?と、思うんだけど…
「リュード殿下がお使いになった魔法ですが、今回癒属性は披露しませんでしたので去年同様の3級ですが、他の4属性について、審査をしておる全員が2級相当であると意見が一致いたしました。
火属性についてはあれだけの小動物を、しかも相当に魔力を濃密に練った生物をあれほどの数作っておいででしたので1級でも良いのではという声もあったのですが…
恐らく、この次にご登場なさるリュシル殿下も同じ属性の魔法は全く同じ事をやってのけるでしょう。
殿下方はまだ11歳になられたばかり。他国から強行な手段で殿下方を攫おうとする輩が出てこないか、それが心配で認定しても良いものかと悩んでおったのです。
何卒、両陛下のご指示を頂きたく存じます。」
「ふむ、其れ程の魔法だったのか?見ているだけでは良くわからぬが…」
「では一からご解説致します。
まず一番初めにお使いになった風属性の魔法。カマイタチを数多く作っていらっしゃいました。
そもそもカマイタチはつむじ風の一種ですから、人体を損傷させる程の力は御座いません。そこに切れ味を加えるには、そのつむじ風の一部を刀の様にする必要が御座いますが、その為には非常に多くの魔力途、繊細なコントロールを必要とします。
それをあれ程大量に、細かく作る力は2級に認定して遜色ない実力にございます。
次に水魔法ですが、小さな粒を無数に落として文字や絵を描くなど、どこからその様な発想が出てきたのか、全く素晴らしいの一言で御座います。
強い魔法を使えるようになった者ほど小さなエレメントの粒を作り出すのは非常に難しいのです。
それを無数に作り、制御し、絵や文字を表現する制御能力は最早驚異で御座います。
次に霧を作り出し競技場の温度を下げましたが、あれは水と火の混合魔法ですな。
霧自体は水属性魔法ですが、その後温度が下がったのは霧の効果だけでなく、火属性魔法で温度を奪っておりました。
これは私でも単独で使わなければ発動が難しい魔法で御座います。
その後の光りは光属性魔法ですが、魔法使いでなければその威力は感じないでしょうが、例えばこの首都に住む者がすべてアンデッド系の魔物になったとしても、3度ほどですべて浄化出来るほどの強さで御座います。
その次の風属性魔法はどうと言うことはありませんでしたが、次の生き物を模した火属性魔法は冬にはまだ出来なかった魔法で御座います。
それをあれほど沢山、一瞬で作り出した。しかも込められた魔力量は非常に多く濃密で御座いました。
以上が、先程のリュード殿下の演武のご説明でございます。」
「わ、我が子ながら何だその出鱈目な力は!
それだけの力があれば何かあった際にも自分の力で対応出来よう。
それにそれだけの力を持ったものが二人もいると周辺諸国に知れ渡れば、何処もこの偉大なデストゥニア帝国に歯向かおうとは思わんだろう!
皇子達は普段は城内におるのだ。誘拐等々も問題ない。
そのような雑事は気にせず等級を着けるが良い。」
「かしこまりまして御座います。」
その後の演武でリュシルお兄様もリュードお兄様とほとんど全く同じことをやった。
双子の皇子は、4つの属性で2級の認定を受け、それぞれが11歳にして帝国最強の魔法使いになった。