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魔法大演武会

 私は普段、お城の敷地から出る事は無い。唯一出たのが生誕祭のパレードだったけど、今日から5日間、お城の外にある競技場に行くそうだ。


 何があるかと言うと、帝国全土から魔法使いが集まって自らの技を披露する大魔法演武会がある。


 魔法は強さや規模によって等級分けされている。

 どうやって等級が決められるかは至って簡単。魔法の師匠が4級と言えば「4級相当」と名乗る事が出来る。

 ただ、正式に「4級」と名乗る為には、この演武会で帝国に選ばれた魔法使い達から認定を受けなければならない。


 その正式な認定を受ける為に、帝国全土から魔法使いが集まり日々の鍛錬の成果を披露する。



 大演武会は毎年夏に行われるらしいけど、皇族はそれを観戦するのが仕事らしい。

 私はまだ2歳だけど、一応の分別は付くと判断され、今年から観戦が認められた。

 普通は2歳児ってまだ分別が付かないからダメって言われると思うんだけど…まぁ私は前世と合わせると中身は19歳相当だから、まだ分別がつきませんって言われる方が問題か。


 競技場の中段あたりに天幕のついた場所が2カ所ある。その上の天幕が私たちが座る席のようだった。


 天幕とは言っても上段は皇族が座る席なのでテントのような簡易的な物ではなくて、輿を大きくした様な意匠で、それを支える柱や梁には細かな意匠が刻み込まれている。

 幕自体も緋色に金銀で細かな刺繍が施されていて煌びやかだ。


 下段は上段の物ほどではないけれど、テントよりは立派な天幕が張られていた。


 そうは言っても今は夏。5日間も日程を取っているのだから、演武会は1日1時間程度で終わるわけでは無いだろう。

 その間こんな天幕の中に居ないといけないって…その暑さを想像しただけで観戦意欲が削がれていく。


 まぁ、皇族以外は炎天下の中の観戦だからそっちの方が辛そうだけど、この世界にはもちろんテレビもスマホもパソコンも無い。一般庶民の娯楽が圧倒的に少ない。

 その庶民の娯楽といえば、生誕祭や収穫祭のようなお祭りや処刑、そしてこの魔法大演武会くらいで、大演武会には皇族が出席するので皆こぞって観戦に来るらしい。



 さて、今日の私は爽やかな水色のドレスを着せられている。

 お父様とお母様はお人形さんみたいと浮かれてはしゃぎまくっていたし、リュカお兄様は「あぁ僕の小鳥ちゃんは、言葉で可愛いと言うのが陳腐な程に可愛いじゃないか!今まで君の可愛さや美しさを言葉を尽くして表現してきたつもりだけど、もうこれ以上は何を言って良いかわからないよ!」と言って頬にキスをしまくる、相変わらずのシスコンぶりだった。

 さらに、ラディーお兄様は頬を赤らめて「うん…」と言ったきり、お父様の後ろに隠れてしまった。

 両親はさておき、私の兄弟、頭は大丈夫だろうか?




 これから5日間の苦行を思い天幕に入る為、リュカお兄様と手を繋いで競技場に足を踏み入れると、観客から大声援で迎えられた。


 天幕に入ると意外や意外。クーラーなんてないこの世界なのにヒンヤリ涼しい。よっぽど不思議そうな顔をしていたのか、ラディーお兄様が

「アリス、この天幕の中はね、魔法で涼しくしているんだよ。だから快適に観戦できるよ」

と教えてくださった。


 あ、ラディーお兄様、吃らず喋れたんですね。


 お父様、お母様、リュカお兄様、ラディーお兄様の順で民衆に手を振ると、その度に大歓声が巻き起こる。

 私は最後にお父様が抱き上げて手を振らせてくれる。すると、今日一番の大歓声。まるで地響きのようだった。

 ぶっちゃけ皇帝陛下や皇太子殿下以上の歓声はまずいんじゃ無いの?とは思ったけど、まぁ私、可愛いからね♪

 あぁ、でも大歓声、気持ち良いよね〜!



 さて、演武会というからには龍の玉を集めて願いを叶えてもらうあのマンガの天下一武道会のような物を思い浮かべていたんだけど、チョット違ったみたい。


 まぁそうか、明確な魔法の力量差では一方的な虐殺にしかならないもんね。


 出場者は申し込み順に呼ばれるらしい。

 競技場の中央に進み出て天幕の方向に一礼し、各々が今できる一番の魔法を使う。


 それを帝国が指名した魔法使い5人が等級付けし、認定のマジックアイテムを付与するという流れだそうだ。


 その審査をする魔法使いの筆頭は、双子のお兄様達の魔法の師匠、2級の3属性使いラブル・メルタークだった。

 正式な役職名、名前はデストゥニア帝国魔法騎士団名誉団長兼宮廷筆頭魔法使い ラブル・トルスタス・ナシュト・メルターク準公爵。

 出自は平民だったが、類い稀なる魔法の才で帝国の繁栄に大きく寄与したとして、準公爵という位が彼のために作られた。帝国民から英雄と言われている。

 ということを、私は今ようやく、これもラディーお兄様に聞いて知った。




 私たちがいる天幕には、お父様とお母様が中央に座り、右側に固まって私たちの席が用意されている。

 私はリュカお兄様とラディーお兄様に挟まれる形で座っている。双子のお兄様方の姿はここには無い。


 そう、リュードお兄様とリュシルお兄様は大演武会に出場なさる。去年初出場し、見事3級の認定を受けたそうだ。今年はさらに上ということだろう。






 まずは毎年真っ先にエントリーするデストゥニア帝国魔法騎士団の面々からだ。帝国がわざわざ魔法騎士団として囲っている人材なので、使う魔法がとにかく派手ででかい。


 3級の火属性使いはこの競技場を炎の壁ですっぽり覆ってしまうし、3級の水属性使いは街全体に雨を降らせて見せた。しかも「攻撃魔法にしてしまうと観客との間に張られている魔法障壁を壊す恐れがあるのでこれにて何卒」という文言付き。

 改めて魔法ってすごい…。



 でもラブルが休憩時間にやって来て、あやつらはただ派手ででかいだけなので、所詮3級なのだと言っていた。

 師匠の鳥みたいに精密で美しくないもんね。うん、納得。


 大体が1種類の魔法を披露するだけで終わってしまうが、稀に2種類の魔法を披露する出場者がいる。魔力量が比較的多く、複数の属性が使える者だ。

 このクラスは大概が帝国軍の魔法騎士団に所属しているので一般の参加者ではそこまでの人は居ないとラディーお兄様が教えてくださった。


 魔力量が少なく最大魔法を2発撃てない人は後日に別属性でエントリーするか、次の大演武会にもう一つの属性でエントリーして認定を受けるかになるらしい。



 リュードお兄様とリュシルお兄様は破格の5属性持ち。出場は今日だけって事だったけど、どうするつもりなんだろう?



胸躍る魔法大演武会は、まだ開幕したばかり。


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