お茶会その2
「あら、私はそうは思いませんわ。現在は先の大戦からの復興特需で南部の経済が回っていますから、税を少し軽くするのがよろしいのではないでしょうか。」
「あら、おはしたない。それをお決めになるのは殿方ですわ。私達は殿方が正しいご判断が出来るように支えるのが勤めなのですから。」
翌週のお茶会にも私は参加していた。もちろんリュカお兄様のお膝の上だ。
今回は前回とはうってかわっておおよそ「お茶会」と呼ぶには相応しくない会話がなされている。
始まりは、南部のフェルド公爵令嬢。名をジェリー・ジョセフ・モシュト・フェルドという。先の大戦の復興でうちの領内はとても活気付いておりますのオホホホホという話が発端だった。
そこにリュカお兄様がシレッと「なら今年は徴税が沢山出来ますね」と爆弾を投げた。
それ、賄賂をよこせと言う悪代官みたいなんですが…
そこにさすが皇太子殿下と同調する御令嬢方。
そんな中でただ一人、南部の男爵令嬢、才女と名高いエリイ・ファビエル・ドーラ・リョンドンがそれは違うと冒頭の発言と相成った。
「まあ、一時的に税を減らせと。どういった考えの元でそのような判断に至ったのかお伺いしたいわ。」
お母様がエリイ嬢にそう問いかけると、周りの御令嬢からはクスクスと笑い声が聞こえる。
リュカお兄様は私にかまってばかりいるけど前回の事がある。きっとこの回答、聞き耳をたてているはずだ。
「え?あ、も、申し訳ございません、このような場で政に対し、女の私が私的見解を述べるなど礼に反する事で御座いました。どうかお許し下さい。」
そういうとかなり動揺したのか、手にしていスプーンを取り落とし、あたふたして膝上にあったハンカチまで取り落とし、さらにはそれを自分で取ろうとしてドレスの裾を踏んでこけてしまった。
他の御令嬢は声をあげて大声で笑いたいのを必死で我慢しているのだろう。肩が激しく揺れていた。
男尊女卑が徹底しているこの国で、直接政に口を挟める女性は后妃ただ一人である。それ以外の女は政治に口を挟む程の能は無いから家内を取り仕切っておけというのが長らくの考え方だった。
貴族の女性は家の繁栄の為に子を産み育て、使用人を使い家長が屋敷で寛げるよう取り計らう。あくまで家内の事を取り仕切るだだった為、エリイ嬢が税を軽くするべきと言ったのは、一般的には男を蔑ろにした恥ずべき女と見られてしまったわけだ。
エリイ嬢があわてて謝罪すると、リュカお兄様が、
「私が話題をふってしまったからね、すまなかったね。でも、君の私的見解とやらに興味があるな。聞かせてくれないかい?」
と、真っ黒な笑顔で話しかける。笑顔は黒いけど、前回のお茶会からここまで積極的にリュカお兄様が話をするのは初めてだった。
エリイ嬢がどうしようか困っていると、お母様からの鶴の一声。
「エリイさん、ここはあくまで、私の私的なお茶会です。内々の事ですし、私から聞かせて頂きたいと御願いをしたことですから、貴女の素直な意見が聞きたいわ。」
そう言って上品にニッコリと微笑むお母様。
でも今のエリイ嬢には、その笑顔は死刑宣告のように感じてるのではと、同情せずにはいられなかった。




