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プロローグ:運命の輪
「本当にやるのですか? 万が一失敗したら危険な目に……」
黒髪に長身の男が心配そうに扉近くで控えている。
ここは地下のある一室。
窓もないこの部屋はずいぶんと使われていなかったので、埃っぽくカビ臭い。
四隅に置かれた燭台の蝋燭の火が、風もないのにゆらゆら揺れいる。
この部屋に入れるものはごく一部の人間のみ。
床に大きく描かれた幾何学模様の魔方陣と古代文字が白く不気味に輝いている。
その真ん中で、別の男が目を閉じ、胸に手を当て、ゆっくり深く深呼吸した。
やるしかない
もう残された道はこれしかないのだ
立ち止まっているわけにはいかない
そしてゆっくり目を開け、呪文を唱え始めた――