世界はやはり間違っている
両親からこっぴどく叱られ、俺は一人部屋にこもって過ごすが、散歩しているくらいの自宅謹慎を過ごしていたが、次の日には大久保からパソコンを返され、自分のサイトを確認した。
すると、サイト内には石橋東高校の欄があり、そこをクリックすると『学級崩壊といじめの実態を見よ!』というタイトルで映像がアップされていた。そこには加藤が毎日いじめられている映像が数多くあり、前にも見たが嫌悪感ばかりつのってくる。そして、最後の動画には俺の活躍?する映像がタイトル付きで用意されていた。
『モテない組最高司令官干物男の華麗なるいじめ解決方法』と題された映像を俺が確認すると、最初に説明書きの映像が流れた。今までの経緯とこれから俺がする行動が説明されていた。そして、田辺が撮影していた映像と俺が撮影していた映像をうまく編集し、映像化されていた。そして、一連の出来事の映像が流れ始めた。女子生徒たちのいじめ現場を押さえていた。そして、俺の勇者的行動もしっかり撮影されている。そして、そこで映像が途切れ、最後に文が流れ始めた。
『その後、モテない戦士たる最高司令官干物男は会議室に事情聴取を受け、自宅謹慎となった。だが、学校側はいじめの事実を認めず、最高司令官のみを罰することを決定したのである・・・・・・・これがモテない戦士のクリスマスイブでの話であった。モテない組最高司令官はモテない特性を最大限に発揮し、この身を犠牲にして、女子トイレに突入し、いじめの実態と撃退を皆に示してくれた。この動画はモテない最高司令官である干物男も名誉として動画に残す。モテない組、ネックラーより尊敬を込めて・・・・・』
これじゃあ、まるで俺が死んだみたいじゃないか!?
俺は怒りというより、どこか馬鹿にされているような感じがした。しかも、あの大久保がこんな工夫が出来る男であることを俺は始めて知った。
そして、この動画に対するコメント一覧を俺は確認すると、無数に存在したことに俺は驚きを隠せなかった。
『すげぇ、マジ勇者だし、女子トイレ突撃って半端ねぇ』
『モテない組最高司令官に敬意を表します!』
『学校隠蔽乙』
『こんな高校行きたくねー』
『この高校、一応進学校だよね? 学級崩壊起こってるし。工業系とかなら分かるけど・・』
『干物男マジ痛いわ。でも、尊敬できるわ!』
『よく考えたら、女子トイレってドア開けても、便器のドアがあるからある意味問題ないんだよね』
『ホースで水をかけるってベタだな。しかし、それに立ち向かうモテない組代表マジ神だし。学校退学しないよう応援してます!』
『この学校マジ最悪。俺の学校も酷いけどここまでじゃない!』
『散っていったモテない組最高司令官に敬意を表します!』
・・・・・散っていった?
俺は何かがおかしいと思った。すると、これ以降のコメントも明らかに違っていた。
『あの人は偉大な干物であった。今は俺の心の中で生きていてください!』
『史上最高の変人を我々は失ってしまった。これはモテない我々にとって大きな損失である。彼は自らの命でモテない人間にしかできないことを示してくれた。彼のご冥福を祈る(笑)』
おい、絶対おかしいよな。俺死んだことになっているぞ? しかも、(笑)ってどういうことだ!
『そうか、彼は死んだんですね。すばらしい人だったのに。モテない僕たちを救ってくれた偉大な人(笑)』
『彼は再び蘇るであろう。不死鳥のように(笑)』
どいつもこいつをこの俺を馬鹿にしている。尊敬されながらも馬鹿にされる。この矛盾に満ちた状況を俺はどうすることもできなかった。これもまた、モテない人間の宿命というやつか・・・・女子トイレに入ったということはある意味で『社会的死』を意味するのだろう。
すると、今度はアンチたちがコメントを出している。まずは『リア充世界』のサイトの連中たちからである。
『学校内を盗撮するなんてどうかしてますよ。いじめを解決しようとする心がけは認めますが・・・』
これはリア充仮面からのコメントであった。相変わらず、きれいごとばかりのつまらないコメントだ。
『女子生徒に暴力をふるんなんて最悪だな。女性は子供を作るために大切にしなくちゃいけないんだ! これだからモテない組は。ただの暴行事件じゃないか!』
リア充戦士のコメントだ。
これだから、リア充共は。自分たちは偽りの楽しみを存分に味わっているから、理不尽な目に遭っている人間の存在や苦悩を理解できないのだ。こういう人間たちが学校の先生をやるのだから、何も変わらない。いずれ、リア充世界の人間たちを粛清しなければならないかもしれないな。
今度は学校裏サイトらしき人間たちからのアンチコメントが寄せられている。
『盗撮とかマジきもいんですけど。犯罪じゃね?』
『モテない人間マジ怖いわ』
『正義ぶってんじゃねーよ。童貞が』
相変わらず、偏差値の低いコメントがずらりだ。すると、モテない人間たちからの逆襲が始まった。
『何が盗撮犯罪だ。いじめを告発したんだ。お前たちは見てみぬ振りしか出来なかったくせに』
『そうだ、そうだ。干物男は社会的抹殺を覚悟して一人の人間を助けたんだ。それの何がいけない!』
ああ、やっぱり社会的抹殺はまぬがれないのね・・・・・・
『リア充名乗ってるやつに聞くけどさ。女子生徒に暴力ふるっちゃいけないって言うけど、もしかしたら、いじめられてた女子生徒自殺してたかもしれないんだぜ! いじめをする人間の味方すんなよ!』
『底辺知らないやつらってホントむかつく 死ね。リア充爆殺しろ!』
『それいいね。リア充爆殺しろ!』
これで黙っているリア充たちではない。
『そんなことを言っているからモテないんだ。本当にかわいそうなやつらだ! 同情するぜ』
『君たちもリア充になれば、そんなことも言わなくて済むんだがな・・・・・』
すべての人間がリア充になれれば、俺たちの存在理由はないだろう。しかし、それができず、モテないという苦しみを与えているのがこの社会の現実だ。もし、リア充世界の人間たちがすべての人間がモテる世界を作るような計画を考えているなら俺たちの態度も変わっていたと思う。しかし、そんな世界は作れないし、俺は嫌だ。恋愛のごたごたが起こるのが人間の性だ。そんなものは必要ない。恋愛ごっこをしたいやつは勝手にしていればいい。だが、そのエゴを俺たちの振るのだけはやめてほしい。
『リア充爆殺しろ! リア充爆殺しろ!』
このリア充爆殺というフレーズが俺たちモテない組の中で繁殖し始めていた。リア充と非リア充、そして石橋東高校の学校裏サイトメンバー。この三つの対立が俺のサイトをうごめいている。とてもくだらなく、だからこそ真剣になれる空間として。
すると、モテないメンバーたちが俺の登場を要求し始めた。
『モテない最高司令官はまだコメントをしないのか? また、俺たちの様子をうかがっているのか?』
『主役は最後に登場ってわけか? かっこよすぎるぜ、モテないくせに』
『いや、本当に死んだのかもしれないぜ』
また、俺の死亡説を流している。やつがいる。すると、そのコメント主の正体が判明した。投稿者名は『元リア充』と書かれていたのである。
これは・・・・・・波野だ。
『初めまして。元リア充です。名のとおり俺は、一昔前はリア充をしていました。しかし、彼女に自分がカードゲーマーであることがばれ、完全に振られ、その後すぐに元カノは新しい彼氏を作りました。それ以降、俺は女性恐怖症になってしまい、もう二度と恋愛できません。そんな時、親友でもある干物男に頼んで、モテない組新メンバーに入れてもらいました。その時の審査では、散々いじめられました(笑) 今回の件もモテない組全員で話し合い、モテない最高司令官干物男が自ら動き、特攻しました。学校内での社会的抹殺を覚悟してまで行った彼を皆認めてください。そして、彼のご冥福をもう一度祈りましょう。そして、彼の意思を我々が受け継ぎ、この世界を新たな価値観で満たしましょう』
波野ーーーーーーこの俺を葬ったな!
すると、調子に乗った残りのモテないメンバーたちも俺を殺し始めたのだ。
『ニジコンです。俺は彼のことは忘れない。俺がどれだけ説得しても彼は二次元世界には来てくれなかった。彼は二次元内での恋愛すらできない男でした。それゆえに彼はこのモテない組世界を作った。彼は自分の居場所を作り、俺たちに生きる希望を見いたしてくれました。モテないことは恥ではない。これが彼の口癖でした。俺はパソコン上の彼女や妹たちといっしょに毎晩祈っています』
『カスミオタです。僕は売れないアイドルのカスミの大ファンで写真集を見ながら一人、学校の片隅で過ごす毎日でした。そんな僕をあの人は受け入れてくれました。モテない組の良い所は変わった趣味の持ち主たちを否定しない空間であることです。僕が売れないアイドルの曲や写真集、そういった会話をしていても絶対否定しないのです。ただ、モテない最高司令官は僕がどんなに熱くカスミのよさを語っても好きになってはくれませんでした。死ぬ前にせめてカスミの魅力だけでも理解してほしかった。本当に悔しいです』
どいつもこいつも悪乗りしすぎだろう。俺は生きているぞこら!
しかし、俺の叫びとは裏腹に続いてのネックラーのコメントが載っていた。
『ネックラーです。こんにちは。俺は今まで自分の家系を恨んでいました。父、祖父、そして親戚たちすべての男性は二十代後半までには必ず毛がぬける宿命を背負っていました。現在も俺の髪の毛には力のない細い毛で構成されており、毛がなくなるのは時間の問題でした。しかも、それはクラス中に知れ渡り、いつか禿げる人というレッテルを貼られてしまいました。そんな時に出会ったのがあの干物でした。あいつは俺のことを『サラブレット禿』とあだ名をつけたのです。普通なら怒りを覚える所でしたが、不思議を感情的にならなかった。あいつは馬鹿にしていると同時に俺の存在を肯定してくれたんです。禿で何が悪い。それがお前のアイデンティティだ。そう言ってくれた。だから、俺は自分の運命を呪うのをやめ、受け入れました。両親からは禿げる前に彼女を作って結婚しなさいといわれています。しかし、無理して結婚する気はありません。もし、完全に禿げてしまっても構いません。なぜなら、それが俺だからです。それをあの干物は俺に教えてくれました。俺は一生あいつを忘れません。だから、皆さんも彼のことを忘れないでほしい』
あの・・・・・俺生きてますが・・・・・・俺って本当に死んだのかな?
そんな不思議な疑問がわいてきた中でダークサイドこと田辺が投稿文を書いていた。
『モテない組一番の見た目の悪さを誇っているダークサイドです。不細工でメタボの俺には何の取り柄もありませんでした。それは今も変わりません。人間、生まれ持ったものでしか生きることができない不条理な生き物です。俺はそれを恨んでいました。どうして神は不細工とイケメンを二種類の存在を作ったのか? 俺は神を憎みました。この世界を恨みました。しかし、そんな世界に周りを一切気にしない干物男がいました。俺は人の悪いところばかり見えてしまうネガティブな人間です。特に干物男には数多くの短所がありました。数え切れないくらいの短所ばかりで長所と呼べるものはほとんどありませんでした。しかし、干物男は短所を受け入れることのできるすばらしい人でした。周りに一切流されないその生き方はまさに絶対的長所でした。今回のいじめを報告したのは実は俺なのです。同じクラスの女子生徒のいじめを知っていながら俺は何もできなかった。それで干物男に話をした結果、このようなことになりました。本当に申しわけないと思っています。しかし、やつの死を無駄にするわけにはいかないのです。俺たちは今後もモテない組として生きていきます。生涯結婚するつもりはありません。しかし、最近気になる女の子ができてしまいました。その相手はいじめられていた女子生徒です。片思いだけなら問題ないのでその思いはふたをして封印することにしています。それがせめてもの俺なりの、やつに対する供養です』
何が供養だ。何サイト内で告白してんだよ! 俺は死なないぞ。この・・モテない組が!
そんな、悲しいのかお笑いなのか、わけの分からない掲示板内は再び炎上することになった。
『おい、いじめられっこを好きになるならお前が助ければよかったろ!』
『さすがはダークサイド。邪魔な干物男を犠牲にしてリア充になろうとしているとは』
『モテない最高司令官乙』
『謀ったな。ダークサイド』
『何恋愛してんだよ。これじゃあ、供養じゃなくて裏切りだ!』
田辺が調子に乗ったことをいうのでユーザーたちを怒らせてしまっている。これは必然としかいいようがない。すると、恋愛肯定のリア充たちがまさかの田辺応援コメントを載せてきたのだ。
『おい、恋愛は自由のはずだ。人間だぞ。それを否定することは人間そのものを否定することになる。それに片思いは片思いで辛いんだ。ダークサイドはその苦しみを必死で押さえようとしているんだ。これだから、モテない組は!』
リア充戦士からのコメントはさらに俺のサイトを炎上させていく。
『お前は引っ込んでろ。これはモテない人間同士の問題だ』
『そうだそうだ』
『リア充うざぁ』
だんだん、盗撮の話から、俺の追悼式、そして田辺の恋愛問題へと変わっていく。この醜い光景を見ていると、このサイトにアクセスしているすべての人間たちが俺にはモテないような気がしてきた。
その後も、不毛な争いは続き、コメントがウイルスのように増殖していく。そのウイルスを止めるにはワクチンを打たなければならない。そのワクチン役たる存在が、死亡説の飛び交っている俺ということなのだろう。
そろそろ、降臨しよう。
俺はキーボードに手を置き、押し始めた。
『どいつもこいつもこのモテない世界代表の俺を馬鹿にしやがって! 俺をネット内で殺すとは許せないな。しかも、皆それを承知で会話しやがって! まず、ダークサイド。お前の恋愛なんかどうだっていいんだよ。両思いになって付き合い始めたら、その時は粛清するまでのことだ。次、俺を殺すな元リア充。俺は生きている。社会的抹殺を受けても俺は死なない。死ぬわけにはいかないんでね。モテない組正規メンバーは悪乗りしすぎた。では、本題のいじめの件について話し合おうじゃないか』
すると、数多くのコメントが再び繁殖し始めた。
『最高司令官から世界代表に進化した・・・・・この痛い発言は間違いない干物男だ』
『蘇ったというのか・・・・?』
『モテない人間ほどしぶといということか』
『おかえりなさい』
『神が降臨した!』
しかし、歓迎だけがすべてではなかった。
『お前は刑務所へ行け!』
『盗撮魔。変態、暴力反対』
『童貞の神がやってきたぜ』
『うわぁ、マジきしょいんですけど』
『諸悪の根源現れたり』
学校裏サイトの連中め。どこまでもくだらないことを。
『やっと現れたか。待ちくたびれたぜ。モテない王がいなければ張り合いがないからね』
『モテない、盗撮、暴力、女子トイレ進入、罪状たっぷりだな。どこまでモテないロード極める気なんだ。お前は!』
リア充世界の連中も勝手なことを言っている。しかし、その反応の仕方は嫌いじゃない。そして、モテない正規メンバーたちのコメントが現れた。
『本当の干物か疑わしいな』
『成りすましの可能性の否定できない』
『しかし、干物男になりたい人間などそうはいないと思うがな』
こいつらはどこまでも俺を殺そうとしているということか?
俺は再びキーボードを打ち始めた。
『この俺をどこまでも殺そうとするとは。許さん』
『証拠を見せてくれれば信じてもいいぜ』
波野からの言葉であった。なら、受けて立とうではないか。
『元リア充。望むところだ。では、証拠を見せよう。お前が彼女のことを忘れられないのは、一線を越えたからだ。意味は分かるな。その元カノの体が恋しいんだろ。中学から付き合っているから情も移っていずれ結婚するとか妄想してこのざまだ。しかし、今はお前は俺たちと同類になった。そのことを忘れるなよ。元リア充君』
すると、このコメントに対し、モテない人間たちは一斉に元リア充を攻め立てた。
『くそ、非童貞だというのか。ちきしょー』
『やることはしっかりやってたってことか。何がモテない組だ。こんなやつ追い出せ!』
『追放だ!』
これに対し、波野はコメントした。
『くそ、どうやら本物らしいな。俺のプライベートをよくもしゃべってくれたな。』
俺の攻撃はまだ終わらない。
『そして、ネックラー。お前の家系がすべて頭皮の天辺からはげている家系であることを俺は知っている。このサラブレット天辺禿が!』
『これを知っているということはやはり本物か。生きていたとは?』
根暗で禿の大久保が悪乗りするというのはめずらしい。しかも、ノリノリだ。
『俺を殺してもらっては困る。では、本題に入ろうか。クズ学校裏サイトのやろうたちとリア充くそやろうたちよ。この俺の話を聞くがいい。いじめられた女子生徒をモテない組と勝手に決めつけ、クラスの大半がいじめに加担し、学校裏サイトでも彼女の悪口を言っていた事実を俺たちモテない組は知っている。しかも、流した映像などいじめのごく一部分に過ぎないのだ。いじめた人間は遊び半分で将来後悔することもなく、思い出として残るのだろう。しかし、いじめられた人間は消えない傷になってトラウマになるんだ。では、なぜ俺たちモテない組がいじめに対し、ここまで語るのか。それはモテないというレッテルを貼られ、惨めな思いをするようなこの社会が一種のいじめの構造だからだ。モテない人間の苦しみの根本は『いじめ』なのだ。だからこそ、俺は一人で実行した。いじめられている女性を救うことが悪だというなら俺はその考えそのものを否定する。彼女を救える人間は人気者でも、優等生でもない。周りの影響を気にしない境地に立った人間。そして、背負うものなき人間にしか出来ない。それはモテない組の俺たちにしかできなかった行動だ。お前たちリア充や裏サイトの連中にそれができるか。結論は無理だ。行動に移すには君たちみたいな学校階級に縛られている人間にはできないからさ。その縛りのなり人間にしかできない。失うものが俺たちにはないからね。では、いじめ解決の方法になぜ暴力を使ったのか。理由は簡単だ。暴力には痛みを知るということができるからだ。いじめはウイルスと同じように繁殖する。それを治療するのに俺たちは暴力が一番効果的だと考えたからだ。そして、それは特効薬にもなりうる。俺たちモテない組は学校階級の底辺に存在する。そんな人間にクラスの上位者たちは聞く耳を持たない。ただでさえ、教師の言うことを聞かない人間が多すぎるからね。そして、いじめの首謀者たちは痛みを知る必要があった。言葉でそれを伝えることは難しい。学園ドラマのような展開は存在しないからね。最近は体罰否定の風潮があるのが世間だ。しかし、それは体罰という暴力を乱用した結果なのだ。使い方を誤った結果、暴力や体罰が完全悪にされてしまったに過ぎない。しかし、学級崩壊が起きている現在、言葉だけでは解決できない。それが現実だ。もし、暴力を悪と断ずるなら、それは必要悪だ。そして、この学校の罪を誰かが正さなければならなかった。それを俺が行ったまでのことだ。自分を正義の味方とは言わない。ただ、俺は彼女を救っただけだ。それが悪になるなら俺はこの社会を完全否定する』
俺は自分のエゴを最大限に吐き出した。しかし、エゴは更なるエゴを生む起爆剤になりうる。これが人間だ。
『では、なぜ女子トイレでしかもグーで殴ったんだ。平手打ちでも良かったし、場所なら他にいくらでもあったんじゃないか?』
リア充仮面からの質問であった。
『俺はインパクトがほしかったんだ。ただ、いじめの首謀者を平手打ちするだけではインパクトが薄く、他の学年に影響が及ばない。学校すべてを巻き込み、反省させる、考えさせるにはもっとも心に刻み付けられるような方法が必要だった。それが理由だ』
今度は学校裏サイトの連中が感情むき出しにコメントしてきた。
『はあ、意味わかんねーし、頭おかしいんじゃねーの』
『ばっかみたい』
しかし、このような罵声に対し、俺が答えるまでもなかった。モテない組および味方するユーザーというなの同類たちが応戦してくれたのである。
その中で話題がクリスマスの話になった。
『俺はクリスマス反対デモをやるのかと思ってたな。まさか、女子トイレ突撃するとは考えなかった。で、2月14日には何をやるんですか? モテない世界代表』
その問いに俺はある疑問を投げかけた。
『なぜ、2月14日なのだ?』
すると、すぐに返答された。
『2月14日が何の日か分からないのですか?』
『申し訳ない。何曜日とかそういうのは・・・・』
俺は普通に謝罪した。
『バレンタインデーですよ。まったく、これだからモテない世界代表は』
『そうか、すっかり忘れていたよ。何せ、生まれて一度ももらったことがないもんで』
『義理くらいあるでしょう』
『いいや、特にないが何か問題でも?』
『・・・・・・・・・・』
『・・・・・・・・・・』
点だけの返信が急に増えてきた。この反応は俺にドン引きしているということか?
学校裏サイトの連中もリア充たちもそして、モテない正規メンバーたちも全員俺に対し、冷たい態度を取っている。そして、元リア充の波野だけは、点ではなく言葉を返してくれた。
『知らなかったよ。お前がここまでモテない人間だったとは。俺はお前を哀れむよ。同情はしなけど!』
『このリア中の成り損ないがぁ!』
そして、その日はずっとインターネットをつなぎながらモテない一日が終わった。




