桜の散る季節に
ぬすっと狐めが、散った桜に吠えている。
たましいが耳をすますと、
陰気くさい声をして黄色い娘がうたっている。桜散るその木の上で。
なぜおれはこれなのだ、狐よ青白いふしあわせの狐よ。
それはゆっくりとした目覚めだった。桜も散ろうかとゆう4月の終わり、私はそいつに会うためいつもより一時間ほどはやく夢から抜け出そうとしていた。
「やあ おはよう」
「なんで君の方が私の家にいるんだい」
「朋有り、遠方より来る、亦悦しからずや。だよ、そんなに邪険にすることはないじゃないか」
ニヤニヤとした笑みを張り付けたそいつはそんなことを言った。
遠い空でぴすとるが鳴る。
またぴすとるが鳴る。
ああ私の探偵は玻璃の衣装を着て、
こびとの窓からしのびこむ、
床は桜花、
ゆびとゆびの間から
真っ赤な血がながれている、
かなしい娘の屍のうえで、
つめたい狐が鳴いている。
「で、何かわかったのか」
「何も、もしかしたら狐にでも食べられたんじゃないかい、それにしても佐藤一家心中事件ねえ、君もよくそんな事件を調べる気になったもんだ。あれは警察だってただの心中事件として結論を出しちまってるじゃないか、いまさら調べたってなにも面白くないと思うんだけどなあ」
やっぱりそいつはニヤニヤを張り付けたままそう言った。
「私はそんなもの食べないさ。」
「そんなことは百も承知、だいたいその体でどうやってものを食べるというんだい。」
馬鹿にするように彼が私の周りをまわりはじめたので、ムッとしているとそれに気づいたのかそいつは動きを止めて
「そういえば日記があったな」
「日記、誰のだ。」
「一人娘のえーとなんて名前だったかなー」
そう言うとそいつはおちょくるかのようにまた私の周りをまわり始めた。
「加奈だ。佐藤加奈。お前、わざとやってないか」
ピタッと止まるとそいつは何も答えず、かわりに口角をさらに吊り上げて私を見てきた。
「はあ、まあいい。で、なんて書いてあったんだ」
「いやー、お涙ちょうだい、ハンカチ無くしてはみれないはなしだったよ」
そいつが長々と話した日記の内容をかいつまむとこんな感じだった。
一人の女の子がいた。性格は明るく、小学校ではたくさんの友達に囲まれていた。
また、女の子は大のおじいちゃん子で、おじいちゃんも女の子の事を本当に可愛がった
しかし、おじいちゃんは今、入院しており、余命はもう長くなかった。
医師がもう残りわずかの命である事を伝え、女の子は両親に連れられ病院に行った。
病室で女の子の両親はおじいちゃんと話した後、医師の説明を受けに病室を出て行った。
病室には女の子とおじいちゃんの二人が残った。
女の子はおじいちゃんに、学校の事や最近楽しかった事などいろいろな事を話した。
しかし、途中で女の子は泣きながら
「おじいちゃんいなくなるの?」
と聞いた。するとおじいちゃんは
「おじいちゃんが死んだら、お父さんとお母さんと一緒にかなしんでくれるかい?」
と言った。女の子は
「うん……でも死んじゃいやだよ」
とつぶやいた。その次の日おじいちゃんは帰らぬ人となった。
女の子はその日、わんわん泣いた。
「その一週間後、理由不明の一家心中と相成りましてござい」
最後をそいつはそう締めくくった。
「いや、理由ならあったさ」
私がそう言うとそいつは初めてその顔から笑みを落とし、少し驚いたような顔をした。
「へえ、それならよかった。ちゃんと腹になりそうかい」
「そうだな、もう物じゃないからな」
「それなら君でも食べられるな」
「ああ、しみたたましいってのは、稲荷ずしにするとうまいんだ」
永遠の繋がりを求めるは夢
流れ歪む思いのせせらぎに
たましい喰われ遂に
永劫の断崖より落ちた
腹が膨れたのはこの幻影の狐
2chにあった意味が分かると怖い話を自分なりに背景をつけて短い作品にしてみました。言葉遊びがいくつか入っているので見つけてくださると嬉しいです。
初めての小説で拙い文ですがここまで読んでくださってありがとうございました