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ドラゴンマスター  作者: 杉井流 知寄
第一章 
13/13

 4

 やーい、怒られてやんの。

 くしゃくしゃにされた髪を手ぐしで整え、つねられた頬をさすりつつ、ひんやりした首筋を自分の暖かい手で温める。

「お前の、どこがゴーレムなんだ?」

 んなこと、わたくしに言われましても……妖精二人にそう言われただけなので。

 身体は魔導師が作って、心は妖精が複製した、っていう話だっけ。

 ……はぁ。

 言えない。

 自分の口から、私の心は複製物です、って、言えません。

 やっぱり言えないなー。

 そう、黙ったままでいると、

「ど・こ・が、ゴーレムなんだ?」

「ちょっふぉ、いたひですって、やめて下さいよ」

「思わせぶりなお前が悪い」

 マシューさんに、また頬をつねられたり、指で突っつかれる。今度はマーサさんも止めてくれない。

 それどころか、

「そうだねぇ、お肌もつやつやだし、髪だって綺麗なもんじゃないのさ」

 マシューさんも反対側から、さわさわツンツンしてくる。

 挟まれてしまった……。

 うむむぅ……。

「……いや、ですからね、私も妖精から聞いた話なんですけど、」

「あの生意気なヤツか?」

「ええと、それとは別に家妖精っていうのが居て、」

「まあ、若いのに贅沢ねぇあんた! 家妖精だって!?」

 すいません。

 良く分らないけれど、驚いて声を荒げたマーサさんに反射的に頭を下げた。

 日本人の悪い癖だ。

「家妖精ねぇ……流石フェアリーマスターだな。しっかし、尚更ゴーレムに妖精が仕えるとは思えんが、どうなんだ?」

 どうなんだ、と聞かれてもなぁ……知らないよー。

 何とも言えなくて、また無言になる。

 と、二人は容赦なくべたべた触ってきた。

 流石に異性であるマシューさんの触り方は、軽い。触るというより、突っつかれる感じ。

 対してマーサさんは、同性の為か揉み出してきた。

 腕から二の腕、首筋から顎下、頬、髪の毛。一通り上まで行って、今度は下腹を直撃。横腹を遠慮なく掴まれた。

「ゴーレムには、とても見えないねぇ」

 揉むの、やめて。

 作り物の為か、嬉しい事に無駄肉はない。ないけれど、やっぱ掴まれていい気はしない。

「……下はどうなってるのかしら」

 ぼそっと言われた言葉に、俯いていた身体の芯を正す。

「すいません、私ちょっと疲れてるというか、ゲームのし過ぎで中二病患ってまして、今までの発言は忘れて下さい。大丈夫です、私普通の人間です」

 視線は下のまま、目をどちらにも合わせずに、きっぱりと言い切る。

 が、

「出身国はどちら?」

「…………ええと、」

 マーサさんの質問に撃沈。

 しまった、冒険証を先に確認しとくんだった。

 復習よりも予習が大事って、塾の先生も言ってた。

 ……いや、答えに詰った時点で終わりだ。ここがそうです、って言えば良いだけの話だったのに。

「……まあ、お前がこの世界の人間じゃないのは、昨日会った時から分ってたんだがな」

 そうなのか、早く言えよ。

 やはり盗賊を埋葬しようなどと言い出す人間は、地元民じゃあり得ないらしい。

 そう説明しつつ、空になったカップをカウンターの上段に置いて、マーサさんにおかわり催促するマシューさん。

 おかげでマーサさんは離れていった。

「お前の世界じゃどうか知らんが、こっちじゃ異世界の人間は珍しくない。禁術で呼び出されるヤツも居るし、偶然流れ着いたヤツも居る。お前はどっちなんだ?」

「……呼び出された、んですかね?」

 記憶を辿ると、ゲームしてた気がする。

 それから変なのが現れて……うん。

 朧気な記憶。

 捕まえようと追いかけると、ふわふわと目の前をからかうように泳いでいく。

 私は諦めた。

「なんだそりゃ?」

「ええと、記憶喪失といいますか、なんていうか……ナビ妖精がどっか行っちゃって、私も何したらいいか分らないんですよね」

「ナビ妖精って、なんだい?」

「ヘルプって……ええと、何したら良いか分らない時の、道しるべとか目標を教えてくれる妖精です」

 マーサさんに説明している間に、少し、このゲームについて思い出してきた。

 ゲームスタート時、やれることは少なかった。

 受けれる仕事はほとんどないし、金もない。

 訓練所に通ったりして、武器のスキルを上げるが第一の目標だった。

 まずはスキルレベル一〇が第一到達点。達成して初めて、冒険者として登録可能になり、荷物運びやら農場の手伝いやら簡単な仕事を受けられるようになる。

 次に三〇を過ぎると、一人でも街の外に出られるようになり、近場の遺跡に潜り始める。

 遺跡では常に何かしらの収穫があった。遺跡に自生する植物や、生息する魔物の爪とか牙とか体毛等。鉱石や、魔石も。

 魔石とは、魔力の宿った石のこと。

 『魔石を手に入れた!』っていう表示しか見てないから、実物はどんなものかは知らないけど、遺跡にもぐる冒険者の主な収入源。魔導具の材料にもなる。

「あんた、何をしたら良いか分らないって……あんた冒険者だろう? やりたい事とか夢があるんじゃないのかい? だから冒険者になったんじゃないのかい?」

 念願のマイホームは叶っちゃったんだよねぇ……金の亡者になってた時期が懐かしい。

 他には……なんだろ。

 なんかあったっけ?

「うーん、なんかあったような気がするんですけど、忘れましたね」

「記憶喪失、ねぇ……まあ、異世界の人間にはよく聞く話だな。世界と世界を超える衝撃は大きいと聞くし。それにしてもお前、呑気だな」

「というか、呼び出されたんなら、呼び出した人間に聞けば良いんじゃないのかい?」

 名前知らねー……会った事もないぞ。

 家妖精の二人に聞けば、分るかな?


前回の部分、ちょこっと訂正です。

身体は妖精製→魔導師製です。

肝心な設定をミスるという……;

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