しげみのクモ と そらのくも
童話はあまり経験がないのですが、子供が読みやすいようにと漢字は控えさせていただきました。
少々読み辛いかもしれませんが、ご容赦願いたく存じます。
まちはずれ に ある やま の なか。
そこに ある しげみ の なかに、いっぴき の クモ が いました。
そのひ、しげみのクモ は す を はなれ、まち の みえる、こだかい おか に たちました。
そこから そら を みあげる と、おおきな おおきな とても おおきな くも が、あたま の うえに ながれて きました。
しげみのクモ は、そらのくも を みながら いいました。
「わたし は クモ という なまえ だけれど、あなた の ように おそら を とべない。
あなた の ように おおきくなくて、あなた の ように、とおく へ いけない。
わたし も あなた も なまえ は クモ。なのに どうして こんなに ちがうのですか?」
しげみのクモ の しつもん に、そらのくも は こたえます。
「わたし は くも という なまえ だけれど、あなた の ように あるけません。
あなた の ように かぞく が いなくて、あなた の ように おさんぽ できない。
わたし も あなた も なまえ は くも。なのに こんなに ちがいます」
そらのくも は そこまで はなすと、しげみのクモ に えがお を むけます。
「わたし と あなた が ちがうのは、あなた が とくべつ だからです。
あなた が とくべつ な だけでなく、わたし も とくべつ だからです。
あなた と わたし だけでなく、みんな が とくべつ だからです。
いぬ も ねこ も、とり も さかな も、おはな も くさ も、こいし も つちも。
とくべつ だから みんな が ちがう。みんな ちがう から、みんな が とくべつ なのですよ。
だから、あなた も わたし も おなじ なまえ でも、これだけ ちがい が あるのです」
そらのくも は こたえながら、ゆっくり ながれて たびだちました。
しげみのクモ は それを きき、じぶん も とくべつ なんだなあ と きがつきました。
そして、そのことに よろこびながら、えがお で す へと かえりました。
いかがでしたでしょうか。
またの機会がございましたら、今度は漢字も使うべきかと考えております。
この度は数ある作品の中、「しげみのクモ と そらのくも」を選んで読んでいただき、まことにありがとうございました。