拝啓 もう一人の私 様
読者の皆様は、人生の岐路に立たされた事がありますか。そんな主人公が、自分に宛てて、心の中で手紙を出しました。さぁ、幕開けです!
拝啓 もう一人の私 様
あなたは、今、何処で、何をしているのでしょうか。
もしかしたら、もう日本にいなく、何処か遠い異国の地にいるのでしょうか。
私は、何とか、まだ元気に生きています。
あの時、私達は、人生の岐路に立たされましたね。
私は、こっちの道を選びましたが、あなたは、違う道を選びました。
そっちの道を選んで、正しかったと思いますか。
今、幸せな人生を送っているのでしょうか。
私は、自信を持って、この道を選んで正しかったと言う事ができません。
あの時、私が、あなたが選んだ道を進んでいれば、もしかしたら、「今、幸せです」と、胸を張って言う事ができたのかもしれません。
この道を選んだ事に、後悔は一切ありません。
寧ろ、この道を選んで良かったと、自分に言い聞かせています。
でも、時々思うんです。
あの時、ああしていれば、もしかしたら、全然違う人生を歩んで、今よりもずっと幸せな生活を送れていたのかもしれないなと。
それって、やっぱり、後悔してるのでしょうか。
私が選んだ道が、正しかったと信じようとしているのですが、どうしても、心の何処かで、やっぱり、あの時に違う道を選んでいたら良かったかなと、思ってしまうんです。
どうしたら、この心の葛藤から抜け出せるのでしょうか。
誰かに相談したいのですが、こんな事を相談できる人なんていません。
私は、これから一体、どうしたらいいのでしょうか。
どうしたらいいのか、途方に暮れています。
この道を選んだ事が、正しかったと信じたいのですが、どうしても信じ切れません。
あなたが、もし、正しい道を選んだと思っているのなら、私は、あなたの事が羨ましいです。
あなたと代わりたいです。
でも、あなたと代わる事なんて、出来る訳がありませんよね。
私は、この道を突き進むしかないんです。
たとえ、この道を選んだ事が間違っていたとしても、もう後戻りはできません。
私は、この道を選んでから、精一杯頑張ってきました。
努力は、自分でも驚く程、してきたと思っています。
でも、どうしても、自分自身を信じ切る事ができません。
どうしたら、自分自身を信じ切る事ができるのでしょうか。
誰でもいいから、教えて欲しいです。
そういえば、あなたと私が、人生の岐路に立たされた時は、夜でしたね。
夜空に、満月が綺麗に浮かんでいましたね。
打ち上げ花火が、夜空に綺麗に花開いていましたね。
あれから、随分、時が経ちましたが、満月と打ち上げ花火は、よく覚えています。
それからの事は、いっぱい頑張り過ぎて、あまり覚えていませんが(笑)。
あなたに会いたいです。
あなたに会って、いろいろなお話をしたいです。
勿論、あなたは、私自身なのですから、会える訳がありませんが。
それでも、あなたから私に、「よく頑張ったね」と言ってもらいたいです。
もう夜遅い時間ですし、そろそろ寝ます。
よかったら、私の夢に、出て来てもらえませんか。
私の夢の中で、「よく頑張ったね」と言ってもらえませんか。
お願いします。
それでは、おやすみなさい。
敬具
私は、心の中の手紙を、心の中のポストに投函し、ベッドに横になり、眠りについた。
翌朝、目が覚めたが、夢の中に、もう一人の私は出て来なかった。
―やっぱり、もう一人の私は、夢の中に出て来てくれなかったな~。そりゃ、望んだ時に、いつでも出て来てくれるなんて事、ある訳ないよな~。はぁ、何だか、気分が乗らないな~。気だるいけど、休む訳にはいかないし、今日も精一杯頑張るしかないか~―
気力を振り絞り、朝の準備を済ませ、今日の活動に向かった。
いつも通り、がむしゃらに頑張っていると、どんどん時間が経ち、あっという間に夜になった。
―あ~、もうこんな時間か~。必死に頑張ってると、時間が経つのが早いな~。そろそろ切り上げて帰るか~。明日もがむしゃらに頑張らないといけないのか~。はぁ。こんな人生、嫌になってきた。もう死んでもいいや。誰か殺してくれないかな~。通り魔でもいいや。逃走中の殺人犯でもいいや。うわっ!何考えてるんだろ。相当、病んでるぞ!せめて、誰でもいいから、「よく頑張ったね」って、言って欲しいなぁ。まぁ、そんな人いないか~。さぁ、帰ろう―
考えるのを止め、外に出て、夜空を見上げると、綺麗な満月が浮かんでいた。
―わぁ~!満月だ~!すごく綺麗だな~!人生の岐路に立たされた時も、夜空に綺麗な満月が浮かんでたんだよな~。懐かしいな~。あの時の満月と、遜色ないな~。これで、打ち上げ花火が打ち上がったら、本当に、あの時と同じなんだけどな~。まぁ、そんな上手くいかないか~―
前を向き、テクテク歩いていると、前から、フードを被った、いかにも怪しい感じの人が、こっちに向かって歩いて来た。
―うわっ!いかにも怪しい感じの人が、こっちに向かって歩いて来る!もしかして、刺されちゃうかな~。もうこんな人生、嫌になってきたとこだし、この人に刺されてもいいかもな~。でも、いざ、刃物を向けられたら、やっぱり、怖くなって、まずは逃げようとするんだろうな~。逃げ切れなかったら、後ろから刺されて、死んじゃうんだろうな~。諦めて、正面から刺される方が、苦しまずにすぐ死ねるのかな~。そもそも、死にたいと思ってるのか、死にたくないと思ってるのか、どっちなんだろうな~。もうすぐ、あの怪しい感じの人と、すれ違うぞ!迷っている時間は無いぞ!どうするんだ?逃げるか?そのまま歩くか?うわ~!どうしたらいいんだ~!―
そんな事を考えているうちに、どんどん怪しい感じの人が、こっちに近付いて来て、とうとう、目の前に来た。
―うわ~!来た~!ここまで来たら、もう逃げられないぞ~!このまま歩くけど、刺されそうになったら、避けようとしてみるか~!それとも、避けずにあっさり刺されるか~!あ~!どうしたらいいんだ~!―
心臓がバクバク鼓動しているのが分かる。結局、緊張しながら歩き進むと、何事も無く、通り過ぎた。
―・・・・・・考え過ぎたな~。別に、怪しくも何ともない人だったんだな~。本当に精神が病んでるな~。とっとと歩いて帰ろう―
更にテクテク歩き進むと、突然、後ろから「ド~ン」という音が聞こえた。はっとなり、後ろを向き、夜空を見上げると、綺麗な打ち上げ花火が、花開いていた。キラキラ輝きながら、ゆっくりと落ちて消えていく様子を、じ~っと眺めながら、ぼんやりと考える。
―あ~、まさか、本当に打ち上げ花火が上がるとはな~!びっくりしたけど、すごく綺麗だな~。綺麗な満月に打ち上げ花火。正に、あの時、人生の岐路に立たされた時と同じだな~!こんな偶然、あるもんだな~。何だか、死にたい気分が薄れてきたな~。まぁ、一人で見ていても仕方ないし、帰ろう―
クルッと身体を回転させ、前を向き、再び歩き出した。打ち上げ花火の音を聞きながら、テクテク歩いていると、何故か、胸につっかえる感じの思いに駆られた。
―あれ~。何かが引っ掛かるな~。何だろうな~。う~ん。気になるな~。何か大切な事を忘れているような・・・。まぁ、あの時から、無我夢中で頑張りまくって、記憶が曖昧になってるからな~。う~!どうしても思い出せない~!悔しい~!歩きながら思い出そうとしたら、思い出すかな~。とりあえず、どんどん歩き進むか~―
更にどんどん歩き進むと、ふと、遠くの方に、公園が見えてきた。
―ん?あの公園が、何故かめちゃくちゃ気になるぞ!あの公園に、何かがあるはずだ!よ~し!行ってみるか~!―
公園に向かって歩き進み、公園の中に入ると、何人もの人が、夜空を見上げて、打ち上げ花火をじ~っと眺めながら、歓声を上げたり、拍手したりしていた。
―あ、そうだ!この公園、打ち上げ花火を見る、穴場スポットだったな~。ん?この公園で、満月の夜、打ち上げ花火か~。何かが頭の中に思い浮かんできそうな気がするな~。う~ん、何だろうな~。とりあえず、ここで暫く、打ち上げ花火を見てみるか~―
公園で立ちながら、夜空を見上げ、暫くの間、打ち上げ花火をじ~っと眺める。次々と花火が打ち上げられ、夜空を綺麗に彩る。いよいよクライマックスに近付いている雰囲気が出て来た、その時、はっと思い出した。
―そうだ!思い出した!あの時、この公園で、綺麗な満月の夜、今日と同じように、夜空を見上げて、綺麗な打ち上げ花火を見ていたんだった!あ~、懐かしいな~!でも、大事な事を思い出せないでいる気がするぞ!何だろう。う~!ここまで来てるのにな~!もうすぐクライマックスの花火だぞ~!何としてでも思い出すぞ~!―
更にじ~っと打ち上げ花火を眺める。どんどん花火が打ち上がり、打ち上がった花火が花開き、ニコニコマークの形になった。その時、頭の中に、あの時の光景が蘇った。
―そ、そうだ!思い出した!あの時、一緒に打ち上げ花火を見たんだった!という事は、もしかしたら、いるかもしれないぞ!―
周りを見回すと、来た時よりも、少し人が増えていて、皆、夜空を見上げて、次の打ち上げ花火を待っている。公園を歩き回り、探し回る。ふと、木の陰に、誰かがいるのに気付き、歩いて近付いてみると、ビビッと衝撃が走った!なんと、そこには、あの時、打ち上げ花火を一緒に見た人が立っている。
―い、いた!もしかしたらと思ったけど、本当にいた!話し掛けて、いいのかな。覚えてるのかな。え~い!迷っていても仕方がない!勇気を出して、話し掛けてみるぞ~!―
「あ、あの、ひ、久し振り。覚えてるかな?」
問いかけに、その人がこっちを向き、ニッコリ微笑みながら、口を開いた。
「久し振りだね。待ってたよ。花火大会が行われる度に、この公園に来て、待ってたんだよ。やっと来てくれたね。すっごく嬉しいよ」
「や、やっぱりそうだったんだね!ご、ごめん!めちゃくちゃ待たせちゃったね!あの時、やると決めた事に自信が付いたら、また、この公園で、一緒に打ち上げ花火を見ようって、約束してたんだよね!あれから、がむしゃらに頑張ったけど、なかなか自信が持てなくて、どんどん時間が経っていって、花火大会が何度も開催されたけど、どうしても行けなくて、頑張り過ぎて、記憶が曖昧になってきて、あの時、誰と何を約束したのか、分からなくなってきちゃったけど、今日、たまたま綺麗な満月で、花火大会が行われていて、綺麗な打ち上げ花火を見て、思い出したんだ!実は、まだ完全に自信を持つ事ができてないんだけど、ここに来れたのは、運命だと思うし、もう迷ってる自分を捨てて、自信を持つようにするよ!待っていてくれて、本当にありがとう!」
そう言うと、その人が涙を流しながら、言葉を掛けてきた。
「こ、こっちこそ、来てくれて、思い出してくれてありがとう!すっごく嬉しいよ!待っていて、本当に良かったよ!」
その人の言葉を聞き、真剣な表情で言葉を振り絞る。
「またここで一緒に打ち上げ花火を見る時に、言うと決めてた事があるんだ!結婚して下さい!これからは自信を持って必死に頑張って、必ず幸せにするよ!」
プロポーズを聞き、その人が更に大粒の涙を流しながら答える。
「はい!よろしくお願いします!一緒に幸せになろうね!」
「うん!ありがとう!やった~!良かった~!」
思わず、その人をぎゅ~っと強く抱き締める。その人も、僕をぎゅ~っと強く抱き締める。じ~っと見つめ合っていると、ふと、その人が、満面の笑顔で言葉を掛けてきた。
「覚えてるかどうか、分からないけど、このタイミングで渡してくれって、頼まれてた物があるよ。受け取って、中身を見て、書かれてる事を読んでね」
その人が、手紙が入っている封筒を渡してきた。封を切り、中に入っている手紙を見て、書かれている文字を読むと、一気に涙が溢れ、零れてきた。そこに書かれていたのは・・・
「よく頑張ったね」
という文字。一気に、今までの努力が報われた気がした。
その時だった。打ち上げ花火が一気に「ヒュルルルル~」と上がる音が聞こえ、二人で夜空を見上げると、クライマックスの打ち上げ花火が一斉に花開き、それはそれは、夜空を満面に彩る、とてつもなく綺麗な光景だった。
公園にいた人が一斉に歓声を上げ、拍手喝采。一緒に歓声を上げて拍手し、二人で見つめ合い、木の陰で、誰にも見られていないのを確認してから、長年の想いを込めた、熱~いキスを交わした。
主人公は、大切な事を思い出し、幸せになる事ができました。手紙って、本当に大切な物ですね。読者の皆様にも、大切な手紙があるかもしれませんね。最後まで読んで頂き、本当にありがとうございました!




