↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
1/5

さらば、親友

日常が、突然、何かによって破壊された。

俺と親友の慶は、それによって瓦礫に埋もれた。



 慶が瓦礫に挟まれている。

 彼は、親友なんだ。

 世界に、災厄が降り注ぎ、ほとんどの建物が一瞬にして瓦礫の山となった。

 厄災が何だったのかは、わからない。でも、一瞬だったんだ。急に空が光った。そして、すべてが瓦礫になった。

 俺達は、たまたま公園で遊んでいた。

 俺も、親友も瓦礫の下敷きとなった。

 瓦礫が飛んできて、俺達の上に覆いかぶさったのだ。

 ついてなかった、としか言いようがない。

 それでも、俺達は互いに手を伸ばして、それが繋がった。が、俺も親友もびっくりするほど体温が低い。

 これはわかる。

 もう、ダメなんだ。

「今度は、絶対二人で幸せになろう。俺、夢があるんだよ」

 今、そんなこというなよ、と言いたい。

 もう、目を開ける力もないから、慶がどんな状態なのか俺にはわからない。

 でも、親友は親友のままでいてほしいし、いくら死ぬ前だからといって、彼のぐちゃぐちゃになった見るに耐えない姿は見たくない。

 でも、俺もそんな感じなのだろうか。

 もう、全身の感覚がほとんどない。

 ただ、慶の手を握っている、この感覚だけが残っている。

 彼の生きていたという証。

 そして、別れの合図でもある。

「そんな、悲しいこと言うなよ。・・・・・生まれ変わりなんてしないよっ。まだ、諦らめんなよっ。死ぬなっ」

 そんなこと言ってみたけど、俺は、今死にたいくらい辛かった。

 もちろんまったく身動きの取れない辛さというのもある。

 彼と別れたくない、という思いもある。

「痛いっ」

 慶の声だ。

「・・・苦しいんだよ、俺、もう無理だよ」

 そうだけど、

 そんなことを言うなよ。

 でめて、先に死なせてくれ、と思った。

「まだ助かるっ。大丈夫だっ」

 俺は、精一杯彼の手を握りしめる。もちろん、大して力は入らない。

 それでも、最後まで握りしめていたかった。

 そうすれば、

 きっと、安心して死ねる。

 痛くはない。でも、苦しい。

 肺から空気が漏れ出ている感覚があるのだ。

 それにしても、俺達まだ一四歳だ。

 中学に通って、友達とかと遊んで、成績悪くて怒られて、授業中に寝て、怒られて、部活をサボって怒られて。

 怒られてばっかりだったけど、でも、それももう出来ない。

 ちゃんと行っておけば、こんなことにならなかったのではないだろうか、とも思えてくる。

 俺は、何度も慶の手を握り返す。

 慶は、手には反応は無いけど、でもまだ彼の呼吸の声が聞こえてくるんだ。 

 すまんが、俺には助けられない。

 そして、俺もきっと助からない。

 ただ、目をつぶったまま、ここがどこかもわからず、ここがどこかだなんて確認せずに、このまま死んでいくのだ。

「もっと、彼女とか作りたかったな。それで、お前に自慢したりさ、って、もう無理だよなっ。ハハ」

「まだ、諦めるなよっ」

 精一杯叫んでいるつもりだ。

 でも、声は上手く出ないし。

 諦めてる俺が言うのも悪いけど、諦めないでくれよ。

 なんで、そんなことを思うかわからないけど、考えている暇がないんだ。

 どうせ死ぬんだ。

 諦めずに死んだほうが、もしかしたらいいんじゃないか?

 どうせ死ぬけど、諦めない方がいいんじゃないのか?

「だから、慶!!お前は、諦らめんじゃねえ!!」

 手が、離れる。

 俺は必死に手を伸ばして、彼の手をもう一度掴む。

 もう、彼の手には力が入っていない。

 スーッスーッ、という呼吸音も、かなり弱まってきている。

「すまん。俺さ、なんかヒーローとか憧れてたんだっ」

 知らん、そんなことは。

 だから、諦めるなよっ。

 夢は諦めてもいいかもしれないけど、生きることだけは諦めるな。

 お前は、死なないでくれっ。

 どうせ、俺は死ぬ。

 で、わかってはいるんだけど、お前もどうせ死ぬんだ。

 じゃあ、なんだ。

 いや、諦めるな。

 まだ、死なないだろ?お前は。いっつも、高いところから飛び降りて、俺は怪我したけど、お前は平気だったじゃないか。

 ・・・・・。

 くだらない話ですまない。でも、諦めないでくれよっ。

 俺達、まだ一四歳なんだぜ。もったいなさすぎるよ。

「なんか、子供みたいだよな。でも、ここで死ぬならさ、そんな夢持っててよかったかなって思えるんだ」

「そんなことないっ。お前は、生きろ。夢なんか諦めて、生きてしまえばいいんだっ。死ぬのだけは、絶対にダメだ。わかった。俺の手を使えっ。それで、なんとか脱出しろっ」

「そんなの、無理だってww」

 わかってるよ。

 でも、生きていて欲しいんだよ。

 耳をすましてみると、違う人の悲鳴のようなものがぼんやりと聞こえてくる。

「すまんが、助かるのは無理だけどよ、」

 なんだ。

 諦めるな、と何度も言ってるじゃないか。

「俺の手だけは、ずっと離さないでくれよっ」

 目をつぶったままだが、慶が微笑んだのを感じた。

 いつものように、屈託のない、エクボがくっきりと出てくるんだ。

 いつも、笑ってたからって、死ぬ前まで無理しなくていい。

 だから、お前には生きてほしい。

「・・・最後まで、ありがとうな。まあ、俺を、上手く、つかっt、」

 自然と、慶との最後の繋がりだった彼の手が、俺の手からすり抜けていく。

「おい、・・・ハア、おい」

 やはり、上手く息を吸えない。

 今までは節約してたけど、もう意味がないと思ったので、俺は目を開けようとしたが、ものすごく痛い。

 いや、ものすごく熱い。

 目が、開かない。

「おい、慶!!慶!!起きろよっ。俺は、まだ手を伸ばしているんだからっ」

 そう叫ぶ声も、きっと瓦礫に阻まれてどこにも届かないんだ。

「助けて!!助けて下さい!!!」

 悲鳴が、まだ薄っすらと聞こえている。

 きっと、俺達だけじゃない。

 俺達が特別不運なわけじゃない。

 でも、それって逆に不運だよな。 

 俺達、死んだんだよ。その他大勢にまぎれて、死んだんだ。

 すまんな、俺もすぐ行くさ。

 体から、なにか言いようもない大切なものがドロドロとこぼれ落ちていく。

 目をつぶっているから、お前はずっとお前のままだ。

 きっと、生きているんだよな。

 俺は手首を動かし、瓦礫の隙間からなんとかお前の手をもう一度拾えないか、と探してみたが、見つからない。

 目は開かないし。

 まあ、そうだな。

 来世に期待してみるのもありだな。

 なんか、変なこと言って申し訳ないけどさ、

 ・・・

 やっぱ、いいや。

 俺は、寝させてもらうよ。

 

 

 


これからよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。