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蟻地獄の深海魚

作者: 睦月しゅら
掲載日:2026/06/21

  私は、とある大都市に住んでいるごく普通の凡人。いや違うな、廃人?そもそも私は人間なのか?色々と呼び名があるみたいで何よりですン。

 私の姿形は人並だが、心がいびつで不格好であります。


「本物の人間になりたい……」


 やめっ‼ヤメッ‼この書き方や~めた♪


 気を取り直して(笑)

 それでは、しゅらWORLDへ貴方を御招待いたしますン。

 これは、ノンフィクションであるのか……?  将又、狂言か?

 それは個人の意に任せますン。 

--海抜0M--


 私には、蓮 幽夢という名が一応あります。人間として生きていくのがとても不器用であります。世渡りの術を知らないので、人間関係という繋がりや、馴染むといった適応能力が欠陥品であります。

それを理由に職場ではあてつけな嫌味や悪態などを付けられて思い出したくない行為を受けてきました。


 唯一友人と言える方は1人です。その方はとある大都市に住んでいるお方で、1年に数回連絡を取っている程度です。 その友人とは小学生の頃からの友人。

 私は、中学校に入ってから不登校気味だったので、よく友人が家に訪ねて来て、プリントや授業の内容をまとめたノートを持って来てくれましたが、一切会わずにいました。 担任の先生にお願いされて業務的に来ているのだと思い、気に入らなかったので……(今思うと友人には悪いことをしてしまったと思います。)


 また、しばしば家族は私を学校に行かせようとしました。無理やり制服を着させて。 でも、そんな物投げ捨ててやりました。 制服を着たら征服されたような気がする…

 その有様を見たおじいちゃんから発せられた一言。


「この疫病神が!!」


 おじいちゃんにとって、私は悪者でしかなかったのです。

 悪者だって好き好んで悪役になった訳ではない。悪者になってしまった理由があるだろう。そもそも正義とはいったい何なのか?正義が全て正しいのだろうか?悪者としての人生が普通と思って、日々過ごしておりました。

 しかし、肉体面精神面ともに何かが蓄積していたのでしょう。体は正直なもので、ほんの些細な事で怒りの感情に支配されてしまったり、突然泣き出してしまったりと、気持ちの浮き沈みに振り回されてしまいました。


 そんな私の姿を見るに見かねた母親は、私を病院に連れて行ったのでした。そこで、鬱病と診断されました。その時の気持ちを例えるならば、崖から突き落とされ海底へと、深く沈んでいく感じ。

 しかし、悪者にも味方がいました。私の父親、通称(お父ちゃん)。

 お父ちゃんは、口数が少なくて、何時も眉を寄せて、額にもしわを寄せて、まるで不動明王のような顔が印象的で、そのしわがお気に入りのチャームポイントでもありました♡


 私の家から海が近かったので、仕事終わりや、休みの日を利用して、お父ちゃんはサーフィン、私はボディーボードで、よく一緒に海で遊んでいました。

 でも楽しい日々は長くは続きませんでした。


 お父ちゃんは、寒さが緩み、儚い花が咲く季節を夢見ながら亡くなってしまいました。

 病魔が父親の魂を奪ってしまったのです。原因は多分病院嫌いで、滅多に病院に行かなかったから!?皆さん、病気は早期診断‼早期発見!!


 お父ちゃん……


 温かい優しさで、私を守ってくれていたのですね……。


 言葉で表現することはありませんでしたが、母親には相談できないことも何時も相談に乗ってくれて解決策を出して、人生を導いてくれて感謝しています。



--水深10M--


 ぽつぽつと雨音が踊り、車が雨を踏みつける音。

 それが毎日止むことを知らない季節。


 私は手の平のからくり電子機械に夢中になっていました。それは、世の中の物をありとあらゆる視点で操作が可能な代物。また、からくりは写真など自らの情報も発信できるのです。


 そやつは、電波を使い、常に情報が飛び交う世界を作り出す。


 そやつは、たとえ、それが人の心だろうが、魂だろうが容赦なく喰らいつくす。


 私は毎日、日記をからくりに入力していたが、ほんの些細な事がきっかけで、からくりの住人【サイバーキラー】から言葉の暴力行為を受けてしまいます。 サイバーキラーとは、標的を絞り込むと、誹謗、中傷や悪罵などを浴びせては、被害者の心に何度も矢を放ち続け、消える事のない傷跡を残します。

 そして、サイバーキラー達は、自ら命を散らせようと仕向け、すぐ様証拠隠滅。言わば文明が作り出した悪才にたけた犯罪者集団とでも言いましょう。


 こうして、私は人の裏の顔の怖さを知ってしまうのです。


 いつから、電子文字は人を傷付けるようになったのだろうか……。



--水深100M--


 私はあまりの恐怖で、からくりの日記を全て消して、からくりの中の自分の存在を抹消したのですが、サイバーキラー達は、人間としてこの世には存在してはならないと言わんばかりの仕打ち悪態などをつける。

 そして、容赦なく個人情報を探り、現実の世界まで現れるのでした。


 サイバーキラー達は、ありもしない嘘で固められた世界を作り出し、現実世界でも指を指す有様。


 私は堪える事の限界を知ることになりました。



--深海1000M--


 ある日のこと、私は1人で四角い建造物の天に近い場所に向かっていました。

 しかし、辿り着いた最上階は私1人の場所ではなかったのです。


 金網の向こう側で、金網を握り締め、今にも飛び立とうとする少年が1人。

 それを見かけた私は、金網をよじ登って少年の元に駆け寄り、少年に尋ねるのでした。


「あなたは、なぜ、ここにいるの……?」


 少年はつぶやく……。


「僕はこの世界に必要ないから」


「そう……私と同じだね……一緒にこの現実世界から居なくなる……?」


 私が少年に尋ねると、少年の膝は小刻みにガタガタと震えて答え。それを見た私は、少年の肩をそっと優しく抱き込み、現実世界へと連れ戻す。


 そして、少年が立ち去った後、私は目には見えない透明な翼を広げて飛び立つが、目に見えない翼では空を飛べる訳もなく、闇の底へと沈み込むように、深く落ちていくのでありました。

 それを、天の手が街路樹の姿となって、木の枝で私をそっと包み込む。


 私は命を取り留めたが、目覚める事を知らない眠り姫となってしまいました。



--深海3000M--


 私の魂はそのころ死後の世界に迷い込んでおりました。


 そして、辿り着いたのは、天上界(天国)行きか、地底界(地獄)行きかを決める中間審査場所。

 中間審査場所からは、赤い橋が見えていました。その橋は人間界と死後の世界を繋ぐ国境橋。

 長蛇の列で先が見えない程、審査を待つ死者で溢れかえっていました。


 生身の人間だったら重量制限を超えて、赤い橋は無残にも崩れて滅びてしまうのだろ……。


 でも!!ご安心ください!!


 なんということでしょう!?


 この方々は体が宙に浮いているではありませんか!!


 地に足が着いていないので、一切橋に負担が掛かりませんね。


 ありがたや~。


「はァァァァァい!皆様こちらが受付場所です!整理券を受け取りましたら電光掲示板に番号が表示されますので、表示された順に個別審査が始まります。くれぐれも列を乱さないようご協力お願い致します」


 使者が死者に伝える♪


 電光掲示板に次々と番号が表示され、個別審査を終えた死者達は天上界行き地底界行き 、どちらかの乗車切符を持ち、それぞれ宙に浮いた電車へと吸い込まれていきました。

 それを橋の先から眺めていると、自分の番号が掲示板に表示され、私は個別室へと向かいます。

 その場所には、フワフワと綿飴のような物体に座る黒フードに身を包んだ死の神が存在していました。


 カチャ……カチャ……


 死の神は、ズレ落ちた眼鏡をかけ直し、ブラックホールの様な目を細めて私の個人データに目を通す。


「お時間かかりますので こちらに座って下さいね。ぬぅふふふふ……」


 死の神が雲の椅子を手で指し示す。


「あ……ありがとうございます」


 不安げに椅子に腰を掛けようとすると……。


 ドサッ!!


 雲の椅子は私を拒み霧のように、透けて消えてしまったのです。 その様子を見ていた死の神は意味深につぶやきました。


「ぬぅふふふふ……この雲に座れる人間はごく僅かです。心で雲を感じ取って、座るのですよ。物事を疑いの目ばかりで見ていると実体が無くなり、いずれ心の目の色も変化してしまう。

 僕から見たら、死の神以上に濁った目をした人間達の世界は地底界並みに恐ろしくて、怖気(おぞけ)を震いますよ。恐ろしやぁぁぁ~  

 死んでも行きたくない場所!って!死んでいたっけ!(笑)」


 再び死の神は私のデータに目を通し、その手に、おりんのりん棒を持ち審査をはじめる。


「今からあなたが人間界でしてきた行いによって審査をします。

 何か不安・不満・不思議等がありましたら審査を中断させていただきます。よろしいでしょうか?」

 

 淡々と死の神は、私に説明をする。


「愛……」


 チィン……


 個室に、おりんが鳴り響く。


「偽り……」


 チィィン……チィィ……ン


「憎しみ……」


 チィィン……チィィン……チィィン……


「後悔」


 チィィン……チィィン……チィィン……チィィン……チィィン……チィィン……!!


 死の神の言語文字の採点数によって天界行きか地底界行きかの切符が決まります。

「あなたは人間界への未練がたんまり・あんまり・どんよりあるのですね……」

 死の神の困り果てた顔に私は苦笑いをする。

「あは……ハハハハハ……」


 死の神は構内放送を流す。

「死の神2……死の神2……至急2番個室へ来て下さい!!」

 緊急で招集された別の死の神2が現れた。

「お待たせしましたゾヨ!!」

「いやァァァァすまないね。この点数のことですがね……」

 死の神達は、小声で話し合い解決策へと導く。そして死の神2が言った。


「あのぉぉ~先ほどから気になっていたのですが、この方の足に注目ですゾ!!」


 死の神達は私の足に注目する。すると死の神達は、口を大きく開け、驚きを隠せなかった。

 なんと私の足が地に着いているではありませんか!?

「なぜ亡くなってもいないのにこちらに?これは異例の事態ですゾヨ!何か間違った道からこちらへと辿り着いてしまったのですゾヨ!!」


 中間審査場所始まって以来の異例の出来事に、死の神達は訳が分からず戸惑うばかり。

 死の神達はここに至るまでの筋道を整理し、お互いの意見を述べ合い私に新たな道を授ける。


「蓮 幽夢さんは、自ら拒みこちらに来たようだゾヨ!!蓮 幽夢さんには、もしもビジョンを見せましょう。これを見て、あなた自身で道を選ぶゾヨ!!」


 そして死の神2は、大きな鎌を振りかざして、粉々になっている曇りガラスの様な物(心の目)を私の左胸から取り除く。

「今の状態では、死後の世界よりさらに先の“死界”には来られませんので 蓮 幽夢さんの魂は一時お預かり致しました」


 私は突然の出来事に、瞼を閉じ一時頭の中を整理する。


 ゆっくりと瞼を開くとフワっと体が軽くなり浮き始める。


 その感覚に驚く。


「なにっ!?これ……!?」


「蓮 幽夢さん あなたは一時的に死の世界の人間ですゾヨ!!

 それではもしもビジョン開幕ですゾヨ!!」



--深海5000M--


 大地に降り注ぐ見覚えのある人々の涙。その雨は止むことさえ知らない心の涙。

 それは、若くして自らの原動力を止めてしまった蓮 幽夢によって産み出されたものであった。

 まさか亡くなってもいないのに自分の葬儀をこの目で見るとは思ってもいなかった。


「いかがですか?こんな結末望んでいませんゾヨ?」


 死の神2が私に尋ねる。


 私は悩まし気に答える。


「う~ん……なんで!!この遺影写真にするのかな~!もっといい写真があるのにぃ~!」


 私の反応に死の神2は頭を抱える。


「そんなことよりもご覧……」


 ある集団が私の葬儀に仕方なく足を運ぶ。


 その集団に気づいた母親は素足のまま玄関の外まで駆け付け、集団に言葉をぶつける。


「何しにきたのよ!帰って下さい‼あなた達は、あの子の命を手に入れたのだから、(さぞ)いい気分でしょ!!私達は救える命すら救えず、残るのは悔いばかり!!もう帰って下さい……もう……」


 母親は玄関の外で泣き崩れてしまう。 娘に先立たれてしまった母親の様子を見た。

 私の顔からは笑顔が消え一粒の涙が頬を伝って流れる。


「おかしいなぁ~!なんで自分の葬儀で泣いてしまうのだろぅ~?変なのぉ~」


 あたふたと慌てて服の袖で涙を拭き取る。

 私の姿を見た死の神2が伝える。


「蓮 幽夢さん大丈夫ゾヨ。あなたは1人ではないですよ。あなたには誰よりも親身になってくれる人がいるのではないですか。

 お母様はあなたの事を思い、言葉をぶつけ涙を流す。一番の強い味方。もっと命の大切さを見つめ直して下さいゾヨ!」


 そう死の神2は私に命の尊さを訴えた。

 私は手で涙を拭いながら胸の内を死の神2に打ち明ける。


「母の愛に早く気づいていればこんな目にあっていなかったのに……

 自分は、現代の最新機材の電子文字の犠牲になってしまったのだから……何とも言えないですよね……」


 死の神2は、そんな私の心中を察する。


「今から行く場所は悲しみのない場所ゾヨ!!」


 死の神2は上着のポケットから虹色の砂を宙へと振りまくと、そこには、命の灯火の終幕を迎えたペット達が飼い主との再会を待っている虹の園。その園には見渡す限り、いろとりどりの百合が咲き乱れている。そこは苦悩も苦痛もない安楽に暮らせる場所であった。


 そして再び死の神2は上着のポケットから真っ白い砂を取り出し、その砂を足元に撒く。

 すると春のような暖かい風が吹き、体が宙に浮く。


 その瞬間、辺り一面青い空に包まれる。


 点々と浮かぶ白い雲の上には四季折々の植物が咲き誇り、天女48が音楽を奏でる。 雲から滝が流れ落ち、その真下には大きな虹色の波紋が広がる。 そして真上を豪華客船と屋形船がゆっくりと浮遊する。

 私は、言葉では表現できないほどの美しく不思議な光景に魅了されてしまう。



--深海3000M--


 夢のような空間を死の神2と進む。

 やがて、ひまわりに囲まれた一本道の丘を越えると、どこか見覚えのある顔の男性が虹色の海で波乗りをしている光景が目に飛び込んできた。

 私は、浮遊しながら沖で波待ちをしている男性の元へと向かう。その男性は病気で亡くなった父親であった。


「お……お父ちゃん!?」


 楽しそうにサーフボードで波の斜面を滑っている父親に遭遇する。


 父親は私に気づく。


「YO♪幽夢!お前では、この天界の波には乗れねぇよ!っというか無理だ!

 ここにはもう来るな!人間界の海へ行け!海へ!それと俊秀君によろしくな!」


「え?誰なの?」


 父親は私に意味深な言葉を残し奥深い沖へと姿を消した。



--深海1000M--


 死の神2は、ポケットから新たに漆黒の砂を取り出し、足元に振り撒く。 一面闇の沼が広がり、その沼からゆっくりと大きなカタマリが険しい顔つきで私達の目の前に顔を出す。


 ゴジョボジョボジョー!!


 それは世にも恐ろしい閻魔様の姿であった。 そして、閻魔様は尋ねる。


「ワシを起こしてお前たちは、地底界に何の用じゃ?ワシは忙しいのじゃ!

 罪人を食べなければならんのじゃ!用件を早く言うのじゃ!」


 死の神2は閻魔様に手短に用件を伝えた。


「ほほぅ……」


 閻魔様は太く大きな指先で、二人の首の付け根を持ち、大きな口を開き舌の先へと乗せる。

 閻魔様の舌の上では長い行列が連なっていた。


 そこは、人を騙し、罪を犯した罪人達が鬼によって舌を抜かれる場所であった。

 その先には巨大な穴がポカリと開き、そのまた向こうには暗いトンネルのような空洞が罪人たちを待ち構えていた。罪人たちは、次々と空洞に落とされる。


 空洞の奥にある地の底は、ぐつぐつと煮え(たぎ)る胃液の池。 落ちた罪人達の体は溶け、永遠に輪廻の輪から外されてしまう。 私は、その光景に耐えきれず目を反らし続ける。


 気にも留めず死の神2は、ポケットからタブレットを取り出し地底界行きの名簿を見て、(うつむ)き隠し続けてきた心の声を解き放った。


「彼等は、あなたの様な方を苦しめた罪人達ゾヨ。人間界での行いが招いた当然の報い。

 僕としては幽夢さんと同じ心の痛みを味わえばいいと思うのだが……

 彼等は一瞬の肉体的な苦痛だけで消えてしまう。気に入らないゾヨ」


 私は死の神2の冷徹な言葉の中に、私への愛を感じた。


 生きようとする力が湧いてくる……


 その瞬間、地底界が歪み二人の空間を圧縮し始める。


「時が来た!幽夢さん!あなたの体に戻る時が来た!これを逃したら死界側の住人になってしまうゾヨ!決断を!」


 私は目を閉じて決断を死の神2に伝える


「生きたい!私は愛に満ち溢れた人間界で生きていきたい!」


 私はキラキラと目を輝かせる。

 死の神2はニコニコと大きな笑みを浮かべる。


 私の粉々で曇ったガラス(心の目)は美しい原形を取り戻した。



--水深10M--


 光り輝く私の体は、人間界へと繋がる穴へとゆっくり吸い込まれていく。

 別れ際、思わず死の神2の手を掴む。


「死の神2さん!ありがとう!もっと大切に生きていくね!あなたが死の神ではなく、人間だったらいいのに……」


 そして私の体は人間界へと吸い込まれていく。



--海抜0M--


 病室には、私が目覚める日を待つ母親。

 自宅には、部屋の前で、飼い主の帰りを待つ茶と白色のロン毛の猫ちゃん♡

 

 重い瞼を開くと、止まっていた時計の針は再び動き出し、時を刻む。


 私が母親の手を強く握り締めると、母親は大粒の、喜びの涙を流した。



--標高5M--


 退院後の最初の夏が訪れた。

 私は、ボディーボードをやる為に海にいた。

 その日は、波のサイズが大きくて大勢の人々で賑わっていた。


 私は、綺麗な波を見つけパドリングをして波の斜面を滑る。

 すると運悪く同じ波に乗った男性と接触してしまい、ドーンと激しい音と共に私達は荒波に呑まれてしまう。

 岸まで押し戻されてしまった私達は顔を見合わせる。


「ごめんなさい……大丈夫ですか?」


 私は、男性に謝り、男性も私に謝る。


「ごめんなさい……すみ……すみません……ゾヨ……」


「ゾヨ……?」


 私はゾヨの言葉に反応する。

 懐かしい響き……


 男性は、私の手を取り引き起こす。

 この手の感覚、やっぱり……


 私達は再び顔を見合わせる。

 そして、海辺に映る夕焼けは二人を暖かく何時までも包み込むのでした。


 おっと!!ハッピーエンドで閉幕!!と思いきやまだ話は続くのでありますン。


 幽夢は二つの大切なものを手に入れたのでした。


 抜け出す事ができぬ困難な状況でも、海面から差し込む光を心の目で捉え、自分を信じて泳ぎ続ける事で、必ず地上へと辿り着けるという事。


 そしてもう一つは、誰しも当たり前と思っているかもしれませんが、人の些細な優しさを、素直に受け止められるという喜び。


 その二つが幽夢の人生にとって、大切な宝物となったようですン。


「しゅら~そろそろ海行くゾヨ!!」


「はぁ~い」

 最後まで読んで頂きありがとうございました。

 そして、小説を書く事ができる環境、支えてくれた家族に感謝しています。

 また、この本を読むことで皆様の気持ちが少しでも明るくなり、前向きな日々が送れる事を切に祈ります。

 SNSでの誹謗中傷により命を絶った方々のご冥福をお祈りします。

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