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第15話 年明けの任務 ――願いは勤務中

年末・曲町東交番

朝倉が年越し直前の空気の中、元気よく言った。

「初詣、みんなで行きましょうよ~!」

肥田が湯呑を置く。

「もう決まってるよ」

黒城も静かに言う。

「何を言っている」

朝倉、きょとん。

「え?」

肥田が苦笑する。

「元旦は雑踏警備だよ。地元神社」

朝倉、数秒止まり――

「あ」

黒城。

「参拝は任務だ」

朝倉、ゆっくりうなずく。

「そういうことですか」

肥田が笑う。

「まあ、毎年恒例だ」

※※※

元旦・地元神社

参道は人、人、人。

「押さないでくださーい!ゆっくり進んでくださーい!」

朝倉が声を張る。

肥田は参道中央で人の流れを整える。

黒城は一歩引いた位置で全体を見渡す。

朝倉が振り返る。

「新年早々に仕事って!」

肥田。

「正月は毎年これ」

黒城。

「願いは列をなす」

「ポエムじゃないです!」

だがその目は、ちゃんと周囲を見ている。

※※※

そこへ。

「おー、頑張ってるな」

私服姿の板橋が、家族連れで現れる。

隣には奥さん。

息子は手袋のまま跳ねている。

「板橋警部補!」

朝倉が敬礼しかける。

板橋は苦笑する。

「今日はただの父親だ」

屋台の袋を差し出す。

「ほら。差し入れ」

肥田が受け取る。

「ありがとうございます!」

息子が板橋の袖を引く。

「お父さん、あれやってよ!」

板橋は周囲を気にしつつ、小さく敬礼。

息子、大喜び。

「すっごくかっこよかったよ!」

板橋は照れたように息子の頭を撫でる。

黒城が静かに言う。

「父の背は、高い」

朝倉。

「今それ言います?」

でも、その言葉は誰も否定しなかった。

※※※

ブォン。

白バイがゆっくり巡回する。

芝野だ。

完璧な白バイ姿。

朝倉、目を輝かせる。

「かっこいい……」

芝野は軽く会釈だけして走り去る。

肥田。

「交通課の花形だな」

黒城。

「目立つ者ほど責任は重い」

「また始まった」

※※※

午後。

朝倉の視線が止まる。

人の流れに逆らい、急に進路を変えた二人組。

フードを深くかぶり、周囲を気にしている。

「……怪しい」

黒城も視線を向ける。

「流れから外れた」

肥田。

「朝倉、確認」

「はい!」

朝倉が人波を縫う。

「すみません!少しよろしいですか!」

二人組は足早になる。

「やっぱり怪しい!」

※※※

屋台裏。

朝倉が追いつく。

「進路変更の理由を――」

二人が振り向く。

「……あ」

野間口。

森川。

沈黙。

朝倉、腕を組む。

「何してるんですか?」

野間口が苦笑。

「いや、その……」

森川、真っ赤。

「人が多くて……はぐれたくなくて……」

距離が近い。

朝倉の目が細くなる。

「怪しいです」

そこへ黒城と肥田も到着。

黒城。

「任意同行か」

「違います!」

野間口が慌てる。

「……クリスマスのあと、ちょっと仲良くなって」

肥田が咳払い。

「勤務中の前で堂々と言うな」

森川が小声で言う。

「おみくじ、引こうと思って……」

黒城。

「恋愛運か」

「やめてください!」

※※※

そこへ白バイが徐行。

芝野。

状況を一瞥。

「……取り締まり対象?」

「違います!」

芝野、わずかに笑う。

「ほどほどに」

走り去る。

※※※

朝倉が森川に小声で。

「応援してます」

森川、真っ赤。

野間口が胸を張る。

「ちゃんと送ります!」

黒城。

「保護対象か」

「違うって!」

※※※

持ち場へ戻る三人。

参道の列は途切れない。

朝倉がぽつり。

「お正月って、いろんな願いがありますね」

肥田がうなずく。

「平和だな」

黒城が空を見上げる。

「新年は、距離を縮める」

「またポエムです」

「事実だ」

遠くで鐘が鳴る。

人々は願いを胸に手を合わせる。

警察は、その願いが壊れないように立っている。

その背中を、誰かが見ている。

――願いは、勤務中でも守るもの。

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