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第11話 女子会と聖域 ――価値観の夜

宿舎・三階 朝倉の部屋

ピンポーン。

ドアを開けた朝倉は、固まった。

白石はワインと生ハム盛り合わせ。

脇俣はチーズとオリーブの小箱。

会計課の森川は可愛い箱入りマカロン。

朝倉のテーブルには――

唐揚げ、ポテト、ピザ、2リットル炭酸。

脇俣が微笑む。

「方向性が違いますね」

「女子会でも腹は減ります!」

白石が部屋を見渡す。

「装飾ゼロ」

「動きやすさ重視です!」

「女子力は?」

「機動力に振りました!」

森川が小さく笑う。

「乾杯」

ワインと炭酸が鳴る。

ガールズトーク開始。

※※※

脇俣が柔らかく聞く。

「朝倉ちゃん、好きな人いないの?」

「急ですね!?」

白石が静かに言う。

「黒城じゃないわよね?」

朝倉がむせる。

「尊敬です!尊敬!」

白石はあっさり。

「私は好きよ」

森川が固まる。

脇俣は頷く。

「知ってます、白石先輩」

「告白もしてるし」

「えええ!?」

「相手にされてないけど」

さらっと言う。

森川が恐る恐る。

「それでも……好きなんですか?」

白石は迷わない。

「好きは自分のものよ」

静かだが強い。

脇俣は敬語で言う。

「白石先輩も黒城先輩も、簡単には崩れませんよね」

「だから崩したいの」

森川が小さく呟く。

「……私、好きな人がいるんです」

三人が見る。

「でも何も言えてなくて」

朝倉が前のめり。

「言った方がいいです!」

「壊れたら嫌で……」

白石。

「壊れる程度なら、本物じゃない」

森川の目が揺れる。

脇俣が優しくフォロー。

「でも怖いですよね」

森川は頷く。

それぞれの価値観が、テーブルに並ぶ。

強い恋。

慎重な恋。

勢いの恋。

まだ言葉にならない恋。

※※

朝倉がふと思い出す。

「そういえば白石先輩、黒城先輩の部屋入ったことあるんですか?」

沈黙。

「…ない」

「え!?意外ですね!」

「入れてくれない」

脇俣が笑う。

「聖域って言ってましたよね」

朝倉、立ち上がる。

「今から行きましょう!」

「は?」

「若手パワーで突破します!」

白石の目が光る。

「今夜、均衡を崩す」

脇俣「なんか面白そう」

森川「…お供します」

四人、出動。

※※※

黒城宅

インターホン。

黒城、少しドアを開ける。

「…なんだ」

「女子会の二次会です!」

「帰れ」

「入れてください!」

「嫌だ」

「唐揚げとかありますよ!」

「いらん」

次の瞬間。

朝倉が押し込む。

「ま、待て!」

「お邪魔しまーす!」

聖域、陥落。

※※※

部屋、開示。

黒一色。

長い黒コート。

無意味なベルト。

シルバーアクセ。

棚にはフィギュア整列。

壁には抽象的ポスター。

謎の間接照明。

朝倉。

「うわぁ……」

脇俣。

「世界観が強い」

森川、赤面。

「……すごいですね」

白石だけが輝く。

「最高」

フィギュアに近づく。

「触るな」

「蓮、これ限定?」

「見るな」

「保存状態完璧ね」

黒城、完全にたじたじ。

「均衡が崩れる」

「もう崩れてます」

※※※

黒城、小声で電話。

「来てくれ」

数分後。

野間口、満面の笑みで登場。

「お前が家にあげるなんて珍しいな」

部屋を見渡す。

「うわ、可愛い子いっぱい」

脇俣。

「調子いいですね(笑)」

森川、さらに赤面。

野間口はチーズをつまみながら嬉しそう。

「いい夜だな」

黒城。

「やっぱり帰れ」

女子パワー圧勝

白石は黒城の隣へ。

「蓮、ここ座る」

「距離が近い」

「近いわよ?」

朝倉がポスターを見つける。

「これ何ですか!?」

「象徴だ」

「何の!?」

森川が小さく笑う。

脇俣はワインを傾ける。

「黒城先輩、弱いですね」

「多勢に無勢だ」

「女子力に負けましたね」

完全敗北。

※※※

同じ頃 ― 署長室

幹部飲み会。

鶴丸署長。

亀山副署長。

鳥羽地域課長。

小久保交通課長。

柳は当直。

副署長がひたすらヨイショ。

「やはり署長のご判断が的確で」

「いやいや」

鳥羽が酒を作る。

小久保が場を回す。

「この間は署長が若手と話がしたいとおっしゃって。若手も喜んでました」

署長が目を開く。

「ほんと?」

「ほんとですよ。やっぱり署長とお話する機会ってなかなかないじゃないですか。お話したい署員は大勢いると思いますよ」

「嬉しいねぇ」

「いえいえ署長の器があってこそです」

そのまま小久保は鳥羽を持ち上げる。

「これも鳥羽課長が動いてくれたおかげですよね」

鳥羽、少し驚く。

副署長もうなずく。

「そうだな」

署長が呼ぶ。

「鳥羽君」

「はい」

「……いつもありがとう。苦労かけるねぇ」

一瞬、空気が変わる。

鳥羽。

「……今後もがんばります」

小久保がすかさず添える。

「若手も鳥羽課長を頼りにしてます」

副署長。

「その通りです」

場は、静かに温まった。

※※※

夜の終わり

黒城の部屋。

女子の笑い声。

署長室。

幹部の笑い声。

立場は違う。

世代も違う。

でも。

同じ署の、同じ夜。

白石が黒城を見る。

「蓮、覚悟しなさい」

「何のだ」

朝倉が叫ぶ。

「女子会、またやりましょう!」

森川、小さく笑う。

脇俣。

「次はもっと深掘りですね」

野間口。

「また呼んでくれ」

黒城、天井を見る。

「……静寂が欲しい」

だがその声は、笑いにかき消された。

曲町署の夜は、今日も賑やかだ。

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