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世話焼き自転車

作者: 御稜 東
掲載日:2025/12/10

たとえヒトでなかったとしても、日ごろ大切にしている”モノ”も自分にとって大事な”相棒”。そんなことを思いながら書いてみました。

「さ、ダイちゃん、行くよ!」


 毎朝、ボクは相棒のマナブと学校へ行く。マナブは、僕の2代目の相棒。初代相棒は、マナブの親友、ダイスケ。小学6年の時、父親の転勤で引っ越すことになり、ボクを“友情の証”としてマナブに譲ったんだ。

 マナブは、ボクを“ダイちゃん”と呼ぶ。ボクは自転車なのにな、って最初は思ったけど、慣れると案外嬉しいもんだ。同級生の女子たちからは

「自転車に名前で呼んでんの!?キモ!」

なんて言われるんだけど、当の本人はまったく気にしていない。マナブにとってボクは、親友“ダイちゃん”の代わりなのだから。

 マナブは中2で、思春期ど真ん中。秘かに思いをよせている子がいるのだけど、奥手なマナブは彼女を前にすると何も言えなくなっちゃうんだ。むしろ、挙動不審か?自転車のボクから見ても、本当にじれったい。彼女の名前はミカちゃん。小学校から一緒のミカちゃんは、おとなしくて、やはり自分から声をかけるようなタイプではない。マナブと同じ。だから、余計にもどかしい。ボクの勘が当たっていれば、きっと両想いのはず!どうしたら、このマシュマロみたいな恋をかなえてあげられるんだろう。

 

 ある日のこと。学校へ向かう途中、走って来た犬を避けようとしたマナブがボクと一緒に大転倒。ボクも痛かったけど、派手に転んだマナブはもっと痛かったはずだ。なのに…。

「ダイちゃん!ごめん!」と、ボクを起こしてくれた。

「お前、なに自転車に謝ってるんだよ~」と周りのやつら。ボクを大事にしてくれているだけなのに。だが!なんとその場にミカちゃんがいたんだ!

「マナブくん、ダイちゃん!大丈夫だった?」

「…えっ?」これはマナブ。

“えっ…?”これはボク。

「み…ミカちゃん…。」

「ふたりとも…大丈夫?」

“ふたりとも!?”

「ぼ…ボクは大丈夫。でも、ダイちゃんが傷だらけだ…。」

「マナブくんも、おでこ擦りむいてるよ?保健室いかなきゃ。」

マナブがおでこを触ると、指に血がついていた。

「…本当だ。」

「今日、学校終わったら、一緒に自転車屋さんにいこう?ね?」

マナブもボクも、ミカちゃんをじっと見てしまった。ミカちゃん…、頼もしいなぁ。


 自転車屋の帰り道、ミカちゃんはマナブを団地まで送ってくれるという。途中、長い下り坂がある。ボクはちょっと力を入れて、マナブの手を払った。

「あ、ダイちゃん、坂道…。」

ちょっとの間だけど、ふたりきりになれるよ、マナブ。



お読み頂き、ありがとうございます!

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― 新着の感想 ―
初々しくて読んでいる方が恥ずかしくなるお話でした。 男の子が大切にしている「もの」を気遣う女の子って、超優良物件ですが、きっと競争率は高いのでしょうね。
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