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天運の檻  作者: じょじょ
第3章・追憶の黎明編

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7/19

7話「厄(わざわい)」

天運の檻・7話になります!


リアクション、コメントなどくれたら嬉しいです!

―…きて……あき………ん…―


遠くから聞こえる声。

だんだんとその声が鮮明なものへと変わっていく。


「起きてよ!あきら!」


「んっ…あおいか…?」


「いつまで寝てるの!もうみんな集合してるよ!」


まったくコイツは昔から俺の眠りを妨げる。

それが特技なのかって思うくらい、起きて目を開けるといつもお前がいたな、葵。

こっちとしては、たまには青空のもと、静かな風に吹かれたまま一日を過ごしていたいってのに。


危険等級B

藤白露ふじしろ あきら(当時15歳)











―10年前―


”俺たち”の任務。

あれで全てが変わった。

いや変わったんじゃない、見えなかったもんが見えるようになっただけか。

春風が漂う心地いい日でも執行隊の任務は変わらない。


無人むとを執行する。


それだけが俺たちのいる意味だ。

じゃなきゃ俺らは社会にとって必要のないただの危険人物扱い。

それでも自分の力で他者を救うことができる、助けることができる。


感謝されなくてもいい。

けど、自分のやってきたことには必ず意味がある。

そう思って俺は執行隊に迷わず入隊した。


だけど―


この日、俺の大義は大きく揺らいだ。











「遅いぞ、明。」


少しイラついたような声色で明に向かって口にするくせ毛に茶髪の少年。


危険等級A

獅壕院ししごういん わたる(当時15歳)


御三家の一つ、獅壕院家の次代当主であり、明の同期。

獅壕院家は現代では珍しい術式至上主義の家系であり、そのなかでも絙は優れた術式が発現したことで知られている。


「いや~悪ぃ、今日はあまりにも寝心地のいい日だったもんで。」


「ったく…そのセリフ何度目だと思ってるんだ。」


明の言い訳に呆れる絙と招集で集った他の隊員たち。

みんな、明のマイペースさに苦笑いを浮かべていた。


「ちょっと明~!ちゃんと謝らないとダメだよ!」


絙に続いて明に口うるさく注意するのは少女。

黒髪を一束に結び、しっかりと着こなした規定のスーツが目に止まる。


危険等級B

龍河岡りゅうがおか あおい(当時16歳)


御三家の一つ、龍河岡家の若くして現代当主となった明の同期。

龍河岡家は御三家でも最も古くから存在する一族であり、一族が考案した流派、龍河一刀流を重んじる家系でもある。


「ったく…二人とも次期当主だかなんだか知らねぇけど、少しは俺のペースでやりたいんだけどな~」


「ざんねーん、私はもう龍河岡家の当主でーす!絙が次期当主なの、間違えないでよね!」


「興味ねぇ~…」


明は二人の話を興味なさそうにぼやく。

それもそのはず。

明は孤児だった。

自分の両親が誰なのかも知らない。

周りの話では異国の血が流れてると言われているが、それも本人にとってはあまり興味のない話。

性ですら国衛局が彼を鳥居しまった際に名付けたもので、本人には「明」という名しか最初からなかった。

血筋の話は明にとってはどうでもよかったのだ。

だが、そんな彼でも血筋などを気にすることなく接しやすい親友もいた。


「おはよ~明!なぁあとでさ、去年いった海外の話の続き聞かせてくれよー!」


そう明の肩を組みながら話しかける少年。

前髪を立ち上げた短髪姿、そして明と同様着崩したスーツを纏った少年だった。


危険等級B

鳳焔寺ほうえんじ れい(当時15歳)


御三家の一つ、鳳焔寺家の一人息子である玲は他の御三家と異なり、自由奔放で熱血漢のあふれる人物だった。

そのため、同期の中では明と最も親しくしていた仲だった。


「よぉー!玲!なんだよ、またその話か、じゃ今回はとっておきの話を教えてやるよ!

なんとあっちでな、俺の師匠が―」


「いいから、みんなアンタが来るのを待ってたんだからしっかりしてよ。」


明を引っ張叩く黒髪ショートの少女。

少し不愛想な口調の裏には、しっかり相手や周りのことを思ってのことだと伝わる柔らかさがどこかに感じた話し方だった。


危険等級B

黒崎くろさき 暗菜あんな(当時15歳)


明の同期の中でも最も長い間柄の存在。

経緯は違えど、互いに孤児で執行隊に入隊する以前から仲が良かった二人。

そのため、最も明の扱いを理解している人物ともいえるだろう。

明も暗菜の発言を聞くとまるで先ほどの無礼な態度が噓のように収まる。


「(おいおい~なんで暗菜の時だとそんな静かになるんだよ~)」


「(うるせぇ!葵の方にでも行っとけ!)」


葵と恋仲の関係である玲はすぐに明の気持ちに気が付いていた。

二人が小声でいがみ合う中、絙が集まった隊員たちに指示をはじめる。

なにせ今回招集を受けた隊員は、任務上、連携を取りやすく行えるように国衛局が配慮した結果、明たちと同世代の者で皆構成されていた。

そしてこの日。

国衛局に、明たち含め執行隊員20名で執行任務が命じられた。


記録―京都府天ヶ瀬あまがせ町。

かつて戦国の武将が建てたとされる城を中心に栄えた町。

今では学問の場として、城の外観などはそのまま利用され”城郭じょうかく大学”とよばれるキャンパスが広がってる。

そんな歴史ある大学内で事件が起きた。

突如、キャンパス内にいる学生、教授陣含め全員が行方不明となった。

異様な現象に周囲に住まう住民が国衛局に通報。

しかし、現場を調査した国衛局員11名がキャンパス内で失踪を遂げた。

うち1名の局員が国衛局本部に発信した最後の通信には―



”ここは怪物の巣窟だ”



「だから俺たちが派遣されたってわけね~」


「あぁ。」


明が読む報告書を取り上げながら口にする絙。

絙は現場に到着すると迅速に班を編成した。

今回の任務の責任者として、的確に指示をしていく絙。

作戦を伝えしばらくすると隊員たちが絙に向かう。


「絙!お前次期当主なんだってな!これは俺達からの気持ちだ!受け取ってくれ!」


そう言って隊員は絙に小さな箱を渡す。

中にはピアスが一つ入っていた。


「これは…?」


「このピアス実は俺らで考えたデザインなんだ。まぁほぼ葵の案だけど。」


「お前が当主になってくれれば社会の俺らの立ち位置が少しは変わるかもなんてな、少しは思ってんだよ!」


「もちろん俺らにもあるんだぜ!」


そう言って隊員たちは自分たちの指にはめられた指輪を見せる。

そこには絙に渡したピアスと同じデザインが彫刻されていた。

絙は少し表情に笑みを浮かべるが、すぐに表情を切り替える。


「こんなもの…一体どうやって…」


執行隊に属する者たちには、ここまでの大掛かりなプレゼントを用意する資金などないはず。

すると玲が隊員たちの肩を組みながら絙のもとへやってくる。


「どうだ?絙!気に入ったか?」


玲の表情を見て絙はすぐに資金面は玲によるものだと理解する。

そして玲の指にも隊員たちと同じデザインの指輪がはめられていた。

それだけじゃない、葵や暗菜にもその指輪がはめられているのを見る絙。


「まぁ…この任務が終わったら吟味しておこう。」


そう口にでは言い放つも絙の口角は僅かに上がっていた。

しばらくして、絙たちは再度学内へ突入する手順を話し合っていた。


「学内はどんな様子かわからないから、編成した4班を各門に配置すべきだと思う。」


「そうか?班は5人だけだぞ?なるべく集まって行動した方がいいんじゃないか?」


「いや、暗菜が正しいと思う。学内には失踪した人たちが生きている可能性もある。それなら迅速に学内の様子を把握するのが先決だ。」


「あ、あの~…」


「ん、どうした葵。」


絙、暗菜、玲たちが作戦を話し合う中、葵が申し訳なさそうに口にする。

その直後、通信から”ある人物”の声が聞こえてくる。


―あーあ。もしもし~こちら2班、こちら2班、突入したけど何もなし、前進しまーす―


「葵…2班じゃなかった…?」


「う、うん…でも明たちが先に…」


それを聞いた絙と暗菜が呆れた表情を浮かべる。

明は同じ班にいるはずの葵を出し抜いて先に学内へ突入していたのだった。


―お前ら生存者がいる可能性を考えてんだろ?だったらぐだぐだ喋ってないで動くべきだろ。―


「ハハッ!!明の言う通りだな!」


「ほんっと…ばか…」


「はぁ…葵は俺の班と同行しろ。他の班もすぐに突入準備だ。」


こうして明の突入に準じて他の班も学内へ突入を開始した。











作戦が開始されてしばらくが経過した頃。

明の班が学内のある部屋に入る。


「明、この部屋…」


「あぁ、いるな無人が。(それも複数…)」


明は仲間に刀を抜く合図をする。

静かに音を立てぬよう歩き続ける明たち。

すると無人が明に襲い掛かる。

だが明は冷静に刀をふるう。


―龍河一刀流・水瀧すいろう斬り―


無人の首と胴体を瞬く間に斬る明。

塵と化す無人を見ると退化した無人であったが、倒された無人を合図に他にもぞろぞろと現れる無人の集団。


「こりゃ、怪物の巣窟にちがわねぇな。」


交戦を開始する明の班。


―こちら2班、無人を発見したぞ~学内の西側だ―


―1班、了解した。こっちは学内中央の城に入るところだ。応援は必要か?―


―おい!待て絙!行くなら俺の班を行かせてくれ!―


―こちら4班、玲を明のもとに向かわせたら任務どころじゃなくなる。私がいくよ。―


それぞれが通信で明のもとに向かう班でもめる中、明は次々と迫りくる無人を仲間たちと執行していく。


「応援なんか頼んでねぇっての!」


―な……その……場は……まえに………―


「ん、なんて?通信悪いぞ絙!」


絙たちの班から通信が途切れ途切れになる。

そしてやがて絙からの通信が突如、途絶えてしまう。


―絙?応答して、絙。―


―おいおい、なんで絙の方が通信途切れるんだよ。―


―わからない、でも城に入るって…―


―…城で何が起きたんだよ…―


―明、聞こえる?玲の班と私はいったん城に向かう。―


「あぁ、そうしてくれ、俺らもこっちが片付いたら城へ向かう!」


そう言い通信を終え、明は目の前の無人たちを次々と執行し続ける。

他の隊員も明に続き無人と交戦する。











城を目指す玲の班と合流する暗菜の班。

二つの班はそのまま城内部へと突入し、内部で感じる異様な感覚に襲われる。


「ッ…何…これ…!(身体が勝手に…震える)」


「ただごとじゃないな。(葵…)」


暗菜は玲が葵の身を案じていることを察する。

絙の通信を傍受できなくなってから、玲の表情に焦りが見えていた。

さらに城へ入りこの異様な空気感に晒され、玲の呼吸はさらに荒くなる。

そんなとき、城内の奥から気配を感じる暗菜。

中へ入ると、そこには行方不明となっていた国衛局員たちが意識を失い倒れていた。


「玲、先に行って。ここは私の班だけで十分だから。」


「暗菜、悪いな。」


玲は暗菜の配慮を素直に受け取り、その場を後にし絙と葵のいる城の上階へと向かう。











その頃。

無人の群れと対峙していた明の班は―


「ふぅ~これで全部か。」


明は全ての無人を執行し終える。

すると他の隊員が他の部屋から生存者を見つけたと口にし始め、明はその場に向かおうとする。

そこには拘束された生存者が眠っていた。

様子を見るに学内の学生や教授など大学関係者だった。

明は他の隊員に生存者の安全を確保するように指示する。

そんなとき、明が何者かの気配に気が付く。


「どうした明?」


「お前らは先に行ってくれ。」


明は他の隊員をその場から逃がし部屋の中を散策する。


「さっきから気が付いてるぞ、姿を見せろよ。」


明の声が部屋中に響き渡る。

反響する自身の声が小さくなった途端―


「勘のいいガキだな。」


「ッ!!」


―龍河一刀流・爽天鮫牙そうてんこうが!!―


明は声のする後方へ素早い突きを繰り出す。

だが、その攻撃は空を斬る。


「なるほど、龍河一刀流の使い手か。」


部屋の影から姿を現す男性。

その姿は黒髪に特徴的な刺繍を施した右腕、そしてタバコを口に咥えた青年だった。

先ほど明が放った技を回避した影響か、タバコの煙が青年の軌道を描くように対流している。

明は青年の刺繍を見て、驚きの表情を浮かべる。

それもそのはず。

国衛局、そして執行隊の人間であれば知らない者はいない。

目の前に立つ男は―


九条くじょう 仲秀なかひで!!」


危険等級S

九条 仲秀(?歳)


歴史上5人しか登録されていない危険等級Sの術式発現者の1人にして、唯一国衛局の保護下にいない人物。

現在では最重要危険因子として、国衛局が総力をあげて追っている人物。


「ウソだろ…なんでお前がここに。(おいおいやべぇぞ、緊急要請案件だぞ…)」


「…少し野暮用でな。」


明は冷や汗を滲ませながら刀に力を込める。

呼吸が徐々に荒くなるのを感じる明。

自分だけの実力では勝てないことは理解している。

だが、明は懐に忍ばせた通信機ですでに執行隊本部に応援を要請していた。

直接の通信ではないが、それでも応援はいずれ到着する。

それまで時間を稼ぐためにも―


―術式充填《きょく》!!―


明は流源を全身に開放し、目の前の敵に集中する。

先ほどよりも正確無比な移動により九条の懐へ接近する。

刀を振るう明だが、九条は明の攻撃を自身の刀で受け止める。

僅かに驚きの表情を浮かべる九条だが、依然自身の渾身の一撃を防がれた明は九条と距離をとる。


「悪いが、もうここに用はない。”あの御方”の指示だ、その命奪うのはやめておこう。」


そう九条は言うと刀を収める。

そして明が瞬きをした僅かな間に姿を消す。

緊張が解けた明に足腰の力が抜ける。

圧倒的な格上相手と交えて、これまでに感じたことのない恐怖を感じる明。

だが、気を抜いている場合はではない。

玲と暗菜のもとへ向かう必要ある。

明は気を取り直し、部屋を出て城へ向かうのだった。











城内へ突入した暗菜と玲。

暗菜は城内下層で生存者を発見し、他の隊員たちと協力し生存者を城の外へ誘導していた。


「(玲からの通信もなし。まだ絙たちからの通信もない…)」


暗菜は先に絙たちのいる城内上層に向かった玲からの連絡がないことが気がかりで、生存者を他の隊員に任せ自身も上層へと向かう。

その頃、玲は上層の部屋を他の隊員と連携し、くまなく捜索をしていた。

そして城内の最上階にある部屋を見つける。

玲は迷うことなくその部屋を開ける。


「葵!絙!無事か!?」


「玲!こっちに来るな!!」


絙が慌てた表情で玲が走るのを必死で止めようと声を張る。

玲が見た光景。

それは、身体を斬られ負傷する隊員、返り血を浴びた絙、そして―


「葵…なのか…?」


刀を握り、たった今隊員を斬りつけた葵の姿があった。

そんな葵はいつものような明るい表情を見せてくれる彼女ではなかった。

隊員を斬りつけ、聞いたことのない笑い方で笑みを浮かべていた。

まるで葵じゃないかのようだった。

それこそ―

誰かに操られているかのような姿に玲は言葉を失う。


「キヒッ…新しい客人だねぇ…」


すると玲に気を取られた絙に接近する葵。

玲はすぐに行動に移し、絙の前に立ち葵の攻撃を防ぐ。


「おい!葵!しっかりしろ!!」


呼びかける玲を邪悪な笑みで返す葵。

葵の猛攻が玲を襲う。

だが、二人の攻防のわずかなスキに絙は葵に触れ、自身の術式を発動する。


絙の術式は”融合”

触れた生物と自身を融合することができる。

融合することで対象の動きを封じたり、対象の肉体の性質を自身に反映することができる。

融合の支配権は絙が主体となり触れた時間が長ければ長いほど対象の支配権を維持しやすい。

絙は葵に触れることで葵の動きを封じた。

さらに葵の内部にいる”何か”に気が付く。

すると葵の身体から”何か”が現れる。

絙は葵を抱きかかえ、玲と共に距離をとる。

葵から現れた”何か”は霊体のように半透明な姿でこちらを見ていた。


「キヒッ!いやぁ…面白い能力だ!

 触れた対象の肉体を支配できるわけか!」


不気味な笑い声とともに身体が徐々に実体となる。

その姿はまるで屍のよう全身骨が浮き彫りとなった無人だった。

玲は葵の様子を見て息があることから安堵する。


絙は目の前の無人から目を離さずに葵に起こったことを整理する。

この部屋に入った時から全員が邪悪な雰囲気を肌身で感じ取っていた。

そして一瞬だった。

霊のような存在が現れたかと思えば、突如葵が隊員たちを斬りつけ始めたのだ。


「(洗脳の類じゃない…憑依に近い能力か。)」


「もう少し君たちと遊んでいたいが…」


すると暗菜が部屋に入ってくる。

暗菜は玲と同じく惨状を目の当たりにして驚愕する。


「お仲間が来たみたいなんでね。

 キヒッヒッ…私は失礼するよ。」



―おい、失礼すんなよ。―



部屋の天井が崩れそこから明が姿を現す。

明は真っ先に無人に斬りかかる。

だが、無人は再び自身の身体を半透明状にすると明の攻撃がすり抜ける。


「!?」


「キヒッヒッヒッ!!…威勢はいいが、私ばかりに気を取られていていいのかな?」


「なんだと…」


絙が口にする。

無人は邪悪な笑い声をあげながら、口にする。


「ここにいたのは無人われわれだけではなかっただろう?

 君たちの目的は”彼ら”の保護も含まれるんじゃないかぁ?」


「!!!」


無人の企みを察した絙は、すぐに暗菜に城内の下層にいる隊員のもとへ向かうよう指示する。

明も天井を破壊した影響で通信が繋がるようになったことを知り、学内で生存者を保護していた自分の班に連絡をとる。


―お前ら!!生存者から離れろ!!―


「ん?どうした明?」



「みんな!今すぐそこから離れて!!」


すると生存者が苦しみだし、身体からガスが発生する。

生存者の近くにいた隊員たちはそのガスを吸い込み苦しみだす。

明の通信からも同じく苦しみ出す隊員たちの声だけが聞こえるだけだった。


「お前!!何をしやがった!!」


「ちょっとした実験さ、おかげで少々無理はしたがね。」


すると無人の全身が傷だらけになっていく。


「それに…”興味深い情報”も得られたわけだしね。」


そう無人が発言すると、葵の方を見つめる。

明は再度攻撃を仕掛けるも、またもや攻撃はすり抜けてしまう。

無人は明の攻撃に気にする素振りなく、姿を消してしまう。


「クソッ!」


そして、部屋には負傷した隊員、そして明たちのみが取り残されたのだった。











突入からおよそ1時間後、救援要請により派遣された支援部隊により残存していた無人の群れが執行される。

学内の制圧が完了後、学外に避難していた生存者や負傷者も順次保護される。

しかし、生存者たちは例外なく体内より発生した未知のガスに蝕まれ、程なくして全員が死亡した。

そのガスは執行隊員たちにも影響を与え、15名の隊員が軽度の痺れや発熱といった症状を示した。

国衛局は感染の可能性を危惧し、症状を示した15名の執行隊員を厳重な隔離体制の下、特別施設へと移送する措置を取った。

また、作戦中に味方を負傷させた龍河岡 葵については、国衛局の命令により責任を問われ、龍河岡家の軟禁処置が決定された。


―だが、後日。―


隔離施設へ送られた15名の隊員が原因不明の死を遂げた。

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