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天運の檻  作者: じょじょ
第1章・執行隊入隊編

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2/19

2話「執行隊」

天運の檻・2話になります!

リアクション、コメントなどくれたら嬉しいです!

「着いたぞー」


あゆむと執行隊の青年を乗せた車がある場所に到着する。

そこは人気の無い森だった。

周囲には小屋が一つ建っているだけ。

それ以外はこれといった施設などもなかった。


「さ、まずは話からだな。」


そう青年は口にして、小屋の前に置かれた切り株に座る。


「お前、名前は何ていう?話はそっから。」


青年はまるで歩の懐に容赦なく入り込むかのように質問する。

だが、不思議なことに不快感はない。


「あ、えっと…瑞野みずの あゆむです。」


「歩ね、よろしくー」


すぐに歩の下の名を呼び始める青年。

逆に歩も青年に名を尋ねる。

青年は少し間を空けて、急に微笑んだかと思えば、ふざけた表情をして口にする。


「"漆黒の卓越者"…かな。」


「は、はい…?」


「あはは!やっぱそーなるよな!”俺もそうなってたわ”!」


腹を抱えて笑う青年。

歩はこの青年のノリについていけなくて困惑する。


「まぁ、歩。

 お前の実力見て気が向いたら教えるわ。」


「は、はぁ…」


歩と青年は一息つくべく小屋に入る。

中は質素な空間でとてもじゃないが人が住むには足りない物が多すぎるといった印象だった。

歩はスーツを脱ぎ、村で浴びた返り血や汚れを洗い流す。

すると青年が歩に声をかける。


「ところで歩はさ、”流源”のコントロールできる?」


流源りゅうげん

日本国民の身体に血液のように流れるエネルギー。

ウイルスが蔓延した時代に日本国民の体内に進化が促され発生したもので、流源量に個人差はあるものの全ての国民の身体に流れている。

その影響で現在の日本人は平均的にも運動能力が高い傾向にある。


「あ、はい。一応学生時代じゃ1番流源の操作は上手かったです。」


「んじゃ、第一関門はクリアだなー。じゃ次の質問。」


青年は歩の顔を観察するように見つめながら話を続ける。

その青い眼光に歩は少しだけたじろぐ。


「歩は、術式発現者か?」


歩はその発言を聞いて、少し息を呑む。

それもそのはず。

目の前にいる執行隊の青年、彼は最低でも危険等級B以上の術式発現者だからだ。

危険等級B以上の術式発現者は原則として国衛局管轄のもとで生活を強いられ、場合によっては一生檻の中で過ごすも同然の生活を過ごす者もいる。

しかし、その中でも無人の討伐を条件に国衛局の許可ありきとはいえ、ある程度の自由を約束されているのが執行隊だ。


術式発現者の中には犯罪に手を染める者もいる。

その中には術式発現者に対する国衛局の対応に異を唱える者が過半数だ。

この青年も執行隊に属していても、自分のような術式を持たない者に攻撃的な可能性もある。


歩は慎重に答える。


「発現は…してないです。」


だが、歩の考えとは裏腹に青年の表情は明るいものだった。


「あ、じゃ今年は珍しいな〜

 まさか術式発現者じゃないヤツが”二人も”入隊してくるなんてよ。」


そう口にする青年。

歩はすぐに良奨りょうすけのことだと気が付く。


良奨は幼い頃から、執行隊に憧れを抱いていた。

だが、それに反して術式はおろか流源すらもほとんど使いこなすことはできなかった。

そんな良奨を気にかていた歩だったが、年を重ねていくにつれ、その感情は徐々に彼に対して疎ましい感情に埋もれていった。

執行隊への入隊が決まった時も良奨に放った言葉もその心配と疎ましいと思う感情が交じり合った結果のものだった。


「あ、あの…!そのもう一人の名前って…」


「質問は後!さぁ行くぞ〜」


青年は歩を引っ張り、ズカズカと森の奥へ向かう。











森の中を歩き続けると青年は歩に刀を渡す。


「ほい。」


「これ…」


歩は刀の鞘を抜き、刀の刃を見つめる。


「執行隊の武器だ。いいか?俺たちは今後無人むとを相手にする。

 …歩、無人について知ってることは?」


「えーっと…」


「おいおいー成績優秀者〜さては無人のこと、間に受けてなかったな?」


青年は歩の頬をつつきながら小馬鹿にする。

そうして青年は歩に無人の説明をし始める。


無人むと

かつて日本に蔓延したウイルスに感染した者のなれ果て。

白目と黒目が反転しており、驚異的な身体能力と不死性を持つ。

人を喰らう特徴があるが、それは新鮮なDNAを取り込むことで己の変異を留めている。


「ってことは…長い間人を食べてない無人は…体に異常が?」


歩の問いに青年は指を鳴らす。


「正解っ、さすか成績優秀者〜」


再び小馬鹿にされ歩の頬が赤くなる。


「基本的には退化だな、自我がなくなって行動も獰猛な獣みたいになる。」


「へぇ…」


「まぁ、一般人からしちゃ初耳か。それも俺らの恩恵だけど。」


青年は歩から距離を取り、刀を抜く。

すると瞬く間に歩の目の前に接近する。


「う、うわぁ!」


歩はなんとか青年の攻撃を刀で防ぐ。

軽く振るった程度の動きだが、それでも歩にとっては全身の力を込めなければ防ぐこともままならないほどの力だった。


「無人の弱点は大きく分けて二つ。」


青年は平然とした表情のまま話を続ける。

歩は青年から距離を取ろうとするがすぐに距離を詰められてしまう。


「まず一つ目、無人の身体には核がある。それの破壊だ。」


歩は青年の攻撃を何度か防いだ後、身体に力を込める。

自身の流源を解放したのだ。

それにより、歩は移動速度を高めて先ほどよりも速い速度で距離を離す。


しかし―


「うくっ…!(早すぎる…!!)」


青年にいと容易たやすく追いつかれ、攻撃を仕掛けられる。

学生時代に身につけてきた己の自信がたった一人の青年によって徐々に打ち砕かれていく。

そんな中でも青年は歩に話を続けていく。


「けど、個体によって核の場所は違う。だから…」


「うわっ…!」


背後に回られ蹴り飛ばされる歩。


「二つ目、流源を纏った武器で首を切断する。」


「流源を…纏う…?」


執行隊で支給される刀には流源を吸収しやすい構造をしているとうろ覚えながら口にする青年。

青年の刀にオーラのようなものが纏わりつく。


そして―


次の瞬間、歩が目を開けた時には青年は目の前にまで接近していた。

青年の一振りによって歩の横にある木々が容易に切断される。

歩は目の前に起きた現象が一人の人間がやってのけたことに驚きを隠せないでいる。

だが、学生時代あらゆる分野で優秀な成績を収めていた歩だからこそ、理解できる。


「流源を纏うなんて…そんなこと…」


歩は立ち上がりながら口にする。


「まぁ普通じゃそんな使い方はしないわな。…けどな、歩。

 これからお前が相手にするのは不死身の怪物だ。」


青年が真剣な表情へと変わる。


「ソイツを前にお前はできないと口にして命を無駄にすんのか?」


それを聞いて歩の脳裏に先ほど村で命を落とした友人たちを思い出す。

歩の身体に力が入る。

仲間の死を、これ以上命を無駄にしないためにも…

歩は全神経を身体に集中させる。

身体に流れる流源が手に集中していくのがわかる。


次の瞬間―


歩は青年に攻撃を繰り出す。

その刀には青年の攻撃程ではないにしろ、たしかに刀に流源が纏っていた。

青年は歩の攻撃を防ぐも、その表情は笑みを浮かべていた。


そして、青年は一言―


「ようこそ、執行隊へ。」











流源を刀に纏う方法を身に着けた歩。

それからは何時間にもおよんで、青年との執行隊の者としての戦い方を叩き込まれる。

そして数日後。

青年は小屋の外で一人、空を見上げる。


「(そろそろだな…)」


「先生!今日は何の訓練を?」


歩は青年の背後で声をかける。

青年と出会って数日、歩は名も知らない目の前の青年を”先生”と呼び慕うほどにまで関係を深めていた。


「いや先生って、俺先生じゃねぇから。」


青年はため息をつきながら、答える。

だが、歩の目はまっすぐ青年を見つめている。


「いえ、俺にとっては命の恩人で俺の道を支えてくれる師匠ですよ。」


歩に背中を見せながら青年はほほ笑む。

まるで、何かを昔の記憶を思い出しているかのように。

青年は最後の訓練と歩に伝えると、森の中へと歩を案内する。

森の中へ向かう道中、青年は刀に流源を纏う技術は執行隊の中でも基礎的な技術だと口にした。

青年は自分の刀を抜き話を続ける。


「けど、刀に流源を纏うだけじゃ無人は簡単に倒せねぇ。

 だから執行隊おれたちは流源をさらに応用させた。」


「応用…?」


「あぁ、それが”流派”だ。」


流派りゅうは

執行隊が無人と対抗するために流源を利用した剣術。

基本となる流派は5種類存在し、執行隊では自身の戦闘スタイルや適性に応じて身に着けていく。


「5種類も…流派ごとにどんな特徴があるんですか?」


「ん?あ、歩は別にそんなの覚えなくていいぜ?」


「え?」


「歩には”龍河一刀流りゅうがいっとうりゅう”を教えるって決まってるから。」


「え!?(てか、なんで勝手に決めてんの…スタイルに応じてって説明してたばっかじゃん…)」


歩は数日経ってもなお、この青年のペースに付いていくのに苦労する。

さらには伝授すると口にした龍河一刀流の特徴すらもめんどうだと言ってまともに教えてくれなかった。

そんな適当な説明に歩は唖然とする。


「あの…俺もやるならちゃんとしておきたいんですけど…」


「そんな頭ばっか使っても実戦で使えないと意味がねぇだろ~?成績優秀者~」


青年はそう言って歩の髪を搔き乱す。

歩はぐしゃぐしゃになった茶髪の髪を整える。

青年を見上げながら歩が困惑した表情を見せる。


「もう、その呼び方やめてくれません?」


歩は青年のイジリに文句を言うものの、青年の指示通りに龍河一刀流と呼ばれる流派を叩き込まれていく。

そして、数時間後。


「歩、飲み込み早いな!」


「あ…りがとう…ございます…」


すでに歩は何時間も休憩なしに流派の動きを叩き込まれたことで、疲労が限界に来ていた。

すると青年の所持する通信機が鳴り出す。


「出なくて…いいんですか?」


「あ、これ?大丈夫大丈夫、無視でOK」


そう言って青年は少し歩を休ませた後に歩に声をかけ、再び訓練を開始する。


「先生、容赦ないからなぁ…」


「あ、次は俺とじゃないぜ?」


「え?…でも他に誰が…」


「さっき呼んでおいた。」


そう言って青年が合図すると現れたのは一人の少女だった。


「この人…」


歩はその人物を知っていた。

いや、知っていたというより見かけたことがあったのだ。

あの薄紫色の瞳に。

歩が少女に声をかけようとすると…


米里よねさと 未紗みさだよ。よろしくね、

 たしか~……国衛局本部で目あったよね?」


「あ、うん…(やっぱそうだ…)」


自分が本部で見かけた人物だと理解する歩。

青年は次は未紗と訓練するように歩に伝える。

未紗は刀を抜き、すでに実戦訓練の準備に入っていた。

歩も慌てて刀を抜く。

青年は二人から少し距離を取り、小屋へと戻ろうとする。

その時に青年が一言、歩に伝える。


「あ、因みに未紗は俺より加減知らないタイプだから。」


「え!?」


歩が青年の方を振り向く。

その頃には未紗が歩の目の前にまで接近していた。

歩は攻撃を間一髪で避ける。


「(危なかった…流源の操作をしてなかったらあれで終わってた…!)」


「(すごい…たった数日でここまで…)」


未紗は再び刀を構えなおす。


「でも、今のはどうせ運が良かっただけ。

 次はもう少し早く動くからね。」


そして歩を挑発する。


「運は掴むものさ、次も対応してみせる!」


歩は額に汗を滲ませつつも、笑みを浮かべて答える。

未紗の動きに追従するように歩も行動に移す。

動きでは未紗に及ばないが、それでも必死に喰らいつく歩。

少しずつではあるが、未紗の動きについてきている歩。

表面上では感情を露わにしないが未紗もその成長スピードに驚く。

未紗の攻撃をうまく木々を利用して防いでいく歩。

歩は未紗の死角をとり、背後から攻撃を行う。


だが…


「なっ!?」


未紗はまるで”その攻撃が来ることを知っていたかのよう”に回避し歩を斬りつける。

未紗の攻撃が歩の肩を僅かに斬りつける。


「うぐっ…!」


「(もっと深く斬るつもりだったのに…)」


未紗はまたしても歩に決定打を与えることに失敗する。

数分の攻防の末、歩はタイミングを見計らい距離を取る。

そして全身の流源を解放する。

歩は刀に流源を纏い、刀をまるで決められた所作のように構える。

それを見た未紗は歩が流派を使用する気なのだと理解する。


そして―


―龍河一刀流・水瀧すいろう斬り!!!―


流派を発動する歩。

水平に刀を振り、流派を会得したてでも扱いやすい剣技を放つ。

歩の一撃は未紗の刀にぶつかる。

未紗は歩の足を蹴ることで、バランスを崩し攻撃を受け流す。


「くそっ!」


「はいっ、そこまで〜」


青年の声が響く。

それにより歩の動きが止まる。

青年が歩がすでに訓練で流派を使用することに驚く。


「でも、完璧じゃないですよ…実際、あっちは本気じゃなかったし結局最後は受け流された。」


「数日でここまで上達してる時点で上出来だよ。な?未紗」


青年は未紗に声をかける。

未紗は歩の方へと向かう。


「うん。すごい強いよ、歩!」


未紗の持つ刀には僅かにヒビが付いていた。

倒れた歩に手を差し伸ばすその表情は優しさに満ち溢れるかのような笑みだった。

歩はその笑みを見て頬を僅かに赤める。

歩が立ち上がると青年は未紗に声をかける。


「未紗、あとは頼んだぜ。」


青年が未紗に向かって口にする。

すると上空から輸送ヘリがこちらに着陸しようとしていた。


「あれは…(国衛局の…)」


輸送ヘリは小屋付近で着陸する。

ヘリの轟音そして回転翼から放たれる風にこらえながら歩は青年のもとへ向かう。


「先生…!これは一体…」


歩はヘリの轟音にかき消されないように声を大きくして青年に尋ねる。

だが、青年はそのままヘリの方へ向かっていく。

するとヘリから数名の国衛局の人間が降り立つ。


「罪状は理解しているな?」


「はいはい、そう睨まなくてもわかってるッスよー」


国衛局の人間が口にすると、青年は無抵抗のまま彼らに刀を渡す。

そして青年は国衛局の人間に手錠をかけられる。

歩は状況が理解できず、青年を呼びかける。


「先生…!!」


あきらだ。」


「え?」


青年が歩の方を振り向く。

青年の表情は笑顔に満ち溢れていた。


藤白露ふじしろ あきら

 それが俺の名前だ、歩。」


明はそう言うと歩のそばにいる未紗に目で合図する。

すると未紗は明の意図を理解したようにうなずく。

ヘリの扉が閉まる。

輸送ヘリは明を乗せて飛び立つ。

その様子を見上げる歩。


「行くよ、歩。」


未紗が歩に声をかける。

二人は明が使用していた車に乗りこむ。

車に乗り込むと未紗は自動運転システムに切り替え、どこか目的地を指定する。


「これからどこに…?」


車が発進する中で歩が未紗に尋ねる。

未紗はナビを歩に見せながら答える。


「執行隊本部だよ。」

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