18話「晩餐会の行方」
天運の檻・18話になります!
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襲い掛かる無人を全て倒し、国衛局員や仲間の手当てを手伝う彈。
「刃岩野くん、ここは俺たちに任せて、先に行ってくれ!」
深野が口にする。
今は無人がいつ何時襲い掛かってきてもおかしくない状況。
だが、先に潜入した良奨と美衣の安否も気になる中で深野は彈の気持ちを汲んでくれたのだ。
「ありがとうございます!深野さん!」
彈は良奨との連絡で中央広間に向かっていると口にしていたことを思い出し、煌環苑の内部へと進む。
しばらく進むと広間へと到着する彈。
彈はそこが中央広間でないことを理解するも自身に迫りくる殺意を見逃さなかった。
遠方から襲い掛かる無数の棘状の骨。
彈は刀を抜き、全ての骨を振り払う。
すると振り払った際に生まれた死角に襲い掛かる骨のような武器を持つ無人。
刀で攻撃を防ぐ彈。
「やるねぇ~!
今のを防ぎきったヤツは久しぶりだ!」
身体中の関節を鳴らしながら笑う半裸の無人。
彈は攻撃を勢いを自分の力で跳ね除けようと力を込める。
すると上空から泥のような濁った粘性の液体が降り注ぐ。
彈は無人から距離をとり泥からの攻撃を避ける。
―狂田、相手の術式が不明な以上うかつに接近するな。―
狂と呼ばれた無人と通信を行うもう一人の無人。
彈は泥による攻撃を繰り出した無人であると察する。
姿を現さない相手に対し、彈は警戒をより強める。
「体内の骨を武器として生成する異術、そしてもう一人は泥を操作する異術か!」
彈は笑みを保ちながら口にする。
ここ煌環苑には梨江を除き、四人の無人が享亭に仕えている。
彈が相手にしているのはそのうち狂田と宮地の二人。
かつて同じく享亭に仕える無人の一人だった千羽と同様、高い戦闘力と異術を扱える無人の精鋭だ。
狂田は体中から無数の骨を彈に射出しながら接近戦を仕掛ける。
狂田の中距離と近距離を組み合わせた戦いに堅実な守りを維持しながら戦闘を行う彈。
すると突如、彈の足元が沼のように変化し、バランスを崩す。
宮地の異術は泥と沼を生成することができる。
それにより彈の足元の床を沼化させ動きを封じたのだ。
さらに沼は彈を引きづり込んでいき、身体の半分以上を飲み込む。
すると先ほどまで身を隠していた宮地が姿を現す。
「いいぞ、よく誘導した狂田。」
宮地は和服の袖から泥を生成しながら自身の周囲に漂わせる。
狂田が宮地の横に立ち、口にする。
「術式は触れないと発動できないんだろ?これで―」
「あぁ、殺せるというわけだ。」
掌から無数の泥を放つ宮地。
狂田は自身の骨から鋭い刀を生成し彈へと向かう。
二人の無人による集中攻撃が迫る中、余裕の表情を崩さない彈。
狂田の刃が彈へと届くその時、彈の身体を覆っていた沼が弾け飛ぶ。
―なっ!?―
その光景を見て驚愕する宮地と狂田。
だが、すでに彈へと接近している狂田は止まることができない。
彈の手が狂田の胸に触れる。
「触れたぞ?さぁどうする?」
「てめッー」
狂田が彈の喉元に刃を突き立てようとするが、彈の触れた箇所を中心に衝撃が広がり狂田の身体が勢いよく弾け飛ぶ。
その勢いはバラバラとなった狂田の肉片を凄まじい速度を持つ弾丸と化し、宮地を襲う。
そして肉片の弾丸により身体中穴だらけになった宮地もろとも狂田の身体から発生した衝撃が飲み込む。
広間の壁に大きな穴を開け、狂田だけでなく宮地までも一瞬にして核もろとも肉片にしてしまう彈。
彈の術式は”衝撃”。
自身や触れた対象に衝撃を発生させることができる。
衝撃は非常に強力で、不死性を誇る無人でさえも直接触れれば身体を容易に粉々にできる。
彈は宮地の異術による沼の拘束を解き、さらに狂田に高出力の術式を発動したことで無人である2人をまとめて粉微塵にしたのだ。
宮地の死骸が塵になったのを確認するとすぐにその場を後にする彈。
その光景を部屋の監視カメラから確認する享亭。
「バカな…あの二人がこうも容易く…」
自身の書斎まで響きわたる彈の術式による衝撃。
画面越しといえど並みの術式発現者の放つ威力とは比べ物にならない彈の実力の片鱗を見て、享亭の額に汗がにじみ出る。
煌環苑の中央広間へと向かう絙。
遠方で地震のような衝撃が響き渡るのを感じながら、鉢合わせた無人を倒しながら中央広間へと到着する。
そこには意識を失いながら拘束された邁と隣には帝玄が座っていた。
「僕さ、食事って自分の手で食材を選んで捌くから楽しいと思うんだ~
ただ優雅な部屋で提供されるの待つだけの食事の何が享亭さんは楽しんだろうねー
…君はどう思う?」
帝玄は天井から見える夜空を見ながら絙に問う。
絙は帝玄の問いに答えず刀を抜く。
「やぁ、また会ったね。
僕に用があったんでしょ?」
帝玄が絙の心を見透かすように言い放つ。
絙が帝玄を追う理由、それは自分の目的に最も近い存在がこの青年であると考えていたからだ。
帝玄を見た時、絙はこれまでの無人とは一線を画す存在であると察した。そして10年前、自身が出会った無人化ガスを浴びせ、同期を死に追いやった無人にも同様の感想を抱いていた。
「お前の仲間に…”屍のような無人”はいるか。」
絙が尋ねる。
帝玄は絙の問いを聞いて少し驚いたような表情を見せる。
「へぇー…”あの人”を…
(これは…なかなか面白そうなことになりそうだな…)」
すぐに笑みを取り戻し、邁を開放する帝玄。
絙は帝玄のとった行動に疑問を抱く。
「あ、安心して。
この人は返すよ。けど―」
僅かほんの一瞬の出来事だった。
絙が瞬きをしたその間に懐まで急接近する帝玄。
そして帝玄が言い放つ。
「代わりに僕と遊ばない?
もちろん君が勝てば、知りたい情報を教えるよ。」
絙は無言で刀を帝玄に向けて振るう。
帝玄は絙の攻撃を避けながら楽しそうな笑みを見せる。
「いいね、始めよう!」
絙と帝玄の闘いが開始される。
その頃、享亭の書斎を目指す良奨と美衣。
二人もまた、彈の術式から放たれた衝撃を感じ取る。
「今のは…」
「これは彈先輩の術式…!
応援が来てくれたんだ…!」
美衣は道中、煌環苑内にいた動物に自身の術式を施すべく触れながら目的地へ向かう。
すると二人の前に現れる一人の無人。
その姿は露出の高い衣装に男性でありながら口紅をつけた容姿をしていた。
「あら、美味しそうな子たちねぇ。」
美衣はすぐに宴の会場にいた無人たちよりも格上の無人であると察する。
絙に渡された短刀を抜き、流源を込める美衣。
そして無人に斬りかかろうと足を踏み込もうとする美衣だが、自身の足が何かに拘束されていることに気が付く。
―異術・野趣縛樹―
美衣の足を縛った根のようなものはそのまま美衣を引きずり出し、美衣を宙づりにする。
「美衣!」
良奨が美衣の方を向く。
だが、そんな良奨の背後に接近する無人。
「坊や、敵を前によそ見は命取りよ。」
「ッ!!」
良奨は短刀を抜き、無人の腕を斬りつける。
だが無人は良奨に手を駆けずに笑みを浮かべたまま腕の傷を再生する。
「(攻撃してこなかった…?なぜだ?)」
本来であれば、今の瞬間で命を落としていたはず。
良奨はなぜ敵の無人が自分を攻撃しなかったのか疑問に思う。
「ウフッ、私は錦野。
坊や、いい顔してるわね~私の好みよ。」
錦野と名乗る無人は掌から種のようなものを床に植える。
種は床に溶けるように埋まり、しばらくすると床から樹木のようなものが生え始める。
良奨は先ほど美衣を縛り上げたものと同様の形状から錦野の異術であると考える。
「私はね、いい男が見せる恐怖に駆られた表情が好みなの。
千羽ちゃんほどじゃないけど、食事にはけっこう拘ってるのよ。」
樹木が動きだし、複数のつぼみが錦野の周囲に現れる。
そしてつぼみが良奨を向きながら開く。
「だから、もっとその顔を歪ませてちょうだい。」
―異術・紫幹翆葉―
開いたつぼみから強力な突風が吹き出し、良奨を吹き飛ばす。
壁に思い切りぶつかる良奨。
その勢いで頭をぶつけ頭から血を流す良奨。
「良奨くん!」
美衣が叫ぶ。
すぐに樹木が良奨を縛ろうと襲い掛かる。
良奨はなんとか立ち上がり、樹木の攻撃を避ける。
だが、流源をうまく扱えない良奨では人並程度の動きしかできない。
動きは鈍くすぐに追いつかれそうになる良奨だが、錦野の様子を伺いながらなんとか攻撃を避ける。
相手の攻撃パターンを理解し、攻撃が自分に当たる直前で流源を放ち身体能力を僅かに上げて回避に徹する。
それは流源量が少ない良奨が今の状況でできる最善の方法だった。
「ウフフッ、坊や本当に執行隊?
そんな流源じゃ戦闘すら―」
「良奨くん!私のことはいいから逃げて!」
美衣は良奨がこの場を離れずに錦野の攻撃を必死に避けていること理由に気が付いていた。
良奨には仲間である美衣を見捨てるという選択をとることができなかったのだ。
それでもこのままでは二人とも錦野に殺されてしまう。
美衣は良奨にこの場から逃げるように指示する。
だが、錦野が美衣を睨みだすと樹木の根が美衣の口を塞ぐ。
「私が喋ってるの、お嬢ちゃんは邪魔しないでくれる?
…殺すわよ?」
錦野が美衣に殺意を飛ばす。
その凄みに美衣の身体に力が入らなくなる。
錦野はすぐに疲弊している良奨に再び狙いを定める。
すると錦野の周囲にカラスの大群が襲い掛かる。
美衣の術式によるものだ。
拘束されていてもあらかじめ動物に触れていれば術式は発動できる。
美衣は良奨だけでもこの場から逃がそうと考えていたのだ。
「まったく、そんなに死にたいのね。」
カラスに囲まれながら錦野はため息をつき、掌から種を生成し床に植える。
すると樹木から花が次々と咲き出し、開いた花から大量の水が噴き出す。
―異術・山紫水明―
大量に放出された水はカラスを吹き飛ばし、周囲に大きな水たまりを形成する。
良奨も大量の水に飲み込まれたことで、身体のいたる箇所に大きな打撲や骨折が生じる。
錦野は拘束された状態の美衣に近寄る。
その様子を見た良奨は重たい身体を起こし美衣のもとへ走る。
走りながら良奨の脳裏には先ほど美衣に言われた言葉が思い浮かぶ。
―良奨くん!私のことはいいから逃げて!―
あの発言は自分のことを想っての発言なのだと良奨は理解していた。
だが、あの場で自分が逃げる選択をとれば間違いなく美衣は殺される。
美衣だって大切な仲間の一人、良奨は心の内で歩ならどうするかを考えていた。
歩なら逃げずに戦ったはずだ。
無人を執行するまで。
幼い頃から歩と共に育ち、常に歩を見てきた。
歩は天才だ、それは学校に入り学年が上がるにつれて目に見える形でわかるようになった。
それでも良奨が歩に抱く感情は嫉妬や悔しさなどではなかった。
良奨が歩に抱く感情、それはいつだって尊敬と憧れだ。
自分にできないことが歩にはできる。
良奨は歩のとる動きや考え方を常に意識し、自分に活かそうとしていた。
たとえ、歩のようにすぐにできず、時間が掛かることになっても。
だが、念願の執行隊に入隊してから良奨の考えにも変化が起き始める。
「(歩もどんどん成長をしている。
歩の背中ばかりを追いかける状態じゃ、歩の真似だけじゃダメだ…!!)」
そして良奨がたどり着いた答えは―
「(俺には俺に合ったやり方で…!!
無人を執行する…!!)」
良奨は流源を足のみに集中させ、速度をあげる。
自身に接近する良奨を見た錦野は掌から種を生成し、再び異術を発動しようとする。
だが、その瞬間に良奨は自身の放てる全流源を足に流し込み、さらに速度を上昇させ錦野の懐まで接近する。
「なに…!?」
「(この無人の異術は強力だけど発動までの隙が大きい…!)」
錦野の異術は種を植えることで生える樹木からあらゆる能力を発動できる。
だが、種が樹木へと育つには時間を要す。
良奨はこの戦闘の中で錦野の異術の弱点に気が付いていたのだ。
その弱点をつき、良奨はこれまで訓練してきたことを脳裏に浮かべ短刀に力を込める。
―真導我天流・天導一閃!!―
それは流派の中で唯一、流源を使用しなくても会得が可能な真導我天流。
残された僅かな流源を短刀に纏い錦野の首を目掛けて一閃を繰り出す。
だが、錦野は腕を盾にすることで刃の軌道がずれ、首の切断までには至らなかった。
「危なかったわ。
少しはやるようね、坊や。」
錦野が良奨に殺意を向ける。
不意打ちが失敗した今、良奨が錦野に勝つ術はない。
だが、それでも良奨の目は諦めていなかった。
「――油断は命取りなんじゃなかったのか?」
「なに…?」
良奨が口にした瞬間、錦野は自身の背後に感じる気配に初めて気が付いたのだ。
背後に美衣の刃が迫っていることに。
―獅壕一刀流・虎爪壊烈!!―
まるで猛獣の爪で切り裂くように三つの斬撃が錦野の身体を刻む。
バラバラとなりその場に倒れる錦野。
良奨は流派による斬撃で錦野の首を狙ったのではない。
錦野の背後にいる美衣の拘束を解くために斬撃を放ったのだ。
そして美衣は術式を発動し、気配を隠し錦野に攻撃を行うことができたのだ。
美衣の術式充填《共伝心身》は使役下にいる動物の感覚や視覚を共有できる。
その能力を応用すれば使役下にある動物の特性を自分に共有させることで疑似的にその動物の特性を利用できるのだ。
美衣は使役下にいた猫の気配を断つ習性を利用し錦野に不意をとることに成功した。
「ありがとう、良奨くん…」
「美衣こそ無事で―」
すると何者かが良奨の足を掴みバランスを崩し膝を付く。
「不意を取れたからといって勝ったわけじゃないわよ…!」
まだ首を切断されていなかった錦野は上体を起こし良奨の足を掴む。
だが突如、錦野は自身の身に起きた異変を感じ取る。
切断された部位からの激しい痛み、そして力の抜けるような感覚。
錦野の動きが怯んだ隙を見逃さなかった美衣はすぐに短刀で錦野の首を切断する。
「なん…なのよ……今のは……」
塵と化していく錦野は良奨と美衣を見つめながら口にする。
なんとか錦野を執行することに成功した美衣はその場で力なく座り込む。
すると良奨は美衣のもとに近寄り身体に大きなケガがないか確認する。
「よかった…無事で…!」
良奨が安堵した表情を見せる。
美衣は良奨の懸命な姿を見て、驚きを隠せないでいた。
初めてのことだった、対等な目線で自分の身を案じてくれたのは。
家では常に優秀な兄と比較され、執行隊では経験の浅さや実力不足ゆえに友人の未紗や霞の一方後ろを歩くような状態だった。
自分が彼らに並ぶには自分を追い込む必要があると考えた美衣だからこそ、彈に師事し、常に仲間が危険に晒されれば、自分の命を顧みない選択をとる。
だが良奨にとっては美衣のその行動が耐えられなかった。
「もう自分を投げうつようなことはしないでくれ。
美衣がいなくなれば…俺が後悔するから。」
弱くてもいい、ただ自分のできることを精一杯こなす。
命を捨てるために使うのではなく、仲間と生きながらその闘いに勝つために命を振るう。
それこそが仲間と対等に居続ける方法なのだと良奨は考えていた。
美衣は良奨の言葉に自然と涙が溢れる。
そして良奨を抱きしめる。
良奨もその気持ちに応えるかのように美衣を抱きしめる。
そして煌環苑中央広間。
絙と帝玄の闘いは苛烈を極めていた。
帝玄は周囲に氷を生成し、絙に攻撃を仕掛ける。
絙は術式を利用し、あらかじめ体内に融合させていた鳥の特性を利用して宙を飛びながら帝玄に向かう。
だが、帝玄は絙の攻撃を意図も容易く避けると絙の腕に触れる。
すると絙の腕が氷結させられ、粉々に砕かれる。
絙は帝玄に触れ、彼の腕と自身の肉体を融合しようとする。
帝玄はすぐに腕を切断するが、絙は融合した帝玄の腕から無人の再生能力の特性を使い、自身の失った腕を再生させる。
「(融合した対象の特性まで使えるのか!
面白い術式!)」
再生能力を生かしてさらに攻めに転じる絙。
帝玄は氷で生成した氷柱や槍で応戦する。
絙の息切れに気が付く帝玄。
「でも、どうやらその万能な術式にも欠点はあるみたいだね~」
帝玄はいち早く絙の術式が消耗が激しいことが弱点であると察した。
無人の特性による再生能力が切れたタイミングを見計らって帝玄が絙の周囲に氷を発生させ動きを封じる。
「まだ隠してる奥の手があるみたいだけど、使わないなら殺しちゃうよ?」
身動きがとれない絙の前に立つ帝玄。
すると部屋中に響きわたる地震のような衝撃。
帝玄の動きが止まる。
すると壁が崩落し姿を現したのは彈だった。
彈はすぐに帝玄に向かい刀を振るう。
帝玄は氷の盾を生成し彈の攻撃を防ぐ。
「アハッ!君も遊ぶ?」
「悪いな!お前と遊んでいる時間はないんだ!」
彈はそう口にすると帝玄を押しのけ、絙を拘束している氷に触れ衝撃によって氷を破壊する。
拘束を解かれた絙。
彈はすぐに飛び上がり、拳に力を込める。
それを見た帝玄そして絙までもが彈がこれから行おうとしている行為を察したのだ。
力を込めた拳が目に見える形で衝撃のエネルギーが纏い始める。
そして彈が地上に着地すると同時に床に拳をぶつける。
―術式充填《天潰》!!―
すると凄まじい衝撃とともに地面が破壊されはじめ、中央広間の天井や壁に至る全てが崩壊し始める。
帝玄は崩落する天井の瓦礫から距離をとるべく行動に移そうとするが、その瞬間絙が帝玄の前に現れる。
―獅壕一刀流・虎爪壊烈!!―
絙の放った流派で両足を切断される帝玄。
足を失ったことでその場に倒れる帝玄に緊張が走る。
普段絶やさない笑みも目の前に迫りくる瓦礫の山に表情も僅かだが崩れる。
絙はすぐに邁を抱え崩落から逃れるべく中央広間を出る。
彈が放った衝撃は地震のように広がり続け、中央広間だけでなく煌環苑の敷地全てに衝撃が響き渡る。
その衝撃は地下で戦闘を行う阿波村と梨江にも届く。
「これは!?(刃岩野の術式か!)」
「ッ…!!」
地下の壁に亀裂が走り崩壊し始める。
梨江は透明化する異術で姿を消しその場を離れる。
阿波村も硬化の術式で崩れる瓦礫から身を守りながら地下からなんとか出る。
そして阿波村と同様に彈の放った術式の余波によりバランスを崩す美衣。
「大丈夫か!?美衣!」
良奨は美衣を支え、なんとか立ち上がる。
廊下の先には享亭の書斎が見える。
良奨は意を決して美衣を立ち上がらせて口にする。
「行くぞ、美衣!」
「うん!…」




